降格の対処法2

昨日に引き続き,降格された場合の

労働者の対処法について説明します。

 

 

 

会社の人事権の行使としてなされる降格は,

①職位・役職を引き下げる場合,

②職能資格等級を引き下げる場合,

③職務等級を引き下げる場合

の3つに分かれます。

 

 

①職位・役職を引き下げる場合については,

昨日のブログで説明しましたので,本日は,

②職能資格等級を引き下げる場合,

③職務等級を引き下げる場合の2つについて説明します。

 

 

まず,②職能資格を引き下げる場合です。

 

 

職能資格制度とは,会社における職務遂行能力を

職掌として大くくりに分類したうえ,

各職掌における職務遂行能力を資格とその中での

ランク(級)に序列化したものをいいます。

 

 

勤続年数が長くなれば,それだけ職務を遂行する能力が

高いとされているため,年功序列や終身雇用を前提にした等級制度です。

 

 

 

職能資格制度でいう職務遂行能力は,

勤続によって蓄積されていくことが暗黙の前提とされているため,

いったん蓄積された能力が下がることは想定されておらず,

資格等級の引下げは基本給の低下をもたらすことから,

労働者の同意があるか,もしくは就業規則上,

会社に資格等級の引下げの権限が明確に

与えられている場合に限り可能となります。

 

 

就業規則の規定に基づかずに,会社の裁量権を理由にして

一方的に資格等級を引下げて降格,減給をすることはできないのです。

 

 

また,就業規則に降格の根拠規定があっても,

降格が権利の濫用にあたれば,降格は無効となります。

 

 

権利の濫用の判断においては,降格による減給の金額や

労働者の勤務態度などが検討されます。

 

 

次に,③職務等級を引き下げる場合です。

 

 

職務等級制度とは,労働者の職務遂行能力

(勤務年数によって蓄積された能力)ではなく

職務内容に着目する制度であり,会社内の職務を

職責の内容・重さに応じて等級(グレード)に分類・序列化し,

等級ごとに賃金額の最高値・中間値・最低値による

給与範囲(レンジ)を設定するものです。

 

 

仕事のみで賃金や働きぶりを評価するもので,

資格や熟練度などの項目で審査・評価し

賃金や報酬を支給する制度です。

 

 

成果主義型に近い賃金制度です。

 

 

 

 

職務等級制度では,もともと職務等級の変更が予定されていることから,

職務等級の引下げも,当該制度の枠組みのなかでの

人事評価の手続と決定権に基づき行われるかぎり,

原則として会社の裁量に委ねられ,

権利の濫用となる場合に,違法となるのです。

 

 

職務等級を引き下げる場合においても,

就業規則における明示的な根拠規定が必要であり,

労働契約上,職務が特定されている場合には,

降格させることはできません。

 

 

また,降格を行うべき業務上の必要性,

賃金減額の幅や程度など労働者の不利益の程度をふまえて,

人事評価制度自体の合理性・相当性・公平性などを検討して,

権利の濫用となるかを判断します。

 

 

さて,降格には様々な種類があるのですが,

労働者としては,降格が何を根拠にしているのかをチェックし,

降格による賃金の減額がいくらくらいになるのか,

降格をされたことについて自分に責任があるのかなどを検討します。

 

 

その上で,降格に納得できない場合には,

弁護士に早めに相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。