マカフィーの労働審判から退職勧奨や退職強要の対処方法を検討する

1 マカフィーの労働審判

 

 

外資系セキュリティー大手のマカフィーにおいて、

退職強要をされたと主張する労働者が、

労働審判を申し立てて、調停が成立しました。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/08f0be34ab6a13b8b993be0d08541d023f5406c8

 

 

報道によりますと、申立人の労働者は、

「サインをしなければ解雇通知します」等と言われて、

その場で、退職確認書に署名することを迫られ、

2時間ほど退職強要されて、署名させられたようです。

 

 

会社は、労働者をそう簡単に解雇できないので、

労働者が自分から会社を辞めた形にもっていくために、

退職勧奨や、ひどいときには退職強要をしてきます。

 

 

本日は、退職勧奨や退職強要の対処方法について解説します。

 

 

2 退職勧奨や退職強要の対処方法

 

 

まず、会社が労働者に対して、

会社を辞めてほしいとお願いすることを退職勧奨といい、

退職勧奨が、退職を強要するように違法になされることを

退職強要といいます。

 

 

退職勧奨は、単なるお願いなので、

労働者は、退職勧奨に応じる義務はなく、

会社を辞めたくないのであれば、

辞めませんときっぱりと断ればいいのです。

 

 

 

退職勧奨を受けている労働者の代理人として、

弁護士が会社に対して、内容証明郵便で退職勧奨を辞めるように

通知を出すことで、退職勧奨が止まることもあります。

 

 

会社が労働者の自由な意思を尊重しつつ、

退職勧奨を行う限りでは、退職勧奨は、違法になりません。

 

 

もっとも、労働者が、退職勧奨に応じない態度を示しても、

退職勧奨が止まらないことはよくあります。

 

 

このような場合、働者が退職勧奨に応じる意思がないことを

明確にしているのに、執拗に退職勧奨を繰り返したり、

多人数で取り囲んだり、威圧的な言動を繰り返すなどした場合には、

違法な退職勧奨、すなわち、退職強要となり、

労働者は、会社に対して、損害賠償請求できます。

 

 

労働者が、会社に対して、違法な退職強要があったとして、

損害賠償請求をするためには、会社からどのような態様で、

退職を強要されたのかを証明する必要があります。

 

 

退職強要の実態を証明するためには、録音が重要になります。

 

 

録音がなければ、会社は、退職強要をする言動はしていない

と主張してきて、言った言わないの水掛け論となり、

退職強要の実態を証明することができなくなってしまいます。

 

 

そのため、会社から、退職勧奨をされた場合には、

録音をするようにしましょう。

 

 

録音をする際に、会社に録音することの許可を得る必要はなく、

こっそり録音すればいいのです。

 

 

3 退職合意書に署名した場合の対処方法

 

 

次に、会社から退職強要をされて、

退職合意書にサインをしてしまったら、

どうすればいいのでしょうか。

 

 

その際には、会社から強迫を受けて、

自由な意思に基づかないで署名したことを主張して、

退職の意思表示の取り消しを求めます。

 

 

 

損害保険リサーチ事件の旭川地裁平成6年5月10日決定

(労働判例675号72頁)では、

会社側の、転勤に承諾しなけれ懲戒解雇するという発言によって、

労働者が退職の意思表示をしたことについて、

強迫に基づく意思表示であるとして、

その取消が認められました。

 

 

また、退職の意思表示が、自由な意思に基づくものと

認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在しない場合には、

退職の意思表示が無効になります。

 

 

とはいえ、退職の意思表示を強迫を理由に取り消したり、

自由な意思に基づかないとして無効とするには、

会社との退職のやりとりを証明する必要があり、

やはり、録音が必要になります。

 

 

まとめますと、退職勧奨や退職強要を受けても、

会社を辞めたくないなら、退職しませんと回答し、

会社とのやりとりを録音し、もし、退職の意思表示をしてしまったら、

会社からの強迫や、自由な意思に基づかないものであったと

主張立証できないかを検討することになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

一度してしまった退職合意を後から争う方法

1 加賀温泉郷のホテルにおける合意退職の事件

 

 

今年の6月に加賀温泉郷のホテル北陸古賀乃井とホテル大のやにおいて、

従業員全員に解雇通告がされたニュースがありました。

 

