給与の減額が大きい場合には降格は無効になりやすい

あけましておめでとうございます。

 

 

 

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さて、本日は、降格についての裁判例を紹介します。

 

 

転籍拒否後の降格・賃金減額の有効性が争点となった、

ニチイ学館事件の大阪地裁令和2年2月27日判決です

(労働判例1224号92頁)。

 

 

原告の労働者は、被告の会社から、

別の会社で働くこと(転籍)を打診されましたが、

これを拒否しました。

 

 

この転籍を拒否した後、原告は、上司から、

目標を設定することを指示されて、目標設定をしましたが、

その目標を達成できず、課長から、課長代理、課長補佐、係長と

3段階も降格されました。

 

 

原告は、この降格によって、総額24万5000円の給与が減額され、

もともとの給与の約45%も減額されたのです。

 

 

そこで、原告は、この降格と給与の減額が、人事権の濫用であって、

無効であるとして、未払賃金の請求をしました。

 

 

裁判所は、次の事情を考慮して、

本件降格は人事権の濫用に該当するとして、無効と判断しました。

 

 

 

・被告会社は、本件降格前に、原告を営業所長に

ふさわしい人物として評価していたこと。

 

 

・目標設定自体が原告にとって達成困難であることを被告も認めていたこと。

 

 

・原告が担当することになった法人営業が、

被告において十分な実績がなく、これから強化していく分野であったため、

わずか1年の実績で原告の適性を評価するのは酷であること。

 

 

そして、原告のもともとの給与の約45%を減額することは、

原告が被る不利益が大きすぎ、本件降格には、

原告に対して大きな不利益を与えるまでの相当性がないとして、

本件降格は無効とされました。

 

 

給与の減額が大きい場合には、労働者が被る不利益の大きさから、

降格の有効性は厳格に判断されることになります。

 

 

労働者が大きな不利益を被ってもしかたがないといえるだけの、

降格の事情がないと、降格が人事権の濫用に該当しやすくなります。

 

 

労働者が降格を争う上で、参考になる裁判例ですので、紹介しました。

 

 

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