座談会~労働審判制度の現状と課題~

 日本弁護士連合会が毎月1回発行している弁護士の定期雑誌である「自由と正義」の2017年2月号に,労働審判制度施行からの10年と今後の展望についての特集がされており,労働事件で活躍されている弁護士6名の先生方が,労働審判について,運用の問題点や具体的なスキルについて熱く語る座談会が掲載されているので,紹介します。

 

 

 労働相談を受けて,この事件は裁判手続で解決する必要があると判断した場合,次に,この事件を解決するために,どの裁判手続がふさわしいかを考えます。通常訴訟を提起するか,労働審判を申立てるか,仮処分の申立をするかを検討します。

 

 労働審判は,どのような事件にふさわしいかについて,京都弁護士会の中村和雄先生は,「判決では微妙だとか,双方で言い分がかなり対立するかもしれないけれども,何となくある程度のところでは落ち着く解決ができそうな,和解的な要素が強い事件は,労働審判にふさわしいと思っています。」と座談会で発言されています。労働事件の類型ではなく,クライアントの話をよく聞き,事案を分析した上で,相手方の反論を予測し,和解の見込みがある場合に,労働審判を選択するべきことがポイントになります。

 

 また,福井県弁護士会の海道宏実先生は,労働審判員から,申立書の冒頭に事案の要旨を書いた方が事案を把握するのに助かることや,申立書に時系列を添付してもらえるとありがたいというアドバイスをもらい,そのように実践されたようです。労働審判員は,お忙しい方がほとんどだと思いますので,少しでも労働審判員に当方の主張を短時間で理解してもらうためには,申立書に事案の要旨を記載したり,時系列を添付する等の工夫をすることが必要です。

 

 労働事件に造詣の深い6名の弁護士による座談会から,労働審判に求められる知識やスキルを学ぶことができました。