副業の労働時間管理

近年,副業を希望する労働者が増えています。

 

 

労働者には,離職しなくても別の仕事に就くことができて,

副業先でスキルや経験を得ることで,

主体的にキャリアを形成できたり,本業を続けつつ,

よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備ができる

というメリットがあります。

 

 

 

 

また,企業には,労働者が社外から新たな知識・情報や

人脈を入れることで,事業機会の拡大につながる

というメリットがあります。

 

 

このように副業には,労働者にも企業にも

メリットがあるのですが,様々な制度上の問題があります。

 

 

本日は,副業における労働時間の管理について説明します。

 

 

例えば,本業のA会社で1日5時間働き,

その後,副業のB会社で1日4時間働いた場合,

A会社とB会社のどちらが労働者に残業代を

支払わなければならないのでしょうか。

 

 

結論を先に述べますと,後から働く副業先のB会社が

1時間分の残業代を支払わなければなりません

 

 

労働基準法32条で,会社は,労働者を1日8時間,

1週間40時間を超えて働かせてはならないと定められています。

 

 

もっとも,36協定が締結されていれば,

1日8時間,1週間40時間を超えて労働者を働かせても

問題ないのですが,会社は,1日8時間,1週間40時間

を超えて働かせた場合,労働者に対して,

1時間当たり1.25倍の残業代を支払わなければなりません。

 

 

そして,労働基準法38条には,「労働時間は,

事業場を異にする場合においても,

労働時間に関する規定の適用については通算する。

と規定されています。

 

 

その結果,本業のA会社で1日5時間働き,

その後,副業のB会社で1日4時間働いた場合,

1日の労働時間が通算9時間となり,

1時間残業していることになり,

後から働く副業先のB会社が1時間分の残業代

を支払わなければならないのです。

 

 

 

これは,後から労働契約を締結した会社は,

労働契約の締結にあたって,

その労働者が他の会社で労働していることを確認した上で

労働契約を締結すべきという考え方が前提にあるからです。

 

 

他方,本業のA会社で,労働契約で定められた

勤務時間が4時間で,副業先のB会社で,

労働契約で定められた勤務時間が4時間であった場合,

A会社で5時間働き,その後B会社で4時間働いた場合はどうでしょうか。

 

 

この場合,A会社が1時間分の残業代を支払わなければならないのです。

 

 

このように,副業をする際には,本業と副業とで

労働時間がどれだけかを把握する必要があります

 

 

本業で8時間働いた後に,副業で4時間働いた場合,

副業の4時間全てについて,1.25倍の残業代を

請求できることになるので,労働者は,

副業先の給料をよく確認すべきです。

 

 

他方,企業は,副業で労働者を雇う場合,

労働者が働いた時間が全て残業になって,

人件費が高くなるリスクを意識する必要があると思います。

 

 

副業すれば,複数の収入源を確保できて,

収入が増加するので,今後,

副業が増加していくことが考えられますが,

労働者の労働時間が長くなるので,労働者は,

自分の労働時間をしっかりとコントロールして,

過労に陥らないように気をつける必要があります。

 

 

その定額手当の支払いは適法な残業代の支払いといえるのか

会社から毎月,営業手当,役職手当,技術手当などの

定額手当が支給されていますが,残業代は支払われていません。

 

 

会社に聞くと,それらの定額手当が

残業代の代わりであるという説明を受けました。

 

 

定額手当の金額が低いのに,毎日長時間残業をしていた場合,

労働者は,本当に定額手当の金額は,

自分の残業時間から正確に計算されたものなのか疑問に思い,

残業代が少なくて損をしている気になります。

 

 

 

 

このように,一定金額の定額手当を

残業代の代わりとする制度を固定残業代といいます。

 

 

この固定残業代が適法な残業代の支払いといえるかが,

未払残業代請求の事件ではよく問題になります。

 

 

固定残業代が適法な残業代の支払いとは認めれなかった場合,

会社は,残業代を1時間も支払っていなかったことになり,

固定残業代部分が残業代の計算基礎となる

賃金に組み込まれることになり,1時間当たりの

残業代の単価が跳ね上がることになるので,

会社は,必死に抵抗してくることが多いです。

 

