試用期間中の解雇

入社後の一定期間を試用期間や見習期間として,

その間に労働者を評価して本採用するかどうかを

決めることがよくあります。

 

 

 

会社にとっても労働者にとっても,

入社面接をしただけでは,

お互いに合う合わないがわかりませんので,

試用期間中に,お互いをよく知るというのは合理的だと思います。

 

 

ところが,試用期間の途中で突然,

会社から解雇を告げられてしまうと,今後も,

会社で働き続けたいと考えていた労働者としては,

途方に暮れてしまいます。

 

 

本日は,試用期間中の解雇はどのようなときに

認められるのかについて説明します。

 

 

そもそも,労働契約において試用期間が設定される趣旨は,

採用決定の当初ですと,労働者の資質・性格・能力などの

適格性の有無に関連する事項について

資料を十分に収集することができないので,

後日における調査や観察に基づく

最終決定を留保することにあります。

 

 

そのため,会社には,労働契約の解約権が留保されています。

 

 

試用期間の会社の解約権は,本採用後の解雇と比べて

緩やかに判断される可能性があります。

 

 

 

 

もっとも,会社が採用決定後における調査の結果により,

または試用期間中の勤務状況などにより当初知ることができず,

また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合に,

その労働者を引き続き会社で雇用することが適当ではないときに,

会社は,留保されている解約権を行使することができるのです。

 

 

この判断枠組みは,試用期間満了時点での本採用拒否と,

試用期間の途中での解雇とでは,それほど変わらないといわれています。

 

 

裁判例の中には,試用期間の途中の解雇の場合,

残りの試用期間を勤務することによって会社の要求する

水準に達する可能性があったので,

解雇する時期の選択を誤ったとして,

本採用拒否の場合よりも厳格に判断されるとしたものもあります

(医療法人財団健和会事件・

東京地裁平成21年10月15日判決・

労働判例999号54頁)

 

 

まとめますと,試用期間中の解雇は,

本採用拒否の場合よりも厳格に判断される可能性はありますが,

本採用後の解雇と比較すると緩やかに判断される可能性

があるということになります。

 

 

それでも,試用期間中の解雇は,

採用段階では分からなかった労働者の不適格性について,

引き続き会社で雇用することが不適当であると,

客観的に相当である場合にしかできず,

試用期間中の解雇を争うことは十分可能ですので,

解雇に身に覚えがない労働者は,

弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。