安室奈美恵さんの引退から定年を考える

9月16日に平成の歌姫安室奈美恵さんが引退しました。

 

 

ちょうど9月15日に,私は渋谷を観光していました。

 

 

渋谷の町には,安室奈美恵さんの看板やポスターがあふれていました。

 

 

 

 

90年代に,アムラーの聖地であった渋谷には

多くのファンが訪れており,改めて多くの人達から

愛されている歌手なのだと実感しました。

 

 

私が中学生や高校生のころ,カラオケにいくと,必ず誰かが

「Do’t wanna cry」を歌っていたのが懐かしく感じました。

 

 

さて,安室奈美恵さんが40歳で引退する一方で,

働く人の引退である定年が70歳に延長される動きがでてきています。

 

 

共同通信社によれば,政府は,希望する高齢者が

70歳まで働けるように,現行65歳までの雇用継続義務付け年齢

を見直す方向で検討に入ったようです。

 

 

ここで,高齢者の雇用に関する法律について説明します。

 

 

高年齢者等の雇用の安定等に関する法律

(高年法といいます)があります。

 

 

現行の高年法では,8条において,

60歳を下回る定年が禁止されています。

 

 

 

 

また,現行の高年法では,9条において,会社に対して,

65歳までの安定した雇用を確保するために,

次の雇用確保措置のいずれかを講じることを義務付けています。

 

 

①定年年齢の引き上げ

 ②継続雇用制度の導入

 ③定年制廃止

 

 

多くの会社では,このうち,

②継続雇用制度の導入を取り入れており,

①定年年齢の引き上げや③定年制廃止を

選ぶ会社は少ないのが現状です。

 

 

継続雇用制度とは,高年齢者が希望するときは,

定年後も引き続き雇用してもらえる制度のことです。

 

 

現行の高年法では,会社は,継続雇用の対象者を限定しない

継続雇用制度を導入しなければならないので,原則として,

希望者全員が定年後も継続雇用されることになっています。

 

 

この継続雇用制度では,雇用期間を1年とする有期労働契約として,

65歳まで更新するという方法がとられていることがあります。

 

 

そのため,65歳よりも前に,契約を更新されずに

雇止めされることがありえますが,

高年法で65歳までの雇用が義務付けられているので,

雇止めが無効となることが多いです。

 

 

9月17日の敬老の日に総務省統計局が高齢者の人口を公表しました。

 

 

65歳以上の高齢者の人口が28.8%で,

4人に1人の割合であり,

70歳以上の高齢者の人口が20.7%で,

5人に1人の割合です。

 

 

 

 

改めて,少子高齢化が進んでいることがわかります。

 

 

15歳から64歳までの働き手が減少している一方,

65歳以上の人口が増加していることから,

65歳~70歳の方々に働いてもらうことで,

人手不足の解消と年金の受給年齢を延長することで

年金の国家負担を軽減することが背景にあるのだと思います。

 

 

もっとも,70歳まで働きたくないと考えている人がいたり,

人件費が増加することを懸念する会社があったりするので,

今後どうなるか分かりません。

 

 

今は,100年生きる時代ですので,

健康を維持しつつ,長く働いて収入を確保した方が,

人生の戦略においてプラスなのだと考えます。

 

 

安室奈美恵さんのように40歳で引退できる方はなかなかいないので,

健康を維持しながら70歳まで働く計画をたてておくべきだと思います。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

福に憑かれた男

私が所属している青年法律家協会の議長である

名古屋の弁護士の北村栄先生から紹介していただいた

「福に憑かれた男」(著者:喜多川泰)

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

町の小さな書店で起こる物語をつうじて,

人が幸せになるにはどうすればいいのかについて

学ぶことができる素晴らしい小説です。

 

 

主人公の秀三は,突然他界した父親が経営していた

長船堂書店を継ぐことになりました。

 

 

最近話題の事業承継をしたのです。

 

 

ところが,長船堂書店の近くに,巨大な書店が

オープンすることになりました。

 

 

 

 

ただでさえ,長船堂書店の売上が少ないのに,

近くに巨大な書店がオープンすれば,

顧客が巨大な書店へ流出することになり,

ますます売上が減少していきます。

 

 

秀三は,意気消沈し,お店の中で売れ残りの本

を読みながら,不安な生活をしていました。

 

 

秀三に,このような苦難を与えているのは,

実は,秀三に憑いた福の神の仕業だったのです。

 

 

福の神が,秀三に対して,苦難を与え,

秀三が苦難を乗り越えることで成長して

幸せになってもらおうとしたのです。

 

 

私が所属している倫理法人会では,「苦難は幸福の門」といいます。

 

