高度プロフェッショナル制度の成立に抗う

平成30年6月29日,残念ながら,

高度プロフェッショナル制度(通称,「高プロ」といいます)

を含む働き方改革関連法案が参議院で

可決されて,成立してしまいました。

 

 

これまで,何度もブログで,

高プロの危険性やおかしな点を指摘してきましたが,

抗議の意味を込めて,改めて,

高プロの問題点について解説します。

 

 

まず一番の問題点は,高プロが適用されれば,

労働時間の規制がはずされるので,

残業代ゼロで24時間働かせることが合法になり,

長時間労働が蔓延して,過労死を助長させます。

 

 

 

 

高プロに賛成する立場の人は,高プロを導入すれば,

労働生産性が向上すると主張しています。

 

 

しかし,高プロによって,長時間労働が蔓延することで,

かえって労働生産性がおちる結果になると考えられます。

 

 

また,先日のブログに記載しましたが,

労働者は,当然,高プロを求めていないのですが,

経営側にも高プロのニーズがあまりありません。

 

 

6月26日の参院厚生労働委員会において,安倍首相は,

適用を望む企業や従業員が多いから導入するのではない

と答弁をしました。

 

 

労働者側にも経営者側にもニーズがないのに,

なぜ高プロを導入するのか,全く理解できません。

 

 

必要がない上に,過労死を助長するマイナスが多いのであるから,

高プロは当然に廃案にすべきだったのです。

 

 

また,高プロの適用対象となる職種ですが,

高度の専門的知識を必要とする業務で,

具体的には,金融商品の開発業務やアナリストの業務,

コンサルタント業務,研究開発業務などが

対象になると言われていますが,

まだ明確には定まっていません。

 

 

高プロの対象業務については,省令に委ねられています

 

 

これは何を意味するかというと,厚生労働省が,

国会の審議を経ることなく,高プロの対象業務を

拡大することができてしまうのです。

 

 

これまで,専門業務型裁量労働制や労働者派遣

の対象業務が省令で拡大されてきた前例がありますから,

高プロも同じように対象業務が拡大されることが予想されます。

 

 

小さく産んで大きく育てるというものです。

 

 

 

労働者は,知らないうちに,自分の仕事が省令によって

高プロの対象業務に含まれていて,

会社から高プロの導入を求められるリスクがあるのです。

 

 

高プロが成立してしまいましたが,法案審議の中で,

様々な欠陥が明らかになったので,改めて,抗議し,

高プロを速やかに廃案にすべきと考えます。

 

定年退職後に30~40%も賃金が減額されても合法なのか?

正社員と非正規雇用労働者との労働条件の格差が,

労働契約法20条に違反するかが争われている

事件が増えています。

 

 

労働契約法20条では,

正社員と非正規雇用の労働者の労働条件の違いが,

「労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,

当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」,

不合理であってはならないと定められています。

 

 

 

 

 

仕事内容が同じなのに,正社員ではないというだけで,

非正規雇用労働者の賃金が低いのはおかしいと考える

非正規雇用労働者が増えているのかもしれません。

 

 

本日は,定年後再雇用された労働者が,

定年前の賃金から30~40%ほど減額されたことについて,

労働契約法20条に違反しているとして,

定年前との差額賃金を請求した学究社事件

(東京地裁立川支部平成30年1月29日判決・

労働判例1176号・5頁)を紹介します。

 

 

原告の労働者は,被告が経営している進学塾の

正社員の講師をしていて,定年退職しました。

 

 

 

原告が定年退職した後,被告との間で,再雇用契約について,

労働条件の交渉が行われましたが,

被告から定年退職後の賃金が定年退職前の賃金の

30~40%削減された額になるとの労働条件を提示されて,

原告は,再雇用契約書にサインをしませんでしたが,

再雇用後の労働の対価として,定年退職前の賃金から

30~40%削減された金額が支給されていました。

 

 

