グレード降格と減給は人事権の濫用として無効とした事例

 Chubb損害保険株式会社に勤務する労働者のジョブグレード降格に伴う減給が争点となり,労働者が勝訴した事件(東京地裁平成29年5月31日判決・Chubb損保事件)を紹介します。

 

 原告は,具体的な理由を告げられることなく,数理部から内部監査部へ異動になった際に,ジョブグレードが7Sから6Sに引き下げられて,手当が2万5000円に減額されました。また,原告は,上司からハラスメントを受け,また,PIPPerformance Improvement Plan:業務改善プログラム)を実施させられて体調を崩して休職しました。休職後に職場に復帰しましたが,リハビリ勤務をしていたところ,リハビリ勤務期間の給与が1割カットされました。

 

 判決では,「本件降格は,労働者にとって最も重要な労働条件である賃金を不利益に変更するものであるから,労働者の個別の同意若しくは就業規則や賃金規程上の明確な根拠が必要というべきであり,かかる就業規則等の明確な根拠規定もなく,労働者の個別の同意もないままに,使用者が一方的行為により従業員のグレードを引き下げること(降格)は,人事権を濫用するものとして許されない」と示されました。

 

 被告は,パワーポイントの資料を就業規則と主張したようですが,就業規則とは認められませんでした。また,原告が降格について異議を述べたことから,真意に基づく同意がないとされました。そのため,ジョブグレードの引き下げは人事権の濫用にあたると認定されました。

 

 また,判決は,リハビリ勤務の一部の期間について,基本給の1割減額を継続することは,被告の人事上の裁量権を逸脱した違法な措置であるとしました。

 

 労働者は,降格されて給料が減額された場合,その措置に納得がいかないのであれば,はっきりと異議を述べて,安易に給料減額に同意してはならないのです。会社の降格を争う際に,参考になる判例です。

 

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