 

 

 

幸福になるための狭き門へつうじる苦難が与えられたのです。

 

 

もっとも,福の神の与える苦難が大きすぎたため,

秀三が諦めかけたので,福の神は,秀三にチャンスを与えます。

 

 

そのチャンスとは,

成功したことを心から楽しんで生きている人との出会いです。

 

 

福の神の計らいにより,秀三は,天晴という老人と出会います。

 

 

そして,天晴は,秀三に対して,次のようなアドバイスをしました。

 

 

「来てくれるお客さん一人ひとりに,

その人の人生に興味を持って接してご覧なさい。

その人が誰で,どういうことに興味があって,

どんな仕事をしていて,趣味は何か。

好きなことや嫌いなことは何であるか。

どんなことに悩んでいて,何に苦しんでいるのか。

『この人はこれからの人生をどういう人生にしたいと考えているんだろう』

ってな具合に,どんなに小さなことでもいいから

興味を持って話をしてみるんじゃよ。」

 

 

目の前にいる人に心から興味を持つ

 

 

秀三は,天晴のアドバイスを素直に実践しました。

 

 

長船堂書店へ来た顧客をよく観察し

,タイミングを見計らって話しかけ,顧客の話を聞き,

顧客が必要としている本を提案します。

 

 

顧客は,本屋で店員に話しかけられることに当初は戸惑いますが,

秀三と話しているうちに,秀三の人柄にひかれ,

悩んでいることを打ち明けてくれるようになります。

 

 

そして,秀三は,顧客の悩みを解決するのにふさわしい本を提案し,

顧客は,その本を読み,悩みを解決していきます。

 

 

すると,顧客は,長船堂書店のファンになり,

じょじょに売上が回復していきました。

 

 

差別化戦略がうまくいきだしたのです。

 

 

秀三は,成功し始めましたが,なぜか不安になりました。

 

 

欲しいものを手に入れると,それを失うことが怖くなるからです。

 

 

秀三は,天晴に相談しました。

 

 

天晴は,何かを手に入れれば幸せと考えている人は,

それを持っている他人をみてうらやましいと思っているだけであり,

他人と比較して幸せを感じようとすると

いつまでたっても幸せになれないと言います。

 

 

そして,天晴は,秀三に対して,自分の人生を

何に使おうとしているのかを考えなさいとアドバイスします。

 

 

考えなければならないのは,どうやって自分の欲しいものを

手に入れるのかではなく,どうしてそれを

手に入れなければならないのか,という自分の使命なのです。

 

 

 

秀三は,自分の使命を自覚し,

それを達成するために必要なものだから,

お金を集める努力をしたり,

商売を成功させる必要があると考えるようになりました。

 

 

自分の使命を自覚すれば,不安はなくなり,迷わなくなるのです。

 

 

最後に,福の神が憑くことになる人を紹介します。

 

 

「人知れず他の人のためにいいことをする」

 「他人の成功を心から祝福する」

 「どんな人に対しても愛をもって接する」

 

 

福に憑かれる人になれるように,今後とも精進していきます。

 

 

人が幸せになるためにはどうすればいいのかについて,

福の神からアドバイスをもらいながら,

楽しく学べることができる素晴らしい小説ですので,

紹介させていただきます。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

セクハラによる労災

職場においてセクハラを受けたことで,

うつ病などの精神疾患を発症した場合,

セクハラの被害者は,労災を利用することができるのでしょうか。

 

 

 

 

本日は,セクハラによる労災について説明します。

 

 

厚生労働省は,「心理的負荷による精神障害の認定基準

という精神障害の労災の基準を定めています。

 

 

この基準では,「精神障害の発病前おおむね6ヶ月間に,

業務による強い心理的負荷が認められること

という要件を満たす必要があります。

 

 

セクハラが強い心理的負荷と認められるのは次のような場合です。

 

 

まず,胸や腰などへの身体的接触を含むセクハラの場合です。

 

 

 

 

身体的接触が,①継続して行われた場合,

②継続していないが,会社に相談しても適切な対応がなく,

改善されなかった,または会社へ相談した後に

職場の人間関係が悪化した場合に,

セクハラによる心理的負荷が「強」と認定されます。

 

 

次に,身体的接触のない性的な発言のみのセクハラの場合です。

 

 

 

 

①発言の中に人格を否定するものを含み,

かつ継続してなされた場合,

②性的な発言が継続してなされ,

かつ会社がセクハラがあると把握していても適切な対応がなく,

改善がなされなかった場合に,

セクハラによる心理的負荷が「強」と認定されます。

 

 