 

固定残業代について,最高裁は平成30年7月19日

に判決を出して,固定残業代が適法な残業代の支払いといえるかを

判断するために,以下の基準を示しました。

 

 

「雇用契約に係る契約書等の記載内容のほか,具体的事案に応じ,

使用者の労働者に対する当該手当や割増賃金に関する説明の内容,

労働者の実際の労働時間等の勤務状況

などの事情を考慮して判断すべきである。」

 

 

①契約書,就業規則,賃金規定などの記載内容,

②会社の固定残業代についての説明,

③実際の労働時間

が判断の基準として考慮されるのです。

 

 

 

 

この最高裁判決の事件では,

薬剤師の毎月の業務手当10万1000円

が適法な残業代の支払いといえるのかが争われました。

 

 

この事件では,賃金規定には,

「業務手当は,一賃金支払期において時間外労働があったものとみなして,

時間手当の代わりとして支給する。」と記載されていました。

 

 

また,会社と労働者との間で作成された確認書には,

「業務手当は,固定時間外労働賃金(時間外労働30時間分)

として毎月支給します。一賃金計算期間における時間外労働が

その時間に満たない場合であっても全額支給します。」

と記載されていました。

 

 

そのため,「会社の賃金体系においては,

業務手当が時間外労働等に対する対価として支払われるもの

と位置づけられていた」と判断されて,

①と②の要件を満たすとされました。

 

 

そして,計算上,業務手当は,

約28時間分の時間外労働に対する割増賃金に相当し,

薬剤師の実際の時間外労働の状況と大きくかいりしていない

と判断されて,③の要件を満たすとされました。

 

 

その結果,業務手当は,適法な残業代の支払いと認められました。

 

 

さて,この最高裁判決からいえることは,

給料明細で,単に「時間外労働手当」等と

記載されているだけでは不十分であり,

①労働契約書,就業規則,賃金規定に

「時間外労働手当」の記載がなかったり,

②会社が労働者に対して,「時間外労働手当」

の説明を何もしていなかったり,

③実際の残業時間と「時間外労働手当」の金額が不均衡だった場合,

適法な残業代の支払いとは認められません。

 

 

ブラック企業は,低い定額手当が残業代の代わりだと言い張り,

追加で残業代を支払うことなく長時間労働をさせることがありますが,

上記の①~③の要件を検討すると,

定額手当が適法な残業代の支払いと認められない可能性があります。

 

 

定額手当が残業代の代わりに支給されている労働者は,

一度,ご自身の定額手当が適法な残業代の支払いなのかを,

上記①~③の基準をもとに検討してみることをおすすめします。

世界一わかりやすい差別化ブログ起業術

学歴ゼロ,資格ゼロ,職歴ゼロから年間4億円の

売上をあげている,Webマーケティングコンサルタント,

プロデューサーである仙道達也氏の

世界一わかりやすい差別化ブログ起業術

を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

 

ブログを毎日更新しているので,

ブログについて勉強しようと思い,

この本を読んでみました。

 

 

仙道氏が提唱する差別化ブログとは,

ライバルと争わなくても,自然とお客様に選ばれるブログで,

ファンが生まれて,申し込みが自然と発生するというものです。

 

 

差別化ブログを作るには,3C分析を行います。

 

 

3Cとは,

①顧客ニーズとウォンツ,

②自分の強み,

③ライバルの強みと弱み

のことです。

 

 

3Cの中の②自分の強みをみつけるには,

自分がこれまでに経験してきたことや,

実際に体験してきたことなどを全て洗い出す必要があります。

 

 

自分のことを一番理解できていないのは意外と自分自身なのです。

 

 

弁護士をしていると,自分では普通だと思っていたことが,

クライアントからしてみるとすごいことだった

という経験がよくあります。

 

 

自分を客観的にみるというのはとてもむずかしいのです。

 

 

強みは,自分の主観で決めるのではなく,

顧客から見た時に強みとなるのかを検討する必要があります。

 

 

 

 

自分が気付いていない強みに気付くために,

自分の棚卸しをする際には,次の6つの注意点があります。

 

 

