郵便局における正社員と非正規雇用労働者の労働条件の格差は不合理か

最近,正社員と非正規雇用労働者との労働条件の格差

が不合理であるとして,労働契約法20条違反

が争われるケースが増えています。

 

 

本日は,日本郵便において,正社員と非正規雇用労働者の労働条件

の相違が不合理か否かが争われた大阪地裁平成30年2月21日判決

(労働判例1180号・26頁)について解説します。

 

 

一般的に,正社員と非正規雇用労働者との仕事内容や責任,

配置の変更が同じであれば,手当等の労働条件は

同じにしないと不合理と考えられます。

 

 

他方,正社員と非正規雇用労働者との仕事内容や責任,

配置の変更について,正社員の方が負担が重く,

その見返りの意味も含めて,正社員に,

手厚い手当等が支給されることは,不合理とはいえないと考えられます。

 

 

 

 

 

日本郵便では,正社員は,郵便物の集荷や配達といった仕事以外に,

郵便局内部の事務作業も行い,昇任によってシフト管理や企画立案,

労務管理といった管理業務を行い,異動や配置転換が実施されています。

 

 

他方,非正規雇用労働者は,郵便物の集荷や配達

といった仕事に限定され,昇任はなく,異動や配置転換はありません。

 

 

このように,正社員と非正規雇用労働者との間に,

仕事内容や責任,配置の変更について,違いが存在します。

 

 

そうなると,正社員と非正規雇用労働者との

手当などの労働条件について違いがあっても,

不合理とはいえないと判断されそうです。

 

 

しかし,本件では,年末年始勤務手当,住居手当,扶養手当について,

正社員に支給されているのに,非正規雇用労働者に

支給されていないのは不合理と判断されました。

 

 

まず,年末年始勤務手当について,郵便局の労働者は,

普通の会社は休みとしている12月29日から1月3日に

年賀状の集荷と配達をしなければならず,

1年で最も繁忙な時期に働いた場合に,

年末年始勤務手当として一律の金額が支給されています。

 

 

 

 

年末年始勤務手当は,繁忙期である年末年始に働いたことに

注目して支給される性質のものであり,

非正規雇用労働者も正社員と同様に年末年始に働いているので,

非正規雇用労働者にも同じ取扱にする必要があります。

 

 

そのため,年末年始勤務手当の性質から,

正社員にのみ支給して,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

住居手当については,配転に伴う住宅の費用負担の軽減

という性質があり,配転が予定されている正社員に支給されて,

配転が予定されていない非正規雇用労働者に支給されなくても,

問題がないように思えます。

 

 

しかし,正社員の中にも,配転が予定されていない労働者がいるのに,

正社員全員に住居手当が支給されており,

住居手当の支給があるのとないのとでは,

最大で月額2万7000円の差が生じていることから,住居手当を,

正社員にのみ支給し,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

これまでの裁判例は,配転が予定されているか否かで,

住居手当の支給に差があっても,不合理とはいえないと

判断される傾向にあったため,

住居手当で不合理と判断されたのは画期的だと思います。

 

 

そして,扶養手当については,労働者が扶養する家族の生活保障

としての性質があり,扶養家族の有無や状況に応じて

一定額が支給されており,扶養家族の状況によっては,

支給額が大きくなることから,扶養手当を正社員にのみ支給し,

非正規雇用労働者に支給しないことは不合理と判断されました。

 

 

本判決は,仕事や内容や責任,配転の可能性で差異があっても,

手当の性質に注目して,手当の差異が不合理であると判断される

余地があること,手当の金額で大きな格差が生じることも

考慮されることが,これまでの裁判例と異なるところであり,

労働者にとって有利に活用できそうです。

経歴詐称による解雇が有効になるには

私立高校の数学の教師が経歴詐称を理由に解雇された事件がありました

(東京高裁平成29年10月18日判決

学校法人D学園事件・労働判例1176号18頁)。

 