 

https://www.chunichi.co.jp/article/68748

 

 

この事件について、現在、労働組合と会社とが

団体交渉をしているようで、記者から、

法律的なコメントを求められましたので、私なりに調べてみました。

 

 

https://www.rouhyo.org/news/1720/

 

 

すると、この事件では、会社は、労働者に対して、

退職合意書に署名を求めて、

多くの労働者が退職合意書に署名してしまったようです。

 

 

すなわち、本質的には、解雇なのですが、

労働者が退職合意書に署名しているので、

労働者が自己都合退職した形になっているのです。

 

 

 

解雇であれば、法律で厳しい規制がされているので、

労働者が解雇を争えば、解雇が無効となって、

未払賃金を請求できる可能性があります。

 

 

他方、労働者が自己都合退職の形をとってしまうと、

後から争うことが困難になります。

 

 

本日は、労働者が真意とは異なる自己都合退職をしてしまった場合の

対処法を説明します。

 

 

2 意思表示についての民法の規定(錯誤・詐欺・強迫)

 

 

労働者が、一度、自己都合退職の意思表示をしてしまったものの、

その意思表示が間違いがあったとして、

取り消すことができる場合について、

民法に規定があります。

 

 

例えば、自己都合退職をしなければ、

退職金が支払われない懲戒解雇になると通告されて、

懲戒解雇だけは回避したいと考えて、

自己都合退職の意思表示をした場合、

労働者は、誤信に基づいて、

自己都合退職の意思表示をしているので、

民法95条の錯誤を理由に、

自己都合退職の意思表示を取り消すことができます。

 

 

この他にも、会社から騙されて、

自己都合退職の意思表示をした場合には、

詐欺による意思表示として取り消せますし、

会社から脅されて、自己都合退職の意思表示をした場合には、

強迫による意思表示として取り消せます(民法96条)。

 

 

3 自由な意思論

 

 

従来は、自己都合退職が錯誤、詐欺、強迫に

該当するかだけが検討されていましたが、最近では、

自己都合退職の意思表示が自由な意思に基づくものではない場合に、

効力が生じないという主張が効果的です。

 

 

山梨県民信用組合事件の最高裁平成28年2月19日判決において、

労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、

労働者により当該行為がされるに至った経緯及び態様、

当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、

当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在するか否か、という判断基準が示されました。

 

 

この判断基準が、合意退職の場合にもあてはまるとしたのが、

TRUST事件の東京地裁立川支部平成29年1月31日判決

(労働判例1156号11頁)です。

 

 

この事件では、退職は、一般的に、

労働者に不利な影響をもたらすので、

退職の合意があったか否かについては、

特に労働者につき自由な意思でこれを合意したものと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在するか慎重に判断する必要があるとして、

退職合意の存在が否定されました。

 

 

 

そこで、加賀温泉郷のホテルの事件にあてはめると、

労働者は、退職同意書に署名したものの、

退職することによって仕事を失うという大きな不利益を被ることになり、

会社からの説明は5分ほどしかなかったようで、

十分な情報提供や説明はなかったといえるので、

労働者の同意が自由な意思に基づいてなされたとはいえないと

判断される可能性があると考えます。

 

 

この事件では、会社側とのやりとりが録音されていたり、

多くの労働者が、会社側の説明が不十分であると証言しているので、

会社側とのやりとりを証明できる可能性があります。

 

 

もっとも、会社側がどのような言動をもって

労働者に退職の意思表示をさせたかについては、

労働者が証明しなければならず、個室で、

労働者と社長が一対一でやりとりをしていて、

録音がない場合には、言った言わないの水掛け論になって、

証明することが困難になります。

 

 

自己都合退職の場合は、解雇の場合と比べて、

証明のハードルが高いので、争いにくいのです。

 

 

自己都合退職を争う場合には、

会社側とのやりとりを録音するのが重要になります。

 

 

また、安易に、退職合意書に署名しないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

太閤山ランドは子供と一日中遊べる素晴らしいスポットです

先日、富山県射水市にある太閤山ランドに行き、

素晴らしい子供の遊び場を発見したのでレポートします。

 

 