①できるだけ客観的に表現する

②できるだけ具体的に表現する

③できるものは数字化する

④どんなにくだらないと思っていることでも書き出す

⑤できるだけ複数を書き出す

⑥自分で良し悪しを判断せずに書き出す

 

 

3C分析をした次に,USPを完成させて,

ベストポジションを確保します。

 

 

USPとは,

ユニーク(ライバルにない独自性),

セリング(売りポイント),

プロポジション(提案,約束すること)

の略称で,「あなただけの独自の売り」のことです。

 

 

USPを完成させるには,次の3つ視点が重要になります。

 

 

①ライバルが真似できない売りがある

②ライバルが真似したくない売りがある

③ライバルがまだ主張していない新しさがある

 

 

強烈なUSPがあると,市場において,

自社の製品やサービスの位置付けを競合他社と差別化できて,

相対的に優位な立場を構築することができるようになります。

 

 

そして,ブログでは,読者との信頼関係

を作るためのライティングが重要になります。

 

 

 

 

ブログで読者に伝えたいメッセージが

届きやすい流れを作るために,次の

文章構成テンプレートが役に立ちます。

 

 

①問題点の提示

②解決策,結論

③理由(体験談,具体例,ストーリー)

④解決策,結論

 

 

また,次のことを意識することで,

ライバルは書けないけど読者が欲しがっている

文章を書けるようになります。

 

 

「発信する情報に出し惜しみをすることなく,有料並みの記事を書く」

「その情報がライバルよりも一歩先に進んでいて,しかも具体的である」

「ありがちな主張から対極のポジションをとる」

 

 

なぜブログが重要なのか,

どのようなブログにすればいいのか,

どのようにして文章を書けばいいのか

といった,ブログに関する様々な疑問に対して,

詳細かつ具体的に回答してくれる素敵な本です。

 

 

ブログをしている人に一読してもらいたい

本として紹介させていただきました。

内部告発をした労働者が保護されるには

会社で不祥事が発生し,それを発見した労働者が,

不祥事の発生や拡大を防止するために内部告発を行った場合,

会社の信用を失墜させたり,会社に損害が発生したとして,

会社から解雇や懲戒処分などの不利益な取扱いを受けることがあります。

 

 

 

 

このような場合,労働者は,どうすれば保護されるのでしょうか。

 

 

内部告発を理由とする解雇が争われた事例で,

一審と控訴審で結論が別れた裁判例を紹介します

(東京高裁平成28年12月7日判決・

判例時報2369号61頁)。

 

 

私立小学校の教頭先生が,

監督権限を有する県に対して,

告発をしました。

 

 

その告発の内容は,学校法人の理事長のサッカー

を通じた学内活性化の計画に関連して多額の支出がされて

財務状況が悪化しており,その業務を委託した

サッカースクールに多額の資金が流出しており,

理事長に横領または背任の疑いがあるので,

業務監査を実施して理事長の解任を求めるものでした。

 

 

しかし,この教頭先生は,学校法人から,

不当な目的で本件告発を行い,

学校法人や理事長の名誉と信用を毀損したとして,

解雇されました。

 

 

教頭先生は,この解雇は無効であるとして,裁判を起こしたのです。

 

 

ここで,内部告発が保護される要件を説明します。

 

 

内部告発は,

①告発内容の真実性(告発内容の主要部分が真実であるか,

真実と信じるに足りる相当な理由があることが必要です),

②内部告発の目的が正当であること

③内部告発手段・方法の相当性

(会社にできるだけ損害を与えない方法で

告発することが求められており,

企業内部での改善努力をせずに,

いきなりマスコミに通報すると

相当性を欠くとされやすいです)

の3つの要件を総合考慮して,

正当行為になるかが判断されます。

 

 

また,公益通報者保護法において,

通報先ごとの保護要件が定められています。

 

 

 

 

勤務先の会社への内部通報の場合

犯罪行為や法令違反の事実の発生または

切迫性を思料することで足ります。

 

 

行政機関への通報の場合

犯罪行為や法令違反の事実の発生または

発生しようとしていると信ずるに足りる相当の理由

が必要になります。

 

 

