休職後の復職拒否と休職期間満了を理由とする退職取扱

仕事とは関係のない持病が原因で会社を休職していた労働者が,

医師から復職可能との診断を受けたにもかかわらず,

会社が復職を認めず,休職期間満了で,退職させられた場合,

労働者は,退職しなければならないのでしょうか。

 

 

本日は,休職後の復職拒否と休職期間満了を理由とする

退職の取扱が争われた名港陸運事件を紹介します

(名古屋地裁平成30年1月31日判決・労働判例1182号38頁)。

 

 

原告は,トレーラーの運転手です。

 

 

 

 

原告は,胃がんを宣告されて,胃の全摘出手術を受けて退院しました。

 

 

被告会社は,原告に対して,療養・治療に専念してもらうために,

休職命令を発しました。

 

 

被告会社の就業規則には,復職の条件として,

通常の業務に復帰できる健康状態に復したことを

証明することが記載されており,

休職期間満了までに休職事由が消滅しない場合,

自然退職することが記載されていました。

 

 

原告は,主治医の職場復帰可能の診断書を提出し,

被告会社の産業医も,一般的に胃がんの全摘出であっても

術後1年経過すれば症状は安定するので

就労はできると思うと意見を述べました。

 

 

 

しかし,被告会社は,原告が本来ならばもっと早く

復職できた点について不信感を抱き,

休職期間満了で原告を退職扱いにしました。

 

 

そこで,原告は,被告会社に対して,

労働契約上の地位の確認を求めて,裁判を起こしました。

 

 

本件では,原告の休職事由が消滅したのか,

すなわち,原告は,治癒したのかが争点となりました。

 

 

ここで,「治癒」とは,労働者が休職する前に行っていた仕事を

健康時と同じように遂行できる程度に回復していることをいいます。

 

 

この治癒の判断にあたって,医師の意見が重要になります。

 

 

 

本件では,原告の主治医と被告会社の産業医の両者が,

原告の復職を可能と判断しているので,原告は,

既に治癒しており,休職事由は消滅したと判断されました。

 

 

その結果,原告の労働契約上の地位が確認され,

退職扱いされた日以降の未払賃金の支払が認められました。

 

 

さらに,被告会社は,改めて原告と面談することなく,

被告会社が指定する医師への受診を命じたこともなく,

原告からの復職時期の説明要求にも応じずに,

唐突に原告を退職扱いしたので,

手続的な相当性を著しく欠くとして,

30万円の慰謝料請求が認められました。

 

 

休職と復職の手続きにおいて,

会社が医師の意見を無視するようなずさんな対応をすれば,

会社は,労働者に対して,慰謝料を

支払わなければならなくなる可能性があります。

 

 

最近,メンタルヘルスの問題がクローズアップされており,

休職と復職の問題がますます増えていくことが予想されます。

 

 

労働者は,休職と復職を検討する場合には,

まずは療養につとめて,体調を整えて,

主治医に適切な意見書を書いてもらうことが重要になります。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。