太閤山ランドは、広大な県民公園の中に、

様々なレクリエーション施設が点在しているスポットです。

 

 

http://www.toyamap.or.jp/taikou-land/

 

 

北陸自動車道の小杉インターチェンジから

車で約10分でアクセスできます。

 

 

太閤山ランドには、巨大な児童館、巨大な遊具、バーベキュー場、

プールなどがあり、一日中、子供を遊ばせることができます。

 

 

 

敷地が広すぎるので、敷地内を電車が走っていたり、

レンタサイクルを借りて移動することができます。

 

 

私は、歩いて周ったのですが、けっこう疲れました。

 

 

小さい子供と移動するにはベビーカーが必要ですね。

 

 

太閤山ランドで、すごかったのは、富山県こどもみらい館です。

 

 

ここは巨大な児童館で、子供が室内で遊び回れます。

 

 

 

圧巻だったのは、室内の至るところを、

ネットをつたってよじ登ったり、

迷路のような通路を探検できることです。

 

 

 

迷路のような通路が、人が歩かない高い場所に設置されているので、

空間が有効活用されており、工作をしたり、

料理をする場所も別にあるのです。

 

 

 

空間を有効活用した迷路が、他の施設にはない斬新なものでして、

天気の悪い北陸地方の室内の遊び場として秀逸です。

 

 

 

幼児が迷路のような通路やネットで遊ぶには、

大人が付き添わないといけないのですが、

通路が狭いので、大人が進むのは大変でした。

 

 

この迷路の他にも、工作をする場所で、

割り箸鉄砲を作るワークを楽しみました。

 

 

 

こどもみらい館で遊んだ後は、

屋外のわんぱくの丘にある巨大な遊具で遊びました。

 

 

私の子供達は、ローラーの滑り台で楽しく遊びました。

 

 

また、わんぱくの丘に行く途中のバーベキュー広場には、

動物や恐竜のオブジェが展示されています。

 

 

 

かなり巨大でリアルなオブジェです。

 

 

このオブジェに乗って、記念撮影ができます。

 

 

 

動物や恐竜が好きな子供にはたまらない場所です。

 

 

一日中子供と楽しく遊べるおすすめのスポットです。

 

 

富山県には、素晴らしい子供の遊び場が

たくさんあってうらやましいです。

 

 

石川県にも、子供の遊び場が増えていってほしいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コロナ便乗解雇の争い方

1 コロナ便乗解雇とは

 

 

新型コロナウイルスの感染が再び猛威を奮っています。

 

 

連日、2000人を超える感染者が続出し、第3波が到来しています。

 

 

 

感染が拡大してる大阪市や札幌市では、

GOTOトラベルの利用中断がされる見通しとなってきています。

 

 

厚生労働省が公表している解雇等見込み労働者数も

増加の一途をたどっており、11月13日時点で、

71,121人となっています。

 

 

新型コロナウイルスの感染が拡大していくと、

経営難を理由とする解雇が増えてきます。

 

 

さらには、新型コロナウイルスを隠れ蓑にした

便乗解雇も増えてくることが予想されます。

 

 

建前は、新型コロナウイルスの感染拡大による

経営悪化を理由としているものの、本音は、

会社にもの言う労働者を排除する解雇のことを、

コロナ便乗解雇と呼ばれるようです。

 

 

このようなコロナ便乗解雇は認められるのでしょうか。

 

 

結論としては、コロナ便乗解雇においても、

整理解雇の4要件(4要素)を満たさない限り、

無効となります。

 

 

2 整理解雇の4要件(4要素)

 

 

解雇を争う事件では、会社が主張している解雇理由に

客観的合理性があるのかが争点となり、

コロナ便乗解雇では、会社側は、

新型コロナウイルス感染拡大による経営悪化を

解雇理由として挙げてくるので、

以下の整理解雇の4要件(4要素)を満たすかが問題となります。

 

 

①人員削減の必要性

 

 

②解雇回避努力

 

 

③人選の合理性

 

 

④労働者に対する事前の説明・協議

 

 

①人員削減の必要性については、

リストラ計画があるのか、

業績の回復の見込みはあるのか、

経営の見通しはどのようなものかについて検討します。

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の状況においては、

人員削減の必要性は認められやすいのですが、

雇用調整助成金や持続化給付金などの支援策を活用してもなお

人員削減の必要性があるのかを検討することが重要です。

 

