航空自衛隊自衛官セクハラ事件

航空自衛隊の非常勤隊員として採用された原告が,庶務係長をしていた被告からセクハラ行為を継続的に受けたことによりPTSDを発症したとして,被告に対し,1100万円の損害賠償を請求した事件で,東京高裁平成29年4月12日判決において,慰謝料800万円が認容された事件を紹介します(労働判例1162号・9頁)。
 

被告は,原告に対して,非常勤隊員採用試験への人事上の影響力を示唆して,性的関係を強要しました。原告は,母子家庭であり,自らの収入だけを頼りとする生活を送っており,雇用と収入の確保が重要であったため,人事に関する影響力を誇示する被告の求めに応じざるをえませんでした。

 

判決では,被告のセクハラ行為によって,原告は,精神状態を悪化させ,生活保護を受けざるをえない状態に追い込まれ,被告に関係解消を訴えても無視されたことが悪質であると判断され,慰謝料としては高額な800万円が認められました。

 

職場の上司が部下の女性に対して,人事上の影響力を示唆することで性的関係を求めたという悪質なセクハラ行為で,高額な慰謝料が認められた点に特徴があります。セクハラは密室で行われるので,立証が難しいのですが,本件では,詳細にセクハラ行為が認定されているので,事実認定の参考になります。