 

経歴詐称といえば,数年前に,

報道ステーションのコメンテーターをしていた

ショーン・マクアードル・川上氏の問題が有名です。

 

 

本日は,経歴詐称の解雇がどのような場合に

有効になるのかについて説明します。

 

 

まず,被告の学校法人の就業規則には,解雇事由として,

「採用に関し提出する書類に重大な虚偽の申告があったとき」

と記載されていました。

 

 

 

 

この就業規則の記載をどのように解釈するかが問題となります。

 

 

ここで,解雇とは,労働者の働く機会を一方的に奪うものであり,

労働者は,解雇されると,収入源を失い,生活が苦しくなることから,

解雇は,そう簡単にできず,厳しい要件を満たす必要があります。

 

 

そこで,労働者を解雇できる理由である経歴詐称とは,

今後の雇用契約の継続を不可能とするほどに会社との信頼関係を

大きく破壊するに足る重大な経歴を詐称した場合に限定されます。

 

 

本件においては,原告の数学教師が提出した履歴書に記載されていた

「中学校バレーボールコーチ勤務」という職歴が

虚偽であると問題になりました。

 

 

原告の数学教師は,外部指導者としてバレーボールコーチ

として雇用されていたわけではなく,個人的に依頼されて

コーチ業務のお手伝いをしていただけなので,

「中学校バレーボールコーチ勤務」との記載は,

事実と異なる点がありました。

 

 

しかし,原告がコーチ業務のお手伝いをしていたのは

事実であり,その期間も2ヶ月と短期間でした。

 

 

また,原告は,体育教師ではなく数学教師として採用

されているのであり,数学教師としての能力や適格性を判断するのに,

バレーボールコーチの経歴はあまり重視されるものではなく,

原告を採用する際の重大な要素とはなっていませんでした。

 

 

そのため,「中学校バレーボール勤務」という虚偽の記載が,

今後の雇用契約の継続を不可能とするほどに

信頼関係を破壊するに足る重大な経歴詐称ではないと判断されました。

 

 

もっとも,原告は,他の教師と連携・協力して仕事を進めていく

姿勢に欠けており,上司の注意に対しても反発を繰り返し,

問題行動が改善されておらず,教師という職種のため,

事務職へ配転することができないため,

勤務態度不良による解雇は有効とされてしまいました。

 

 

 

 

経歴詐称について,その労働者を採用するにあたって重視したポイント

(例えば,数学教師であれば,高卒か大卒か,

大学で数学の研究をしていたか,

他の学校で数学を教えていたか等の学歴や職歴)に詐称がないのであれば,

経歴詐称を根拠に解雇するのは難しいと考えられます。

 

 

経歴詐称で解雇された場合には,

会社との信頼関係を大きく破壊するに足る重大な

経歴を詐称したかを検討する必要があります。

残業時間の上限規制を厳格に

今年の6月下旬に働き方改革関連法が成立し,現在,

厚生労働省において,法律の施行に伴う関係政令

を制定する作業が進められています。

 

 

 

 

つい最近,厚生労働省から,この政令案が発表されました。

 

 

http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000176581

 

 

働き方改革関連法をより詳しく理解するために

重要な政令案ですので,解説します。

 

 

働き方改革関連法では,これまで青天井だった

残業時間について,罰則付きの上限規制がもりこまれました。

 

 

これ以上の時間,残業させた場合,会社に対して刑事罰を科すよ

と規制することで,長時間労働を抑制しようとするものです。

 

 

この残業時間の上限が,原則1ヶ月45時間まで

となっているのですが,36協定で例外をもうければ,

1ヶ月100時間未満まで残業させても合法となり,

1ヶ月の残業が100時間を超えた場合に初めて

罰則が科されるようになっています。

 

 

この1ヶ月100時間の残業時間が,

精神障害の労災基準であることから,

過労死や過労自殺を助長すると批判されています。

 

