会社は給料から親睦会費を勝手に天引きしてもいいのか

会社の給料から親睦会費として毎月3,000円が

天引きされているにもかかわらず,親睦会が多くあるわけでもなく,

親睦会費の残高が多くなっています。

 

 

 

 

また,労働者は,入社時点で親睦会費が給料から

天引きされることに合意したことはなく,退職時に,

親睦会費は1円も返還されない運用になっています。

 

 

このような親睦会費が給料から天引きされることは,

労働基準法に違反していないのでしょうか。

 

 

結論としては,労働基準法24条1項に違反しています。

 

 

労働基準法24条1項には,

賃金は,通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない。

と規定されています。

 

 

この賃金の全額を労働者に支払わなければならないことを,

賃金全額払いの原則といいます。

 

 

労働者は,働いて賃金を取得することで

生活を成り立たせているため,

会社からもらう賃金が勝手に控除されてしまえば,

手元に残る賃金が減ってしまい,生活が苦しくなることから,

賃金は全額支払われなければならないのです。

 

 

もっとも,この賃金全額払いの原則には例外があります。

 

 

例外の1つは,法律で賃金からの控除が認められているものです。

 

 

具体的には,所得税法で認められている給与所得税の源泉徴収

厚生年金保険法・健康保険法,労働保険徴収法

で認められている社会保険料の控除

勤労者財産形成促進法で認められている財形貯蓄金の控除です。

 

 

 

 

もう一つの例外は,過半数労働組合

(それがない場合は労働者の過半数代表者)

との書面による協定がある場合です。

 

 

具体的には,チェックオフ協定

(労働組合と会社間の協定に基づき,

会社が組合員である労働者の賃金から組合費を控除し,

これを一括して労働組合に引き渡すこと)があります。

 

 

このように,法律や労使協定がないのであれば,

賃金から何かの名目で控除することはできないのです。

 

 

また,労働基準法18条には,会社は,労働者に対して,

労働契約と一緒に貯蓄の契約をさせたり,

貯蓄金を管理する契約をしてはならないことが規定されています。

 

 

会社が,労働者の貯蓄金を,労働者の委託を受けて

管理する場合には,労使協定を締結して,

労働基準監督署へ届出なければなりません。

 

 

労働者が貯蓄金の返還を会社に請求した場合,

会社は,貯蓄金を返還しなければならず,

会社が貯蓄金を返還しなかった場合,

労働基準監督署が会社に対して,

貯蓄金の管理の中止を命ずることがあります。

 

 

このように,労使協定がないのに,

賃金から親睦会費を天引きすることは,

労働基準法18条,24条に違反して無効です。

 

 

 

労働者は,会社に対して,

親睦会費の返還を求めることができますし,

会社が親睦会費の返還に応じてくれないのであれば,

労働基準監督署に行政指導してもらうべきです。

解雇されたら失業給付を受給する

会社を解雇されてしまったら,

次の仕事がみつかるまで,

収入がゼロになってしまいます。

 

 

次の仕事が早く見つかればいいのですが,そうでない場合,

労働者は,今後どうやって生活をしていくか悩みます。

 

 

そこで,解雇された労働者は,ハローワークへ行き,

失業給付(雇用保険の基本手当といいます)を受給するべきです。

 

 

 

 

失業給付を受給できれば,当面の生活を

維持することができますので,その間に再就職したり,

会社と争う準備をすることができます。

 

 

さて,この失業給付を受給するには,受給資格が必要です。

 

 

失業給付の受給資格とは,基本的には,

離職した日以前2年間に,

雇用保険の対象者であった期間が

通算12ヶ月以上であることです。

 

 

そのため,働いていた期間が1年未満であれば,

失業給付を受給できない可能性があります。

 

 

会社から解雇された場合,会社から離職票を送ってくることが多いです。

 

 

会社から離職票が送られてこない場合には,

ハローワークから,会社に離職票を発行してもらうように

連絡をしてもらう必要があります。

 

 