マスコミなどの外部への通報の場合

行政機関への通報の要件に加えて,

会社や行政機関に通報すれば解雇などの不利益な取扱い

を受けると信ずるに足りる相当な理由がある場合

などの要件を満たす必要があります。

 

 

会社内部→行政機関→マスコミなど,

通報先が外にいくほど保護されるための要件が厳しくなるのです。

 

 

さて,本件裁判例では,一審は,

本件告発内容には,真実に反するものが含まれているが,

あえて虚偽の事実を告発したものではなく,

教頭先生が小学校の財務状況に危機感を抱いたのも

無理からぬものがあったことを理由に,

解雇は無効とされました。

 

 

しかし,控訴審では,解雇は有効となり,

教頭先生が逆転敗訴したのです。

 

 

その理由は,本件告発内容は,

いずれも横領や背任などの刑罰法令に違反するものとは認められず,

根拠が薄弱で,容易に確認できる事項の確認がされていないので,

告発内容が真実であると信じるに足りる相当な理由

があったとはいえないというものです。

 

 

会社の外に告発する場合,労働者が保護される要件が

厳しくなりますので,まずは何よりも

告発内容を裏付けるための資料を十分にそろえておく必要があります。

 

 

また,会社に内部告発した場合,

告発後の会社の言動を逐一記録しておくことも重要になります。

 

 

内部告発をしても労働者が保護されるかは

ケースバイケースなので,内部告発は専門家へ相談して

慎重におこなうことをおすすめします。

過労事故死について会社に損害賠償請求できるのか

過労状態で仕事中や帰宅途中に自動車などの

運転操作を誤って,交通事故をおこして死亡した場合,

遺族は,会社に対して,損害賠償を請求できるのでしょうか。

 

 

過労の蓄積で脳・心臓疾患を発症して死亡した過労死や,

過労により精神疾患を発症して自殺した過労自殺については,

厚生労働省から労災の認定基準が公表されており,

会社に対する損害賠償請求が認められている裁判例もあります。

 

 

他方,過労状態で仕事中や通勤途中に交通事故で死亡した,

いわゆる「過労事故死」の場合,労災で補償が受けられますが,

過労死や過労自殺のような認定基準は定められていません。

 

 

 

 

また,過労が原因で交通事故が発生したのか,

運転者のミスで交通事故が生じたのか明確に分からなかったり,

交通事故の場合,自動車保険で損害が補填されることから,

過労事故死の場合に,会社に対して

損害賠償請求することは少なかったと考えられます。

 

 

このような状況の中,過労事故死について,

平成30年2月8日に横浜地裁川崎支部において

重要な和解がありましたので,紹介させていただきます。

 

 

24歳だった若者が,夜通しの仕事を終えて,

片道1時間かかる自宅へ原付バイクで帰宅途中に,

見通しのよい直線道路を走行中に左前方へ斜走して

路側帯にはみ出して電柱に激突して

死亡したという交通事故がありました。

 

 

通勤災害として,労災から補償はでますが,

自損事故のため,事故相手の自動車保険が利用できず,

自分の原付バイクに十分な損害保険をかけていなければ,

遺族に対する損害は十分に補填されません。

 

 

そこで,過労状態で原付バイクで帰宅させたことについて,

会社に対して,安全配慮義務違反

(会社には労働者の安全を確保する義務があります)

による損害賠償請求をすることが考えられます。

 

 

本件では,被害者の仕事が顧客の店舗で観葉植物などの

設置や撤去をするという重い荷物の積卸しなど,

身体的な負荷の高い仕事をしており,被害者は,

複数の取引先を社用車を運転して頻繁に移動しながら,

深夜と早朝における作業をしていました。

 

 

そして,本件事故の日の前日から夜通しで,

拘束時間が21時間以上に及ぶ仕事をし,

他の日の時間外労働も多かったのです。

 

 

 

 

そのため,被害者は,深夜と早朝の勤務を含む不規則で

過重な仕事をし,事故直前に夜通しで仕事をしたため,

疲労が過度に蓄積して,顕著な睡眠不足の状態に陥り,

本件事故が発生したと認定されました。

 

 

そして,被告の会社は,被害者の仕事の負担を軽くする

などの措置をとることなく,深夜や早朝の仕事の場合に,

原付バイクによる通勤を明確に指示していたので,

安全配慮義務違反が認められました。

 

