店長になると残業代を請求できないのか?

ブラック企業の手口の一つに,

入社して半年くらいで店長やマネージャー

になるように義務付ける方法があります。

 

 

 

 

半年間,働きながら社内の試験に合格するために必死で勉強し,

晴れて試験に合格して,店長やマネージャーになっても,

「管理監督者」だからという理由で,残業代が支払われないまま,

長時間労働を強いられる,という手口です。

 

 

試験に合格しなければ,ブラック企業から

使えないやつだと認定されて,

酷いパワハラで精神的に追い詰められて,

自己都合退職させられてしまいます。

 

 

試験に合格してもしなくても,

地獄が待っているという恐ろしい手口です。

 

 

さて,会社から店長やマネージャーという役職をもらっただけで,

残業代が支払われないのは合法なのでしょうか。。

 

 

本日は,残業代請求事件で,会社から争われることのある,

管理監督者について解説します。

 

 

労働基準法41条2号には,

「監督若しくは管理の地位にある者」は,

労働時間に関する規定が適用されないと定められています。

 

 

すなわち,管理監督者に該当すれば,

会社に残業代の支払を義務付けている労働基準法37条

が適用されない結果,管理監督者に該当する労働者は,

会社に対して,残業代を請求できなくなるのです。

 

 

それでは,管理監督者とは,どのような労働者をいうのでしょうか。

 

 

管理監督者の裁判例で有名なのは,

名ばかり管理職」を世に広めた,日本マクドナルド事件です

(東京地裁平成20年1月28日判決・労働判例953号10頁)。

 

 

 

 

そもそも,本来の管理監督者は,経営者と一体的な立場において,

労働基準法の労働時間の枠を超えて働くことを求められても

やむを得ないといわれるくらい重要な職務と権限が与えられ,

勤務態様や賃金において,他の一般労働者に比べて

優遇措置が取られているので,労働時間の規制を適用しなくても,

労働者の保護に欠けることがないのです。

 

 

そのため,管理監督者に該当するか否かは,

次の3つの観点から判断されます。

 

 

①職務内容,権限及び責任に照らし,労務管理を含め,

企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか

 

 

 ②その勤務態様が労働時間等に対する規制に

なじまないものであるか否か

 

 

 ③給与及び一時金において,

管理監督者にふさわしい待遇がされているか否か

 

 

日本マクドナルド事件では,

①店長は,アルバイトの採用育成,従業員のシフトの決定,

販売促進活動の企画,実施の権限を行使して,

店舗運営において重要な職責を負っていましたが,

店長の職務,権限は店舗内の事項に限られているので,

経営者と一体的な立場ではなく,

重要な職務と権限が与えられていないと判断されました。

 

 

 

 

②店長の勤務態様は,長時間の時間外労働を余儀なくされており,

労働時間に対する自由裁量があったとは認められませんでした。

 

 

③全体の40%の店長の年額賃金は,

下位の職位の労働者の年額賃金よりも

年額で約44万円多いだけであり,

管理監督者に対する待遇としては不十分と判断されました。

 

 

以上より,マクドナルドの店長は,

管理監督者ではないと判断されて,

約500万円の未払い残業代請求が認められました。

 

 

経営者と同じ立場にあり,

仕事内容も賃金も経営者と同じレベルでないと,

残業代が支払われなくてもやむを得ない

管理監督者とは認められません。

 

 

コンビニや飲食店の店長であれば,

労働基準法で定められた管理監督者ではなく,

未払い残業代を請求できることが多いです。

 

 

店長やマネージャーだからという理由で

残業代が支払われていないのであれば,

未払い残業代を請求できる可能性があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。