解雇を争う場合であっても,

解雇後の生活を安定させなければならないので,

労働者が離職票を要求しても,

解雇を容認することにはなりません。

 

 

会社から離職票が届いたら,まず,離職票の内容をよくチェックします。

 

 

 

 

離職票のチェックポイントは,

離職票の左の欄の賃金額と,右の欄の離職理由です。

 

 

まず,離職票の賃金額が正確に記載されているかを,

自分の給料明細と照らし合わせながらチェックします。

 

 

離職票の賃金額が不正確ですと,

もらえるはずの失業給付の金額が減るおそれがあるからです。

 

 

次に,離職票の離職理由が,

実際の離職理由と一致しているのかをチェックします。

 

 

解雇の場合,会社がこっそりと離職票の離職理由に

自己都合退職と記載してくることがあります。

 

 

これを訂正せずに,そのまま提出してしまうと,

後から裁判になって,会社は,

解雇ではなく自己都合退職だったと主張してきて,

解雇を争えなくなるおそれがあります。

 

 

そのため,離職票の離職理由をよくチェックし,

間違いがあれば,ハローワークに相談して,

会社に訂正を求めるべきです。

 

 

会社が訂正に応じない場合には,

「離職者記入欄」と「具体的事情記載欄(離職者用)」に

実際の離職理由を記載し,「離職者本人の判断」の欄に

「異議あり」に○をつけます。

 

 

自己都合退職の場合は,失業給付を受給するまで

3ヶ月の給付制限がありますが,解雇の場合は,

このような給付制限はありません。

 

 

 

また,解雇されたけれども,どうしても復職したい場合には,

失業給付の仮給付(条件付給付)という手続きをとります。

 

 

仮給付を受けるためには,ハローワークに,

裁判所の受付印のある訴状や労働審判申立書を

提出しなければなりませんので,手続きに時間がかかります。

 

 

仮給付の場合,復職が認められれば,

受給した仮給付を返還しなければなりません。

 

 

解雇されて復職を求めるのではなく,

金銭解決を求める場合には,

失業給付の本給付(通常の失業給付の受給のことです)を受給します。

 

 

本給付であれば,返還する必要はありません。

 

 

労働者は,解雇された場合,

失業給付を受給して,生活を安定させるべきです。

 

 

その際,離職票をよくチェックしてください。

解雇を争う労働者は解雇予告手当と退職金を請求してはいけない

昨日に引き続き,解雇された労働者が,

解雇に納得できず,会社に一矢報いるために争うための,

解雇の対処法について説明します。

 

 

解雇された労働者が,解雇を争う場合,

解雇を前提とした行動をとってはいけません。

 

 

この解雇を前提とした行動をとらない具体例として,

解雇された労働者は,自分から解雇予告手当を

請求してはいけないということがあります。

 

 

会社は,労働者を解雇するためには,

解雇から少なくとも30日前に解雇の予告をしなければいけません

 

 

30日前に解雇の予告をしない場合,会社は,

労働者に対して,30日分以上の平均賃金

を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。

 

 

 

 

この解雇予告をしない場合に会社が

労働者に対して支払わなければならない,

30日分以上の平均賃金を解雇予告手当といいます。

 

 

例えば,なんの前ぶれもなしにいきなり解雇される即時解雇の場合,

労働者は,会社に対して,解雇予告手当を請求することができるのです。

 

 

この解雇予告手当ですが,労働基準法20条1項に

労働者の責めに帰すべき事由」がある場合には,

支払わなくてもよいと規定されています。

 

 

この「労働者の責めに帰すべき事由」とは,典型的には,

労働者に会社のお金を着服したなどの懲戒事由が認められて,

懲戒解雇されたような場合のことをいいます。

 

 

 

 

会社が,「労働者の責めに帰すべき事由」があるので,

解雇予告手当を支払わないようにするためには,

労働基準監督署の認定を受けなければなりません(労働基準法20条3項)。

 

 

この認定を除外認定といいます。

 

 

