仮眠時間は労働時間か?

警備員や看護師,ホテルのナイトフロントなど

宿直を伴う業務には,仮眠時間がもうけられていることがあります。

 

 

 

 

この仮眠時間が労働時間なのかが,

未払残業代請求事件で争点になることがあります。

 

 

仮眠時間中,労働者は寝ているので,労働時間ではなく,

休憩時間であり,仮眠時間について,

賃金は発生しないとも考えられます。

 

 

しかし,仮眠時間であっても,呼び出しがあったら,

すぐに仕事に戻らなければならない場合,

労働時間のようにも思えます。

 

 

そもそも,労働時間とは,どのような時間なのでしょうか。

 

 

 

 

労働時間について判断した重要な判例を紹介します。

 

 

最高裁平成12年3月9日判決(三菱重工業長崎造船所事件)は,

労働時間とは,労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい,この時間に該当するか否かは,

労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと

評価することができるか否かにより

客観的に定まるものであると判断しています。

 

 

ようするに,使用者の指揮命令があって,

それにしたがって働けば労働時間になります。

 

 

もっとも,使用者の指揮命令下に置かれている時間

という基準だけでは,仮眠時間が労働時間にあたるのかが

判然としません。

 

 

次に,仮眠時間が労働時間にあたるかの基準を

示した重要な判例を紹介します。

 

 

最高裁平成14年2月28日判決(大星ビル管理事件)は,

次のように判断しました。少し長いですが引用します。

 

 

「不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していない

というだけでは,使用者の指揮命令下から

離脱しているということはできず,

当該時間に労働者が労働から離れることを

保障されていて初めて,労働者が使用者の指揮命令下に

置かれていないものと評価することができる。

したがって,不活動仮眠時間であっても

労働からの解放が保障されていない場合には

労基法上の労働時間に当たるというべきである

そして,当該時間において労働契約上の役務の提供が

義務付けられていると評価される場合には,

労働からの解放が保障されているとはいえず,

労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である。」

 

 

ようするに,仮眠時間中に労働から完全に

解放されていないのであれば,

仮眠時間は労働時間になります。

 

 

労働から完全に解放されているかについては,

①業務遂行についての義務付けがあるか

(仮眠中に呼び出しがあれば,すぐに現場に

戻らければならないように指示されていたか),

②場所的拘束性があったか

(仮眠時間とされていた時間に,会社の外に出て

自由に過ごすことができたか),

③対応の頻度

(仮眠時間中の呼び出しが多いか少ないか)

といった事実をもとに判断されます。

 

 

例えば,ホテルのナイトフロントの場合,

①仮眠時間中であっても,顧客からの呼び出しがあれば

すぐに対応しなければならず,

②ホテルの外に出て休むことが禁止されており,

③顧客の呼び出しが頻繁にある場合,

仮眠時間は労働時間と判断されると考えられます。

 

 

仮眠時間について,多くの会社では残業代が

支払われていないでしょうが,場合によっては,

労働時間となり,労働者は,

未払残業代を請求できることがあります。

 

 

仮眠時間のある労働者は,一度,

ご自身の労働実態を検討し,

仮眠時間の対応頻度などを調べてみるといいでしょう。