妻のトリセツ2~とにかく共感~

私事ですが,昨日,中学校の同窓会に参加してきました。

 

 

 

 

35歳の年齢のため,結婚していれば,

子育て真っ只中の世代です。

 

 

そのためか,参加者のうち,

男性が3分の2,女性が3分の1

という人数構成でした。

 

 

社会人になってから知り合った知人の奥様が,

私の中学校の同級生でして,その奥様が参加していたので,

共通の話題である旦那様のことについて話しました。

 

 

すると,同級生の奥様は,旦那は,飲み会が多くて,

家にいないことが多いので,子育てが大変である,と話していました。

 

 

我が家と全く同じ問題が,他

の家庭でも勃発しているのだなぁと,

しみじみ思いました。

 

 

ビジネスマンにとって,家庭のマネジメントが

重要であると再認識したので,

やはり「妻のトリセツ」の本の内容を,

多くのビジネスマンに知ってもらいと思い,

しばらくの間,この本のアウトプットをしていきます。

 

 

 

 

お付き合いいただければ,幸いです。

 

 

さて,昨日もブログで紹介しましたが,

妊娠,出産,授乳の時期は,子供を危険から守るために,

怖い,辛い,ひどいといった危険に伴う体験記憶が蓄積されるため,

ネガティブトリガーが多く形成されてしまいます。

 

 

妊娠,出産,授乳の時期の女性は,

栄養不足で,睡眠不足で,自分で自分をコントロールできない,

まさに「満身創痍」の状態なのです。

 

 

 

 

そのような,満身創痍の状態で,夫から無神経な言動があると,

ネガティブトリガーとして記憶されて,何かあると,

妻は過去を蒸し返して攻撃してくるのです。

 

 

妻が2人目を妊娠中の私の家庭は,夫である私にとって,

ネガティブトリガーが形成されやすい危険な時期にあるのです。

 

 

黒川先生は,妻が妊娠,出産,授乳の時期には,

「おっぱいをあげている間はしょうがない」と割り切って,

男風をふかさずに,妻の女友達のように

接するべきであると説いています。

 

 

女友達のように接するということは,

妻の話にとにかく共感するということです。

 

 

 

 

実際には共感できなくても,

共感するふりをするだけでもいいのです。

 

 

妻から,話をふられたら,問題解決を話すのではなく,

「うん,うん,わかる,わかる」と言って,

とにかく共感すればいいのです。

 

 

「オチのない,ささやかな体験談」をプレゼントし,

相手からそれがあったときは,しっかりと共感して,

相手のストレスを解いてあげるのが,

女友達として接するということなのです。

 

 

妻からなじられたときには,言い訳をせずに,

「君に心細い思いをさせてしまって,本当にごめん」

と真摯に謝るべきなのです。

 

 

次に,妻との話し合いをまとめるには,

次のようなビジネスのプレゼンのメソッドを使うといいと,

黒川先生は説いています。

 

 

①双方の提案に対して,互いにメリットとデメリットを挙げる。

 ②実際に調べて検証する。

 ③デメリットを回避する消極的なメリットではなく,

互いのゲイン(手に入れられるもの)を示す。

 ④以上を踏まえて,結論を出す。

 

 

妻の提案について,いきなり,否定形を使うのではなく,

妻が嬉しくなるようなゲインを伝えると,

夫の要望が妻にとおりやすくなるのです。

 

 

これをするとこんなにいいことがあるんだよ,

と伝えるのがいいということですね。

 

 

飲み会などが多く,妻からよく文句を言われている私ですが,

妻の話にはとにかく共感して,

妻にネガティブトリガーを作らせないように心がけていきます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

妻のトリセツ~プロの夫業を目指す!~

「女の機嫌の直し方」,「夫婦脳」の著者である

黒川伊保子先生の新刊「妻のトリセツ

が発売されたことが,新聞の広告に掲載されていたので,

黒川先生のファンである私は,早速購入しました。

 

 