3 雇用調整助成金を活用しているのかをチェックする

 

 

コロナ便乗解雇においては、②解雇回避努力義務として、

会社が雇用調整助成金を活用したかがポイントになります。

 

 

 

雇用調整助成金とは、経済上の理由により

事業活動の縮小を余儀なくされた会社が、

労働者に対して、休業手当を支払って一時的に休業させて、

労働者の雇用を守った場合に、

休業手当が助成される制度です。

 

 

そして、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、

雇用調整助成金が拡充されており、中小企業では、

会社が労働者に支払う休業手当のうち最大10/10が助成されます。

 

 

国は、労働者の雇用を守るために対策をうっているので、

会社が、雇用調整助成金を活用することなく、

労働者を安易に解雇した場合には、

解雇回避措置を尽くしていないとして無効となるのです。

 

 

センバ流通事件の仙台地裁の仮処分の決定では、

解雇に先立ち、雇用調整助成金の申請をしていないことから、

解雇回避措置の相当性は低いと判断されました。

 

 

また、④会社は、労働者に対して、

解雇を行う必要性や解雇を避けるために会社として

どのようなことをしてきたのかなどについて、

説明や協議をすることが必須です。

 

 

この会社の労働者の説明においても、

雇用調整助成金などの支援策の検討状況を伝える必要があります。

 

 

まとめますと、コロナ便乗解雇においては、

雇用調整助成金が活用されていなかったり、

労働者に対して、雇用調整助成金などの支援策の検討状況をふまえた

説明をしていなかった場合には、解雇は無効となるのです。

 

 

解雇が無効になれば、会社に対して、

未払賃金の請求をすることができます。

 

 

コロナ便乗解雇にあっても、納得がいかなかったら、

弁護士に相談して、解雇が有効になるのかの

アドバイスを求めるようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

徳田弁護士の記事が弁護士ドットコムニュースに掲載されました3

徳田弁護士のパワハラに関する記事が、弁護士ドットコムニュースに掲載されました。

 

パワハラに該当するか否かについての悩ましい問題点について解説しています。

 

こちらのURLからアクセスしてください。

 

https://www.bengo4.com/c_5/n_12007/

富士そばの未払残業代請求事件から労働時間の適正把握義務を検討します

1 富士そばの未払残業代請求事件

 

 

立ち食いそばチェーンの富士そばを経営する

ダイタングループの労働者16人が

未払残業代など合計約2億4785万円の支払を求める

労働審判の申立てをしました。

 

 

https://www.bengo4.com/c_5/n_11999/

 

 

報道によりますと、富士そばでは

勤務表の改ざんが行われていたようです。

 

 

 

具体的には、土日出勤や8時間を超えた分の勤務を削除し、

1日の労働時間が8時間、1週間の労働時間が40時間

におさまるようにして、土日出勤はなかったように改ざんされたようです。

 

 

また、会社の役員から、タイムカードを押さずに

勤務するよう指示もあったようです。

 

 

このような改ざんをされたのは店長のようです。

 

 

上記のことが真実であれば、ダイタングループは、

労働時間の適正把握義務に違反したことになります。

 

 

本日は、労働時間の適正把握義務について解説します。

 

 

2 労働時間の適正把握義務

 

 

まず、平成29年1月20日、

労働時間の適正な把握のために事業者が講ずべき措置に関するガイドライン

が公表されました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000149439.pdf

 

 

このガイドラインにおいて、会社は、タイムカードなどで、

労働者の労働時間を適正に把握しなければならない義務

を負っていることが明記されました。

 

 

もっとも、このガイドラインでは、

労働基準法41条2号の管理監督者や、

みなし労働時間制が適用される労働者は、

適用対象から除外されていました。

 

 

次に、平成30年6月29日に労働安全衛生法が改正されて、

労働安全衛生法66条の8の3という条項において、会社は、

労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されました。

 

 

労働時間の状況の把握とは、

労働者がいかなる時間帯にどの程度の時間、

労務を提供し得る状態だったかを、

タイムカード等の客観的な記録で把握するということです。

 

 