 

1ヶ月100時間未満までなら残業が許容されるかのような

法律構成になっているので,政令案では,

上限ぎりぎりまではOKというわけではない

と示していくことになっています。

 

 

 

具体的には,36協定(残業できる条件を定める労使協定のことです)

で労働時間を延長するための留意すべき事項として,

次のような指針案が示されました。

 

 

「労働時間の延長をできる限り短くする

よう努めなければならないこととすること」

 

「年720時間までの特例に係る協定を締結するに当たっては,

次の点に留意すること。

・あくまで通常予見することができない業務量の大幅な増加等の

臨時の事態への特例的な対応であるべきこと。

・具体的な事由を挙げず,単に「業務の都合上必要な時」

「業務上やむを得ないとき」といった定め方は認められないこと。

・特例に係る協定を締結する場合にも,

可能な限り原則である月45時間,

年360時間に近い時間外労働とすべきであること。」

 

「使用者は,特例の上限時間内であっても,

労働者への安全配慮義務を負うこと」

 

 

残業時間を原則の1ヶ月45時間までに抑制し,

例外的な1ヶ月100時間未満をなるべく使えないように

しようとしているので,労働者にとっては喜ばしいことです。

 

 

抽象的な「業務の都合上必要な時」「業務上やむを得ないとき」

といった規定で1ヶ月100時間未満の例外が適用されてしまえば,

なし崩し的に1ヶ月100時間未満の残業が

許容されてしまうおそれがあります。

 

 

そこで,このような抽象的な規定では例外は認められないとして,

1ヶ月100時間未満の残業が許容されないように,

規制を強化するべきと考えます。

 

 

また,36協定を締結するには,

労働者の中から過半数を代表する者を選出して,

その過半数代表者が会社と36協定を締結します

 

 

この過半数代表者は,往々にして,

会社の社長の意向や影響が及んだ形で選出されます。

 

 

社長が適当に,社員をつかまえて,

この書面にサインしてと言って,

36協定が締結されているのが現状だと思われます。

 

 

残業時間の上限規制は,労働者の健康を守る重要なものであり,

そのような重要なことを定める36協定を

いい加減な手続で適当に定めては,労働者の保護として不十分です。

 

 

そこで,36協定を締結する過半数代表者の選出にあたって,

会社の意向が及んでいる場合は手続違反であり,

そのような36協定には効力が認められないことを

明確に規定すべきと考えます。

 

 

過労死や過労自殺をなくすためにも,

残業時間の上限規制は,非常に重要ですので,

厚生労働省の動きに注目していきます。

お盆休みのお知らせ

当事務所は,8月15日,お盆休みのため,営業しておりません。

 

その他の日は,暦どおりに営業しております。

研修の時間は労働時間なのか

屋内プールでアルバイトをしている労働者が,

研修期間中,プールの監視員の仕事をしたものの,

会社からは,研修期間中の給与は支給しないと言われてしまいました。

 

 

 

 

この労働者は,1日8~9時間働き,

4日間で合計34時間働きました。

 

 

当初,会社からは,研修期間の給与は3万円と言われていましたが,

この3万円すら支払われなくなってしまいました。

 

 

本日は,研修は労働時間となるのか否かについて解説します。

 

 

まず,労働時間といえるためには,

労働者が会社の指揮命令下に置かれれている必要があります。

 

 

所定労働時間(会社から決められている働く時間)内の労働は,

会社の指揮命令下に置かれれています。

 

 

そのため,所定労働時間内に行うべき研修については,

労働時間性が認められます

 

 

 

 

それでは,所定労働時間内に行われるべきものとはいえない

研修についてはどうでしょうか。

 

 

この点について,行政解釈は,

労働者が使用者の実施する教育に参加することについて,

就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく

自由参加のものであれば,時間外労働にはならない」とされています。

 

 

