仕事が原因で腰痛になったら労災を検討する

介護施設で働いている人が,入居者の入浴介助

をしているときにぎっくり腰になった場合,

労災と認められるのでしょうか。

 

 

 

 

労働者に生じる腰痛の発症要因には,加齢による影響,

運動不足による腰部・腹筋などが弱くなっているという個人的な要因と,

腰に過度の負担を加える労働態様,労働環境などの職業的な要因

があるため,仕事によって腰痛が発症したと

判断するのが困難であるといわれています。

 

 

腰痛の労災の認定基準では,腰痛を次の2つに分類しています。

 

 

①災害性の原因による腰痛(突然腰痛になる場合)

 

 

②災害性の原因によらない腰痛

(徐々に腰に負担が積み重なって腰痛になる場合)

 

 

まず,①災害性の腰痛は,次の要件を満たす必要があります。

 

 

(1)腰部の負傷または腰部の負傷を生ぜしめたと考えられる

通常の動作と異なる動作による腰部に対する急激な力の作用が

業務遂行中に突発的な出来事として生じたと

明らかに認められるものであること。

 

 

ようするに,普段とは違う動作をして腰に

急激な力が突発的に加わったということです。

 

 

具体的には,重量物を運んでいる最中に転倒したり,

重い荷物を取り扱ったときに不適当な姿勢をとったことで,

腰に過度な負担が生じたときなどです。

 

 

 

(2)腰部に作用した力が腰痛を発生させて,

または腰痛の既往症もしくは基礎疾患を

著しく増悪させたと医学的に認めるに足りるものであること。

 

 

次に,②非災害性の腰痛には,次の2つがあります。

 

 

(1)腰部に過度の負担がかかる業務に比較的短期間

(おおむね3ヶ月から数年以内)従事する労働者に発症した腰痛

 

 

(2)重量物を取り扱う業務または腰部に過度の負担がかかる作業態様

の業務に相当長期間(おおむね10年以上)にわたって

継続して従事した労働者に発症した慢性的な腰痛

 

 

ここでいう腰に負担のかかる業務とは,次のものです。

 

ア:おおむね20キログラム程度以上の重量物または

軽重不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務

 

イ:腰部にとって極めて不自然ないし非生理的な姿勢で

毎日数時間程度行う業務

 

ウ:長時間にわたって腰部の伸展を行うことのできない

同一作業姿勢を持続して行う業務

 

エ:腰部に著しく粗大な振動を受ける作業を継続して行う業務

 

 

さて,介護施設で入浴介助をしていて労働者がぎっくり腰になった場合,

普段とは違う動作をして腰に急激な力が突発的に加わったのであれば,

①災害性の腰痛と認定される可能性があります。

 

 

また,入浴介助を3ヶ月から数年間

継続的に行っていたのであれば,

上記のアやイに該当して,

②非災害性の腰痛と認定される可能性があります。

 

 

腰痛の労災を検討する場合,

どれくらいの就労期間中,

どれくらいの時間,

どんな物を,

どのような頻度で運んでいたのか,

どういった姿勢をとる必要があったのか

を検討することが重要になります。

 

 

仕事が原因で腰痛になったのではないかと思ったならば,

労災が利用できないかを検討してみてください。