裁量労働制の問題点

朝日新聞の報道によれば,三菱電機において,

2014年から2017年の間に,

5人のシステム開発の技術者や研究職が,

長時間労働が原因で精神疾患や脳疾患を発症して

労災認定されていたことが明らかとなりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASL9V7L2LL9VULFA02B.html

 

 

5人のうち2人が過労自殺しており,

5人のうち3人に裁量労働制が適用されていました。

 

 

本日は,裁量労働制の問題点について説明します。

 

 

 

 

裁量労働制とは,実際に働いた時間ではなく,

あらかじめ定められた労働時間に基づいて

残業代込みの賃金を支払う制度です。

 

 

裁量労働制では,労働者と会社が

労使協定を締結して,みなし労働時間を定めます。

 

 

例えば,労使協定でみなし労働時間を9時間としている場合,

実際には11時間働いたとしても,9時間だけ労働したものとみなされて,

8時間を超えた1時間分の残業代しか支払われず,

残り2時間分の残業代は支払われなくなります。

 

 

会社は,労働時間に応じて残業代が決まるのであれば,

人件費を削減するために,残業代を支払いたくないので,

労働時間の管理をしっかりして,なるべく残業が生じないようにします。

 

 

ところが,裁量労働制の場合,どれだけ働いても,

みなし労働時間しか働いていないことになりますので,

会社は,厳密な労働時間管理をしなくても,

みなし労働時間分の残業代を支払えばいいので,

労働時間管理が甘くなるのです。

 

 

その結果,裁量労働制が適用されると,労働時間が長くなり,

長時間労働によって,過労死や過労自殺が生じてしまうのです。

 

 

また,裁量労働制が適用されるのは,仕事の性質上,

仕事の進め方を大幅に労働者に委ねる必要がある場合

に限定されているのですが,仕事の量や期限は,

会社が決定するので,会社から命じられた仕事が過大であれば,

労働者は,事実上,長時間労働を強いられ,

長時間労働に見合った残業代は支払われないことになります。

 

 

 

 

実際に,裁量労働制が適用されている職場であっても,

適法に裁量労働制が適用されていない場合もあります。

 

 

私が担当した事件では,結婚式のプロフィール映像や

エンドロールの映像を撮影,編集する労働者が

裁量労働制を適用されていました。

 

 

裁量労働制が適用される業務の一つに

放送番組,映画等の制作の事業における

プロデューサー・ディレクターの業務」があります。

 

 

結婚式のプロフィール映像やエンドロールの映像が

「放送番組,映画等」に含まれるとは考えにくく,

単に映像を撮影して編集することが,

「プロデューサーやディレクターの業務」とはいえないはずです。

 

 

このように,裁量労働制を適用できない労働者に対しても,

違法に裁量労働制が適用されている濫用事例が多くあると考えられます。

 

 

会社から「うちは裁量労働制で,労基署も受理しているから,

残業代は出さなくても問題ない」と説明されれば,

労働者は「そうなんだ」と納得してしまい,

違法に裁量労働制が適用されていることに

気づかないことが多いのだと思います。

 

 

三菱電機の労災事件で,裁量労働制の問題点が明らかになりましたので,

これ以上の裁量労働制の拡大は行われるべきではありません。

 

 

裁量労働制が適用されている労働者は,

本当に自分の会社の裁量労働制は適法なのかを

一度疑ってみるべきだと思います。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。