 

その結果,7590万円の損害賠償が認められました。

 

 

さらに,本件では,和解において,

被告会社が遺族に謝罪すること,

再発防止策を実施することを確約して,

実施状況をホームページで公表すること,

和解内容を公表することが合意されました。

 

 

判決では,単に,損害賠償としてお金を支払えで

終わるのですが,和解では,謝罪や再発防止策という

遺族が求める解決が実現できるメリットがあります。

 

 

通常,和解内容は,秘密にすることが多いのですが,

本件は社会的に重要な事件であることから,

和解内容が公表されたことが非常に画期的です。

 

 

過労が原因で交通事故が発生していることは多いと思いますが,

過労事故死は今まで表面化していなかっただけなのだと考えられます。

 

 

この和解をきっかけに,過労事故死の

救済がすすんでいくことに期待したいです。

仕事の思想

田坂広志先生の「仕事の思想~なぜ我々は働くのか~」

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

なぜ我々は働くのか」という問を考えながら,

こころに抱くべき仕事の思想を探求していくという名著です。

 

 

仕事の思想を考えるときに最初に突き当たる問があります。

 

 

仕事の報酬とは何か

 

 

まずは,「仕事の報酬は給料」という世界です。

 

 

稼いだ給料で自分の好きな人生を送るというものです。

 

 

次に,仕事に一生懸命取り組んでいくと,

すこしずつ仕事のスキルやノウハウが身について,

仕事の能力が磨かれていきます。

 

 

自分のプロフェッショナルとしての能力が

確実に高まっていくことに対して,

実感と満足感を持つことができるのです。

 

 

この段階が「仕事の報酬は能力である」という世界です。

 

 

仕事のスキルやノウハウを磨いていくと,

自分がやりたかった,やりがいのある仕事に取り組めるようになります。

 

 

この段階が「仕事の報酬は仕事である」という世界です。

 

 

最後は,「仕事の報酬は成長である」という世界です。

 

 

 

我々は,仕事をとおして,ひとりの人間として

成長することができ,その成長を実感して

喜びを味わうことができます。

 

 

人間として成長すると,

こころの世界が見えるようになってくる」のです。

 

 

こころの世界が見えるとは,顧客や職場の仲間の気持ち

がわかるようになり,「うまく働くこと」ができるようになります。

 

 

我々は,「仕事の報酬は成長である」ことを

見誤らないようにしないといけません。

 

 

では,人が成長するにはどのような方法があるのでしょうか。

 

 

一つは,夢を語り,目標を定めることです。

 

 

 

 

夢を本気で語ることで,人間は成長していくために

力を振り絞ることができます。

 

 

また,人間は,目の前に明確な目標があるから,

それに向かって力を振り絞ることができて,力が伸びていくのです。

 

 

そして,夢や目標を人前で堂々と語ることで,

おのずとその発言に対して責任を負い,

自分自身を追いつめて成長することにつながるのです。

 

 

もう一つ成長する方法があります。

 

 

それは,顧客を鏡として見ることです。

 

 

顧客は我々の成長の鏡なのです。

 

 

 

 

文句や不満を言ってくる厳しい顧客は,

その文句や不満を通じて,私たちの未熟な姿や

誤ったこころの姿勢を鏡のように映し出してくれる,

優しい顧客なのです。

 

 

本当に怖いのは,黙って去る顧客です。

 

 

黙って,こちらの仕事の能力がないと判断して

去っていくので,顧客が気持ちのなかに抱いている

不満やクレームが見えないからです。

 

 

この黙って去る顧客に対して,こころを澄ませて,

注意深くみると,かならずその文句や不満を

無言のメッセージ」として発しているので

これに気づく力量をもつ必要があります。

 

 

無言のメッセージを聞くためにも,

細やかな気配りや繊細な感受性,

さらには鋭い直観力や深い洞察力など,

人間としての高度な能力が求められます。

 

 

仕事の報酬は成長である」ことを理解し,

夢を語り,目標を設定し,

顧客を鏡とすることで,

私たちは成長していくことができます。

 

 