しかし,年末で仕事が忙しく,

書斎の本棚に積読状態になっていました。

 

 

すると,いつの間にか妻が「妻のトリセツ」をちら見したらしく,

書斎の机の上に,「早く読むといいよ」

というメッセージと共に本が置いてありました。

 

 

 

 

妻曰く,「女性目線で書かれていて,すごく共感できる。

私がしてほしいことが書いてあるので,早く読んでね。」とのこと。

 

 

前置きが長くなりましたが,年末の休みになり,

ようやく読書の時間が確保できたため,

「妻のトリセツ」を読み,大変有益な情報を入手しましたので,

順次アウトプットしていきます。

 

 

黒川先生は,妻に嫌な思いをさせる発言と行動を

事前に理解しておき,「ネガティブトリガー」を作らない戦略を,

夫はとるべきであると提唱しています。

 

 

女性は,感情に伴う記憶を長期にわたって保存し,

それをみずみずしく取り出すことが得意な脳の持ち主です。

 

 

そのため,女性は,感情が動くと,

過去の関連記憶を瞬時に取り出すことができるため,

夫の不快な言動に対して,過去の関連記憶を総動員して,

夫の過去の過ちを蒸し返して攻撃してくるのです。

 

 

 

 

女性が過去の体験記憶を引き出すきっかけになるのが

「感情の色合い」というトリガー(引き金)です。

 

 

ネガティブトリガー(怖い,辛い,ひどいなどの嫌な思い)と,

ポジティブトリガー(嬉しい,美味しい,かわいいなどのいい思い)

があります。

 

 

女性脳は,自分の身を守らないと子供を無事に育てられないので,

危険を回避するために,ネガティブトリガーの方が

発動されやすいのです。

 

 

特に,妊娠,出産,授乳のとき,

夫の無神経や発言や言動は,

一生残るネガティブトリガーとして,

傷となり,繰り返し持ち出されて,

攻撃されてしまうのです。

 

 

黒川先生は,「男にとって結婚の継続とは,

女性の母性ゆえの攻撃から,いかに身を守るかの戦略に尽きる。

ぼんやりしていたら,生き残れない。」と断言しています。

 

 

現在,私の妻は,2人目の子供を妊娠中で,

理不尽な攻撃が多いと実感していただけに,

家の中ではぼんやりせずに,

いかに妻からの攻撃を減らすように意識して

行動することが重要なのかがよく理解できました。

 

 

そして,黒川先生は,男は「プロの夫業に徹しなさい

と提言しています。

 

 

「夫」という役割をどうこなすかはビジネス戦略であり,

男にとって人生最大のプロジェクトなのです。

 

 

プロの夫になるためには,

ネガティブトリガーを減らして,

ポジティブトリガーを増やせばいいのです。

 

 

 

 

妻の脳の特性を理解し,夫業とは,

それに対処するビジネスだと理解すれば,

妻から理不尽なことを言われても,

感情的にならず,冷静に対処できる気がします。

 

 

おそらく,黒川先生が,ご自身の結婚生活の中で

旦那様に対して感じていた様々な感情や体験が

ベースとなっているからか,非常に説得力があります。

 

 

さらに,脳科学の視点をとりいれて,

既婚者のビジネスマンが論理的に理解できるようになっています。

 

 

結婚している男性なら,必ずぶち当たる妻の理不尽な対応。

 

 

これに上手く対処する方法が論理的にわかりやすく

解説された名著ですので,今後,この本の内容を

少しずつ紹介していきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

代理店の個人事業主は商業使用人か?~ベルコ事件~

労働事件の法律相談を受けていますと,会社と個人が,

形式的には委任契約,業務委託契約という名称で

契約を締結しているのですが,実質的にみると,

労働契約であるという相談案件があります。

 

 

なぜ,このような労働相談が生じるのかといいますと,

会社と個人の契約関係が労働契約となれば,

会社は,労働基準法に定められている

労働時間などの規制を守らなければならず,

また,簡単に解雇できないのですが,

労働契約ではない場合には,

労働時間などの規制はなくなり,

契約条項に従って,契約を解約できるようになります。

 

