病気で欠勤が多すぎると雇止めされてしまうのか

非正規雇用の労働者が,私傷病(仕事とは関係ない病気のことです)

で欠勤を繰り返したところ,会社から勤怠不良を理由に雇止め

(非正規雇用労働者の契約期間が満了した後,契約が更新されず,

辞めなければならなくなってしまうことです)されてしまった場合,

このような雇止めは有効なのでしょうか。

 

 

本日は,私傷病による勤怠不良を理由とする

雇止めの適法性が争われた日本郵便(新東京局・雇止め)事件

(東京地裁平成29年9月11日判決・労働判例1180号56頁)

を紹介します。

 

 

まず,雇止めを争う場合,解雇よりもハードルがあがります

 

 

 

 

雇止めは,更新が何度も行われて,非正規雇用労働者が,

今後も雇用が継続されると期待することについて,

合理的な理由が認められることが必要です。

 

 

この雇用継続の期待についての合理的な理由が認められると,

次に,通常の解雇と同じように,雇止めに理由があるのか,

雇止めが相当な手段だったのかが判断されます。

 

 

つまり,雇止めの場合は,解雇にはない,

雇用継続の期待についての合理的な理由という

もう一つのハードルを超えなければいけないため,

解雇よりも雇止めの方が,労働者にとって不利なのです。

 

 

さて,本件事件では,8年間にわたり,

6ヶ月ごとに有期労働契約が更新されてきたことから,

原告に対する雇用継続の期待についての

合理的な理由は認められました。

 

 

そこで,私傷病による勤怠不良を理由とする雇止めについて,

理由があるのか,相当だったのかが検討されました。

 

 

原告は,変形性膝関節症を発症して,

膝の痛みにより欠勤することが多く,

欠勤日数が出勤日数を上回るようになり,

最後の方は,1日も出勤しなくなりました。

 

 

 

 

さらに,原告は,被告会社に対して,

症状が回復する可能性を裏付ける

診断書を提出していませんでした。

 

 

そのため,原告の病状や勤務状況からすれば,

原告は,労働契約で定められた職務を全うできない

と判断されてもやむをえないとして,

雇止めについては理由があると判断されました。

 

 

また,相当な手段だったのかを判断する際に,

別の業務への配置転換をして雇止めを回避すべきだったか

が検討されましたが,原告は,仕事内容が限定されており,

勤務形態も深夜勤務に限定されていたので,

職場復帰の見通しがたたない原告について,

配置転換をしなくても問題はないと判断されました。

 

 

欠勤が多すぎるので,雇止めもいたしかたないと思いますが,

一点気になることがあります。

 

 

それは,被告会社が原告の主治医や

被告の産業医の意見を聞いていないという点です。

 

 

主治医や産業医の意見を聞いて,

病状や回復見込みを慎重に検討して,

雇止めを判断すべきだったと考えます。

 

 

病気で休んでいる労働者は,雇止めされれば,

今後どうやって生活していこうか途方に暮れるので,

病気の労働者を雇止めするには,

主治医や産業医の意見を聞くという

慎重な手続きが求められるべきと考えます。