トラック運転手の未払残業代請求

1 事案の概要

クライアントらは,40代と50代の2人の長距離トラック運転手です。クライアントらは,夜中に関東や関西方面へトラックで荷物を運送し,翌日の朝に目的地へ到着し,荷物を降ろした後,長時間休憩し,夕方に関東や関西で荷物を集荷し,夜間に北陸方面へトラックを運転し,翌日の朝,北陸へ到着し,荷物を降ろしてから会社へ戻り,トラックの洗車,燃料補給,日報の作成をして帰宅するという労働をしていました。深夜に長時間労働をしているにもかかわらず,「運行手当」という名目で残業代が支払われているからという理由で,残業代は全く支払われていませんでした。

そこで,証拠保全手続で証拠を確保してから,約500万円と約450万円の未払残業代請求の訴訟を提起しました。

 

2 証拠保全

長距離トラックには,デジタルタコグラフが搭載されていることが多く,デジタルタコグラフには,トラックの走行時間とトラックの停車時間が記録されています。デジタルタコグラフのデータを入手すれば,トラック運転手が日々の労働で何時間働いたのかを客観的に証明することができます。

もっとも,貨物自動車運送事業輸送安全規則第8条において,デジタルタコグラフの保存期間は1年であるため,急いでデジタルタコグラフを入手する必要がありました。

そこで,デジタルタコグラフのデータが削除される前に,デジタルタコグラフのデータを入手するために証拠保全の申立を行いました。証拠保全とは,弁護士が裁判官と共に証拠が存在する現場へ赴き,証拠を確保するという手続です。

本件でも証拠保全を実施し,消滅時効にかかっていない2年分のデジタルタコグラフのデータを入手することに成功しました。デジタルタコグラフのデータから労働時間を客観的に証明できるので,会社は,その時間は働いていないやもっと休憩していたはずだ等と反論することはできなくなります。

 

3 未払残業代請求訴訟提起

訴訟において,会社は,①運行手当を残業代として支払っているので,残業代の未払はないこと,②1カ月単位の変形労働時間制を採用しているので,未払残業代は少なくなることを主張しました。

①運行手当を支払っているので未払残業代が存在しないという主張は,いわゆる固定残業代と呼ばれるものです。固定残業代とは,会社が労働基準法の計算によらずに,残業代を一定金額に固定して支払うものです。この固定残業代が認められるためには,労働者に対して時間外労働の時間数と残業代の額が明示されなければならないのですが,この会社では,トラック運転手がどれだけ残業したのか,残業時間に対して残業代がいくらになるのかとったことが何ら明示されていませんでした。

②1カ月単位の変形労働時間制が認められるためには,法定労働時間を超えて労働させる週及び日を特定する必要があるのですが,この会社では,その特定がなされていませんでした。

このように,会社の固定残業代と1カ月単位の変形労働時間制の主張は認められず,最終的に会社は,クライアントらに対して,390万円と435万円の残業代を支払うことで和解が成立しました。

 

4 小括

トラック運転手は深夜に長時間労働をしているにもかかわらず,残業代が支払われていないケースもあります。デジタルタコグラフのデータ等の証拠を確保できれば,会社に対して,未払残業代を請求することができます。未払残業代でお困りの場合は,ぜひお気軽にご相談ください。