 

すなわち,会社と契約した個人が労働者ではないと判断されれば,

会社は,残業代を支払わなくてよくなり,

解雇よりも契約を解約しやすくなり,

会社にとって都合がいいのです。

 

 

しかし,単に契約の形式や名称のみで,

労働関係法令が適用されるか否かが決定されてしまえば,

会社が容易に労働関係法令を潜脱して,

個人が労働者として保護されなくなってしまうので,

労働者か否かは,実質的に判断されるのです。

 

 

 

 

このような労働者か否かを巡る事件で,

今新しい争点が生じています。

 

 

それは,会社と代理店契約を締結した個人が

商業使用人か否かという争点です。

 

 

この争点は,ベルコ事件で問題となりました

(札幌地裁平成30年9月28日判決・労働判例1188号5頁)。

 

 

ベルコという冠婚葬祭業界の最大手の会社は,

個人事業主と代理店契約を締結し,

その個人事業主が従業員と労働契約を締結していました。

 

 

従業員は,個人事業主と労働契約を締結しているので,

形式的にはベルコと労働契約関係にはないのです。

 

 

(2018年11月19日朝日新聞より抜粋)

 

 

ベルコの2017年の決算報告書によれば,

従業員数は7128人であるにもかかわらず,

正社員はわずか32人で,その他の7000人以上は,

業務委託先である代理店に雇用されている臨時社員などです。

 

 

ベルコは,労働契約関係から生じる社会保険の加入,

残業代の支払など会社が負担すべき義務を免れて,

末端の代理店にそれらの負担を負わせていることになります。

 

 

ベルコの代理店である個人事業主と労働契約を締結した従業員が,

ベルコと労働契約関係にあるといえるためには,

ベルコの代理店である個人事業主が

ベルコの商業使用人と認められる必要がありました。

 

 

商業使用人とは,会社内にあって経営者に従属しながら,

経営者の営業活動を補助する者のことをいいます(会社法14条1項)。

 

 

ベルコの代理店である個人事業主が,

ベルコの商業使用人と認められれば,

代理店の個人事業主は,

ベルコの従業員ないしはそれに類した立場となり,

独立した契約締結主体ではなくなり,

ベルコの代理人として従業員と

労働契約を締結したことになります。

 

 

すなわち,代理店の個人事業主は,ベルコの代理人として,

従業員と労働契約を締結したのであるから,代理の効果として,

代理店の個人事業主の従業員は,

ベルコと労働契約関係にあることになります。

 

 

しかし,札幌地裁は,代理店の個人事業主を,

ベルコの商業使用人とは認めませんでした。

 

 

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/242551より抜粋)

 

 

代理店の個人事業主は,ベルコから,

担当すべき業務について指示指導を受けており,

仕事を拒否することが相当程度制約されていたものの,

従業員の報酬を決めていたり,

労働時間や場所について裁量があったとして,

商業使用人ではないと判断されたのです。

 

 

この結論には納得できません。

 

 

雇用の責任を代理店に押し付けて,

会社が労働関係法令の規制を免れる仕組みが認められてしまえば,

労働者ではないように偽装する企業が多くなり,

労働者として保護されない人が増えてしまうからです。

 

 

原告が控訴したので,今後は,札幌高裁で戦いは続きます。

 

 

ぜひ,労働者として保護される判決が

くだされることを願いたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

年末年始休業のお知らせ

2018年12月29日から2019年1月6日までお休みさせていただきます。

 

2019年は1月7日から通常どおり営業を行います。

皆勤手当の不支給は不合理か?~ハマキョウレックス事件差し戻し審判決~

2018年は,正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差が

不合理か否かが争われた裁判の判決が多く出た年でした。

 

 

 

 

