株式会社金沢倶楽部の破産手続開始決定のお知らせ

2020年5月26日15時に金沢地方裁判所から,株式会社金沢倶楽部の破産手続開始決定が出されました。

 

今後,株式会社金沢倶楽部の財産は,裁判所から選任された破産管財人の管理下におかれます。

黒川検事長の訓告から国家公務員の懲戒処分を考える

1 黒川検事長の賭け麻雀問題

 

 

東京高検の黒川弘務検事長が,緊急事態宣言で

自粛要請されていた時期に,新聞記者と

賭け麻雀をしていたことについて,訓告となりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5V00CCN5TUTIL03N.html

 

 

検察官の定年延長問題で様々な批判があり,

さらに検察のトップクラスが賭け麻雀をしていたとして,

大々的な問題に発展しました。

 

 

 

それにもかかわらず,黒川検事長は,

懲戒処分を受けずに訓告となり,

多くの国民はこの結末に納得していないと思います。

 

 

そこで,本日は,黒川検事長の賭け麻雀問題から,

国家公務員の懲戒処分について考えてみたいと思います。

 

 

2 国家公務員の懲戒処分の基準

 

 

まず,懲戒処分とは,使用者が労働者の企業秩序違反行為

に対して科す制裁罰という性質をもつ不利益措置です。

 

 

懲戒処分には,戒告・譴責,減給,出勤停止,降格,

諭旨解雇,懲戒解雇という種類があります。

 

 

懲戒処分は,労働者の不祥事を未然に防止する観点から,

どのような不祥事には,どのような懲戒処分が科されるのかが

明確に定められ,公平に適用される必要があります。

 

 

そこで,国家公務員の懲戒処分については,人事院が

懲戒処分の指針について」という文書を公表しており,

この指針に,懲戒処分をするにあたっての考慮要素や,

どのような不祥事には,どのくらいの懲戒処分が相当であるかが

明確に記載されています。

 

 

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

 

 

この指針は,地方公務員や民間企業の労働者に対する懲戒処分にも

十分あてはまるものとなっています。

 

 

この指針では,懲戒処分を決定するにあたって考慮すべきこととして,

次の5つの要素があげられています。

 

 

①非違行為の動機,態様及び結果はどのようなものであったか

 

 

②故意又は過失の度合いはどの程度てあったか

 

 

③非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか,

その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか

 

 

④他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか

 

 

⑤過去に非違行為を行っているか

 

 

黒川検事長にあてはまると,

③検察組織のナンバー2という重大な職責を担っていた方が,

外出自粛中に賭け麻雀という不要不急なことをしたことで,

④検察組織と社会に与えた影響はとてつもなく大きかったといえます。

 

 

このことは,この指針で,「非違行為を行った職員が

管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき」には,

懲戒処分を重くすると規定されていることからも,

黒川検事長の不祥事は懲戒処分を重くする方向にはたらきます。

 

 

3 賭博とは

 

 

次に,この指針では,「公務外非行関係」として「(9)賭博」の中に

「ア 賭博をした職員は,減給又は戒告とする」と,

明確に規定されています。

 

 

賭博とは,偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為

をいい,刑法185条で50万円以下の罰金又は科料に処せられます。

 

 

賭け麻雀は,刑法185条の賭博罪に該当するのです。

 

 

 

そのため,プライベートな活動とはいえ,

国家公務員が賭博罪という犯罪行為をすれば,

戒告や減給という懲戒処分が科されるリスクがあるのです。

 

 

被疑者を刑事裁判にかけて,有罪にする起訴権限を独占している

検察のナンバー2が,犯罪行為をしていたことになるので,

不祥事の規模としては大きいと考えます。

 

 

賭け麻雀なので,一般的に行われていることで

処罰されている人は少ないこと,

過去の業績が素晴らしかったことを考慮しても,

黒川検事長の場合,最低でも,人事院の指針にあるとおり,

戒告や減給という懲戒処分がくだされてしかるべきでしょう。

 

 

それにもかかわらず,懲戒処分ではない,訓告となりました。

 

 

訓告は,今後このようなことがないように注意することであり,

対象者には特に不利益は発生しません。

 

 

通常であれば,最低でも,戒告や減給の懲戒処分がくだされるケースで,

黒川検事長が特別に訓告で終わるのでは,

国家公務員の懲戒処分のバランスが保てませんし,

このように軽い処分で終わらせるのには

何か裏があるのではないかと疑われます。

 

 

定年延長から始まった黒川検事長の問題は,

最後まで迷走を深める結果となり,残念でなりません。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。