労働契約の内容はどうやって決まるのか

長時間労働をしているにもかかわらず,

残業代が支払われないことから,労働者が,

会社に対して,未払残業代を請求しました。

 

 

すると,会社からは,会社説明会や入社説明会で,

うちは固定残業代を採用しているという説明をしているし,

就業規則や賃金規定にも固定残業代のことが規定されているから,

残業代は支払わなくていいのだという説明をされたとします。

 

 

固定残業代とは,残業代が,すでに給料の中に組み込まれていたり,

別の手当として支給されているものであり,これが適法に認められると,

残業代はすでに支払い済みとなってしまいます。

 

 

 

 

労働者は,入社する前に固定残業代のことを聞いた覚えもなく,

就業規則を見たことがなく,納得できません。

 

 

ここでは,入社のときに,どの程度の説明があれば,

労働契約の内容となるのか,

就業規則が周知されていたのかが問題となります。

 

 

本日は,これらの問題点が争われた

PMKメディカルラボ事件を紹介します

(東京地裁平成30年4月18日判決・労働判例1190号39頁)。

 

 

この事件では,エステティシャンの原告が

会社に未払残業代を請求したところ,会社は,

会社説明会や入社説明会で固定残業代について説明しており,

固定残業代は労働契約の内容になっていたと主張してきました。

 

 

 

 

しかし,原告が,会社説明会での会社からの説明をメモしており,

そのメモには,固定残業代についての記載がなく,

原告が保管していた入社説明会で配布された資料にも

固定残業代についての説明が記載されていませんでした。

 

 

さらに,会社は,労働条件通知書や労働契約書を作成しておらず,

原告が退職するころに,ホームページの採用情報に

固定残業代の説明を掲載しました。

 

 

これらの事実関係から,原告が入社するときに,

固定残業代の説明がされておらず,

固定残業代が契約の内容になっていないと判断されました。

 

 

労働基準法15条1項において,会社は,

労働契約を締結する際に,労働者に対して,

労働条件を明示しなければならず,通常は,

労働条件通知書や労働契約書に記載されている内容が,

労働契約の内容になることがほとんどです。

 

 

ところが,労働条件通知書や労働契約書が作成されておらず,

どのような労働契約の内容だったのかが争点になることがあり,

その際には,会社説明会や入社説明会における説明内容や資料が

重要な証拠になります。

 

 

また,求人票も,労働契約の内容を見極める上で,

貴重な証拠となります。

 

 

 

 

労働者は,入社したときに,労働条件通知書や労働契約書を

もらえなかった場合,後日のトラブルに備えて,

会社説明会や入社説明会の資料やメモ,求人票

などの証拠を確保しておくといいでしょう。

 

 

長くなりましたので,就業規則の周知については,明日以降記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。