この労働安全衛生法の労働時間把握義務の対象となる労働者には、

労働基準法41条2号の管理監督者や、

みなし労働時間制が適用される労働者も含まれることになります。

 

 

そのため、現時点では、管理監督者であっても、

労働時間を適正に把握しなければならないのです。

 

 

 

労働時間を把握するためには、

出社時刻と退社時刻を客観的に正確に記録することが必要でして、

タイムカードや勤務表を後から改ざんすることは、

労働時間の適正把握義務に違反することになります。

 

 

そして、会社が労働時間の適正把握義務に違反した場合、

労働者による労働時間の立証がうまくいかなかったとしても、

裁判所は、推計的な手法を用いて、

未払残業代請求を認めてくれる傾向にあります。

 

 

また、労働基準法41条2号の管理監督者とは、

経営者と一体的な立場にある者であり、

かなり厳格に判断されます。

 

 

そのため、店長だからといって、

労働基準法41条2号の管理監督者と認められるケースは

少ないと考えられます。

 

 

以上、まとめますと、そもそも労働基準法41条2号の

管理監督者に該当する者は少なく、

会社は、労働時間の適正把握義務を負っており、

これに違反した場合には、労働者の労働時間の立証が容易になるのです。

 

 

富士そばの労働審判において、

労働者の未払残業代請求が認められることを期待したいです。

 

 

なお、残業代請求については、

当事務所の次のホームページが参考になります。

 

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

電通の正社員を個人事業主に変更することの問題点

1 電通における正社員の個人事業主化

 

 

電通が一部の正社員との労働契約を業務委託契約に切り替えて、

個人事業主とする制度を公表したところ、波紋が広がりました。

 

 

報道によりますと、この制度の適用者は、電通を退職した後に、

電通が設立する新会社との間で10年間の業務委託契約を締結し、

電通時代の給料をもとにした固定報酬が支払われるようです。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66103760R11C20A1916M00/

 

 

タニタでも、労働者を個人事業主とする制度が始まっているようで、

このような動きが広がることを懸念しています。

 

 

なぜならば、労働法で保護されるべき人が労働法で保護されなくなり、

生活に困窮する人が増えるリスクがあるからです。

 

 

 

本日は、労働者を個人事業主に変更することの問題点

について解説します。

 

 

2 労働者は労働法で守られている

 

 

まず、労働者に該当すれば、労働基準法が適用されるので、

会社は簡単に労働契約を解除することができなくなり、

労働者が残業をすれば、残業代が支払われます。

 

 

また、仕事中にけがをしても、労災保険から治療費が支給されたり、

仕事を休んでいた期間の休業補償給付が支給されます。

 

 

労働者には、最低賃金が保障されますので、

働けば、最低賃金以上の給料の支払を受けることができます。

 

 

労働者から個人事業主になれば、

これらの労働法の恩恵を受けられなくなり、

契約期間が終了すれば、契約が打ち切られて、仕事を失ったり、

最低賃金以下の報酬しか受け取れないリスクが生じて、

生活に困窮する人が増えるおそれがあります。

 

 

会社からすれば、労働者を個人事業主にできれば、

労働者の社会保険料の負担を軽減できますし、

解雇規制がなくなるので、契約を打ち切ることができて、

コスト削減のメリットがあります。

 

 

そのため、労働者が個人事業主になることは、

労働者にとってはリスクがある一方、

会社にとってはメリットが大きいのです。

 

 

3 労働者とは

 

 

とはいえ、会社が労働者との労働契約を名称だけ、

業務委託契約に変更しただけでは、

労働者でなくなるわけではありません。

 

 

契約の名称ではなく、実態をみて、労働者か否かが判断されます。

 

 

それでは、どのような場合に、労働者と判断されるのでしょうか。

 

 

労働基準法9条に、労働者の定義が規定されています。

 

 

すなわち、労働者とは、

「事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者」

と定義されています。

 

 

 

この定義の「使用される」とは、使用従属性と言われ、

次の4つの実態から判断されます。

 

 

①使用者の仕事の依頼、業務遂行の指示などに対し、

これを拒否する自由をもっていない。

 

 

②業務の内容や遂行の方法について

使用者の具体的な指揮命令を受けている。

 

 

