入社後1年未満にもかかわらず,勤務態度不良の解雇が有効とされた事例

入社後1年未満にもかかわらず,会社から勤務成績と勤務態度不良等を理由に解雇された労働者が,解雇無効を争った裁判で,解雇が有効とされた日本クレコア事件(東京地裁平成29年4月19日判決・労働判例1166号82頁)を紹介します。

 

会社から解雇されると,労働者は,給料という生活の糧を失い,家族を養うことが困難になる等の多大な不利益を被ることから,労働契約法16条において,解雇は厳格に規制されています。会社は,簡単に労働者をくびにできないのです。

 

解雇事件で実務上多いのが,能力不足,適性欠如,勤務成績不良等を理由とする解雇です。就業規則にはよく,「業務能力が著しく劣り,または勤務成績が著しく不良のとき」には解雇できると記載されています。このような能力不足の解雇の場合,対象となる労働者が本当に,「勤務成績が著しく不良」だったのかが争われますが,労働者の能力は個人によって異なりますし,会社が労働者に求める水準もまちまちですので,統一的な判断基準を作成するのが困難で,事案に応じてケースバイケースで判断するしかありません。

 

能力不足の解雇が有効になるのは,能力不足の程度が著しい場合に限られ,教育訓練や本人の能力に見合った配置転換をして解雇を回避するための措置が尽くされた場合です。もっとも,特定のポストや職務のために上級管理職などとして中途採用され,賃金等の労働条件が優遇されている場合には,能力不足の程度は,労働契約で合意された能力や地位にふさわしいものであったかの観点から緩やかに判断される傾向にあります。

 

結局,どのような場合に,能力不足の解雇が有効になるのかについて,労働者も会社も予測が立てにくいのが現状で,労働者としては,争うべきかどうかで迷うことがあります。

 

本件事件では,原告が年間基本給850万円,変動セールスコミッション127万5000円という高額な給料を受けていたのですが,上司を無視して反抗的な態度をとり続け,会社から反抗的な態度を改善するように何度も警告を受けていたのですが,それでも改善しなかったことから,解雇は有効と判断されました。

 

労働者としては,上司の指示・指導には素直に耳を傾けて,会社から警告を受けた場合には,自己の勤務態度を振り返り,改善の意欲を示す方が,解雇されるリスクを軽減できると言えそうです。