精神疾患の労災の場合,精神疾患発症から6ヶ月間

に生じた出来事をチェックしますが,セクハラの場合は,

いったんセクハラがなされ始めると

セクハラが繰り返し行われる性質があります。

 

 

そこで,精神疾患発症の6ヶ月よりも前にセクハラが始まり,

セクハラが継続している場合には,6ヶ月よりも前に

セクハラが始まった時点からの心理的負荷を評価することになります。

 

 

さて,セクハラは,された方が,

職場の上下関係や支配関係があることで,

「No」と言いづらいところに本質があります。

 

 

セクハラ後の仕事上の不利益や職場環境の悪化を恐れてしまい,

被害者は,どうしても「No」と言いづらいのです。

 

 

 

 

このセクハラの本質を理解しなければ,

セクハラによる心理的負荷の強さを見誤ってしまいます。

 

 

そこで,労災の認定基準には,セクハラ事件について,

以下の留意事項をあげています。

 

 

①セクハラの被害者は,勤務を継続したいとか,

加害者からのセクハラの被害をできるだけ軽くしたいとか

の心理などから,やむを得ず加害者に迎合するような

メールを送ることや,加害者の誘いを受け入れることがあるが,

これらの事実がセクハラを受けたことを

単純に否定することにはならないこと。

 

 

②被害者は,被害を受けてからすぐに

相談行動をとらないことがあるが,

この事実が心理的負荷が弱いと

単純に判断する理由にならないこと。

 

 

③被害者は,医療機関でもセクハラを受けたということを

すぐに話せないこともあるが,初診時にセクハラの事実を

申し立てていないことが心理的負荷が弱いと

単純に判断する理由にならないこと。

 

 

加害者が上司であり被害者が部下である場合

加害者が正規職員であり被害者が非正規労働者である場合など,

加害者が雇用関係上被害者に対して優越的な立場にある

事実は心理的負荷を強める要素となり得ること。

 

 

このように,労災基準は,セクハラの被害者が

「No」と言いづらい本質に留意するように注意を促しているのです。

 

 

セクハラが原因でうつ病などの精神疾患を発症した場合は,

労災保険の対象になりますので,

労災に強い弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。

精神科医が教える1億稼ぐ人の心理戦術

先日大阪で開催された樺沢紫苑先生の

秋のアウトプット祭りの会場で販売されていた

精神科医が教える1億稼ぐ人の心理戦術

という本を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

2009年2月に発売された本で,

樺沢紫苑先生が作家としてブレイクする前の作品ですが,

最近の樺沢紫苑先生の作品と同じくらいに質が高く,

なるほどと思う箇所がたくさんありましたので,紹介していきます。

 

 

まずは,初対面の人と会ったときに,

自分のことを覚えてもらうノウハウです。

 

 

1つ目のノウハウは,名刺交換した後,

1週間以内にお礼のメールをすることです。

 

 

 

 

人間の脳は,海馬という部分に記憶を仮保存しますが,

記憶されてから1~2週間の間にもう一度引き出されなければ,

側頭葉で長期保存されず,忘れてしまうようにできています。

 

 

そこで,初対面の人に自分を覚えてもらうために,

名刺交換した後に,1週間以内にお礼のメールを送れば,

自分のことを思い出してもらい,相手に,

自分の名前,顔,印象を記憶してもらえるのです。

 

 

私は,名刺交換した後に,1週間以内に,

こちらからフェイスブックの友達申請をして,

メッセンジャーで数回やりとりをして,

相手に自分のことを覚えてもらいます。

 

 

2つ目のノウハウは,初対面の人との共通点を発見して,

その部分を取り上げて,話題にして強調するということです。

 

 

人は自分と考え方が似ていたり,

同じ趣味を持っていたりという類似点や共通点

を持っているとより好意を抱きやすい傾向があります。

 

 

出身地が同じであったり,同じ学校を卒業していること

がわかるだけで,急に親近感がわくのは,このためです。

 

 

そこで,初対面の人とは,自分との共通点を探して,

それを取り上げて強調することで,相手との距離が縮まり,

相手に覚えてもらうことができます。

 

 

次に,クレーマー対応の極意です。

 

 

クレーマーに対しては,ふつうにいつもどおりに対応すればいいのです

 

 

 

クレーマーの対応に反応して,怒り,戸惑い,萎縮,嫌悪

といった感情反応をせずに,冷静に,平常心で,

いつもどおりの丁寧な態度,言葉遣いで対応することが重要なのです。

 

 

クレーマーの怒りに対して,自分も怒りで対応したのでは,

クレーマーの怒りがエスカレートして,問題が複雑になっていきます。

 

 