③勤務場所、勤務時間などが指定されている。

 

 

④報酬の性格が使用者の指揮監督の下に

一定時間労働を提供したことに対する対価と判断される。

 

 

電通の事例にあてはめてみますと、

電通の労働者が個人事業主になって、

電通と業務委託契約を締結すると、10年間、

電通の競業他社との契約は禁止されますので、

広告の仕事をするとなると、

電通から専属的に仕事をもらわざるを得なくなり、

電通からの仕事の依頼を拒絶できなくなります(①)。

 

 

いったん、電通を退職するので、

仕事の内容についての指揮命令(②)や、

勤務場所や勤務時間の指定(③)は、

緩くなると考えられますが、

電通時代の給与をもとにした固定報酬が支給されるので、

報酬が電通に対して一定時間労働を提供したことの

対価といえそうです(④)。

 

 

そうしますと、電通の正社員が個人事業主となっても、

①から④の実態を総合考慮すれば、労働者に該当して、

労働法が適用されると考えられます。

 

 

電通は、新しい働き方を求める社員の声に応じて、

正社員を個人事業主とする制度を導入したと主張していますが、

副業を解禁すればいいだけのことです。

 

 

会社が労働法の規制を免れたいために、

労働契約を業務委託契約に変更することは古典的ですが、

よくあることですので、労働者としては、

業務委託契約への変更に応じるべきではありません。

 

 

高橋まつりさんの過労自殺事件で、

世間から大きな批判を受けた電通において、

労働法を潜脱する動きがあるのは残念です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

福井県越前市の武生中央公園の3つの魅力

先日の秋晴れの休日に、福井県越前市にある武生中央公園へ、

子供を連れて遊びに行ってきました。

 

 

子育て世代にとって、素晴らしい公園でしたので、

紹介したいと思います。

 

 

 

武生中央公園は、越前市の中心街に位置しており、

北陸道の武生インターチェンジから車で15分ほどの場所にあります。

 

 

武生中央公園は、越前市出身の絵本作家のかこさとし先生が

監修したようで、かこさとし先生の作品に関する遊具があり、

かこさとし先生の絵本が好きな子供や大人にとって、

たまらなく楽しい公園になっています。

 

 

https://www.city.echizen.lg.jp/office/070/020/takefutyuokouen.html

 

 

私は、子供達に、「だるまちゃんとてんぐちゃん」の絵本の

読み聞かせをしていて、子供達がこの絵本を好きになっていたので、

だるまちゃんやてんぐちゃんの顔出しパネルを見て、

子供達と一緒にテンションがあがりました。

 

 

 

さて、私が感じた、この公園の魅力を3つご紹介します。

 

 

1点目は、遊具が充実していることです。

 

 

からすのパンやさんの風車塔といった巨大な遊具があり、

ネットを登りながら塔の上へ行ったり、

傾斜の急な巨大滑り台を滑ったりと、

子供と大人が体を使った遊びが楽しめます。

 

 

 

からすのパンやさんの風車塔は、

3歳以上の子供向きなので、3歳未満の子供向けに、

難易度の低い、遊具も充実しています。

 

 

 

特にすごいと思ったのが、0歳から1歳くらいの子供でも遊べる

「まめちゃんえん」です。

 

 

 

転んでも痛くないように加工した地面の上に、

小さい子供が楽しめるかわいい遊具がたくさんあります。

 

 

周囲を柵で囲ってあるので、親も安心です。

 

 

2点目は、公園内に、モノレール、飛行機、メリーゴーランド、

観覧車、バイキングなどの乗り物があることです。

 

 

 

小さい遊園地も併設しているのです。

 

 

都会の遊園地と違って、並ばなくても何回でも

乗れるのが最大の魅力です。

 

 

大人にとっては刺激が足りないかもしれませんが、

子供にとっては十分楽しめるアトラクションです。

 

 

1000円の一日パスポートを買えば、

乗り放題なので、良心的な値段設定です。

 

 

3歳未満は無料です。

 

 

3点目は、大人が休憩できる設備が充実していることです。

 

 

なんと、公園内には、スタバがあります。

 

 

 

日頃、育児で疲れている奥様は、スタバでゆっくり休んで、

夫が休日に遊具や乗り物で子供と存分に遊ぶことができるのです。

 