原告は,定年退職の前後で,

仕事内容が変わっていないのに,

賃金が30~40%減額されたことが不合理であるとして,

労働契約法20条違反を訴えましたが,

判決では,労働契約法20条違反は認められませんでした。

 

 

労働契約法20条違反が認められるためには,

定年退職の前と後の仕事内容や責任がほぼ同じ

であることが前提になります。

 

 

本件では,原告の定年退職の前と後の仕事内容や

責任が異なると判断されたのです。

 

 

具体的には,原告は,定年退職前には,授業以外にも,

生徒・保護者への対応や研修が義務付けられていたのに対して,

定年退職後には,基本的には授業のみを行い,

生徒・保護者への対応は上司からの指示がある

例外的な場合に限られていました。

 

 

そのため,定年退職の前後で,

仕事の内容や責任の程度に差があり,また,

定年退職後に賃金が下がることは一般的に

どの会社でも実施されていることでもあり,

不合理ではないとして,労働契約法20条違反

ではないと判断されました。

 

 

とはいえ,定年退職後に賃金が30~40%も

減額されたのでは,労働者のモチベーションが下がりますし,

なかなか納得いかないはずです。

 

 

定年退職後に大幅な賃金減額がされるケースでは,

どこまでの減額幅なら許容されるのかが,

まだまだ不明ですので,今後の労働契約法20条

に関する裁判例の動向をチェックしていく必要があります。

医療現場の働き方改革

現在,働き方改革関連法案が参議院で審議されており,

今週が山場になる見通しです。

 

 

働き方改革が世の中で叫ばれていることから,

新潟市民病院における働き方改革について紹介します。

 

 

平成28年1月,新潟市民病院の女性研修医が自殺しました。

 

 

自殺した女性研修医は,月平均の時間外労働が約187時間,

最も多い月では251時間に達していました。

 

 

過労自殺の場合,精神疾患が発症する前6ヶ月間

の時間外労働が100時間を超えると,

強い心理的負荷があったとして,労災認定されます。

 

 

 

 

自殺した女性研修医は,100時間を大幅に超える

時間外労働をしていたことから,過労自殺が労災認定

されたのだと考えられます。

 

 

この過労自殺の労災認定を受けて,

新潟市民病院は,平成29年6月に

緊急対応宣言を発表しました。

 

 

緊急対応宣言には,市民に対して,

休日や夜間に緊急ではない受診を控えてほしいことや,

軽症だと思うけれども心配な場合にまずは

電話で相談してほしいことが記載されています。

 

 

また,外来受診について,一般外来の新規患者の場合,

まずはかかりつけ医を受診して,それでも治らないときに

紹介状をもってきてもらうという対応に変わりました。

 

 

その結果,救急搬送が前年と比べて6%減少し,

周辺の病院が協力して,救急患者を受け入れてくれたようです。

 

 

 

また,電子カルテの新システムや

病院の出入口で入退館を自働で記録することで

医師の労働時間を把握するようになりました。

 

 

平成29年1月に,厚生労働省のガイドラインにおいて,

会社は,労働者の労働時間を適正に把握する責務があるとされました。

 

 

具体的には,会社は,タイムカードやパソコンの使用時間

の記録などの客観的な記録を確認して,労働者の労働日ごとの

始業時刻と終業時刻を適正に記録しなければなりません。

 

 

会社が労働者の労働時間を適正に把握すれば,

労働者が働き過ぎの状態であるかが分かりますので,

会社は,労働者に対して,労働時間を少なくするように

指導することができます。

 

 

労働者自身も,労働時間を把握していないと,

ついつい働き過ぎてしまい,

健康を害するおそれがあります。

 

 

労働者の健康を守るためにも,労働時間を把握することは重要です。

 

 

医師の労働時間を病院が把握することで,

働き過ぎの医師に休むように指導することができるようになります。

 

 

さらに,新潟市民病院では,

複数の医師で患者を担当する複数主治医制を導入したようです。

 