すなわち,業務との関連性が認められる研修は,

会社の明示または黙示の指示に基づくものであり,

その参加が事実上強制されているときには,

労働時間と認められます。

 

 

他方,研修への自由参加が保障されている場合には,

労働時間とは認められないことになります。

 

 

さて,冒頭の相談の場合,研修とはいうものの,

8~9時間,プールの監視員として,実質的に働いていますので,

会社の指揮命令下に置かれていたといえますので,

研修の時間は労働時間にあたると考えられます。

 

 

研修の時間は労働時間なので,労働者は,

労務を提供した代わりに,会社に対して,給料を請求できます。

 

 

また,研修期間の給与3万円についても,

研修期間の総労働時間を3万円で割って,

時給を計算した場合,最低賃金を下回っている可能性があります。

 

 

最低賃金以下で働かせることは明らかに違法であり,労働者は,

最低賃金と実際の給料との差額を会社に請求することができます

 

 

研修の労働時間性が問題になるのは,

所定労働時間外に行われた研修に参加した場合に,

残業代が請求できるかというケースであり,

所定労働時間内に研修という名のもと,

実質的に仕事をしていた場合には,

労働時間と認められるのです。

東京医科大学の不正入試から労働の男女差別を考える

東京医科大学の入試で,男性受験生に加点して,

女性受験生が不利になる得点操作が行われていた

ことが明らかになりました。

 

 

 

この得点操作は,女性受験生の合格をおさえるのが目的で,

不正入試問題の調査委員会は,

女性というだけで不利な得点調整を行うことは,

もはや女性差別以外の何物でもなく,

断じて許される行為ではないと厳しく批判しています。

 

 

東京医科大学は,入試で女性差別をした理由として,

女性は結婚や出産で長時間勤務ができないことをあげています。

 

 

当事者の立場にたてば,性別という自分の力では

どうにも変えることができない根源的なことで,

不利益を被るというのは,非常に理不尽であり,

到底納得できず,怒りがこみあげてきます。

 

 

この怒りに多くの人が共感し,

東京医科大学の不正入試が大々的な問題

となっているのだと思います。

 

 

 

この男女差別について,労働法の世界では,

雇用機会均等法において禁止されています。

 

 

雇用機会均等法は,5条と6条で,

募集・採用から,配置・昇進・降格・教育訓練,福利厚生,

職種・雇用形態の変更,退職勧奨,定年・解雇・雇止めなど,

雇用上の各ステージにおける性別による差別を禁止しています。

 

 

さらに,「労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等

に関する規定に定める事項に関し,事業主が適切に対処するための指針

において,詳細な男女差別の禁止事項が定められています。

 

 

例えば,大学入試と比較的近い,

会社における募集・採用の段階において,

上記の指針では,次のような行為が禁止事項に該当します。

 

 

イ 募集又は採用に当たって,その対象から

男女のいずれかを排除すること

 

ロ 募集又は採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること

 

ハ 採用選考において,能力及び資質の有無等を判断する場合に,

その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること

 

ニ 募集又は採用に当たって男女のいずれかを優先すること

 

ホ 求人の内容の説明等募集又は採用に係る情報の提供について,

男女で異なる取扱いをすること

 

 

このうち,ハの中には,「募集又は採用に当たって実施する

筆記試験や面接試験の合格基準を男女で異なるものとすること。

と記載されており,また,ニの中には,

採用選考に当たって,採用の基準を満たす者の中から

男女のいずれかを優先して採用すること。」と記載されています。

 

 

 

 

大学の入学試験と会社の入社試験は異なりますが,

大学の入学試験においても,上記の禁止事項は妥当するでしょう。

 

 

入社試験で男女差別があり,

労働者に財産的・精神的損害が発生すれば,

会社は,賠償責任を負います。

 

 

