会社を解雇された時,労働者は何をするべきか その3(雇用保険の基本手当を受給する)

労働者が,会社を解雇された場合,「明日からの生活費どうしよう・・・。家族をどうやって養っていこう・・・。」と頭をかかえるでしょう。そのような時は,雇用保険の基本手当を受給しましょう。

 

会社を解雇されると,会社から離職票が送られてきます。離職票が送られてこない場合は,会社に離職票の交付を請求します。会社が離職票を交付しない場合には,ハローワークに相談して,ハローワークから会社に連絡してもらいます。

 

会社から離職票が届いたら,離職票の内容をよくチェックします。解雇されたはずなのに,自己都合退職と記載されている等,事実と異なる記載がされていることがあるので,よくチェックしてください。

 

離職票に,事実と異なる記載がされていた場合,ハローワークに相談して,訂正を求めます。また,離職者の記入欄に真実を記載し,「離職者の判断」の欄には「異議有り」に○をつけます。

 

解雇されたはずなのに,離職票に自己都合退職と記載されていて,そのまま離職票をハローワークに提出した場合,自己都合退職と扱われてしまい,労働者には,次のような不利益が生じます。

 

①給付日数に差が生じる。自己都合退職の場合,雇用保険加入期間が10年未満で90日分支給されますが,解雇の場合,雇用保険加入期間が1年以上であれば,45歳未満の労働者であれば300日分,45歳以上60歳未満であれば360日分支給されるので,解雇の方が労働者にとって有利です。

 

②給付制限の有無。正当な理由のない自己都合退職の場合,3ヶ月の給付制限があります。すなわち,退職しても,3ヶ月間は雇用保険の基本手当を受給できないのです。それに対して,解雇の場合,給付制限がないので,7日間の待期期間が経過すれば,雇用保険の基本手当を受給できます。給付制限がない点においても解雇の方が労働者にとって有利です。

 

このように,自己都合退職と解雇とでは,雇用保険の基本手当の受給において差が生じてしまうので,離職票を入念にチェックする必要があります。

 

また,会社への復職を希望する場合には,雇用保険の本給付ではなく,仮給付をするべきです。解雇が無効になり,復職した場合,仮給付を受けていた基本手当を返還することになります。他方,解雇を争いたいが,復職までは求めていない場合には,雇用保険の本給付を受ければ問題ありません。

 

会社を解雇されたら,雇用保険の基本手当を受給すべきですが,その際には離職票の内容をよく確認してください。

 

解雇についてのご相談は,金沢合同法律事務所へお問い合わせください。

会社を解雇された時,労働者は何をするべきか その2(就労の意思を明確にする)

会社を解雇されると,「クビと言われたけど,明日から本当に会社にいかなくてもいいのかな?・・・解雇理由には全く納得いかないし。」と悩むことがよくあります。前回のブログ記事に引き続き,会社を解雇されたときに,労働者がどのような行動にでるべきかについて解説します。

 

会社から解雇理由証明書が届きましたら,解雇理由証明書に記載されている解雇理由を吟味し,反論を考えます。そして,会社に対して,会社が主張している解雇理由は認められず,本件解雇は社会通念上相当ではないので無効であるという内容の文書を配達証明付内容証明郵便で送付します。

 

この内容証明郵便には,解雇無効のみならず,就労の意思があることも記載するべきです。解雇は無効なので,会社で引き続き働きますと主張するのです。

 

解雇された労働者としては,解雇してきた会社に引き続き働きたいなんて思いませんが,就労の意思を明確にしておかないと,後から,会社から,労働者が勝手に辞めたと主張されて,解雇ではないと争ってくる可能性があります。

 

解雇されても,会社へ出勤して,働き続けますと主張して,会社からもう来なくていいという言質をとり,そのやりとりを録音するという方法もあります。しかし,解雇されてメンタルが落ち込んでいる労働者がここまでやるのは困難ですので,就労の意思を内容証明郵便で通知することが多いです。

 

要は,自分から退職を前提とした行動をとるべきではないのです。解雇されても,労働者は,自分から,会社に対して,退職金や解雇予告手当を請求すべきではありません。

 

