セクハラ防止措置の拡充

1 取引先の社員からのセクハラにも対応する必要があります

 

 

今年の6月1日から大企業に対して,

パワハラ防止の措置を義務付ける法律が施行されたことは有名ですが,

セクハラについても,会社が実施すべきセクハラ防止措置について,

改正がされました。

 

 

1つ目の改正点は,取引先の事業主またはその雇用する社員,

顧客などからのセクハラについても,会社は,

対応しなければならないことです。

 

 

会社内における上司からの部下に対するセクハラなどについては,

従来から,会社は,セクハラ問題に対応しなければならなかったのですが,

会社外部の取引先の社員などから自社の労働者がセクハラを受けた場合に,

会社がセクハラ問題に対応しなければならないかについては,

不明確となっていました。

 

 

 

そのため,重要な取引先の社員が自社の労働者にセクハラをしても,

セクハラ問題を明らかにすると,重要な取引先から,

取引を打ち切られることを恐れて,会社としては,

セクハラ問題に蓋をして,何もなかったように

取り扱うことがあったかもしれません。

 

 

しかし,今年の6月1日からは,このような会社の対応は,

セクハラ防止措置義務に違反することになり,場合によっては,

労働者から損害賠償請求をされるリスクが生じます。

 

 

会社としては,取引先の社員からのセクハラについても,

自社の労働者からの相談に対応し,取引先に対して,

事実関係の確認の協力を求めることになります。

 

 

その結果,取引先の社員が自社の労働者に対して

セクハラをしていたことが発覚したならば,取引先に対して,

セクハラをした社員に適切な処分をすることを求めたり,

セクハラ被害にあった労働者を,当該取引先の担当から外したり,

しばらく仕事を休ませるなどの適切な対応をしなければなりません。

 

 

セクハラの行為者の範囲が拡大したことがポイントです。

 

 

会社としては,社内のセクハラだけでなく,

取引先からのセクハラにも注意する必要があるでしょう。

 

 

また,取引先から,自社の労働者が

セクハラをしている疑いがあるとして,

必要な協力を求められた場合には,

調査などに応じるように努めなければなりません。

 

 

2 不利益取扱いの禁止

 

 

2つ目の改正点は,セクハラの被害者などが

セクハラの相談をしたことを理由に

解雇などの不利益取扱いをしてはならないことが明確化されたことです。

 

 

 

セクハラ被害者が被害を申告したことで

不利益な取扱いを受けたのでは,

誰もセクハラ被害を申告しなくなり,

セクハラ被害が放置されてしまいます。

 

 

また,セクハラ被害を目撃した労働者が,

調査に協力したことで不利益な取扱いを受けたのでは,

誰もセクハラ被害の調査に協力しなくなり,

セクハラ被害の実態を明らかにできなくなってしまいます。

 

 

そこで,セクハラ被害の相談をしたり,

調査に協力したことを理由に,

不利益な取扱いをすることを名文で禁止することにしたのです。

 

 

セクハラ被害を防止するための取組が拡充されたことは,

労働者にとっては喜ばしいことです。

 

 

今後は,セクハラを防止するための研修が

実施されることが多くなるので,

私もご依頼がありましたら,研修の講師をしたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。