東京医科大学で,前近代的な男女差別が10年以上も

まかりとおっていたことに驚きますし,

多様性が尊重されるべき現代において,

多くの人の怒りをかうのはもっともなことです。

 

 

問題の背景には,医師の長時間労働がありそうです。

 

 

女性は出産や育児で長時間働けないから,男性を優遇する。

 

 

しかし,労働時間の削減が叫ばれている

現在において,この発想は時代遅れです。

 

 

労働時間を削減して成果をあげる労働生産性の向上が重要なのです。

 

 

医師の労働時間を減らして,

医師のワークライフバランスが確保できる労働環境が整えば,

女性医師が離職することは減り,女性医師が活躍できるようになります。

 

 

そうなれば,東京医科大学のような不正入試をする意味がなくなり,

入試における男女差別が根絶されるのではないかと考えます。

 

 

早急に,医師の労働時間を改善していくべきなのです。

休日の朝に出勤を命じることはパワハラか

教師が休日の朝に突然,校長や教頭から

「今すぐ出勤して」という連絡を受けた場合,

このような連絡はパワハラにあたるのでしょうか。

 

 

また,教師がこの連絡に従って休日に働いた場合,

休日労働の割増賃金を請求することができるのでしょうか。

 

 

まず,休日労働の朝に出勤を命じることが

パワハラに該当するかについて検討します。

 

 

そもそも,職場のパワハラとは,

同じ職場で働く者に対して,

職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に,

業務の適正な範囲を超えて,精神的・身体的苦痛を与える

又は職場環境を悪化させる行為と定義されています。

 

 

 

 

そして,厚生労働省は,職場のパワハラに

あたりうる行為類型として,以下の6つをあげています

職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告)。

 

 

①身体的な攻撃(暴行・傷害)

②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)

③人間関係からの切り離し(隔離・仲間はずし・無視)

④過大な要求

(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制,仕事の妨害)

⑤過小な要求(業務上の合理性なく,

能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

 

 

もっとも,上記の6類型は,職場のパワハラのすべてを

網羅するものではなく,最終的に損害賠償請求できる

違法なパワハラか否かは,社会通念に照らして

ケースバイケースで判断することになります。

 

 

パワハラが人事権の行使のかたちで行われた場合には,

次の3つの基準に照らして違法か否かが判断されます。

 

 

ア 当該業務命令が業務上の必要性に基づいているか

イ 当該業務命令が退職強要目的など社会的にみて

不当な動機・目的に基づきなされたか

ウ 当該業務命令が労働者に対して

通常甘受すべき程度を超える不利益を与えたか

 

 

さて,休日の朝に出勤を命じることは,

パワハラの6類型には該当しません。

 

 

また,仮に,休日にしなければならない仕事があり,

嫌がらせ目的もなく,代休が与えられているのであれば,

損害賠償請求できる違法なパワハラとはいえないと考えられます。

 

 

次に,教師は,休日労働した場合に,

割増賃金を請求できるのかについて検討します。

 

 

 

公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法

(「給特法」といいます)第3条2項には

教育職員については,時間外勤務手当及び休日勤務手当は,支給しない。

と定められています。

 

 

教師に対しては,以下の「超勤4項目」の場合以外は,

原則として時間外勤務を命じないこととされています。

 

 

①校外実習その他生徒の実習に関する業務

②修学旅行その他学校の行事に関する業務

③職員会議に関する業務

④非常災害などのやむをえない場合の業務

 

 

そして,教師に対して,残業代が支払われない代わりに,

給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されています。

 

 

しかし,実際には上記の超勤4項目以外の業務を

時間外や休日にせざるをえないことはよくあるものの,

実務上は残業代は支払われません。

 

 

結論として,教師は,休日労働しても割増賃金を請求するのは困難です。

 

 

もっとも,教師が休日に勤務することが命じられて勤務した場合,

代休が与えられます。

 

 

本来,休日に勤務を命じることは,

労働者のワークライフバランスの観点から負担が重く,

また,教師の場合は,超勤4項目でしか

休日の勤務を命じることができないのですが,

実際は,超勤4項目以外でも休日労働がまんえんしています。

 

 

教師の労働環境を改善するためにも,

給特法を廃止して,教師にも労働基準法に基づいて

残業代が支払われるようにするべきと考えます。

本を読む人だけが手にするもの

 

 

教育改革実践家である藤原和博先生

本を読む人だけが手にするもの

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

なぜ本を読むといいのか?