仕事について深く考え,多くの気づきを

与えてくれる名著として紹介させていただきます。

職場のパソコンにわいせつ動画を保存すると懲戒解雇されてしまうのか

職場のパソコンにわいせつな動画を保存

していることが会社にバレてしまった場合,

労働者は懲戒解雇されてしまうのでしょうか。

 

 

大学教授が研究室のパソコンにわいせつな動画

を保存していたことなどを理由に懲戒解雇されてしまい,

その懲戒解雇の効力が争われた裁判例がありますので,

紹介します(東京地裁平成29年9月14日判決・

判例時報2366号39頁)。

 

 

原告の大学教授は,大学から教育研究目的で貸与され,

研究室に置かれていたパソコンの中に,

原告の大学教授が妻以外の複数の女性との

性交の場面を自分で撮影した動画を保存していました。

 

 

 

 

ひょんなことから,このわいせつな動画が

原告の研究室のパソコンに保存されていることが

大学にばれてしまいました。

 

 

大学は,職場において,使用目的を教育研究に

限定して貸与されていたパソコンにわいせつな動画

を数多く保存するというハレンチきわまりない行為

であるのみならず,その動画を自分で撮影して

自分で出演しているという教育者としてあるまじき行為

であるとして,原告の大学教授を懲戒解雇しました。

 

 

なお,原告の大学教授は,2年前に戒告の懲戒処分を受けていました。

 

 

さて,ここで,懲戒処分がどのような場合に

無効になるのかについて説明します。

 

 

労働契約法15条には,

「当該懲戒に係る労働者の行為の

性質及び態様その他の事情に照らして,

客観的に合理的な理由を欠き,

社会通念上相当であると認められない場合

に懲戒処分が無効となると定められています。

 

 

ようするに,労働者の行為が就業規則などに

定められている懲戒事由に該当して,

労働者の行為と懲戒処分のバランスが保たれていないと

懲戒処分が無効になります。

 

 

特に,懲戒解雇の場合,労働者は,職を失い,

退職金も支給されず,次の就職で不利になるなど,

労働者の被る不利益が非常に大きいので,

労働者の行為が,本当に懲戒解雇に値するほど

ひどいものなのかが慎重に判断されます

 

 

さて,本件の場合,原告が出演したわいせつ動画を

大学に持ち込むことが大学の品位を損なう行為にあたり,

原告には,懲戒事由が認められました。

 

 

しかし,このわいせつ動画の内容は原告の私生活上

の領域の問題であり,わいせつ動画が外部に流出していないので,

大学の社会的名誉や信用が侵害されているわけではありません。

 

 

また,わいせつ動画を研究室のパソコンに保存することは,

原告の以前の戒告処分とは別の種類のものであり,

わいせつ動画のデータ削除は容易でした。

 

 

そのため,原告は,わいせつ動画を研究室のパソコン

に保存していましたが,このことを理由に懲戒解雇とするのは,

処分として重すぎ,労働者の行為と懲戒処分のバランスが

保たれていないので,懲戒解雇は無効になりました。

 

 

原告に対する懲戒処分が減給や停職であれば,

懲戒処分が有効になっていたかもしれません。

 

 

本件は,労働者が過去に戒告の懲戒処分を

受けていたにもかからわず,懲戒解雇が無効

になった点で労働者にとって有利な判決だと思います。

 

 

懲戒解雇は,労働者にとって死刑を宣告

されることに匹敵することですので,

かなり慎重に判断されることが分かります。

 

 

 

 

もし,労働者が懲戒解雇されてしまい,

その処分に納得がいかないのであれば,

専門家に相談することをおすすめします。

残業証明アプリ~労働時間を記録しよう!~

未払残業代を請求するには,労働者が,

労働した日に何時から何時まで働いたのかを

証拠によって証明しなければなりません。

 

 

この証明ができないと,未払残業代請求

の裁判をしても,負けてしまいます。

 

 

 

 

タイムカードや会社のシステムなどで

労働時間が管理されている会社であれば,

労働者の代理人弁護士が会社に対して

タイムカードなどの証拠を開示するように求めれば,

たいていの会社は,タイムカードなどの証拠を

開示してくれますので,労働時間の証明は容易にできます。

 

 