労働契約法20条(法改正により

短時間労働者及び有期雇用労働者の

雇用管理の改善等に関する法律8条)には,

業務内容や責任の程度,

仕事内容と配置の変更の範囲,

その他の事情を考慮して,

正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差が

不合理であってはならないと規定されています。

 

 

具体的には,正社員と非正規雇用労働者が

ほぼ同じ仕事をしているのに,

ある手当が正社員にだけ支給されていて,

非正規雇用労働者には支給されていない場合に,

ある手当が非正規雇用労働者に支給されていないのは

不合理であるとして,裁判で争われるのです。

 

 

さて,今年6月に労働契約法20条について

重要な判断が下されたハマキョウレックス事件の最高裁において,

皆勤手当について,高裁でもう一度審理をするように,

差し戻されたのですが,この大阪高裁の判決が12月21日にありました。

 

 

6月の最高裁判決では,手当の趣旨や目的を個別に丁寧に検討して,

不合理か否かが判断され,大阪高裁でも同じように検討されました。

 

 

ハマキョウレックス事件の皆勤手当は,

会社が運送業務を円滑に進めるには実際に

出勤するトラック運転手を一定数確保する必要があることから,

トラック運転手に皆勤を奨励する趣旨で支給されていました。

 

 

そして,正社員であっても,非正規雇用労働者であっても,

トラック運転手の主な業務は,配車担当者の指示に基づいて

配送業務を行うものであり,仕事内容や責任の程度において,

異なるとことはありません。

 

 

 

 

トラック運転手に皆勤してもらい,

トラックの配送業務をしてもらうという点において,

正社員と非正規雇用労働者には違いがないのです。

 

 

ハマキョウレックス事件では,

正社員と非正規雇用労働者との間には,

能力の開発と人材の育成,

活用に資することを目的とする等級・役職制度の有無や,

配転及び出向の可能性などの点で相違はありますが,

これらの相違は,皆勤手当の趣旨とは

合理的な関連性はないと判断されました。

 

 

そして,非正規雇用労働者に皆勤手当が不支給とされていることに

対する合理的な代償措置はなにもありませんでした。

 

 

その結果,皆勤手当の趣旨を踏まえると,

正社員と非正規雇用労働者との皆勤手当の支給における相違は,

不合理と認められ,労働契約法20条に違反しており,

皆勤手当2年8ヶ月分の合計32万円の

損害賠償請求が認められました。

 

 

正社員と非正規雇用労働者の待遇の格差については,

賃金の手当の趣旨や目的を個別に丁寧に検討するという

方向性が定着しつつあります。

 

 

非正規雇用労働者は,正社員との待遇の格差に

疑問を思ったときには,労働契約法20条に違反しないか,

弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業代請求をして,会社からサボっていただろうと言われたら・・・

労働者が,会社に対し,未払い残業代を請求すると,

会社から次のような反論がされることがよくあります。

 

 

会社は,残業を命じていないのに

労働者が勝手に残業をしていただけである。

 

 

パソコンゲームで遊んでいたり,

席を離れて仕事以外のことで時間を潰していたので,

労働時間ではなく休憩時間である。

 

 

 

 

ようするに,労働者は働かずにサボっていたのであるから,

残業代を支払わなくてよいという反論です。

 

 

それでは,労働者が勝手に残業していた,

遊んでいた等の会社の主張は認められるのでしょうか。

 

 

結論としては,このような会社の主張は

認められないことがほとんどです。

 

 

この点について判断された裁判例をいくつか紹介します。

 

 

まずは,株式会社ほるぷ事件を紹介します

(東京地裁平成9年8月1日判決・労働判例722号62頁)。

 

 

この事件では,会社は,土曜休日労働の指示をしていないのに,

労働者が勝手に土曜休日労働をしていたと主張していました。

 

 