 

患者を複数で担当することで,

緊急時の対応を一人の医師だけでなく,

他の医師も対応できることで,

休みを確保しやすくなるのだと思います。

 

 

医師が働き過ぎで健康を害せば,

医師の治療を求める患者にとって,とてもデメリットです。

 

 

 

 

医師が無理なく適正に働けるように,

私達は,すぐに大病院を受診するのではなく,

まずはかかりつけ医を受診する,

平日の朝まで我慢できるのであれば,

休日や夜間の受診を控えるなど,

できる範囲の協力をしていくべきだと考えます。

 

女性事務職員に対する転居を伴う配転命令が違法とされた事例

会社から,遠くの地方へ転勤を命じられたとしたら,

これを受け入れますか,それとも拒否しますか?

 

 

総合職の労働者であれば,いつ会社から,

転勤を命じられるか分かりません。

 

 

介護を必要としている親がいたり,

まだ小さい子供がいると,家族を残して

単身赴任するのはためらわれます。

 

 

 

 

今回は,会社から受け入れがたい

人事異動をさせられたときに,労働者が

どのように対応すべきかについての

ヒントとなる裁判例を紹介します。

 

 

全国に営業拠点のある一般財団法人の

複数名の女性の事務職員が,それぞれ,

東京から仙台,

横浜から金沢,

さいたまから北海道

へ配置転換する命令を受けました。

 

 

 

そこで,配転命令を受けた女性事務職員らが,

本件配転命令は違法であるとして,

精神的苦痛を受けたことの慰謝料を求める

損害賠償請求をしました

(東京地裁平成30年2月26日判決・

一般財団法人あんしん財団事件・

労働判例1177号29頁)。

 

 

原告の女性事務職員らは,独身であったものの,

それぞれ,体が不自由であったり,

介護を必要とする家族がいました。

 

 

また,原告の女性事務職員らは,

本件配転命令を受けるまでは,

転居を伴う広域の異動をしたことがなく,

被告の一般財団法人においても,

女性職員に対して転居を伴う

配転命令はありませんでした。

 

 

そのため,原告の女性事務職員らが独身であろうとも,

介護などを必要とする家族がいることや,

これまで転居を伴う配転命令がなかったことを考慮すると,

原告の女性事務職員らに対する転居を伴う広域の異動は,

相当程度に大きな負担を生じさせます。

 

 

そうであるならば,被告の一般財団法人としては,

本件配転命令をするにあたり,

原告の女性事務職員らの個別具体的な状況に十分に配慮して,

事前に希望を聞いたうえで,

本件配転命令の業務上の必要性や目的を丁寧に説明して,

その理解を得るように努力するべきであったのに,

これをしませんでした。

 

 

その結果,本件配転命令は,

人事権の濫用にあたり,違法であると判断されました。

 

 

他方,支局長や課長といった男性職員については,

支援を必要とする家族がいても,職責が高いため,

業務上の必要性が高くなり,結果として

家庭生活上の不利益を受け入れなければならないとして,

支局長と課長に対する配転命令は

違法ではないと判断されました。

 

 

このように,これまで広域の人事異動がされていなかった職種や,

実際に人事異動の経験がない労働者に対する配転命令については,

慎重に判断される傾向にあります。

 

 

また,支援を必要とする家族の状況

なども重要な判断要素となります。

 

 

今後は,介護離職が問題になりそうですので,

納得いかない配転命令を受けた場合には,

過去の人事異動の状況を把握した上で,

家族の状況を会社に丁寧に説明して,

配転命令には応じがたいことを伝えてみましょう。

 

 

それでも,会社が取り合ってくれなかった場合には,

専門家へご相談ください。

結婚前に夫婦のトラブルを回避するための結婚契約書・婚前契約書

読者の皆様は,結婚契約書または婚前契約書をご存知でしょうか。

 

 