もっとも,除外認定事由があるのに除外認定を受けないで行った

即時解雇について,除外認定事由が客観的に存在すれば,

その即時解雇は有効とされてしまいます。。

 

 

また,除外認定事実が客観的に存在すれば,

除外認定を受けていなくても,会社は,労働者に対して,

解雇予告手当を支払わなくてもよいことになっています。

 

 

そのため,除外認定を受けることなく,

解雇予告手当を支払っていない会社が多いのが実情です。

 

 

労働者が,解雇に納得して,解雇を受け入れるのであれば,

解雇予告手当を請求すればいいのですが,

解雇に納得しておらず,解雇を争うのであれば,

労働者は,自分から解雇予告手当を請求してはいけません

 

 

解雇予告手当を請求することは,

解雇が有効であることを自分から認めれることに等しく,

解雇を争えなくなるおそれがあります。

 

 

さらに,解雇予告手当と同様に,

退職金を労働者が自分から請求すれば,

解雇を容認したことになり,

解雇を争えなくなるおそれがありますので,

解雇を争う労働者は,自分から退職金を請求してはいけません

 

 

会社が,解雇予告手当や退職金を労働者の預金口座へ

勝手に振り込んできた場合,労働者は,

この金銭を預かり保管して,今後発生する未払賃金に充当することを

会社に通知しておけばいいのです。

 

 

このように,解雇を争う労働者は,

自分から解雇予告手当と退職金を請求してはいけないのです。

解雇されても就労意思を明示する

会社から解雇されたとき,多くの人は,

なんで私が解雇されるのか,解雇に納得できないと思います。

 

 

会社に対してなにかできないかと考え,

弁護士のもとへ相談にいらっしゃる方もいます。

 

 

解雇に納得いかず,会社に対して,

なにかしたいと考える人のために,

解雇への対処の仕方について説明します。

 

 

 

 

解雇への対処方法で重要なことは,

解雇を容認する行動をとってはならないということです。

 

 

具体的には,解雇と言われて,

そのまま出勤しなくなるのはよくないのです。

 

 

解雇されたのに,会社へ出勤しなくなるのはよくないというのは,

なにやら矛盾しているようですが,これには理由があります。

 

 

労働者は,会社に対して,労働を提供することで,

会社から給料をもらいます。

 

 

 

 

解雇の場合,労働者は,会社に労働を提供したくても,

会社の落ち度(解雇理由がないのに解雇したような場合です)によって,

労働を提供できなくなります

 

 

会社の落ち度で,労働者が労働を提供できないのであれば,

会社は,労働者が実際に働いていなくても,給料を支払う義務があります。

 

 

解雇された後に,労働者が会社に対して未払賃金を請求できるのは,

会社の落ち度で労働を提供できなくなったからなのです。

 

 

この前提として,労働者は,会社に対して

労働を提供できる状態である必要があります。

 

 

そのため,労働者は,会社に対して,

いつでも働く意思(就労意思といいます)がありますよ

と伝える必要があるのです。

 

 

とはいえ,解雇するような会社に,出勤しなさいというのは,

よほどメンタルが強い労働者でないとできませんし,とても大変です。

 

 

そこで,一般的には,解雇した会社に対して,

解雇は無効なので,解雇を撤回して,就労させるように請求します。

などと記載した通知書を,配達証明付内容証明郵便で送ります。

 

 

配達証明付内容証明郵便を利用すれば,

このような内容の通知書が会社に送られたことが証明できますので,

会社に対して就労意思を明確にできます。

 

 

このように,解雇された後も賃金を請求するためには,

労働者が会社に労働を提供したこと,具体的には,

就労意思があることを会社に明示することが必要になります。

 

 

 

 

解雇されたからといって,

何もしないまま時間が経過してしまえば,

解雇を容認したと言われてしまい,

解雇された後に,賃金を請求できなくなるおそれがあります。

 

 

解雇されたら,なるべく早く,

会社に対して,就労意思を通知することが重要なのです。

依頼者様の声のページを更新しました

離婚・男女問題について,依頼者様の声のページを更新しました。

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/portfolio-item/iraishanokoe20180827

