平成28年度過労死等の労災補償状況

 平成29年6月30日,厚生労働省が平成28年度の過労死等の労災補償状況を公表しました(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000168672.html)。

 

 まず,脳・心臓疾患に関する事案の労災について,請求件数と支給決定件数共に前年比増となりました。業種別では,運輸業・郵便業が突出して多いです。長距離トラック運転手の長時間労働が背景にあるのかもしれません。

 

 発症前2~6ヶ月の時間外労働が平均月80時間を超えると業務起因性が認められやすくなりますが,1ヶ月の時間外労働が80時間を下回るケースであっても,14件で労災認定されていました。1ヶ月の時間外労働80時間以上という過労死ラインを下回る時間外労働であっても,労働時間以外の負荷要因と組み合わせることで,総合判断で労災認定されることがあります。

 

 次に精神障害に関する事案の労災について,請求件数1,586件で前年比71件の増加,支給決定件数は498件で前年比26件の増加で,いずれも過去最多となりました。業種別では,医療・福祉が多いです。人手不足な上に,責任が重く,労働者一人ひとりの負荷が増加しているのかもしれません。

 

 また,精神障害の労災の原因のトップは,「(ひどい)嫌がらせ,いじめ,又は暴行を受けた」です。労働相談の現場でも,パワハラの相談が増えているのを実感しております。

 

 精神障害の労災は,1,586件の請求に対して支給決定は498件ですので,精神障害で労災申請した人の31%しか労災認定を受けられていないので,まだまだ狭き門です。

 

 過労死等の労災事件は今後も増えていきそうです。この問題に対して,労働者側の弁護士として真摯に取り組んでいきたいと思います。