結婚契約書または婚前契約書とは,結婚前に,

夫婦の財産のことや夫婦間でトラブルが発生した場合

の対処方法などを,結婚する相手との間で定めておくものです。

 

 

 

 

具体的にどのようなことを契約書に記載するのかといいますと,

 

 

①結婚後の生活費の負担,家計の管理,

結婚前から保有する財産の帰属など結婚後のお金に関すること

 

 

②不倫を予防するために,不倫があった場合には,

いくらくらいの慰謝料を支払うことや,

離婚の協議を開始するといったように,

夫婦間のトラブル対処方法

 

 

③家事や育児の分担に関すること

 

 

④親族や友人との付き合い方

 

 

など,さまざまなことを取り決めることができます。

 

 

もっとも,③家事や育児,④親族や友人との付き合い方については,

取り決めをおこなっても,相手に強制することはできませんので,

あくまで努力義務になります。

 

 

そこで,実務上重要になるのが,

①お金に関すること,②夫婦間のトラブル対処方法です。

 

 

①お金に関することについては,

夫と妻のどちらが家計を管理するのか,

家計にいくらいれるのか,

といったことを結婚前に決めておくことで,

家計の管理が円滑になります。

 

 

 

 

その他に,相手に給料明細を開示することも決めておけば,

相手の収入がいくらなのかが分かり,

不測の事態に対処しやすくなります。

 

 

夫のお小遣いについて,ガチガチに決めてしまうと,

夫の交流の機会が減少して,

夫の不満が増える要因になりますので,

あえて契約書には書かずに,

その時々の話し合いで決めた方がいいと考えます。

 

 

夫は,ときには後輩におごらないといけないとき

がありますので,ある程度のお小遣いは必要なのです。

 

 

さて,結婚契約書または婚前契約書が威力を発揮するのは,

②不倫などのトラブルが発生したときです。

 

 

 

例えば,結婚契約書または婚前契約書に,

不倫をした場合には,慰謝料300万円を支払う

と取り決めをしていた場合,いざ,不倫が発生した場合,

慰謝料の金額をいくらにするのかでもめなくて済みます。

 

 

不倫の慰謝料は,

①結婚の長さ

②不倫の長,

③不倫当時の夫婦間の関係

④不倫に至る経緯

などの事情を総合考慮して,最終的には裁判所が決めます。

 

 

不倫の慰謝料は,おおむね100~200万円くらいなのですが,

最終的には裁判所が決めますので,実際にいくらになるかは,

裁判をしてみないと分からないのです。

 

 

結婚する前に,不倫をした場合の慰謝料の金額を決めておけば,

結婚契約書または婚前契約書が重要な証拠となって,

相手に対して,スムーズに慰謝料を請求できます。

 

 

さらに,相場より高額な300万円ほどの慰謝料金額

を設定ておけば,不倫の予防になります。

 

 

とはいえ,結婚前に,不倫した場合にはいくら支払う

などについて話し合うのは,相手を信頼していない

ようにも捉えられてしまい,結婚前に交際が

破局するリスクがあると考えられます。

 

 

そのため,結婚契約書または婚前契約書は,

それほど作成されていませんでしたが,

今は3組に1組が離婚する時代ですので,

結婚前の幸せな時期に,

結婚契約書または婚前契約書を作成するかは別にして,

2人の将来のことを真剣に話し合うのは重要なことです。

 

 

 

結婚後には,様々な利害対立が生じていて,

夫婦間で決めごとをしにくいので,

結婚前に,自分と相手を見つめ直す機会があった方がいいと考えます。

「いい質問」が人を動かす

コーチングの勉強会に向けて,

質問に関する本を探していたところ,

質問に関する素晴らしい本を発見したので,

紹介させていただきます。

 

 

気鋭の弁護士谷原誠先生が書かれた

『いい質問』が人を動かす」という本です。

 

 

 

 