一流になる勉強法

8月31日に,私が所属しているKCG(金沢コンサルタントグループ)

という団体で,「弁護士が語る社会人のための勉強法

という演題で講演させていただくことになり,

ここ最近,勉強法に関する本を読んできました。

 

 

本日は,最近読んだ「一流になる勉強法

という本を紹介させていただきます。

 

 

 

 

著者は,株式会社サンリの代表取締役社長で,

メンタルトレーナー,目標達成ナビゲーターである西田一見氏です。

 

 

西田氏は,私が学んだSBT(スーパーブレイントレーニング)を,

多くの方々へ教えているメンタルトレーナーです。

 

 

SBTは,脳の使い方を理解し,目標達成に向けて,

脳を活性化させていくトレーニングです。

 

 

人間の脳は,脳幹,大脳辺縁系,大脳新皮質の三層構造になっていて,

脳幹と大脳辺縁系は,IRA

(Instinct Reflex Area)

と呼ばれ,本能反射領域,動物的な古い脳のことです。

 

 

 

 

このIRAによって,人間の感情が左右され,

理屈脳といわれる大脳新皮質に影響を与えて,

無意識に人間の行動が決まっていくのです。

 

 

そこで,このIRAにプラスの記憶をいれておけば,

大脳新皮質にプラスの情報が伝達されて,

自動的にプラスの行動が生じるのです。

 

 

逆に,IRAにマイナスの記憶が蓄積されると,

なにをしても,脳の記憶データによって,

無理だ,できないという反応になってしまうのです。

 

 

このIRAにプラスの記憶をいれるために,

イメージトレーニングが重要になります。

 

 

普段から自分はできるというイメージを脳に植え付けておくのです。

 

 

具体的なプラスのイメージが脳に記憶されていれば,

脳は,そのイメージを実現しようとして,行動を促します。

 

 

脳は,目標達成したイメージを実現するために,

逆算して,今すべきことに楽しく集中することができるのです。

 

 

 

 

 

このイメージトレーニングにおいては,

脳を快にするために,プラスの出力をします。

 

 

言葉・動作・表情をプラスにすると,それが,

脳に入力されて,脳がプラス状態になり,

モチベーションがあがり,集中できます。

 

 

プラスの出力をするには,いやだな,

だるいなと思った瞬間に条件反射で前向きな返事をします。

 

 

具体的には,考えはじめる前に0.2秒で「はい」と言います。

 

 

「はい」というプラスの返事をすると,脳はプラスになります。

 

 

また,マイナスの感情になったら,頭ではなく,

体に信号を送ることで,マイナスからプラスに切り替えます。

 

 

例えば,マイナス感情がよぎりそうになったら,

ガッツポーズをして,脳のスイッチを切り替えたりするのです。

 

 

私たちの脳は,能力を眠らせています。

 

 

この眠らせている能力を活性化させて,

勉強に活かすことで,イメージどおりの人生を実現していくのです。

 

 

 

 

脳を活用した勉強法を学びたい方におすすめの一冊です。

自分の生きざまに自信を持つ

昨日,福井で,私のブログの師匠である

板坂裕治郎大先生の出版記念講演会が

開催されたので参加しました。

 

 

 

板坂裕治郎大先生は,10年間,毎日ブログを書き続けて,

本を出すと言い続けて,ついに今年,

2000人の崖っぷち経営者を再生させた社長の鬼原則

という本を出版されました。

 

 

 

この本の出版記念講演会は,全国各地で開催されているところ,

なんとお隣の福井で開催されるということで,

富山での弁護士会の研修が終わってから駆けつけました。

 

 

講演会の演題は,「自分の生きざまに自信を持つ」でした。

 

 

あいかわらず,厳しいながらも人情味のあふれる人柄で,

過去の失敗談を笑いにかえて,聴衆に熱く語る講演は,圧巻でした。

 

 

要所要所に笑いのポイントをいれてくるので,

聴衆は飽きませんし,次の話が聞きたくなります。

 