他者の特定の感情表出を知覚することによって,

自分も同じ感情を経験する現象を「情動伝染」といいます。

 

 

昨日,私が1歳7ヶ月の子供にご飯を食べさせていたら,

私の母が,私のご飯の食べさせ方がへたくそだと言ってきたので,

私は,怒って,「じゃあ,あんたが食べさせたら」と言ったところ,

私の母は,無責任やと怒ってきました。

 

 

怒りの感情は伝染するのです。

 

 

私は,怒りをぐっとこらえて,

「じゃあ,食べさせ方を変えてみるわ」と言えば,

不毛なけんかに発展しなかったのにと反省しました。

 

 

クレーマーに対しては,相手の感情に反応せずに,

「私はカウンセラーだ」と思いながら,

相手の不満を聞いてあげれば,相手はクールダウンしていくのです。

 

 

最後に,時間に付加価値をつけるという時間術です。

 

 

この時間にはどんな付加価値をつけることができるだろうか

と常に意識するのです。

 

 

テレビを見るにしても,講演会やブログのネタにならないか

と考えながら見ると,新しい発見ができます。

 

 

時間に付加価値をつけるくせができると,

遊びながら,つねにいろいろなことを学べて,

観察力が鋭くなり,新しい発見につながるのです

 

 

私は,車の移動時間を有効活用できないかを考え,

音声データを聞きながら勉強する方法を知り,

それを実践して,車の移動時間に勉強をしています。

 

 

外食の際には,接客やメニューなどを観察して,

顧客はどうしてこの店を選ぶのかを考えることで,

マーケティングの勉強をしてみようと思います。

 

 

人間関係の構築や普段の仕事に活用できる心理学を,

わかりやすく学べる一冊ですので,紹介させていただきました。

うつ病で休職中の先生を解雇できるのか

私は,今年から母校の高校の学校評議員

をさせていただくことになりました。

 

 

学校評議員制度とは,地域に開かれた学校づくりを

推進していくために,地域住民が学校運営へ参画する仕組みです。

 

 

学校評議員は,学校運営に関し,

保護者や地域住民の意向を反映し,

学校は,学校評議員の意見を聞いて,

特色ある教育活動を積極的に展開していくのです。

 

 

 

以上が,文部科学省の説明です。

 

 

要するに,学校の運営に,地域住民として

意見を述べることが期待されている役職です。

 

 

先日,第1回の会合に参加してきました。

 

 

学校側が詳細な目標や中間査定の評価をまとめており,

それに対して,自分なりに感じたことを発言してきました。

 

 

そこで感じたことは,学校の先生は本当に大変だなぁということです。

 

 

最近では,アクティブラーニングといい,

生徒同士が課題について調べてきたことを互いに教え合う授業や,

パワーポイントを使って授業したりと,

私が高校生だったころと比べて,かなり先進的な授業が行われています。

 

 

しかし,このような先進的な授業をするには,先生の準備が大変です。

 

 

さらに,部活動の指導があったり,

保護者対応があったり,

今回の会合の資料作りがあったりと,

先生は仕事が多すぎると思いました。

 

 

残業時間が多いのに,働き方改革のため,

残業時間を削減しなければならず,学校現場では,

大変な苦労があるのを実感しました。

 

 

さて,前置きが長くなりましたが,

先生の仕事が大変だということについて,

学校法人武相学園事件の裁判例を紹介します

(東京高裁平成29年5月17日判決・労働判例1181号54頁)。

 

 

うつ病で休職中の先生を懲戒解雇できるのかが争われました。

 

 

原告の先生は,平日は,午前6時に出勤し,

午前8時まで部活の顧問の仕事をし,日中は授業をして,

午後8時まで部活の顧問の仕事をしていました。

 

 

 

 

土曜日も朝早くから部活動の顧問の仕事をし,

日曜日に対外試合があれば,生徒を引率し,審判もしていました。

 

 

原告の先生がうつ病を発症する前6ヶ月間の時間外労働は,

1ヶ月あたり91時間~146時間でした。

 

 

原告の先生は,部活動の生徒に対して失言をし,

生徒に対して,失言の口止めをしました。

 

 

このことについて,学校の調査が始まったところ,

部活動の会計に不明点があることが発覚していきました。

 

 

そして,原告の先生は,長時間の時間外労働と,

これらの調査によるストレスが原因で,

うつ病の診断を受けて,病気休職となりましたが,

学校は,原告の先生を懲戒解雇しました。

 

 

ここで,労働基準法19条1項には,

労働者が業務上負傷し,または疾病にかかり療養のために

休業する期間は,解雇してはならないと規定されています。

 

 