もっとも,会社から,退職金や解雇予告手当が勝手に振り込まれてきた場合には,労働者は,これを預かり保管して,以後発生する賃金の一部に順次充当していくことを内容証明郵便で会社に通知すれば問題ないです。

 

労働者は,解雇されても,退職を前提とした行動をとらずに,就労の意思を明確にしましょう。

 

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会社を解雇された時,労働者は何をするべきか(解雇理由を明確にする)

「ある日,突然,会社をクビにされました」という労働相談はよくあります。労働者には,「会社が言う解雇理由に納得がいかない!」,「会社のためにがんばってきたのに,なんで自分がクビになるのか!」という怒りや,「会社をクビになって,これからどうしよう・・・」という不安が生じます。

 

それでは,会社を解雇されたときに,労働者がどのような行動にでるべきかについてこれから解説します。

 

まずやるべきことは,「会社に対して解雇理由を問い合わせる」ということです。労働基準法22条1項により,労働者が会社に対して解雇理由証明書の交付を請求した場合,会社は,遅滞なく,解雇理由証明書を労働者に交付しなければなりません。

 

解雇理由が明確でないと,労働者は,会社の主張している解雇理由のこの点がおかしいと言えないので,解雇を争うべきか否かの判断がつかなくなります。会社が主張している解雇理由を明らかにした上で,その解雇理由に対して,このように反論できるのではないかと検討していきます。

 

この解雇理由証明書の交付を求める際に,注意すべき点があります。それは,解雇理由証明書の交付の請求は,弁護士に依頼するのではなく,労働者が自分で行うべきということです

 

労働者としては,会社を解雇されたので,自分で会社と関わるのは嫌なはずです。しかし,解雇理由証明書の交付の請求を弁護士に依頼した場合,会社は,顧問弁護士に相談して,本件は解雇ではなく,労働者が自己都合退職したものであるという主張をしてくることが多いです。

 

会社が,労働者の自己都合退職を主張してきた場合,本件が解雇なのか自己都合退職なのかがまず争点となり,いらぬ争点を1つ増やしてしまいます。また,自己都合退職と認定されてしまえば,失業給付の受給が遅くなったり,解雇が無効になった場合に得られる賃金(バックペイ)が請求できなくなる等,労働者にとって不利益なことが多いです。解雇を争うのであれば,労働者としては,解雇の方がメリットが多いのです。

 

そこで,労働者が自ら解雇理由証明書の交付を請求すれば,会社は,油断して正直に解雇理由証明書を交付してくることが多いので,私は,解雇の相談を受けた場合には,相談者である労働者に対して,まずはご自身で解雇理由証明書の交付を請求してみてくださいとアドバイスしています。

 

会社を解雇された場合,労働者はまず,会社に対して解雇理由証明書の交付を請求して,解雇理由を明確にするべきです。

 

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第三者に告発文を送った営業社員に対する解雇は有効か

ある不動産会社の代表取締役の息子が,レンタルビデオ店において不正に入手した他人名義の会員カードを使用して,DVDを借りて,これらを騙し取ったという詐欺罪で逮捕されてしまい,その逮捕されたことが新聞報道されました。この息子は,その会社の専務取締役でした。

 

原告は,もともと被告会社からの待遇に不満を抱いていたところ,この報道を知って落胆し,代表取締役が専務取締役の処分や顧客対応について説明を行わなかったので,不満をつのらせました。そこで,原告は,代表取締役が理事を務めていた公益財団法人に対して,代表取締役の息子が逮捕された状況から,代表取締役が理事の役職に就いていることは好ましくなく,適切な対応がない場合には,正式に告発するという内容の内部告発文書を送りました。

 

この内部告発文書を原告が送信したことが発覚し,原告は,被告会社から懲戒解雇され,強要罪と名誉毀損罪で告発されました。もっとも,原告は,刑事事件について不起訴となりました。そして,原告は,懲戒解雇が無効であるとして,提訴しました。

 

争点は,①刑事告訴を理由として,労働者を懲戒解雇することの有効性,②企業の信用を毀損したことを理由として,労働者を懲戒解雇することの有効性,③企業の信用を毀損したことを理由として,労働者を普通解雇することの有効性の3点です。

 