 

そして,塾生を100発100中で成功させると言い切る,

圧倒的な自信に聴衆は魅了されます。

 

 

「さすが!」とうなってしまう,最高のトーク技術です。

 

 

板坂裕治郎大先生は,ヤミ金から1億円の借金をして,

過酷な取立に苦悩し,人生のどん底を経験しました。

 

 

他方,友人7人が500万円から1000万円

の借金を苦に自殺しました。

 

 

板坂裕治郎大先生は,ご自身の経験をもとに,

お金で自殺する人を撲滅するという使命(ミッション)をいだき,

アホ社長(根拠のない自信はあるものの,

自分ののびしろにまだ気付いていない社長)

を再生させるコンサルタント業務をするようになりました。

 

 

板坂裕治郎大先生は,ビジネスの極意を次のようにおっしゃりました。

 

 

自分の強みを理想客に対して,熱い想いで届けて,

理想客が,「あなたからぜひ買わせてほしい」と言う

仕組みをつくることで,

自分と理想客との間に共感が生まれることである

 

 

そのためには,自分の強みを把握する必要があります。

 

 

強みとは,売るための商品の強みではなく,売る自分自身の強みです。

 

 

強みとは,自分の資産価値を高めることでもあります。

 

 

自分の資産価値を高めるには,

一般人がやらないようなことにチャレンジして,

失敗して,その失敗を乗り越える経験をする必要があります。

 

 

一般人がやるようなことをしているゾーン

に安住していたのでは,成長できません。

 

 

自分が安住しているコンフォートゾーン(快適空間)

から抜けることで,失敗するかもしれませんが,

それは後の美談になりますし,成長できるのです。

 

 

自分の殻を破るということですね。

 

 

コンフォートゾーンから抜けるには,

勇気と根性をもって,チャレンジすることに尽きます。

 

 

 

 

そして,自分の強みをバックボーン(ストーリー)

とエビデンスで説明すれば,相手は納得し,

「あなたから買いたいのです」と言い,ファンになるのです。

 

 

板坂裕治郎大先生は,以上のことを実践しているからこそ,

自分の言葉に責任をもって言い切れるのでしょうし,

ミッションに共感した全国の塾生(ファン)が

昨日のような出版記念講演会を企画し,

どんどん有名になっていくのだと思います。

 

 

私は,すでに,板坂裕治郎大先生の著書を買って読んでいましたが,

会場で特性のタオルと紙バックと一緒に販売されていたので,

また買ってしまいました。

 

 

 

 

私も,コンフォートゾーンを脱出し,

勇気と根性をもって,チャレンジしていきます。

病気で欠勤が多すぎると雇止めされてしまうのか

非正規雇用の労働者が,私傷病(仕事とは関係ない病気のことです)

で欠勤を繰り返したところ,会社から勤怠不良を理由に雇止め

(非正規雇用労働者の契約期間が満了した後,契約が更新されず,

辞めなければならなくなってしまうことです)されてしまった場合,

このような雇止めは有効なのでしょうか。

 

 

本日は,私傷病による勤怠不良を理由とする

雇止めの適法性が争われた日本郵便(新東京局・雇止め)事件

(東京地裁平成29年9月11日判決・労働判例1180号56頁)

を紹介します。

 

 

まず,雇止めを争う場合,解雇よりもハードルがあがります

 

 

 

 

雇止めは,更新が何度も行われて,非正規雇用労働者が,

今後も雇用が継続されると期待することについて,

合理的な理由が認められることが必要です。

 

 

この雇用継続の期待についての合理的な理由が認められると,

次に,通常の解雇と同じように,雇止めに理由があるのか,

雇止めが相当な手段だったのかが判断されます。

 

 

つまり,雇止めの場合は,解雇にはない,

雇用継続の期待についての合理的な理由という

もう一つのハードルを超えなければいけないため,

解雇よりも雇止めの方が,労働者にとって不利なのです。

 

 