タイムカードなどで労働時間の管理が

全くされていない会社の場合,どのようにして

労働時間を証明するかで知恵を絞ります。

 

 

パソコンでデスクワークをしている労働者であれば,

使用しているパソコンにパソコンの起動時刻と

シャットダウンの時刻が記録されたログが

保存されていることがあるので,

このログデータを入手できれば,

労働時間を証明することができます。

 

 

しかし,ログデータは,時間の経過やOSのアップデート

をしたときに,自動的に消去されることがあります。

 

 

また,会社を退職してしまえば,会社のパソコン

からログデータを入手することは困難になります。

 

 

そのため,労働者は,会社に労働時間の管理

を任せるのではなく,いざというときのために,

自分で労働時間を記録するべきです

 

 

具体的には,毎日労働時間をメモするという方法があります。

 

 

 

 

もっとも,メモをし忘れたり,

メモの内容が本当に信用できるのかと争われることがあり,

メモだけですと証拠としてはやや弱いです。

 

 

そこで,最近では,残業時間を記録するアプリが活用されています。

 

 

ソフィアライト株式会社が開発した「残業証明アプリ」は,

GPS機能を活用して,スマホにダウンロードしたアプリに,

何時から何時まで勤務先にいたのかを正確に記録してくれます。

 

 

 

 

このアプリのポイントは,GPSの位置情報が

正確に記録されることにあります。

 

 

このアプリを利用すれば,何時から何時まで

勤務先にいたのかを証明することができ,

勤務先にいたということは通常働いていたと推認できますので,

労働時間の証明が容易になります。

 

 

さらに,自分の給料などの情報を入力しておけば,

残業代を自働で計算してくれます。

 

 

残業代の計算は複雑なので,これはとても便利な機能です。

 

 

労働者の労働時間を把握するのは,会社の義務なのですが,

労働時間把握義務をまもっている会社が

まだまだ少ないのが現状ですので,労働者は,

残業証明アプリ」などを利用して,

自分の労働時間の記録をとるべきです。

 

 

自分の労働時間を記録すれば,自分が働き過ぎ

であることが客観的にわかって,休息をとる

インセンティブがわきますので,健康管理の側面もあります。

 

 

労働時間を記録するこが重要であることを伝えたかったので,

残業証明アプリ」を紹介させていただきました。

大学の研究支援者に対する雇止め問題

大学には,教授などの研究者たちの

仕事を支える「研究支援者」がいます。

 

 

実験装置の保守や資材の調達をする技術職,

特許事務や研究費の管理をする事務職など,

多岐にわたる研究支援者が,大学での研究を支えているのです。

 

 

 

 

この研究支援者の多くが,非正規雇用の労働者であり,

労働契約の期間が満了して,労働契約の更新ができなければ,

雇止めとなり,大学を去らなければなりません。

 

 

研究支援者が雇止めにあうことから,

研究支援者の雇用が不安定であり,

不安定な雇用は敬遠されるので,

研究支援者になる人が減少し,

研究支援者を確保することが困難になり,

研究者が研究に割ける時間が減少して,

日本の研究者の研究力が低下するという問題が生じます。

 

 

ここで,非正規雇用とよばれる

期間の定めのある労働契約について説明します。

 

 

契約期間が定められていない正社員は,

解雇されない限り,働き続けることができますが,

契約期間が定められている労働契約を締結した

非正規雇用の労働者は,労働契約で定められた

契約期間が満了して,更新されなかったら,

その職場で働き続けることはできません。

 

 

もっとも,同じ職場で,期間の定めのある労働契約が

2回以上更新されて,トータルの契約期間が5年を超えた場合

非正規雇用の労働者は,会社に期間の定めのない労働契約

を申し込めば,期間の定めのない労働契約に転換されます

(労働契約法18条1項)。

 

 

これを無期転換ルールといいます。

 

 

会社は,非正規雇用労働者の人件費が正社員よりも低く,

非正規雇用労働者は,労働契約を更新しなければ,

契約を容易にきることができて,

雇用の調整弁として使い勝手がいいので,

無期転換を嫌がります。

 

 

そこで,会社は,無期転換をさせないために,

契約期間が5年を超える前に雇止めをすることがあります。

 