裁判所は,通常の勤務日のみでは

仕事の全部を処理することが不可能な状況であり,

労働者は,土曜休日に通常の勤務日に処理できない

仕事をしていたのであり,タイムカードで会社に管理され,

会社は,労働者がこれらの仕事をしていたことを

十分に認識しながら,仕事を中止するように

指示を出さなかったのであるから,会社による

黙示の指示によって土曜休日出勤がなされたと判断しました。

 

 

 

 

ようするに,会社は,労働者が残業していることを知っていて,

残業を中止する指示をしていないのであれば,

黙示の指示で残業をさせていたことになるのです。

 

 

次に,山本デザイン事件を紹介します

(東京地裁平成19年6月15日判決・労働判例944号42頁)。

 

 

この事件では,会社は,労働者がパソコンやインターネットで

遊んでいたと主張していました。

 

 

裁判所は,作業と作業の合間に空き時間があるとしても,

その間に次の作業に備えて調査したり,待機していたので,

空き時間も会社の指揮監督下にある労働時間であり,

そのような時間を利用してパソコンで遊んでいたりしても,

これを休憩時間と認めることはできないと判断しました。

 

 

仮に,遊んでいる時間があったとしても,

労働から完全に解放されていないと,

休憩時間ではなく,労働時間になるのです。

 

 

最後に,京電工事件を紹介します

(仙台地裁平成21年4月23日判決・労働判例988号53頁)。

 

 

この事件では,会社は,労働者が勤務時間後に

パソコンゲームに熱中し,席を離れて仕事以外のことに

時間をつぶしていたと主張していました。

 

 

 

裁判所は,タイムカードに打刻された時間の範囲内は,

仕事に当てられていたものと事実上推定され,

会社において別途時間管理者を選任し,

その者に時計を片手に各労働者の毎日の残業状況をチェックさせ,

記録化する等しなければ,タイムカードによる勤務時間の推定を

覆すことができないと判断しました。

 

 

すなわち,パソコンゲームに熱中したり,

会社を離れて仕事に就いていなかった時間が

相当あることがうかがわれても,

タイムカードの範囲の時間中,

働いていたと推定されるのです。

 

 

以上3つの裁判例を紹介しましたが,

勝手に残業していたやサボっていたという

会社の反論は認められないことが多いのです。

 

 

そのため,労働者は,会社から勝手に残業していたや

サボっていたと言われても,臆することなく,

未払い残業代を請求するべきなのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ワークルール教育

昨日,金沢大学法学部の法実務入門

という講義の1コマ90分の時間で,

大学1年生に対して,労働法の講義をしてきました。

 

 

 

 

ブラックバイトとブラック企業の実態から,

労働法の知識を身につけてもらいたいと考えて,講義をしました。

 

 

今からさかのぼること10年前,

2008年のリーマンショックによって景気は一気に冷え切り,

派遣切りが横行して,多くの労働者の仕事が奪われました。

 

 

そして,2008年の年末にショッキングな映像が流れました。

 

 

年越し派遣村です。

 

 

派遣切りにあった多くの労働者が,若者も含めて,

日比谷公園の炊き出しに行列を作っていたのです。

 

 

http://www.asahi.com/special/08016/TKY200812310157.htmlより抜粋)

 

あの映像を見た多くの若者はこう思ったに違いありません。

 

 

派遣社員になったらだめや,正社員にならなきゃ。

 

 

このように,年越し派遣村の映像を見て,

若者たちやその親も,正社員になることを強く望んだのです。

 

 

しかし,リーマンショックで景気は冷え込んでいましたので,

企業はなかなか正社員を雇用したがらず,

調整弁としての非正規雇用労働者を増やしていきました。

 

 

そのため,若者たちは,少ない正社員のいすを

奪い合うことになりました。

 

 

ここに目をつけたのがブラック企業です。

 

 

ブラック企業は,正社員という甘い罠をしかけて,

詐欺的な求人を見て応募してきた若者を大量に雇用します。

 

 

 

 

ブラック企業に就職すると,正社員とは名ばかりで,

昇給も賞与も退職金もなく,残業代なしで長時間労働を強いられます。

 

 