これは,労働者が労災補償としての療養のための

休養を安心して行えるように配慮する必要があるからです。

 

 

本件では,原告の先生のうつ病が仕事が原因で

発症したものか否かが争われました。

 

 

 

 

すなわち,仕事が原因でうつ病を発症したのであれば,

解雇できませんし,そうでないなら,

解雇の要件を満たせば解雇できることになります。

 

 

学校は,部活動の顧問をしている先生に定額の顧問手当

(1年間で1万5500円)と休日出勤手当(日額2500円)

を支給し,部活動は,顧問手当の範囲でできることを

やればよいという建前がとられていました。

 

 

しかし,入学金免除の特待生をかかえる運動部の顧問の先生が,

学校の指示をそのまま受け取ることはできず,

運動部の顧問の先生は,対外試合で好成績を残すことを

学校から黙示的に努力目標として課されていたのです。

 

 

そして,学校の仕事ではない,県高体連の仕事も,

原告の先生の本来業務と同じと扱われ,

部活動の顧問の仕事で長時間の時間外労働をしたことの

心理的負荷が強かったと判断されました。

 

 

その結果,仕事が原因でうつ病を発症したと認定され,

労働基準法19条1項により,解雇は無効と判断されました。

 

 

人間は,1ヶ月の残業時間が100時間を超えると

うつ病を発症するリスクが高まります。

 

 

働き方改革が叫ばれている今こそ,

学校の先生の仕事の負担を軽減し,

先生が健康なまま働ける社会に

していかなければならないと考えます。

 

 

学校の先生が働き過ぎによって健康を害することがないように,

学校評議員の役割を全うしていきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

医師の未払残業代請求事件(年棒制と固定残業代の関係)

会社が労働者に対して,年棒制で給料を支払っている場合,

年俸の中に残業代が含まれているとして,

残業代を支払わないことは適法なのでしょうか。

 

 

この問題について,残業代込みの年棒制の給料を受給していた

医師が,病院に対して,未払残業代を請求した,

医療法人社団康心会事件を紹介します。

(東京高裁平成30年2月22日判決・労働判例1181号11頁)

 

 

 

 

最近,残業代を労働者に支払われる基本給や諸手当に

予め含めることで,残業代を支払うという

固定残業代制を導入している会社が多いです。

 

 

おそらく,毎月,労働者の残業時間をチェックして,

残業代を計算するのが複雑でめんどうなので,

とりあえず,何時間か残業したとして定額で残業代

を支払っていることにしているのだと思います。

 

 

本来,残業代は,労働基準法や厚生労働省令で定められている

計算方法で算出して個別に支払われるべきなのですが,

労働基準法などで定められた計算方法で算出された

残業代を下回らなければ,固定残業代という方法で

残業代を支払っても違法とはなりません。

 

 

もっとも,固定残業代の支払いを受ける労働者としては,

会社から支給される固定残業代が,本当に労働基準法等で

定められた計算方法で算出されるべき残業代を下回っていないか

を検討できないと,本来もらえるはずの残業代を

もらえていないかもしれず,損をすることになりかねません。

 

 

 

そこで,最高裁は,固定残業代の有効要件として,

①労働契約の基本給などの定めにつき,

通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金に当たる部分

とを判別できなければならず(判別要件),

②判別されたところの割増賃金にあたる部分の金額は,

労働基準法などで算定されるところの金額以上であること

(金額適格性)が必要となります。

 

 

康心会事件では,年俸1700万円と合意されていただけであり,

1700万円のうち,いくらが時間外労働に対する割増賃金

にあたる部分かが明らかにされていませんでした。

 

 

よって,原告の医師に支払われた1700万円の年俸について,

通常の労働時間の賃金にあたる部分と割増賃金にあたる部分

とを判別することができないとして,

病院の固定残業代の主張は退けられました。

 

 

結果として,原告の医師の未払残業代273万円が認められました。

 

 

また,被告の病院は,原告の医師との年俸の合意の

合理的な解釈として,年俸によりすでに割増賃金の一部が

支払済みであると主張しました。

 

 

しかし,労働契約書や賃金規定に,

法定労働時間(1日8時間)分の労働の対価と

時間外労働の対価の対応関係を示す記載がなく,

被告の病院から,原告の医師に対して,

そのような説明をしたこともないことから,

被告の病院の主張は退けられました。

 

 

最近の裁判例は,労働契約書や就業規則,賃金規定に,

固定残業代の計算根拠をしっかり記載するか,

労働者に固定残業代の計算根拠を説明するかしないと,

固定残業代を有効と判断しない傾向にあり

この流れは労働者にとって,有利であります。

 

 

