私立大学の専任教員の定年後の再雇用が認められた事例

 私立大学の専任教員が,65歳の定年後に再雇用を拒否されたものの,労働契約法19条2号を類推適用して,定年後の再雇用が成立したとされた東京地裁平成28年11月30日判決(判例時報2328号・129頁)を紹介します。

 

 被告私立大学では,就業規則において,専任教員の定年が満65歳に定められていましたが,特例として「理事会が必要と認めたときは,定年に達した専任教員に,満70才を限度として勤務を委嘱することができる。」という規程が定められており,実際に,定年後も引続き勤務を希望する専任教員については,70歳まで1年間ごとの再雇用契約が締結されていました。

 

 原告は,被告私立大学に対して,上記規程に基づき,再雇用の希望を申し出たのですが,被告私立大学は,理事会の決定により,原告の雇用は定年で終了し,再雇用契約を締結しないこととしました。これに対して,原告が地位確認と賃金の支払を求めて提訴しました。

 

 判決は,原告の採用を担当した理事が70歳までの雇用が保障されている旨の説明をしており,採用決定後の説明会においても,事務担当者が,定年後は70歳までほぼ自動的に勤務を委嘱することになる旨の説明をしており,被告私立大学では再雇用契約の締結を希望した専任教員の全員が再雇用契約を締結して70歳まで契約更新を繰り返していたことを考慮して,原告が定年時に再雇用契約が締結されると期待することが合理的であるとして,労働契約法9条2号を類推適用して,原告の請求を認めました。

 

 65歳までであれば,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律で,原則雇用が継続されるのですが,本件は,65歳以降の雇用の継続が問題となり,高年法の適用がないケースでした。高年法が適用されない場合,再雇用契約を締結するか否かは,使用者の裁量に委ねられます。

 

 しかし,本判決は,上記の事情を考慮して,再雇用契約を締結するものと期待することに合理性があるとして,労働契約法19条2号を類推適用して,原告を救済しました。高齢化社会が進展しており,今後,定年をめぐる紛争が増加するかもしれない中,労働者に有利な判断がなされたので,紹介させていただきます。