 

夫にとって、スタバがある公園は、奥様をいたわりつつ、

子供と楽しめる、まさに一石二鳥の素敵な場所なのです。

 

 

スタバ以外にも、公園内には、はぐもぐというカフェがあり、

福井の名物や健康的な食事ができるスペースもあり、

子供と遊ぶのに疲れたら、一休みできます。

 

 

このような魅力たっぷりな公園をつくった越前市は

素晴らしいと思いました。

 

 

 

子育てに力を入れている自治体をみると応援したくなります。

 

 

石川県にも、こんな素敵な公園があったらいいのになぁと思いました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社内での不倫を理由に解雇されてしまうのか

1 会社内での不倫を理由とする解雇の問題

 

 

近藤真彦氏が25歳年下の女性社長と不倫をした

ということが話題になっています。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/12f2ac499088809a9efb3a3c5ba344be42859751

 

 

テレビのワイドショーをみていますと、

有名人の不倫に関する報道がよく流れてきます。

 

 

また、弁護士の仕事をしていますと、

妻または夫が不倫をしているので、

損害賠償請求をしたいという法律相談を受けることは多いです。

 

 

 

こういった不倫について、労働問題になることもあります。

 

 

会社内での不倫が発覚して、解雇されたという労働問題です。

 

 

本日は、会社内の不倫を理由に解雇されることが

認めらるのかについて検討します。

 

 

結論としては、よほどの特殊事情がない限り、

会社内の不倫を理由とする解雇は無効となります。

 

 

具体的な事例で見てみましょう。

 

 

2 会社内の不倫を理由とする解雇が無効とされた事例

 

 

まず、1つ目の事例は、繁機工設備事件の

旭川地裁平成元年12月27日判決です(労働判例554号17頁)。

 

 

この事件では、バツイチ子持ちの女性社員が、

妻子ある男性従業員と不倫関係になったことが、

「素行不良で職場の風紀・秩序を乱した」

という懲戒事由に該当するとして、懲戒解雇されました。

 

 

この事件の男女の恋愛関係は、会社内の従業員だけでなく、

取引先でも取り沙汰されるようになっていたようです。

 

 

とはいえ、「職場の風紀・秩序を乱した」とは、

会社の企業運営に具体的な影響を与えるものに限定されるとして、

裁判所は、この事件では、会社の企業運営に

具体的な影響を与えていないとして、懲戒解雇は無効としました。

 

 

会社内外で男女の恋愛関係が取り沙汰されるという程度では、

会社に何も影響がないので、

「職場の風紀・秩序を乱した」ことにならないわけです。

 

 

ましてや、不倫関係は、通常、隠密に行われることが多いので、

会社内外の人に気づかれることがほとんどなく、

ひょんなことで会社に発覚しても、

会社の企業運営に具体的な影響を与えていないので、

解雇できないことになります。

 

 

 

3 会社内の不倫を理由とする解雇が有効とされた事例

 

 

次に、2つ目の事例は、長野電鉄事件の

東京高裁昭和41年7月30日判決です(労働判例25号6頁)。

 

 

この事件は、妻子あるバス運転手が、

18歳の女子車掌と不倫をして、

その女子車掌を妊娠させてしまい、

女子車掌は、中絶手術をして、退職したことについて、

著しく風紀・秩序を乱したとして、解雇されました。

 

 

この事件では、次の事情が考慮されて、解雇が有効とされました。

 

 

①バス運転手と車掌は、長時間一緒に勤務し、

宿泊を共にする特殊な職場環境のため、

女子従業員に対する不安動揺が生じたこと。

 

 

②当該女子車掌が退職したこと。

 

 

③当時、この会社では、地元の中学校や高校から

求人を募集していたところ、地元の中学校や高校の関係職員に

会社従業員の風紀に対する不信感を与え、

会社の求人に支障を及ぼすことになったこと。

 

 

その結果、会社の業務の正常な運営を阻害して、

会社に損害を与えたとして、解雇が有効となりました。

 

 

もっとも、長野電鉄事件は、昭和41年の判決ですので、

当時の貞操観念も考慮されていたり、

上記のような特殊事情があることは少なくなってきているので、

長野電鉄事件のように、会社内の不倫を理由とする解雇が

有効になる余地は少ないと考えます。

 