年棒制と固定残業代について判断した重要な裁判例ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。

北國新聞社員の過労自殺で労災と認定された事件

平成30年7月31日付で,当事務所の宮西香弁護士が

担当している北國新聞社の社員の過労自殺の労災事件で,

労災認定がされましたので,本日は,この労災認定について説明します。

 

 

過労自殺の場合,遺族は,労働基準監督署に対して,労災請求をします。

 

 

 

 

労働基準監督署の段階で,過労自殺が労災と認定されれば,

遺族は,国から遺族補償給付を受けられます。

 

 

他方,労働基準監督署の段階で,不支給決定処分という

労災と認定されない判断をされた場合,遺族は,不服申立てができます。

 

 

この不服申立てを審査請求といいます。

 

 

審査請求は,労働基準監督署の所在地である各都道府県の

労働局に置かれた労働者災害補償保険審査官に対して行います。

 

 

北國新聞社の事件では,労働基準監督署の段階では,

労災と認定されませんでしたが,審査請求の段階で

労災と認定されました。

 

 

さて,過労自殺で労災と認定されるためには,

仕事の心理的負荷が原因でうつ病などの精神疾患を

発症したと判断されなければなりません。

 

 

この心理的負荷について,厚生労働省は,

心理的負荷による精神障害の認定基準

という判断基準を公表しており,

労働者が負担に感じる出来事ごとに,

心理的負荷の程度を弱中強に分類し,

労働者が精神疾患を発症するおおむね6ヶ月の間に

体験した出来事の心理的負荷が「強」と判断されれば

基本的に労災と認定されます。

 

 

 

 

では,心理的負荷が「強」の出来事はなかったものの,

労働者が体験した出来事が複数あり,その心理的負荷が

「中」だった場合はどうなるのでしょうか。

 

 

厚生労働省の認定基準によれば,

労働者が体験した出来事が関連して生じている場合には,

全体評価を行い,「中」が複数ある場合には

「強」と評価されることがあります。

 

 

労働者災害補償保険審査官の判断によれば,

北國新聞社の事件では,労働者が体験した出来事が3つあり,

その3つの出来事の心理的負荷は「中」でしたが,

全体評価として「強」となりました。

 

 

まず,1つ目の出来事は,当該被災労働者は,

北國新聞社のグループ会社である北國新聞小松販売へ出向中に,

新聞配達員の欠員が生じたので,営業の仕事の他に,

朝刊の新聞配達をしていました。

 

 

この朝刊の新聞配達の仕事が増えたことで,

当該被災労働者の残業が1ヶ月あたり45時間以上となりました。

 

 

 

 

この出来事が,認定基準の

「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」

に該当し,心理的負荷は「中」と認定されました。

 

 

次に,2つ目の出来事は,当該被災労働者は,

「2週間以上にわたって連続勤務を行った」

ことが6ヶ月の間に5回ありました。

 

 

2週間以上連続で勤務するということは,

まったく働かない日が2週間の間に1日もないため,

十分に疲労を回復することができず,疲労が蓄積していきます。

 

 

この「2週間以上にわたって連続勤務を行った」ことの

心理的負荷は「中」と認定されました。

 

 

最後に,3つ目の出来事は,当該被災労働者は,

深夜の新聞配達の仕事を連続して27日間行ったことです。

 

 

新聞配達の仕事は,普通の人が寝ている早朝の時間帯

(午前3時ころから午前5時ころ)に行われます。

 

 

そして,新聞配達の仕事をした後に,

休憩時間をはさんだとしても,

日中の時間帯に営業の仕事をするのは大変なことです。

 

 

この出来事も,認定基準の

「仕事内容・仕事量の(大きな)変化を生じさせる出来事があった」

に該当し,心理的負荷は「中」と認定されました。

 

 

これら3つの心理的負荷が「中」の出来事が全体評価されて,

「強」となり,労災認定されたのです。

 

 

1つ1つの心理的負荷は「中」ですが,

深夜に連続で新聞配達の仕事をしてから,

日中の時間帯に通常の営業の仕事をすれば,

睡眠のリズムが崩れて,質の悪い短い睡眠が積み重なって,

疲労が蓄積されるので,全体評価として

心理的負荷が「強」となりました。

 

 

不服申立ての段階で,心理的負荷が「中」の出来事が複数あって,

それが全体評価で「強」と判断されて,

労災と認定されるのは珍しいので,紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

天才!~成功する人々の法則~

マルコム・グラッドウェル氏の

天才!~成功する人々の法則~」(勝間和代訳)

を読みましたので,アウトプットします。

 

 

 

 

樺沢紫苑先生も,藤原和博先生も,この本に記載されている

1万時間の法則」について紹介しており,

以前から気になっていたので読んでみました。

 

