過労死ラインを超える36協定の実態

朝日新聞の調査によると,東証一部上場企業の225社の過半数である125社が,過労死ラインの月80時間以上まで労働者を残業させられる36協定を締結していたようです。

 

http://www.asahi.com/articles/DA3S13258073.html

 

まず,労働基準法32条において,会社は,労働者を1日8時間を超えて労働させてはならないと規定されています。

 

ところが,労働基準法36条において,会社は,労働組合や労働者の過半数代表者との間で,労使協定を締結すれば,その労使協定で定めた労働時間まで,労働者を残業させることができます。この労使協定を36協定といいます。会社は,36協定がなければ,労働者に残業をさせることができません。

 

他方,1ヶ月の残業時間が80時間を超えると,人間は,くも膜下出血や心筋梗塞といった脳・心臓疾患を発症しやすくなりますので,1ヶ月80時間の残業時間が過労死ラインと言われています。

 

日本の大手企業の半数以上の会社において,36協定の残業時間の上限が1ヶ月80時間を超えていたことには驚きました。36協定の残業時間の上限まで残業させても,企業は労働基準法違反で処罰されないので,長時間の残業が横行して,過労死が発生する温床になっていると思われます。

 

まずは,過労死ライン以下に残業時間の上限規制を導入すべきです。あわせて,会社に対する労働時間の把握義務を徹底すべきです。客観的なデータで労働時間の把握がされていないと,会社は,労働者に労働時間の過少申告をさせて,長時間労働が隠蔽されるおそれがあります。

 

また,36協定の締結は,労働者にとって義務ではないので,会社から締結をもちかけられても拒否するか,または,労働者に有利な条件を盛り込ませる等の対抗処置を行うことをお勧めします。会社は,36協定を締結しないと,残業させられないので,労働者側にイニシアチブがあるのです。

 

一度,ご自身の会社の36協定をチェックして,残業時間の上限がどうなっているのかを確認してみてください。