広島高裁平成29年7月14日判決(A不動産事件・労働判例1170号5頁)は,まず①の争点について,本件懲戒事由である「刑事上の罰に問われた」ときとは,起訴されて,懲役や罰金等の刑罰に問われた場合をいい,原告は不起訴となったことから,この懲戒事由には該当しないとされました。

 

次に,②の争点について,本件懲戒事由である「会社の信用を著しく損なう行為のあったとき」とは,その行為によって,会社の信用が害され,実際に重大な損害が生じたか,少なくとも重大な損害が生じる蓋然性が高度であった場合をいい,原告の信用毀損によって,被告会社に実際に重大な損害が生じていなかったので,原告は,この懲戒事由には該当しないとされました。

 

最後に,③の争点について,原告が自分の待遇や代表取締役の刑事事件への対応に不満をつのらせて,外部の団体に内部告発文書を送信したことは,著しく相当性を欠き,これによって,原告と被告会社との信頼関係の破壊の程度は大きいとして,普通解雇は,有効とされました。

 

内部告発の際には,告発内容が真実であっても,その目的に公益性が必要ですし,企業内部での自浄努力を試みる余地があり,いきなり外部団体へ告発するのはリスクがあります。内部告発をする前に,弁護士へ相談して,内部告発による不利益を回避するアドバイスをもらうことをおすすめします。本件判決では,懲戒解雇について,懲戒事由を厳格に解釈して,労働者を勝たせましたが,普通解雇で労働者は負けてしまいました。懲戒解雇の事案では,会社が普通解雇をしてくることにも備える必要があります。

 

解雇事件でお困りの方は,弁護士法人金沢合同法律事務所へぜひご相談ください

休職をしていた客室乗務員に対する整理解雇

日本航空の会社更生手続において,事業再生のために,早期の希望退職措置が行われ,それでも目標とする削減人員数に届かなかったことから,整理解雇が実施されました。日本航空の整理解雇の人選基準に,当該年度と過去2年5ヶ月の間に,病気欠勤日数,休職期間が一定数以上の者という基準がありました。原告は,当該年度に,顔面の皮膚の病気で数ヶ月間欠勤したことがあったため,この基準に該当し,整理解雇されました。そこで,原告は,この整理解雇は無効であるとして,地位確認の訴訟を提起しました。

 

整理解雇とは,リストラのことです。会社の経営が悪化したため,会社を存続させるために,余剰人員を削減する場合の解雇です。労働者に落ち度がないにもかかわらず,解雇されてしまうので,労働者が受ける不利益が大きいことから,整理解雇の有効性は厳格に判断されます。

 

整理解雇の有効性を判断する際には,①人員削減の必要性(企業の収益が減少する等して,労働者を減らす必要があったのか),②解雇回避措置の相当性(解雇以外に希望退職者を募集したり,配置転換等の措置がされているか),③人選の合理性(整理解雇する労働者を合理的な基準で選んだのか),④解雇手続の相当性(労働組合と誠実に交渉がされたか,労働者が理解できるように説明がなされたか)という4つの要件が総合考慮されます。

 

本件事件では,③人選の合理性において,過去に病気欠勤をしていた労働者を整理解雇の対象とする基準を設けることに合理性があるかが重要な争点となりました。

 

大阪高裁平成28年3月24日判決(労働判例1167号・94頁)は,会社更生手続を進めている日本航空が,整理解雇の人選基準を設けるにあたり,将来の貢献度に注目し,日本航空が再生していく過程の直近2~3年間に,労働者にどれだけの貢献が期待できるかを重視することは合理的であるとしました。

 

そして,将来の貢献度を判断するにあたり,過去の一定期間に病気欠勤や休職をしていた労働者が,そうでなかった労働者と比較して,日本航空に対する過去の貢献度が低いと評価することは合理的であり,現在職務に復帰していても,直近の時期に病気欠勤や休職があった労働者については,将来の貢献度が相対的に低いと評価しても合理的であると判断されました。

 

そのため,当該年度に病気欠勤していた原告に対する整理解雇が有効とされて,原告が敗訴しました。整理解雇の要件を検討するに際し,過去に病気で休職していた点をどのように評価すべきかについて,判断枠組みを示した判例として参考になります。

