楽天の上司による暴行事件から職場における暴行の労災認定を解説します

1 楽天における上司の暴行が労災と認定されました

 

 

楽天に勤務していた労働者が,

仕事中に上司から暴行を受けて,

頚椎不全損傷とうつ病を発症し,

渋谷労働基準監督署から労災認定を受けたようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASMD55228MD5ULFA01F.html

 

 

マスコミ報道によりますと,会社内のチーム会議において,

会議参加者の発言について,被災労働者が意見を述べたところ,

上司が突然激高して,被災労働者の首付近をつかんで持ち上げて,

壁際に押さえつけるという暴行をしたようです。

 

 

 

被災労働者と上司との関係がよくなかったといった事情はないようです。

 

 

2 職場における暴行で労災認定される場合とは

 

 

このように職場において暴行が行われた場合に,

労災と認定されるのはどのような場合なのでしょうか。

 

 

まず,労災と認定されるためには,

仕事が原因となって負傷したことが必要となります。

 

 

これを業務起因性といいます。

 

 

別の言い方をすれば,業務に内在する危険が

現実化したものによると認められることです。

 

 

職場で上司や同僚から暴行を受けた場合,

業務に内在する危険が現実化したといえるのかが

争われることがあります。

 

 

例えば,工事現場の監督者が作業員に対して,

きつい口調で注意したところ,

作業員から足で背中を蹴られるという暴行を受けたことについて,

業務起因性が争われた新潟労基署長(中野建設工業)事件の

新潟地裁平成15年7月25日判決(労働判例858号170頁)

を紹介します。

 

 

この事件では,監督者は,作業員に対して,

「親のしつけがなっていない。私生活がいい加減だ。

親がバカならお前もバカだ」と言っていたようです。

 

 

裁判所は,労働者が業務遂行中に同僚や部下から

暴行という災害によって負傷した場合には,

当該暴行が職場での業務遂行中に生じたものである限り,

当該暴行は労働者の業務に内在する危険が現実化したものと

評価できるのが通常であると判断しました。

 

 

原則として,仕事中に暴行を受けた場合には,

業務起因性が認められるということです。

 

 

もっとも,例外として,当該暴行が被災労働者との私的怨恨

または被災労働者による業務上の限度を超えた

挑発的行為若しくは侮辱的行為によって生じたものであれば,

業務起因性が否定されます。

 

 

 

この判断にあたっては,暴行が発生した経緯,

被災労働者と加害者との間の私的怨恨の有無,

被災労働者の職務の内容や性質(他人の反発や恨みをかいやすいものか),

暴行の原因となった業務上の事実と暴行との時間的・場所的関係

などが考慮されます。

 

 

この事件では,監督者には作業員に対する挑発的行為,

侮辱的行為があったのですが,監督者の指示に対して

反抗的な態度をとったことに対する戒めの意味も込められた発言

と評価され,監督者の仕事上の指示,注意という業務に関連して,

暴行が発生したと判断されたのです。

 

 

3 楽天事件へのあてはめ

 

 

楽天の事件では,もともと被災労働者と上司の関係は問題なく,

会議中の被災労働者の発言をきっかけに,

上司が激高して暴行したようなので,

業務起因性が認められたのだと思います。

 

 

そして,当該暴行によって,被災労働者は頚椎不全損傷となったので,

精神障害の労災認定基準の別表1の心理的負荷評価表によれば,

「治療を要する程度の暴行を受けた」に該当し,

心理的負荷は強と判断されたと考えられます。

 

 

職場で暴行が行われるのは悲しいことなので,

このようなことがおこらないことを願います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。