ブラック企業は,使えないと判断した労働者に対して,

意図的に組織的にパワハラを行い,

労働者を精神障害に罹患させて,

自己都合退職に追い込みます。

 

 

会社は,労働者を簡単には解雇できないので,

労働者から自己都合退職させれば,

労働者は会社を辞めることを争えなくなるので,

ブラック企業は,労働者を自己都合退職に追い込むために,

パワハラをしてくるのです。

 

 

ブラック企業に使えると判断された労働者は,

その後も長時間労働が継続し,

いずれは精神を病んでしまうのです。

 

 

まさに,辞めるも地獄,辞めないも地獄なのです。

 

 

こうして,使い潰される若者が増加し,

ブラック企業は,社会問題となったのです。

 

 

若者がブラック企業のえじきにならないためには,

労働法の知識を身に着けて自分の身を自分で守るしかありません。

 

 

 

 

そのため,高校生や大学生が社会に出る前に,

ワークルールを勉強してもらう必要があると考えています。

 

 

昨日の講義では,大学生に対して,次のことを伝えました。

 

 

仕事でミスをしたことが原因で会社から

罰金として給料を減額されることは,

労働基準法24条1項の賃金全額払の原則に違反して無効です。

 

 

パワハラを受けたら,ボイスレコーダーなどで録音して証拠に残し

しんどいときには,有給休暇をとって休みましょう。

 

 

新人でも6ヶ月継続勤務し,8割以上出勤すれば

10日間の有給休暇が取得できます。

 

 

1日8時間を超えて労働すると残業代を請求できるので,

自分の労働時間を記録しましょう。

 

 

サービス残業は労働基準法37条違反なので,

自分の残業代がきちんと支払われているかチェックしましょう。

 

 

働き過ぎると,人は精神を害するか,

過労死するので,しっかり休みましょう。

 

 

会社から,辞めてほしいと退職勧奨をされても,

労働者には退職勧奨に応じる義務がないので,

辞めたくないのであれば,きっぱりと断るようにしましょう。

 

 

受講していた大学生は,ほとんどアルバイトをしていたので,

残業代の話しなどには真剣に耳を傾けてくれていました。

 

 

 

若者が就職する前に,ワークルールをしっかりと学び,

会社からの理不尽な扱いに屈することなく,

権利を主張する力を身につけてもらいたいと願っています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

学習塾の塾講師の過酷な労働実態

最近,学習塾の塾講師が

過酷な労働をさせられたことが原因で,

労災認定されたニュースが報じられました。

 

 

 

 

神奈川県の大手学習塾「ステップ」の40代の塾講師は,

40日連続勤務が原因で適応障害を発症して,労災認定されました。

 

 

精神障害の労災認定基準によれば,

1ヶ月以上にわたって連続勤務を行えば,

労働者が被る精神的負荷の強度が強くなり,

仕事が原因で精神障害を発症したと

認定される可能性が高くなります。

 

 

また,進学塾「栄光ゼミナール」で働いていた49歳の塾講師は,

長時間労働が原因で死亡したとして,労災認定されました。

 

 

栄光ゼミナールの事件では,死亡した労働者は,

会社に自己申告していた残業時間はゼロだったのですが,

社内のシステム作業ログと妻とのラインでのメッセージの

やりとりなどで残業時間を集計したところ,

死亡する1ヶ月前の時間外労働が113時間となっていたようです。

 

 

過労死の労災認定基準によれば,

脳・心臓疾患の発症前1ヶ月の時間外労働が

おおむね100時間を超えると,長時間労働が原因で

脳・心臓疾患を発症したと認定される可能性が高くなります。

 

 

このように学習塾の講師が,精神障害を発症したり,

過労死するのは,少数の正社員が多数の学生アルバイトを

管理監督する運営方法に原因があるようです。

 

 

学生のアルバイトが講義を担当しても,

アルバイトが生徒や保護者の求める水準に達している

講義をしているのかを正社員がチェックする必要があります。

 