 

国立大学では,非正規雇用労働者の契約期間を

5年未満に設定しているところが多く,

無期転換ルールが適用されずに,

雇止めされてしまう非正規雇用労働者が多くいるのです。

 

 

 

 

さて,研究支援者が5年未満で雇止めされれば,

研究者が,新しい研究支援者に一から仕事を教えなければならず,

非常に効率が悪いです。

 

 

研究者が本来の仕事である研究に集中するためには,

研究者の仕事をサポートする研究支援者の

雇用が安定していることが重要になりそうです。

 

 

日本の研究力を向上させるためにも,大学には,

研究支援者の雇用を安定させる方法を模索してもらいたいです。

妊娠などと近接して行われた解雇は有効か?

育児休業を取得後に,職場復帰しようとしたところ,

会社から退職勧奨をされて,さらには解雇されてしまった場合,

労働者はどうすればいいのでしょうか。

 

 

本日は,妊娠などと近接して行われた解雇の効力が争われた

シュプリンガー・ジャパン事件

(東京地方裁判所平成29年7月3日判決

労働判例1178号70頁)を紹介します。

 

 

原告の労働者は,第二子出産後に育児休業を取得し,

育児休業が終了する前に,会社に対して,

職場復帰の時期についての調整を伝えました。

 

 

 

 

すると,会社は,原告労働者に対して,

原告労働者が所属しているチームは原告労働者

がいなくても業務を賄えており,

前の部署に復帰するのは困難であり,

復帰を希望するのであれば,インドの子会社に転籍するか,

収入が大幅に減る総務部へ異動するしかないと説明して,

退職を勧奨しました。

 

 

原告労働者は,この会社の提案に納得できるはずがなく,

労働局の雇用均等室に原職復帰の調停を申し立てましたが,

会社が調停案を受け入れず,残念ながら調停は不成立になりました。

 

 

その後,会社は,原告労働者に対して,

協調性不十分や職務上の指揮命令違反

などを理由に解雇を通告しました。

 

 

 

 

原告労働者は,本件解雇は無効であることを主張して,

裁判を起こしました。

 

 

雇用機会均等法9条3項には,

妊娠や出産したことを理由に,労働者を解雇したり,

不利益な取扱いをしてはならないと定められています。

 

 

また,育児休業法10条には,

育児休業をしたことを理由に,労働者を解雇したり,

不利益な取扱いをしてはならないと定められています。

 

 

本件事件の裁判では,会社が形式的に

協調性不十分や職務上の指揮命令違反などの

解雇理由を主張したとしても,

会社がその解雇理由が認められないことを当然に認識すべき場合

妊娠などと近接してなされた解雇は,

雇用機会均等法9条3項と育児休業法10条に

実質的に違反した違法な解雇になると判断されました。

 

 

そして,原告労働者は,能力や成績に問題がなく,

これまでに懲戒処分を受けたことがありませんでした。

 

 

裁判所は,労働者に何らかも問題行動があって,

職場の上司や同僚に一定の負担が生じても,

会社は,これを甘んじて受け入れ,労働者を復職させて,

必要な指導をして,改善の機会を与える必要があると判断しました。

 

 

結論として,会社が主張する解雇に理由がなく,

妊娠などと近接して行われた本件解雇は無効とされました。

 

 

さらに,本件では,解雇無効による解雇期間の

未払賃金請求が認められた以外に,

被告会社の対応があまりに酷く,

原告労働者の被った精神的苦痛が大きいことから,

慰謝料50万円が認められました。

 

 

解雇が無効になって,解雇期間の未払賃金請求が認められれば,

経済的損失が補填されたとして,

慰謝料請求が認められることはめったにないので,

画期的な判断がなされたのです。

 

 

当然ですが,妊娠や育児休業を理由に

不利益な取扱いがされることがあってはなりませんが,

実際に,このようなトラブルがあるのが現実です。

 

 

 

会社が形式的に能力不足などの解雇理由を主張していても,

実質的に妊娠などを解雇理由としていることがありますので,

労働者は,妊娠などを解雇理由としているを疑いもち,

納得いかないのであれば,専門家へ相談することをおすすめします。