会社の承諾がないと退職金を請求できないのか?

パワハラを受けたり,長時間労働が原因で,

これ以上会社で働くことはしんどいと思い,

退職届を提出して,会社を退職しました。

 

 

 

 

会社を退職した後,退職金を請求したところ,

会社から,退職金規定には,会社の承諾なく退職した者については,

退職金を支給しないと記載されているので,

退職金を支払わないと言われたとします。

 

 

労働者としては,会社に対して,きちんと理由を説明して,

退職届を提出しており,会社の承諾をもらって退職しないと

退職金をもらえないのでは,パワハラを受けたり,

長時間労働を強いられる職場に拘束させられてしまうので,

納得できません。

 

 

退職金規定に,会社の承諾なく退職した者については,

退職金を支給しないという記載がある場合,

会社から退職について承諾していないと言われたら,

労働者は,退職金を請求できないのでしょうか。

 

 

 

 

まず,会社に退職金規定があり,

退職金の支給基準が明確に定められている場合,

労働者は,会社に対して,退職金を請求することができます。

 

 

逆に言えば,会社に退職金規定などの退職金の根拠となる規定が

なにもない場合には,労働者は,会社に対して,

退職金を請求することはできません。

 

 

退職金規定に退職金の支払時期が定められていない場合,

会社は,労働者の退職金の請求から7日以内に

退職金を支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。

 

 

会社が労働者の請求から7日以内に退職金を支払わない場合,

労働者は,退職金の請求から7日経過後に,

会社に対し,遅延損害金を請求できます。

 

 

次に,正社員の労働者は,退職届を提出して2週間経過すれば,

いつでも辞めれますし,2週間について,

年次有給休暇を取得すれば,会社に出勤することなく,

会社を辞めることができるのです。

 

 

すなわち,労働者には退職の自由が認められているのです。

 

 

そうであれば,会社が退職を承諾しない限り,

労働者が退職金を全く受領できないという制度では,

労働者は,労働契約の継続を望まないのであれば,

退職金受給を全て断念しなければらないということになり,

退職金の受給を望むのであれば,不本意にも労働契約を

継続しなければならないという不合理な結果になります。

 

 

 

そのため,会社の承諾なく退職した者については,

退職金を支給しないという規定は,

労働者の退職の自由を不当に制限しており,無効となります

(東花園事件・東京地裁昭和52年12月21日判決・

労働判例290号35頁参照)。

 

 

よって,労働者は,会社から,会社の承諾なく退職しているので

退職金を支払わないと言われても,ひるむことなく,

会社に対して,退職金の全額と遅延損害金を請求するべきです。

 

 

退職金を請求する際には,会社の退職金規定を入手して,

計算根拠や,不支給や減額の条項があるかを

チェックするようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。