 

 

 

正社員は,学生のアルバイトの管理監督の他に,

自分が担当する講義の準備がありますし,

生徒や保護者への対応,

教室の清掃,

塾代を支払わない保護者への督促,

近隣の住宅へ塾案内のポスティングをすること

などの仕事もしているようです。

 

 

このように仕事の種類が多く,

授業準備や保護者対応に時間がかかることから,長

時間労働に陥ってしまうのです。

 

 

土日祝日には,模擬試験などのイベントが多いので,

休みがなく,連続勤務になってしまうのです。

 

 

また,講義をしている時間については,給料は支払われますが,

講義の事前準備やテキストの作成の時間については,

給料が支払われずにサービス残業が横行している可能性もあります。

 

 

 

 

このような仕事の準備時間については,

会社の指揮命令下に置かれたものといえますので,

労働時間であり,この時間についても,

賃金が支払われなければなりません。

 

 

学習塾の講師の精神障害や過労死を減らすためにも,

学習塾には,タイムカードなどで労働時間を適正に把握して

労働基準法に基づいた残業代を支払う,

1週間に1回必ず休日を与えるなどの,

労働基準法を守る対応をしてもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

就業規則に配転命令の根拠規定がない場合,配転命令を拒否できるのか?

池井戸潤氏の半沢直樹シリーズの小説

「オレたちバブル入行組」,

「オレたち花のバブル組」,

「ロスジェネの逆襲」を読むと,

サラリーマンは,辞令という紙切れ一枚で,

配転や出向を命じられ,それに従わざるをえない

理不尽さが痛切に記載されています。

 

 

 

会社が,労働者に人事異動を命じることができるのは,

就業規則に人事異動に関する規定が定められており,

その人事異動の規定が労働契約の内容となっているからなのです。

 

 

通常,会社の就業規則には「業務上の都合により

出張,配置転換,転勤を命ずることがある」という規定があり,

この規定を根拠として配転命令がくだされるのです。

 

 

それでは,就業規則に配転に関する規定がない場合,

会社は,労働者に対して配転を命じることができるのでしょうか。

 

 

本日は,この点が争われた学校法人大手門学院(大手門学院大学)事件

を紹介します(大阪地裁平成27年11月18日判決・

労働判例1134号33頁)。

 

 

この事件では,学長を辞任した大学教授が,

以前の大学の学部の教授から

被告の学校法人の教育研究所へ配転させられました。

 

 

もともと,被告の学校法人の就業規則には,

大学教授についての配転に関する規定が存在せず,

原告が配転させられるころに,就業規則の服務規律の章に

「業務上の都合により,職務の変更を命ぜられた場合は,

旧職務を引き継いだ上,新職務に専念する」

という規定が新設されました。

 

 

裁判では,この規定が配転命令権の根拠となるのかが争われました。

 

 

裁判所は,この規定について,

職務の変更を命ぜられる原因となる事由について

何も記載されていないこと,

この規定が人事の章ではなく,

服務規律の章に定められていることから,

この規定は,職務変更がなされた後の服務規律に関する規定であり,

配転命令権の根拠になるものではないと判断しました。

 

 

また,被告は,本件配転は,労働契約に内在する

人事権を行使して行ったものであると主張しました。

 

 

 

 

しかし,裁判所は,配転命令権は労働契約により

その範囲が画されており,配転命令権の根拠となる

具体的な規定がないことから,被告は,

原告の同意をえることなく,

配転を命じることはできないとしました。

 

 

裁判所が,就業規則に配転の規定がなくても,

労働契約に内在する人事権を根拠に

配転ができるとしなかったことは重要です。

 

 

これが認められると,会社は労働者に対して,

広い配転命令権をもってしまう危険があり,

会社の配転命令権に一定の歯止めをかける必要があるからです。

 

 

本件事件では,原告が大学教授のという

専門性の高い職種であり,過去に専門の学部以外への

配転が行われていなかったという特殊事情があったものの,

就業規則に配転命令の根拠規定が全くない場合に,

配転が無効になると判断されたことは,

労働者に有利に活用できます。

 

 

労働者は,配転を命令された場合,

まずは,就業規則を確認して,

就業規則に配転命令の根拠規定があるのかを

チェックしてください。

 

 

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店長になると残業代を請求できないのか?