 

 

子供から,このような質問がされたときに,

子供にわかりやすく説明できる親は少ないのではないでしょうか。

 

 

藤原先生は,膨大な読書の体験をもとに,この質問に対して,

ご自身の明確なご意見を提示しており,それが大変納得できます。

 

 

まず,わかりやすいところからいくと,

本を読むか読まないかで,報酬の優劣が決まるということです。

 

 

 

 

飲食店などのアルバイトの1時間あたりの報酬は約800~1000円,

会社員や公務員の1時間あたりの報酬は約2000~5000円です。

 

 

1時間あたりの報酬が1万円を超えるとエキスパートになります。

 

 

医師,弁護士,コンサルタントなどの専門家です。

 

 

人気の弁護士であれば,1時間あたりの報酬は約3万円,

マッキンゼーのシニアコンサルタントであれば,

1時間あたりの報酬は約8万円になります。

 

 

エキスパートは,ほぼ読書をしています。

 

 

なぜなら,知識はつねに入れ替わっていくものなので,

最新の情報を持っている人しか顧客の期待に

応えることができないからです。

 

 

さらに,さまざまな仕事のなかで,時間あたりに稼ぐ

効率が最も高いのは講演であり,一流の作家やジャーナリストは,

1時間あたりの講演の報酬は約100万円になります。

 

 

さまざまな分野で一流と呼ばれる人は,

話すだけで1時間あたり100万円を稼ぐのですが,

その根底にあるのは,聴衆を満足させるだけの知識であり,

その知識を獲得するために,例外なく本を読んでいるのです。

 

 

1時間あたりに生み出す付加価値を

あげるためには読書が欠かせないのです。

 

 

次に,本を読むことで,作者の脳のかけらを

自分の脳につなげることができるようになります。

 

 

 

 

一人の人生で,自分が見て経験できることには限界があります。

 

 

そこで,他人が獲得した脳のかけらを自分の脳に

たくさんくっつけることができれば,

自分の脳を拡張することができます。

 

 

自分とはまったく異なる他人の脳のかけらをくっつけることで,

自分の持っている脳では受容できなかったものが

受容できるようになります。

 

 

そうすることで,世界をみるための視点や知恵

を獲得することができ,読者は,世界の見方を広げて,

多面的かつ複眼的に思考できるようになります。

 

 

また,たくさんの著者の脳のかけらを自分の脳につなげば,

さまざまな脳の人と交流が可能になり,

他者と世界観を共有して,味方を増やすことができます。

 

 

味方を増やすことで,夢を実現するときに他者から

信頼や共感を得られて,信任を受けられます。

 

 

このように,読書をすることで,著者の脳のかけらを

自分の脳にくっつけることができ,知識が増加して,

自分の中にあった既存の知識や体験と化学反応を起こして,

新しい知恵がうまれてくるのです。

 

 

他人の脳のかけらを自分の脳にくっつけて,

脳を拡張させていくためには,

さまざまな分野の本を数多く読む,

乱読が適しているのです。

 

 

そして,読書をすることで,

クリティカルシンキングを磨くことができます。

 

 

 

クリティカルシンキングとは,自分の頭で考えて,

主体的な意見を持つという態度で,

本質を洞察する能力や複眼思考と呼ばれています。

 

 

物事を短絡的なパターン認識でとらえるのではなく,

多面的にとらえるのです。

 

 

