第三者に告発文を送った営業社員に対する解雇は有効か

ある不動産会社の代表取締役の息子が,レンタルビデオ店において不正に入手した他人名義の会員カードを使用して,DVDを借りて,これらを騙し取ったという詐欺罪で逮捕されてしまい,その逮捕されたことが新聞報道されました。この息子は,その会社の専務取締役でした。

 

原告は,もともと被告会社からの待遇に不満を抱いていたところ,この報道を知って落胆し,代表取締役が専務取締役の処分や顧客対応について説明を行わなかったので,不満をつのらせました。そこで,原告は,代表取締役が理事を務めていた公益財団法人に対して,代表取締役の息子が逮捕された状況から,代表取締役が理事の役職に就いていることは好ましくなく,適切な対応がない場合には,正式に告発するという内容の内部告発文書を送りました。

 

この内部告発文書を原告が送信したことが発覚し,原告は,被告会社から懲戒解雇され,強要罪と名誉毀損罪で告発されました。もっとも,原告は,刑事事件について不起訴となりました。そして,原告は,懲戒解雇が無効であるとして,提訴しました。

 

争点は,①刑事告訴を理由として,労働者を懲戒解雇することの有効性,②企業の信用を毀損したことを理由として,労働者を懲戒解雇することの有効性,③企業の信用を毀損したことを理由として,労働者を普通解雇することの有効性の3点です。

 

広島高裁平成29年7月14日判決(A不動産事件・労働判例1170号5頁)は,まず①の争点について,本件懲戒事由である「刑事上の罰に問われた」ときとは,起訴されて,懲役や罰金等の刑罰に問われた場合をいい,原告は不起訴となったことから,この懲戒事由には該当しないとされました。

 

次に,②の争点について,本件懲戒事由である「会社の信用を著しく損なう行為のあったとき」とは,その行為によって,会社の信用が害され,実際に重大な損害が生じたか,少なくとも重大な損害が生じる蓋然性が高度であった場合をいい,原告の信用毀損によって,被告会社に実際に重大な損害が生じていなかったので,原告は,この懲戒事由には該当しないとされました。

 

最後に,③の争点について,原告が自分の待遇や代表取締役の刑事事件への対応に不満をつのらせて,外部の団体に内部告発文書を送信したことは,著しく相当性を欠き,これによって,原告と被告会社との信頼関係の破壊の程度は大きいとして,普通解雇は,有効とされました。

 

内部告発の際には,告発内容が真実であっても,その目的に公益性が必要ですし,企業内部での自浄努力を試みる余地があり,いきなり外部団体へ告発するのはリスクがあります。内部告発をする前に,弁護士へ相談して,内部告発による不利益を回避するアドバイスをもらうことをおすすめします。本件判決では,懲戒解雇について,懲戒事由を厳格に解釈して,労働者を勝たせましたが,普通解雇で労働者は負けてしまいました。懲戒解雇の事案では,会社が普通解雇をしてくることにも備える必要があります。

 

解雇事件でお困りの方は,弁護士法人金沢合同法律事務所へぜひご相談ください

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