さて,本件事件では,8年間にわたり,

6ヶ月ごとに有期労働契約が更新されてきたことから,

原告に対する雇用継続の期待についての

合理的な理由は認められました。

 

 

そこで,私傷病による勤怠不良を理由とする雇止めについて,

理由があるのか,相当だったのかが検討されました。

 

 

原告は,変形性膝関節症を発症して,

膝の痛みにより欠勤することが多く,

欠勤日数が出勤日数を上回るようになり,

最後の方は,1日も出勤しなくなりました。

 

 

 

 

さらに,原告は,被告会社に対して,

症状が回復する可能性を裏付ける

診断書を提出していませんでした。

 

 

そのため,原告の病状や勤務状況からすれば,

原告は,労働契約で定められた職務を全うできない

と判断されてもやむをえないとして,

雇止めについては理由があると判断されました。

 

 

また,相当な手段だったのかを判断する際に,

別の業務への配置転換をして雇止めを回避すべきだったか

が検討されましたが,原告は,仕事内容が限定されており,

勤務形態も深夜勤務に限定されていたので,

職場復帰の見通しがたたない原告について,

配置転換をしなくても問題はないと判断されました。

 

 

欠勤が多すぎるので,雇止めもいたしかたないと思いますが,

一点気になることがあります。

 

 

それは,被告会社が原告の主治医や

被告の産業医の意見を聞いていないという点です。

 

 

主治医や産業医の意見を聞いて,

病状や回復見込みを慎重に検討して,

雇止めを判断すべきだったと考えます。

 

 

病気で休んでいる労働者は,雇止めされれば,

今後どうやって生活していこうか途方に暮れるので,

病気の労働者を雇止めするには,

主治医や産業医の意見を聞くという

慎重な手続きが求められるべきと考えます。

会社から退職勧奨を受けた場合の対処法

会社から退職をすすめられた場合,

労働者が会社をやめたくなかったり,

このまま会社の言いなりになるのには納得がいかない場合,

どのように対処すればいいのでしょうか。

 

 

まず,会社から退職をすすめられた場合,

労働者は,会社を辞めたくないのであれば,

きっぱりと「辞めません」と断ればいいのです

 

 

 

 

会社が退職をすすめてきても,労働者には,

これに応じる義務はありませんので,断固として拒否してください。

 

 

それでも会社がしつこく退職をすすめてくるようであれば,

内容証明郵便で,退職をすすめることをやめるように通告します

 

 

内容証明郵便を出せば,こういった退職勧奨はとまることが多いです。

 

 

会社が退職をすすめてきて,労働者がこれに応じて,

退職届をだしてしまった場合,会社が退職届を受け取ってしまえば,

労働契約が合意によって解約されてしまいます。

 

 

このような合意解約の場合,労働者が,あとから考えて,

やっぱり退職を撤回したいと思い返しても,

会社が退職の撤回に同意してくれない限り,撤回はできません。

 

 

例外として,労働者が退職届を会社に提出する際に,

会社から騙されて,労働者が勘違いしていたり,

会社から退職するように執拗に強要されたために,

退職届をだしてしまったような場合には,

退職が無効になったり,取り消したりできることがあります。

 

 

例えば,懲戒解雇される理由がないのに,

懲戒解雇されれば退職金が支給されなくなるから,

その前に退職届を提出するようにすすめられて,

労働者がこれを信じて退職届を提出してしまったような場合です。

 

 

 

 

しかし,労働者が退職を無効にしたり,取り消したりできるのは,

社長などから,虚偽の事実を述べられたり,

しつこく退職を強要されたことを,

ボイスレコーダーなどで録音しておくなどして,

これらの事実を証明できる証拠がある場合に限られます。

 

 

通常,退職勧奨は突然言われて,労働者が戸惑っているうちに,

労働者が退職届を提出してしまうことが多いので,

ボイスレコーダーで録音していることが少なく,

社長などから虚偽の事実を述べられたり,

しつこく退職を強要されたことを証明するのが困難なのです。

 

 