ブラック企業の手口の一つに,

入社して半年くらいで店長やマネージャー

になるように義務付ける方法があります。

 

 

 

 

半年間,働きながら社内の試験に合格するために必死で勉強し,

晴れて試験に合格して,店長やマネージャーになっても,

「管理監督者」だからという理由で,残業代が支払われないまま,

長時間労働を強いられる,という手口です。

 

 

試験に合格しなければ,ブラック企業から

使えないやつだと認定されて,

酷いパワハラで精神的に追い詰められて,

自己都合退職させられてしまいます。

 

 

試験に合格してもしなくても,

地獄が待っているという恐ろしい手口です。

 

 

さて,会社から店長やマネージャーという役職をもらっただけで,

残業代が支払われないのは合法なのでしょうか。。

 

 

本日は,残業代請求事件で,会社から争われることのある,

管理監督者について解説します。

 

 

労働基準法41条2号には,

「監督若しくは管理の地位にある者」は,

労働時間に関する規定が適用されないと定められています。

 

 

すなわち,管理監督者に該当すれば,

会社に残業代の支払を義務付けている労働基準法37条

が適用されない結果,管理監督者に該当する労働者は,

会社に対して,残業代を請求できなくなるのです。

 

 

それでは,管理監督者とは,どのような労働者をいうのでしょうか。

 

 

管理監督者の裁判例で有名なのは,

名ばかり管理職」を世に広めた,日本マクドナルド事件です

(東京地裁平成20年1月28日判決・労働判例953号10頁)。

 

 

 

 

そもそも,本来の管理監督者は,経営者と一体的な立場において,

労働基準法の労働時間の枠を超えて働くことを求められても

やむを得ないといわれるくらい重要な職務と権限が与えられ,

勤務態様や賃金において,他の一般労働者に比べて

優遇措置が取られているので,労働時間の規制を適用しなくても,

労働者の保護に欠けることがないのです。

 

 

そのため,管理監督者に該当するか否かは,

次の3つの観点から判断されます。

 

 

①職務内容,権限及び責任に照らし,労務管理を含め,

企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか

 

 

 ②その勤務態様が労働時間等に対する規制に

なじまないものであるか否か

 

 

 ③給与及び一時金において,

管理監督者にふさわしい待遇がされているか否か

 

 

日本マクドナルド事件では,

①店長は,アルバイトの採用育成,従業員のシフトの決定,

販売促進活動の企画,実施の権限を行使して,

店舗運営において重要な職責を負っていましたが,

店長の職務,権限は店舗内の事項に限られているので,

経営者と一体的な立場ではなく,

重要な職務と権限が与えられていないと判断されました。

 

 

 

 

②店長の勤務態様は,長時間の時間外労働を余儀なくされており,

労働時間に対する自由裁量があったとは認められませんでした。

 

 

③全体の40%の店長の年額賃金は,

下位の職位の労働者の年額賃金よりも

年額で約44万円多いだけであり,

管理監督者に対する待遇としては不十分と判断されました。

 

 

以上より,マクドナルドの店長は,

管理監督者ではないと判断されて,

約500万円の未払い残業代請求が認められました。

 

 

経営者と同じ立場にあり,

仕事内容も賃金も経営者と同じレベルでないと,

残業代が支払われなくてもやむを得ない

管理監督者とは認められません。

 

 

コンビニや飲食店の店長であれば,

労働基準法で定められた管理監督者ではなく,

未払い残業代を請求できることが多いです。

 

 

店長やマネージャーだからという理由で

残業代が支払われていないのであれば,

未払い残業代を請求できる可能性があります。

 

 

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