労働者が会社の情報を勝手に持ち出すことは違法なのか

労働者が,会社に対して,裁判手続において,解雇が無効であることや,残業代を請求するには,労働者が自分で証拠を集めて,裁判所に提出しなければなりません(裁判所は,証拠を集めてくれません)。

 

労働事件の場合,労働条件を証明するための就業規則や,労働時間を証明するためのタイムカードや日報などは,会社が保管しているので,それらの証拠を,労働者がどうやって入手するのかを考える必要があります。

 

労働者が会社を辞めていないのであれば,弁護士に相談して,必要となる証拠を教えてもらい,会社にある証拠をこっそりコピーして集めれば,問題はありません。

 

もっとも,労働者が裁判で証拠に使うために持ち出した資料について,会社が裁判手続中に,「機密情報を社外に持ち出したので守秘義務(秘密を守る義務)である」や「個人情報が含まれており社外に無断で持ち出す行為は窃盗である」などいって,刑事告訴または損害賠償請求をするといっておどしてくることがあります。

 

それでは,労働者が裁判で証拠として使用することだけを目的として,会社の資料を持ち出して,弁護士に提出して,裁判の証拠として用いることは違法なのでしょうか。

 

結論としては,違法になりません。これからその理由を説明します。

 

まず,労働契約法3条4項により,労働者は,在職期間中,知りえた企業情報について守秘義務を負います。

 

しかし,労働者が漏らしてはならない秘密とは,まだ広く知られていない情報であって,これが会社の外に漏れると,顧客からの信用などを含む会社の正当な利益を害するもの,に限定されます。

 

そのため,就業規則やタイムカードなどの資料は,守秘義務の対象となる秘密には該当しないため,会社の外に持ち出しても問題はありません。

 

次に,労働者が守秘義務を負う情報を,弁護士に相談するために,会社の許可なく,弁護士に提示することの是非について検討します。

 

弁護士は,弁護士法23条によって,職務上知りえた秘密を守る守秘義務を負っています。弁護士には,秘密を守る義務があるので,クライアントは,安心して弁護士に相談することができるのです。

 

労働者が,守秘義務を負う弁護士に,会社の秘密を話しても,弁護士から外部に秘密が漏れる心配はありません。

 

また,労働者が自分の権利を実現するためには,プロである弁護士に秘密である証拠をみてもらわないと何もできません。

 

そのため,弁護士に相談するために,会社の秘密情報を弁護士に提示しても違法にはなりません。

 

なお,労働者は,在職中には守秘義務を負いますが,退職後も守秘義務を負うことを誓約する文書などを会社に提出していない限り,退職後には守秘義務を負うことはないとされています。

 

以上まとめると,労働者は,自分の権利を実現するために,会社の秘密情報を弁護士に提示しても守秘義務違反にはなりませんので,裁判で必要になりそうな会社の情報を自分で集めるようにしましょう。

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