弁護士は,法律相談,交渉,証人尋問などで,

人に質問をして,人を動かすことを日常的に行っています。

 

 

谷原先生は,長年の弁護士経験で培われた

質問の力について,次のようにおっしゃっています。

 

 

人は,「質問をされると,①思考し,②答えてしまう」のです。

 

 

この質問による「①思考」と「②答え」の強制力

という2つの機能により,

1 思いのまま情報を得る

2 人に好かれる

3 人をその気にさせる

4 人を育てる

5 議論に強くなる

6 自分をコントロールする

という6つの力を身に着けれるようになるのです。

 

 

 

 

この6つの力の中から3点についてアウトプットします。

 

 

まずは,人をその気にさせる2大原則です。

 

 

人は,自尊心を満足させるか,

あるいは自尊心が傷つくのを避けるために

その気になり,動きます。

 

 

そのため,人を動かすときには,

相手の自尊心を満足させるような質問をするか,

自尊心が傷つくのを避けたくなるような質問をすればいいのです。

 

 

その他に,人が動くには,

まず感情が動いて欲求が発生して,

その後理性でその行動を正当化する

というプロセスをたどります。

 

 

そのため,人を動かすには,

まず感情を動かす質問をして,

その後に理性を動かす質問をすれば,

相手はその気になります。

 

 

テレビの通販番組は,このプロセスを忠実に守っています。

 

 

 

 

最初に,商品のメリットを打ち出して,

消費者の欲望をかきたてた後に,

分割払いや金利ゼロといった理性に関する情報を提供し,

消費者は,購入に至るのです。

 

 

次に,人を育てる質問のプロセスにおいて,

①相手の意見を肯定し,

②相手の立場に立ち,どうすれば相手が望む結果が得られるかを考え,

③相手に答えを出させる,

ということがポイントになります。

 

 

①相手には自尊心があり,

自分の意見を持っているので,

それをまず肯定する必要があります。

 

 

②相手は,自分のことに関心がありますが,

私のことに関心がないことが多いので,

相手の立場に立ってともに考えることが必要になります。

 

 

相手の立場に立つ際に,

ポジティブクエッションが効果を発揮します。

 

 

「なんでお前はこんなことができないんだ?」

というネガティブな質問を,

「どうしたらできるようになる?」

というポジティブな質問に言い換えるのです。

 

 

ポジティブな質問をすれば,相手は,

ポジティブな考えをすることができるようになるのです。

 

 

③人は,他人から押し付けられた意見

に縛られるのは苦痛ですが,

自分で出した結論には喜んで従うので,

相手に自分で答えを出させるのです。

 

 

最後に,自分をコントロール質問において,

7つのフィードバッククエッションというものがあります。

 

 

 1 よくできた点は何か

 2 それはなぜうまくいったのか

 3 今後も続けた方がよいことは何か

 4 うまくいかなかった点は何か

 5 それはなぜうまくいかなかったのか

 6 今後やめた方がよいことは何か

 7 今後改善すべき点はどこか

 

日常の様々なことに対して,

7つのフィードバッククエッションを行うことで,

その全てにおいて,向上し続けて,

自己成長することができるのです。

 

 

他人と自分に的確な質問をすれば,

人生をより良くできることに気づかせてくれる

素晴らしい一冊です。

妻の病気を理由に人事異動を拒否できるのか

ある日突然,会社から県外の別会社への

出向を命じれられてしまいました。

 

 

 

共働きの妻がいて,小さい子供もいます。

 

 

また,両親と同居していて,両親の介護もしないといけない。

 

 

家族のことを考えると県外への転勤は

とても受け入れがたいけれども,

会社の業務命令に逆らうとどうなるのか,とても不安です。

 

 

さて,このような場合,労働者はどうすればいいのでしょうか。

 

 

このような人事異動のトラブルについて,

労働者に有利な判決がだされたので紹介します。

 

 