入社後1年未満にもかかわらず,勤務態度不良の解雇が有効とされた事例

入社後1年未満にもかかわらず,会社から勤務成績と勤務態度不良等を理由に解雇された労働者が,解雇無効を争った裁判で,解雇が有効とされた日本クレコア事件(東京地裁平成29年4月19日判決・労働判例1166号82頁)を紹介します。

 

会社から解雇されると,労働者は,給料という生活の糧を失い,家族を養うことが困難になる等の多大な不利益を被ることから,労働契約法16条において,解雇は厳格に規制されています。会社は,簡単に労働者をくびにできないのです。

 

解雇事件で実務上多いのが,能力不足,適性欠如,勤務成績不良等を理由とする解雇です。就業規則にはよく,「業務能力が著しく劣り,または勤務成績が著しく不良のとき」には解雇できると記載されています。このような能力不足の解雇の場合,対象となる労働者が本当に,「勤務成績が著しく不良」だったのかが争われますが,労働者の能力は個人によって異なりますし,会社が労働者に求める水準もまちまちですので,統一的な判断基準を作成するのが困難で,事案に応じてケースバイケースで判断するしかありません。

 

能力不足の解雇が有効になるのは,能力不足の程度が著しい場合に限られ,教育訓練や本人の能力に見合った配置転換をして解雇を回避するための措置が尽くされた場合です。もっとも,特定のポストや職務のために上級管理職などとして中途採用され,賃金等の労働条件が優遇されている場合には,能力不足の程度は,労働契約で合意された能力や地位にふさわしいものであったかの観点から緩やかに判断される傾向にあります。

 

結局,どのような場合に,能力不足の解雇が有効になるのかについて,労働者も会社も予測が立てにくいのが現状で,労働者としては,争うべきかどうかで迷うことがあります。

 

本件事件では,原告が年間基本給850万円,変動セールスコミッション127万5000円という高額な給料を受けていたのですが,上司を無視して反抗的な態度をとり続け,会社から反抗的な態度を改善するように何度も警告を受けていたのですが,それでも改善しなかったことから,解雇は有効と判断されました。

 

労働者としては,上司の指示・指導には素直に耳を傾けて,会社から警告を受けた場合には,自己の勤務態度を振り返り,改善の意欲を示す方が,解雇されるリスクを軽減できると言えそうです。

懲戒解雇のタイミング

病院で医療事務に従事していた原告が,病院を自己都合退職した後に退職金を請求したところ,被告病院は,原告が診療情報を改ざんしたとして,原告が自己都合退職した後に懲戒解雇して,退職金の全額を支払いませんでした。そこで,原告は,被告病院に対して,退職金請求の裁判を提起しました。

 

大阪地裁平成28年12月9日判決(医療法人貴医会事件・労働判例1162号・84頁)は,まず,懲戒解雇の効力について,原告の退職届が被告病院に提出された日の1ヶ月後に,原告と被告の労働契約が終了しており,労働契約終了後になされた懲戒解雇は効力を有しないと判示しました。

 

もっとも,懲戒解雇をすることができない場合であっても,退職金に功労報償的性格がある場合には,労働者がそれまでの勤続の功労を抹消又は減殺する程度にまで著しく信義に反する行為をしたとき,労働者の会社に対する退職金請求の全部又は一部が権利の濫用に当たり,会社は,労働者からの退職金請求の全部又は一部を拒むことができると判示しました。

 

そして,本件において,原告の診療情報の改ざん行為は,懲戒解雇事由に該当する悪質な行為であり,原告が19年間積み上げてきた功労を減殺するものであるが,原告の功労を全部抹消するほどに重大な事由とはいえず,原告の退職金請求の2分の1が認容されました。

 

労働者が,懲戒解雇事由に該当する行為をしてしまった場合,早々に自己都合退職をすれば,場合によっては,本件判例のように,懲戒解雇を避けられることができるかもしれません。また,懲戒解雇事由がある場合でも,労働者の情状によっては,退職金請求の一部が認められる場合があります。懲戒解雇のタイミングを考える上で,興味深い判断がされたことから,紹介させていただきます。