 

この本は,人はどうすれば成功するのかを,

過去の成功者の外部要因を徹底的に分析して,

天才は,本人の才能だけではなく,

才能を開花させるに至った経緯がもっとも重要である

と結論づけています。

 

 

まず,注目の「1万時間の法則」とは,どんな才能や技量も

,一万時間練習を続ければ本物になるというものです。

 

 

 

 

「世界レベルの技術に達するにはどんな分野でも,

一万時間の練習が必要だということだ」

 

 

「専門的な技能を極めるために必要なすべてのことを

脳が取り込むためには,それだけの時間が必要だというように思える」

 

 

もって生まれた才能よりも,圧倒的なたくさんの努力が重要なのです。

 

 

ビートルズは,ブレイクする前に,

ハンブルクのクラブで約1200回のライブを行い,

1万時間の演奏をして,演奏がうまくなっています。

 

 

ビル・ゲイツは,中学校時代に,無料でプログラミングを学ぶ

機会を与えられて,1万時間以上,プログラミング

に没頭していたようです。

 

 

技術が必要なものについての最低限の練習量は1万時間であり,

1万時間とは,おおむね10年ほどの期間となります。

 

 

そして,1万時間以上もの長時間にわたって

トレーニングを積むことができる機会を与えられることは,

とても素晴らしい「好機」を与えられていることなのです。

 

 

 

 

たとえ才能があったとしても,親が貧しいために,

単純労働をしなければならず,専門的な知識や技術を

1万時間学ぶ機会が与えられなければ,成功できないのです。

 

 

私は,法科大学院に通っていた3年間に,

1日約12時間勉強していたので,

12時間×363日×3年=13,140時間

勉強していたことになり,1万時間を超えています。

 

 

だから,司法試験に合格したのだと思います。

 

 

勉強時間だけで合格が決まるのではないですが,

司法試験に合格するためには,やはり1万時間以上の

勉強が必要なのだと思います。

 

 

そして,私は,大学卒業後に就職せずに,

法科大学院進学をサポートしてくれた

親が私に好機を与えてくれていたことに気づきました。

 

 

法科大学院で1万時間以上勉強できるという好機がなかったなら,

私は弁護士になっていなかったでしょう。

 

 

私は,現時点で,弁護士になって7年9ヶ月ですので,

10年までもう少しです。

 

 

10年経てば,弁護士としての能力が

飛躍的に向上するのではないかと考えております。

 

 

特別な好機が与えられて,熱心に取り組むことで

そのチャンスをものにし,その並外れた努力が社会に

認められて成功していくのです。

 

 

また,この本には,成功している人は特別な機会を与えられる

可能性がもっとも高く,さらに成功するというマタイ効果など,

子供の教育を考える上で示唆に富むことが記載されています。

 

 

親は,子供に対して,偶然を含めた好機をいかに与える

ことができるのかが,子供の成功にとって大切なのだと感じました。

 

 

成功を単なる才能や努力だけでなく,

外部要因からわかりやすく分析している,

大変興味深い本ですので,紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

セクハラ相談リーフレット

先日,異業種交流会で,ある女性と

名刺交換をさせていただいた際,

男性ばかりの職場なので,

セクハラ発言が多くて困っているというお話を聞きました。

 

 

その発言は,明らかにセクハラだとわかるようなことでも,

男性ばかりの職場ですと,セクハラ発言が頻繁に

生じている現実を知りました。

 

 

財務省のセクハラ事件や#MeToo運動などで,

セクハラが広く問題になっていても,

なかなかセクハラがなくらない現実があります。

 

 

そのような現状において,日本労働弁護団が,

セクハラを受けた場合に,どのように対処すべきか,

どこに相談すればいいのかをまとめた

リーフレットを作成したので,紹介します。

 

 

 

 

(こちらのURLからダウンロードできます)

http://roudou-bengodan.org/wpRB/wp-content/uploads/2018/07/c06d6f8fe4d42f26395283418205edea.pdf

http://roudou-bengodan.org/wpRB/wp-content/uploads/2018/07/c2f831de625f3bed06199cfbc63cc53c.pdf

 

 

まず,何がセクハラなのかという問題がありますが,

このリーフレットにはセクハラの具体例が

コンパクトにまとめられています。

 

 

セクハラとは,かんたんにいえば

相手方の望まない性的な言動のことです。

 

 

そのため,「しつこくメールがきたり,食事に誘われた」,

「交際を断ったら異動させられた」,

「容姿や体型,結婚の予定を聞かれた」,

「交際相手についてしつこく聞かれた」

といったことは,相手が嫌がるのであれば,セクハラになります。

 