このように,会社から理由はどうであれ,

退職届を出すように求められても,労働者は,

退職に納得していないのであれば,

その場で退職届を書いてはいけません

 

 

労働者は,「いったん考えさせてください」と言って,

回答を留保して,専門家へ相談して,

対処法をアドバイスしてもらった後に,回答すればいいのです。

 

 

いったん退職届を出してしまうと,非常に争いにくくなりますので,

その場で即答せずに,誰かに相談してください。

 

 

逆に,会社が解雇を通告してきた場合,

会社は労働者をそう簡単に解雇できませんので,

解雇の方が労働者は争いやすいのです。

 

 

①労働者が自分から会社をやめる自己都合退職や

②労働契約の合意解約を後から争うのは困難ですが,

③解雇は争いやすいので,法律相談の事案が

①自己都合退職,②労働契約の合意解約,③解雇

のどれにあたるのかを検討します。

 

 

会社はこの3つを明確に区別していないこともあるので,

この3つのどれかあいまいな場合には,

会社に解雇理由証明書を求めるなどして,

本件事案が解雇なのか否かを明確にしておくべきです。

解雇を労働審判で解決する3

昨日に引き続き,労働審判の解説をしていきます。

 

 

労働審判で労働者が復職を求めず,

金銭解決の調停が成立する場合,

次のような調停の内容になります。

 

 

 

 

まず,会社が解雇を撤回します。

 

 

会社が解雇を撤回すると,会社と労働者との労働契約が

復活するのですが,解雇があった日に,

会社と労働者が労働契約を合意で解約します。

 

 

労働契約を合意解約することで,

労働者は,会社に復職する必要がなくなります。

 

 

合意解約の日を解雇があった日からずらしてしまうと,

その間の未払賃金はどうするのか,

その間の社会保険はどうするのか,

仮払いを受けている失業給付はどうするのか

という問題が発生して,事後処理がややこしいことになります。

 

 

解雇があった日に合意解約すれば,

これらのややこしい問題が生じないので,

労働審判で調停をするときには,通常,

解雇があった日を合意解約の日とすることが多いです。

 

 

次に,解雇があった日で合意解約をすると,

本来,未払賃金が発生しないことになるのですが,

解決金という名目で,会社から労働者に対して,金銭を支払わせます

 

 

解決金という名目であれば,一時所得となり,源泉徴収されません。

 

 

この解決金をいくらにするのかが,調停成立の鍵となります。

 

 

 

 

この解決金の金額ですが,給料の何ヶ月分かで調整することが多いです。

 

 

あまりにも酷い解雇の場合は,

1年分で交渉することになりますし,

解雇が無効になるのか微妙な場合は,

6ヶ月から3ヶ月ほどで交渉することもあります。

 

 

この解決金を多くする方法として,

私は,解雇無効の主張と同時に未払残業代請求をしています。

 

 

労働者を解雇するような会社は,

通常,残業代を支払っていないことが多いです。

 

 

労働者の給料が低い場合,

解決金は給料の何ヶ月分となり,

解決金が低くなってしまいますが,

労働者が長時間残業を2年間していたなら

(未払残業代の消滅時効は2年です),

未払残業代はある程度の金額となり,

解雇無効の未払賃金とあわせれば,

解決金が大きな金額となるからです。

 

 

労働者は,解雇された会社とのトラブルを早く解決して,

新しい就職先で働きたいことを願うことが多いので,

労働審判であれば3回の期日で裁判手続が早く終わるので,

解雇を解決する手段としてよく利用されます。

 

 

もっとも,労働審判では,会社がかたくなな態度をとり,

調停が成立せずに,裁判所の最終解決案である労働審判がくだされても,

会社が2週間以内に異議を申し立てれば,

通常の裁判に移行してしまい,解決が長引くため,

やむなく労働者側が譲歩しなければならないこともあります。

 

 

会社の態度や,クライアントの思い,解雇が無効となるかなど

のさまざまな事情を総合考慮して,クライアントにとって

ベストな解決ができるように,労働審判を活用していきます。