妻の病気を理由に人事異動を拒否した

労働者に対する懲戒解雇が無効とされた

大阪地裁平成30年3月7日判決です。

(国立研究開発法人国立循環器研究センター事件

・労働判例1177号5頁)

 

 

原告の労働者は,被告である国立循環器研究センター

に勤務していたところ,独立行政法人国立病院機構

の傘下にある病院へ異動するように命令されました。

 

 

原告の妻は,強迫性障害,パニック障害,うつ状態であり,

原告の支援がなければ,抑うつ状態が悪化して,

自殺にいたる危険がありました。

 

 

そこで,原告は,この人事異動命令を拒否したところ,

業務命令違反として懲戒解雇されました。

 

 

原告は,この懲戒解雇が無効であるとして,裁判を起こしました。

 

 

裁判では,国立病院機構への異動が

転籍出向であると判断されました。

 

 

出向には,在籍出向と転籍出向があります。

 

 

在籍出向は,もとの雇用先の会社の従業員

としての地位を残したまま,別会社で長期間働きますが,

出向期間が経過すれば,もとの雇用先の会社に

戻ってくることができる人事異動です

(一般的な出向のことです)。

 

 

他方,転籍出向は,もとの雇用先の会社との

労働契約を終了させて,別会社との間で新たに

労働契約を結ぶ人事異動で,もとの雇用先の会社に

戻ってくることができません

(一般的な転籍のことです)。

 

 

本件の人事異動は,被告である国立循環器研究センター

との労働契約を解消して,国立病院機構と新たに労

働契約を締結することになっているので,

転籍出向であると判断されたのです。

 

 

転籍出向が有効になるためには,

労働者の個別の同意が必要になります。

 

 

転籍出向は,もとの雇用先の会社との労働契約上

の権利を放棄するという重大な効果を伴うものであり,

会社が一方的に行うべきではなく,

労働者自身の意思が尊重される必要があるからです。

 

 

そして,本件では,原告の個別の同意がないため,

転籍出向を命じる人事異動は無効となります。

 

 

さらに,原告の妻の病状が相当深刻であり,

原告の妻は,本件人事異動を聞いてパニックになり,

自殺未遂を起こしており,原告の不利益が大きすぎるため,

転籍出向を命じる人事異動は

権限を濫用したものであると判断されました。

 

 

人事異動が無効になり,その結果,懲戒解雇も無効になりました。

 

 

会社には,人事について広い裁量が認められていますが,

人事異動は,労働者の生活を大幅に変えるものであり,

労働者の子育てや介護の必要性も考慮されなければなりません。

 

 

1億総活躍社会ということで,

様々な立場の人達が働くのであれば,

労働者の子育てや介護の観点から,

人事異動の効力を見直す必要がでてくると考えられます。

 

 

 

半沢直樹のように,人事異動を恐れることなく

自分を貫き通すことは難しいかもしれませんが,

子育てや介護の観点から,人事異動に納得いかないときには,

専門家へご相談することをおすすめします。

耳で学ぶ

今日は,私が実践している耳で学ぶ

勉強法について紹介させていただきます。

 

 

 

ランチェスター経営の竹田陽一先生は,

利益を生み出すのは顧客であり,

顧客に対応する時間が最も大事であり,

それ以外の時間をなるべく少なくすべきで,

移動時間からは何もうまれないので,

移動時間をなるべく少なくするべきとおっしゃっています。

 

 

確かに,仕事中に車を運転していたり,

電車に乗っている時間,単に乗り物に乗っているだけでは,

その時間の労働生産性はゼロであり,

移動時間はムダな時間となるので,

移動時間をなるべく少なくしたほうが利益があがります。

 

 

一方で,弁護士は,支部の裁判所で裁判があったり,

田舎にある警察署に身体拘束されている被疑者の接見にいったり,

自治体の法律相談にいったりと,

移動することが多い仕事です。

 

 