 

プライベートな領域の男女関係に、

会社が解雇や懲戒というかたちで介入するのではなく、

会社は、当事者の問題であるとして、介入せず、

遠くから見守るのがよいのではないかと思います。

 

 

まとめますと、会社内の不倫を理由とする解雇は、

会社の風紀や秩序が具体的に乱された事実があり、

会社に損害が発生しているといった特殊事情がない限り、

無効となると考えられます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

退職後に労働者が秘密保持義務を負担するのはどのような場合か

1 在職中の秘密保持義務

 

 

労働者は、会社に在職している期間、

労働契約に付随する義務として、

会社の営業上の秘密を守る義務を負っています。

 

 

これを在職中の秘密保持義務または守秘義務といいます。

 

 

このことを明確にするために、入社時に、

労働者が秘密を守ることの誓約書を会社に提出したり、

就業規則に秘密保持義務が明記され、違反した場合には、

懲戒処分をすることが記載されていることが多いです。

 

 

 

労働者がこの秘密保持義務に違反して、

会社に損害が発生した場合には、

損害賠償責任を負うことになります。

 

 

2 退職後の秘密保持義務

 

 

それでは、退職後にも労働者は、

以前の勤務先の会社に対して、

秘密保持義務を負うのでしょうか。

 

 

まず、就業規則に退職後の秘密保持義務についての規定がなく、

退職時に、退職後の秘密保持義務についての誓約書がない場合には、

労働契約が終了することによって、

労働契約の付随義務である秘密保持義務も同時に終了すると考えられます。

 

 

そのため、退職後の秘密保持義務についての

明示の取決めがない場合には、原則として、

退職後に労働者は秘密保持義務を負わないことになります。

 

 

次に、退職後の秘密保持義務を定めた誓約書がある場合に、

無制限に労働者が秘密保持義務を負担しなければならないのか

といいますと、一定の制限があります。

 

 

退職した労働者が、会社の営業秘密を勝手に利用して、

会社の顧客を奪ったりすると、会社にとって不利益となりますので、

会社としては、労働者が退職した後にも

秘密保持義務を負担させたいことには合理的な理由があります。

 

 

 

他方、労働者としては、退職後にも前の勤務先の

秘密保持義務を負担するのでは、

職業選択の自由や営業の自由が制約される

という不利益が生じます。

 

 

このように、会社と労働者の利益を調整する必要があるわけです。

 

 

この点、ダイオーズサービシーズ事件の

東京地裁平成14年8月30日判決(労働判例838号32頁)は、

労働者の退職後の秘密保持義務について、

その秘密の性質・範囲、価値、労働者の退職前の地位から、

合理性が認められるかという判断基準を提示しました。

 

 

この事件では、営業秘密について、

「顧客の名簿及び取引内容に関わる事項」、

「製品の製造過程、価格等に関わる事項」という例示がされていて、

営業秘密の範囲が限定されていました。

 

 

また、上記例示の営業秘密は、経営の根幹にかかわる重要な情報で、

これが自由に利用されると、競業他社の利益になり、

この事件の会社の不利益になると判断されました。

 

 

そして、この事件の労働者は、最前線の営業マンとして、

営業秘密の内容を熟知し、

その利用方法・重要性を十分に認識していたので、

秘密保持義務を負担してもやむを得ない地位にありました。

 

 

その結果、この事件では、退職後の秘密保持義務が有効となり、

この秘密保持義務に違反した労働者に対して、

会社の損害賠償請求が認められました。

 

 

他方、ダンス・ミュージック・レコード事件の

東京地裁平成20年11月26日判決

(判例タイムズ1293号285頁)では、

秘密保持義務の対象となる情報の定義や例示がなく、

労働者が営業秘密として保護されていることを

認識できる状況にしていないことから、

労働者の予測可能性を害するとして、

当該営業秘密について、労働者は、

退職後に秘密保持義務を負担しないと判断されました。

 

 

退職後の秘密保持義務については、

秘密の性質・範囲、価値、保管状況、労働者の地位

などが考慮されますので、労働者は、退職後に、

前職の営業秘密を利用するときには注意が必要です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。