マスコミの報道を一面的に捉えるのではなく,

何か裏の事情があるのではないか,

反対の立場から考えるとどうなるのか,

などと多面的に捉えることで,

自分の考えのあつみを増していくのです。

 

 

物事を多面的に捉えるためには,

できるだけ多くの考え方に触れて,

自分なりの意見を持つことが重要になるので,

クリティカルシンキングを養うためにも読書が役に立つのです。

 

 

読書をすることのメリットが大変わかりやすく説明されており,

読書をするモチベーションが一気にあがる名著ですので,

紹介させていただきました。

仕事が原因で腰痛になったら労災を検討する

介護施設で働いている人が,入居者の入浴介助

をしているときにぎっくり腰になった場合,

労災と認められるのでしょうか。

 

 

 

 

労働者に生じる腰痛の発症要因には,加齢による影響,

運動不足による腰部・腹筋などが弱くなっているという個人的な要因と,

腰に過度の負担を加える労働態様,労働環境などの職業的な要因

があるため,仕事によって腰痛が発症したと

判断するのが困難であるといわれています。

 

 

腰痛の労災の認定基準では,腰痛を次の2つに分類しています。

 

 

①災害性の原因による腰痛(突然腰痛になる場合)

 

 

②災害性の原因によらない腰痛

(徐々に腰に負担が積み重なって腰痛になる場合)

 

 

まず,①災害性の腰痛は,次の要件を満たす必要があります。

 

 

(1)腰部の負傷または腰部の負傷を生ぜしめたと考えられる

通常の動作と異なる動作による腰部に対する急激な力の作用が

業務遂行中に突発的な出来事として生じたと

明らかに認められるものであること。

 

 

ようするに,普段とは違う動作をして腰に

急激な力が突発的に加わったということです。

 

 

具体的には,重量物を運んでいる最中に転倒したり,

重い荷物を取り扱ったときに不適当な姿勢をとったことで,

腰に過度な負担が生じたときなどです。

 

 

 

(2)腰部に作用した力が腰痛を発生させて,

または腰痛の既往症もしくは基礎疾患を

著しく増悪させたと医学的に認めるに足りるものであること。

 

 

次に,②非災害性の腰痛には,次の2つがあります。

 

 

(1)腰部に過度の負担がかかる業務に比較的短期間

(おおむね3ヶ月から数年以内)従事する労働者に発症した腰痛

 

 

(2)重量物を取り扱う業務または腰部に過度の負担がかかる作業態様

の業務に相当長期間(おおむね10年以上)にわたって

継続して従事した労働者に発症した慢性的な腰痛

 

 

ここでいう腰に負担のかかる業務とは,次のものです。

 

ア:おおむね20キログラム程度以上の重量物または

軽重不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務

 

イ:腰部にとって極めて不自然ないし非生理的な姿勢で

毎日数時間程度行う業務

 

ウ:長時間にわたって腰部の伸展を行うことのできない

同一作業姿勢を持続して行う業務

 

エ:腰部に著しく粗大な振動を受ける作業を継続して行う業務

 

 

さて,介護施設で入浴介助をしていて労働者がぎっくり腰になった場合,

普段とは違う動作をして腰に急激な力が突発的に加わったのであれば,

①災害性の腰痛と認定される可能性があります。

 

 

また,入浴介助を3ヶ月から数年間

継続的に行っていたのであれば,

上記のアやイに該当して,

②非災害性の腰痛と認定される可能性があります。

 

 

腰痛の労災を検討する場合,

どれくらいの就労期間中,

どれくらいの時間,

どんな物を,

どのような頻度で運んでいたのか,

どういった姿勢をとる必要があったのか

を検討することが重要になります。

 

 

仕事が原因で腰痛になったのではないかと思ったならば,

労災が利用できないかを検討してみてください。

解雇に納得できないなら,解雇理由証明書の交付を求める

会社を解雇された(クビになったことです)場合,

労働者は,途方にくれてしまいます。

 