 

次に,セクハラを受けた時の対処法について,

「嫌だなと感じたら,はっきり断りましょう」,

「セクハラで困ったら信頼できる人に相談しましょう」,

「職場の相談窓口への相談を検討してみましょう」,

「嫌だと言えなくて応じてしまった場合でも,

あきらめたり,自分を責めたりしないでください」,

「心身の不調を感じたら医師などに相談しましょう」

など具体例に記載されています。

 

 

セクハラの対処法としては,まず,

録音やメモなどで記録化し,証拠を確保することが必須です。

 

 

証拠を確保した上で,加害者に対して,

はっきりとセクハラをやめるように伝え,

会社の相談窓口にセクハラの相談をします。

 

 

 

 

会社には,セクハラを防止し,

セクハラ被害の相談があった場合には,

事実を確認して,被害回復や再発防止のための

適切な対応をする義務があります。

 

 

会社に相談したけれども,会社が何もしてくれずに,

セクハラが続いた場合,会社に対して,

損害賠償請求することを検討します。

 

 

加害者や会社にセクハラをやめるように申し入れても,

セクハラがとまらない場合には,弁護士に相談して,

法的手段にでるかを検討するといいでしょう。

 

 

セクハラが社会問題になっている現状において,

セクハラについてわかりやすくまとめたリーフレットですので,

多くの方々に知ってもらいたくて,紹介させていただきました。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。

医師が解雇されるのはどのような場合か

契約期間が定められている労働契約(有期労働契約といいます)を,

契約期間が満了する前の期間の途中において,

会社は,労働者を解雇することができるのでしょうか。

 

 

本日は,有期労働契約の期間途中の解雇の有効性について説明します。

 

 

 

 

まず,有期労働契約を締結している労働者は,

契約社員,派遣社員,嘱託社員などの,

いわゆる非正規雇用労働者です。

 

 

非正規雇用労働者は,労働契約の契約期間が満了する時点で,

会社が労働契約を更新してくれない限り,

原則として,労働契約が終了して,職を失います。

 

 

そのため,非正規雇用労働者の雇用は不安定なのです。

 

 

 

 

他方,契約期間が定められていない労働契約

を締結している労働者が正社員です。

 

 

正社員には,契約期間が定められていないので,

会社から解雇されない限り,会社で働き続けることができるのです。

 

 

そのため,正社員の雇用は安定しているのです。

 

 

正社員に比べて,非正規雇用労働者の雇用は不安定なのですが,

労働契約で定められている期間中は,雇用が安定しています。

 

 

すなわち,非正規雇用労働者は,契約期間が満了すれば,

仕事がなくなりますが,契約期間中はよほどのことがない限り,

解雇されずに,労働契約が維持されるのです。

 

 

この点について,労働契約法17条には,

やむを得ない事由がある場合でなければ」,

会社は,労働者を解雇できないと規定されています。

 

 

以上を前提に,5年の契約期間で労働契約を締結した

国立研究開発法人国立A医療研究センターの歯科医長が,

歯科医療に適格性を欠く行為があり,

部下職員を指導監督する役割を果たしていないなどとして,

契約の途中で解雇された事件を紹介します

(東京地裁平成29年2月23日・労働判例1180号99頁)。

 

 

この事件では,医師としての能力不足の解雇は

どのような場合に認められるかという,珍しい論点が争われました。

 

 

医師という専門職としての治療行為が,

どの程度までひどいと解雇されてしまうのかについて,

裁判所が基準をだしました。

 

 

医師は,患者の身体状態や意思をふまえつつ,

その都度適切な医療行為を選択して実施していくので,

医師には相当広い裁量が認められています。

 

 

 

 

そして,裁判所は,

医師の治療行為が相当な医学的根拠を欠いているか,

患者の身体の安全に具体的な危険を及ぼしたか,

治療行為に際して認められる裁量を考慮しても

合理性を欠いた許容できない治療といえるか,

という観点から検討すべきという基準を示しました。

 

 

さらに,本件では,契約期間の途中での解雇であるため,

解雇について「やむを得ない」理由があったかが

厳格に判断された結果,被告病院が主張する解雇理由について,

原告に医師として適格性を欠く行為はなかったと判断されました。

 

 

有期労働契約を契約の途中で解雇する場合には,

よほどの理由がないと解雇できないということと,

医師が能力不足で解雇されるのは,

どのような場合かについて判断された

珍しい裁判例ですので,紹介させていただきました。

 

 

労働者は,有期労働契約は契約期間の途中では,

よほどのことがない限り,解雇されないことを知っておいてください。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。