以前は,この車の移動時間にラジオを聞いていましたが,

自分にとって必要のない情報もたくさんあり,

自分の成長のためには,あまり効率的ではないと思っていました。

 

 

 

この移動時間を有効活用できないかと考えた結果,最近は,

車の中でCDやDVDの音声教材,

スマートフォンのアプリを利用して,

耳で勉強することで,ムダな移動時間を

貴重な勉強時間に変えることができました。

 

 

耳で勉強することについては,勝間和代氏の

無理なく続けられる年収10倍アップ勉強法」の本に,

具体的なノウハウが記載されていたため,

それを参考にさせていただきました。

 

 

 

弁護士は,法律の勉強をよくするのですが,

事務所を経営するための経営の勉強をあまりしていません。

 

 

事務所経営は重要なのですが,弁護士は,

日々の事件処理に追われていて,

なかなか経営の勉強をすることができないからです。

 

 

そこで,私は,車で移動しているときに,

音声教材を利用して耳で経営の勉強をしています。

 

 

具体的には,竹田陽一先生のCDを購入して,

ランチェスター経営を学び,

株式会社ALMACREATIONSの「実学MBA

というアプリで,神田昌典先生の著名人に対する

インタビューから最新のビジネス情報やマーケティングを学び,

精神科医の樺沢紫苑先生の

Web心理塾」と「樺沢塾精神科医の仕事術

という動画サイトで,労働生産性をあげるための

仕事術を学んでいます。

 

 

車を運転しているとき,耳はあいているので,

耳から知識をインプットすることで,新たな気づきがえられて,

耳で学んだ知識をアウトプットすることで智恵にかえることができて,

自己成長を加速させることができます。

 

 

他にも,ランニングをしているときに,

完全ワイヤレスのヘッドホンをつて,

運動しながら耳で勉強しています。

 

 

 

完全ワイヤレスのヘッドホンは,

線がからまなくて収納しやすいのですが,

ランニングをしているときに,

耳からイヤホンが外れそうになり,

それが気になってしまうのがやや難点です。

 

 

耳で勉強すれば,時間を効率よく活用できて,

自己成長できますので,とてもおすすめです。

経営者側にも高プロのニーズがない

通常国会の会期が延期されて,参議院で,

働き方改革関連法案の審議が継続されています。

 

 

ブログで何度も指摘してきましたが,働き方改革関連法案の中で,

高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)は,

高年収の一部専門職に対して労働時間の規制をはずして,

残業代ゼロで24時間働かせることが可能になってしまうので,

過労死を助長する危険な制度です。

 

 

今朝の朝日新聞の記事によると,

朝日新聞社が全国の主要100社に実施した調査の結果,

働き方改革関連法案が成立した場合に高プロを採用するか

という質問について,採用する方針を示したのは6社

採用するつもりはないと答えたのが31社,

分からないと答えたのが51社だったようです。

 

 

 

もともと,高プロは,経営者側が導入を

要求してきた制度なのですが,実際には,

現時点で採用する方針の会社が100社中6社しかいないなので,

経営者側のニーズがどれだけあるのか疑問です。

 

 

高プロを適法に導入するためには,

厳しい要件をすべてクリアしなければならないうえに,

実際に高プロを導入しても,

どれだけ労働生産性が上がるのか予測ができないので,

高プロの導入に積極的になれない会社がほとんどなのだと思います。

 

 

一方,労働者側のニーズはどうでしょうか。

 

 

 

厚生労働省が実施した働き手のニーズ調査では,

5社のうち12人しかヒアリングをしていなかったのです。

 

 

2018年4月の日本の就業者数は6671万人です。

 

 

6671万人のうちのたった12人しか調査していなかったのです。

 

 

仮に,調査対象者である12人が

高プロの導入に賛成したとしても,

サンプル数があまりにも少ないので,

この12人の意見が,6671万人の労働者の

意見を反映していることにはならないはずです。

 

 