 

「なんで自分が解雇されたのだろう?」

「明日からの生活をどうしたらいいのだろう?」

「家族をどうやってやしなっていけばいいのだろう?」

 

 

 

 

途方にくれていても,解雇に納得がいかないのであれば,

労働者がやるべきことがあります。

 

 

それは,会社に対して,「解雇理由証明書」の交付を要求することです。

 

 

労働基準法22条で,労働者の求めがあった場合,

会社は退職の事由を記載した証明書を交付しなければらならず

解雇の場合には解雇理由を記載しなければなりません。

 

 

(労政時報の人事ポータルjin-Jourより抜粋)

 

なぜ,解雇理由証明書の交付が重要になるかといいますと,

解雇を争う場合,労働者は,会社が主張している解雇理由が

おかしいと主張していくのですが,解雇理由がわからなければ,

攻撃対象である,どういった解雇理由の,

どのような点がおかしいのかについて効果的な主張ができないからです。

 

 

ようするに,解雇理由が明らかでないと解雇が

有効か無効かの判断ができないのです。

 

 

通常,解雇された労働者が会社に対して,

解雇理由証明書の交付を求めた場合,会社は,

解雇理由証明書を交付してきます。

 

 

それでは,会社が労働者の請求を無視して,

解雇理由証明書を交付してこなかった場合,

労働者は,どうすればいいのでしょうか。

 

 

私は,もう一度,会社に対して,解雇理由証明書の交付を求める文書

を送付することをアドバイスします。

 

 

理由は3つあります。

 

 

1つ目の理由は,先ほども書きましたが,

解雇理由がわからないままですと,

解雇が有効か無効か判断できないからです。

 

 

 

 

解雇理由がわからないまま,裁判に突入してしまい,

会社から的確な解雇理由が主張されてしまい,

労働者がその解雇理由にうまく反論できなければ

裁判に負けてしまいます。

 

 

裁判の見通しをたてるためにも,裁判前に

解雇理由を知っておくことが必須と考えます。

 

 

また,裁判になってから解雇理由が分かると,

解雇理由の調査に時間がかかるため,裁判が長引きます。

 

 

裁判の前に解雇理由を明確にして,その解雇理由は有効なのかを

しっかり検討して,見通しをたてるべきです。

 

 

2つ目の理由は,解雇理由証明書に記載されていない解雇理由の

後出しを防止することです。

 

 

会社は,解雇理由証明書に記載されていない解雇理由を

裁判になって後出しすることは可能なのですが,

解雇理由証明書に記載されていない解雇理由は,

会社がその解雇理由を重視していなかったと判断されて,

裁判では重要な争点でなくなります。

 

 

 

 

そのため,会社は,解雇理由証明書に記載されていない解雇理由を

裁判で後出しで主張しても,余り意味がないことになるのです。

 

 

労働者としては,解雇理由証明書に記載された解雇理由だけ

を反論の対象にすればいいのです。

 

 

3つ目の理由は,労働者が2回,3回と解雇理由証明書

の交付を求めても,会社がこれを無視して解雇理由証明書

を交付しないということは,会社が自ら解雇理由がなかったと

認めていることにつながるという点です。

 

 

会社は,解雇理由がないからこそ,解雇理由証明書

を交付できないのだと考えられます。

 

 

もっとも,通常の会社は,なにかしら理屈をつけて,

解雇理由を主張することが多いので3つ目の理由を

主張することはあまりないと思います。

 

 

会社が,労働者から解雇理由証明書の交付を求める文書を

受け取っていないという言い訳をすることがあるかもしれないので,

会社へ解雇理由証明書の交付を求める文書を特定記録郵便で送付すれば,

このような言い訳はつうじなくなります。

 

 

解雇に納得できないときは,まずは

解雇理由証明書の交付を求めましょう