さらに,12人中9人のヒアリングの際には,

会社の人事担当者も同席したようです。

 

 

ヒアリングの対象者である労働者は,

会社の人事担当者が同席しているところで,

正直に自分の意見を言いにくいものです。

 

 

自分の発言が,会社の人事でどのように利用されるのか

と考えれば,ぶなんに回答しようと考えてしまうからです。

 

 

そのため,厚生労働省の働き手のニーズ調査は

極めてずさんであり,厚生労働省のニーズ調査から,

労働者側が高プロを求めているとはとてもいえないのです。

 

 

そもそも,残業代ゼロで24時間働かされることが

合法になる制度を,労働者が求めるはずがありません。

 

 

結局,経営者側も労働者側も高プロのニーズがありませんので,

高プロは,すみやかに廃案にするべきです。

パソコンのログデータで労働時間を証明する

残業代を請求したり,過労死の労災申請や

損害賠償請求をする事件の場合,

労働者側が何時から何時まで働いたのかを

証明しなければなりません。

 

 

労働者が労働時間を証明できないと,

残業代は認められませんし,

過労死の認定も困難になります。

 

 

それでは,労働者は,どうやって自分の

労働時間を証明すればいいのでしょうか。

 

 

もっとも手っ取り早いのはタイムカードです。

 

 

 

 

タイムカードで労働時間の管理がされている職場であれば,

タイムカードを入手できれば,

タイムカードで労働時間を証明することができます。

 

 

では,タイムカードがない職場では,どうすればいいのでしょうか。。

 

 

会社には労働時間を適正に把握する責務があることが,

厚生労働省のガイドラインで定められていますが,

これが守られていない中小企業も多いです。

 

 

タイムカードがなくても,パソコンでデスクワーク

をしている労働者であれば,パソコンの起動時刻と

終了時刻のログデータで労働時間を証明することができます。

 

 

パソコンには,自動的に,起動時刻と終了時刻

のログデータが保存されています。

 

 

 

パソコンでデスクワークをしている労働者であれば,

まず出社すれば,パソコンの電源をいれて,パソコンを立ち上げます。

 

 

そして,パソコンをつけっぱなしにしたまま,

パソコンで文書を作成したり,検索エンジンを利用して調べ物をして

,仕事が終わるときに,パソコンをシャットダウンします。

 

 

そのため,パソコンでデスクワークをする労働者の場合,

自分が使っていたパソコンのログデータを入手できれば,

パソコン起動時刻に出社して,パソコン終了時刻に退社した

と証明できるのです。

 

 

実際,残業代を請求する事件で

パソコンのログデータが活用されています。

 

 

東京地裁平成18年11月10日判決

(PE&HR事件・労働判例931号65頁)は,

「デスクワークをする人間が,通常,パソコンの立ち上げと

立ち下げをするのは出勤と退勤の直後と直前であることを

経験的に推認できる」として,

パソコンのログデータをもとに労働時間を認定しました。

 

 

労働者が会社を辞めてから会社のパソコンの

ログデータを入手するのは困難ですので,

会社を辞める前に自分でログデータを確保しておく必要があります。

 

 

自分でパソコンのログデータを調べる方法については,

次のサイトが非常に参考になります。

 

 

https://pentan.net/win10-kidou-jikoku/

 

 

このサイトのとおりに,自分のパソコンを操作すれば,

ログデータを入手することができます。

 

 

実際に私も自分のパソコンでためしてみましたが,

そんなに難しくない作業です。

 

 

また,パソコンのログデータは,

放って置くと消えていく可能性がありますので,

早目にログデータを確保しておく必要があります。

 

 

未払残業代は2年前までさかのぼって請求できますが,

古いログデータほど消えている可能性が高いので,

早目にログデータを確保するべきです。

 

 

タイムカードがなくても,

他の証拠で労働時間を証明できる場合がありますので,

未払残業代を請求する場合には,

専門家に相談することをおすすめします。