契約社員が会社から雇止めに合意するように迫られたら・・・

契約社員が会社との間で,

何度も契約を更新してきたにもかかわらず,

ある日突然,契約を更新してもらえず,

雇止めにあいました。

 

 

契約社員としては,今後も継続して

働き続けることができると期待して,

仕事をがんばってきたのですが,

会社から雇止めされて,

その期待を裏切られてしまい,

納得できません。

 

 

契約社員の労働契約は,有期労働契約と言い,

契約期間が満了すれば,会社が更新しない限り,

終了してしまい,契約社員は職を失ってしまうのです。

 

 

 

 

本日は,雇止めに納得できない契約社員が立ち上がり,

雇止めは無効であるという判決を勝ち取った

エヌ・ティ・ティマーケティングアクト事件を紹介します

(岐阜地裁平成29年12月25日判決・労働判例1185号38頁)。

 

 

被告会社は,経営方針の転換に伴い,

今後の活動が減少する仕事を担当していた契約社員

との労働契約を終了することにしました。

 

 

被告会社は,契約社員を雇止めするにあたり,

雇止めに合意した契約社員に対してのみ,

再就職の斡旋や生活支援金を支給することにしました。

 

 

原告らは,再就職の斡旋や生活支援金の支給が

労働契約を更新しないことを条件として実施されていることから,

雇止めに納得できず,合意書を提出しませんでした。

 

 

そうしたところ,被告会社が原告らを雇止めしたことから,

原告らは,雇止めを争うために裁判を起こしました。

 

 

雇止めが無効になるためには,2つのハードルを越える必要があります。

 

 

 

 

1つ目のハードルは,

契約社員が有期労働契約が更新されると期待する

ことについて合理的な理由があったか,というものです。

 

 

このハードルを越えるためには,

有期労働契約の更新回数や,

契約社員の仕事内容,

会社からの雇用の継続を期待させる言動,

更新手続の状況などの要素を検討する必要があります。

 

 

本件事件では,最長で4年11ヶ月間に51回更新されていた

原告がおり,原告らの仕事は期間的な業務であり,

会社からは,健康で成績がよければ

いつまでも働くことができると聞いており,

労働契約書には,「更新の可能性」について

「有」と明記されていました。

 

 

これらの事情を総合考慮して,原告らには,

有期労働契約が更新されると期待することについて

合理的な理由があったと認められました。

 

 

2つ目のハードルは,解雇と同じように,

雇止めについて,客観的合理的な理由があり,

社会通念上相当といえるか,というものです。

 

 

本件事件では,雇止めが経営方針の転換

に伴って行われたものなので,

整理解雇(リストラ)と同じように,

①人員削減の必要性,

②雇止めの回避努力,

③人選の合理性,

④手続の相当性

の各事情を総合考慮して判断されました。

 

 

 

 

①人員削減の必要性について,

原告ら契約社員が行っていた業務がなくなることで,

具体的にどの程度の人員削減が必要であったか不明であり,

その後,人員が増加していることから,

雇止めの対象者の人数に見合うほどの

人員削減の必要性があることに疑問が提示されました。

 

 

②雇止め回避努力について,

雇止めに合意しなければ,

再就職の斡旋や生活支援金の支給を受けられない

という手法は,雇止め回避の手段として

不十分であると判断されました。

 

 

③人選の合理性と④手続の相当性には

問題はありませんでしたが,

①と②が不十分であったため,

本件雇止めは無効になりました。

 

 

雇止めは,解雇と比較して,

ハードルが1つ増える関係で,

労働者が争いにくいのですが,

労働者が雇止めで勝った事例として貴重です。

 

 

労働者は,会社から雇止めに合意することを求められても,

雇止めに納得できないのであれば,雇止めに合意してはいけないのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

無期転換ルールを避けるための雇止めは認められません

大手予備校の河合塾の福岡校などで

29年間講師として働いてきた非正規雇用労働者が,

今年の3月末に雇止めされました。

 

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181024-00000005-mai-soci

 

 

この非正規雇用労働者は,雇止めに納得できず,

福岡労働局に対して,あっせんの申立を行いました。

 

 

そして,福岡労働局は,河合塾に対して,

無期転換ルールを意図的に避けることを目的として,

無期転換申込権が発生する前に雇止めをすることは,

労働契約法の趣旨に照らして望ましいものではありませんので,

慎重な対応をお願いします。

という内容の文書を交付して,助言しました。

 

 

労働局が雇止めが無効になる可能性があると指摘したことは画期的です。

 

 

本日は,河合塾の雇止めのケースから

無期転換ルールについて解説します。

 

 

 

 

まず,労働契約の契約期間が半年や1年で区切られている,

契約社員や嘱託社員の労働契約を有期労働契約といいます。

 

 

有期労働契約は,契約期間が満了すると,

会社が引き続き有期労働契約を更新してくれれば,

働き続けることができるのですが,会社から,

更新しませんと言われてしまえば,有期労働契約は終了し,

非正規雇用労働者は,職を失うことになります。

 

 

このように,有期労働契約が期間満了で終了することを

雇止めといいます。

 

 

非正規雇用労働者は,契約期間が満了すると

職を失うリスクがあるので,不安定な地位にあるのです。

 

 

 

 

もっとも,有期労働契約が何度も更新されていて

正社員と同視できる場合や,有期労働契約が更新されると

期待することに合理的な理由がある場合には,

雇止めに理由がなかったりすれば,

有期労働契約が更新されることになります。

 

 

年越し派遣村のあたりから,

非正規雇用労働者の地位が不安定なことに批判が生じて,

労働契約法が改正され,非正規雇用労働者が

正社員になれる無期転換ルールが導入されました。

 

 

有期労働契約が2回以上更新されて,

契約期間が通算5年を超えれば,非正規雇用労働者は,

正社員になるための申込みができるのです。

 

 

 

 

この無期転換ルールは,2013年4月1日以降に

締結された有期労働契約に適用されるので,

ちょうど今年から5年が経過することになります。

 

 

会社としては,雇用の調整弁として,

非正規雇用労働者を利用したく,無期転換されたくないので,

5年が経過する前に会社が雇止めをしてくることが懸念されていました。

 

 

そして,河合塾のように,

5年が経過する前に雇止めをする企業がでてきたのです。

 

 

しかし,非正規雇用労働者の雇用の安定を確保するために,

無期転換ルールが導入されたのですから,

これを意図的に免れるための雇止めが許されてはなりません。

 

 

河合塾のケースでは,非正規雇用労働者について,

前年からの注意・指導にもかかわらず

授業アンケート結果が改善されなかったためという,

もっともらしい雇止めの理由が河合塾から主張されましたが,

非正規雇用労働者は,雇止めされるまで河合塾から

注意や指導がなかったと主張しています。

 

 

河合塾は,無期転換ルールを避けるという本当の理由を隠して,

後付の理由として授業アンケートの件を持ち出した可能性があるのです。

 

 

そのため,福岡労働局は,河合塾に対して,

文書で助言・指導したのだと考えられます。

 

 

労働局の助言・指導に法的な強制力はないのですが,

裁判になれば,河合塾の雇止めが無効になる可能性があると思います。

 

 

今回の福岡労働局の対応が,雇止めに対する

歯止めになることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

病気で欠勤が多すぎると雇止めされてしまうのか

非正規雇用の労働者が,私傷病(仕事とは関係ない病気のことです)

で欠勤を繰り返したところ,会社から勤怠不良を理由に雇止め

(非正規雇用労働者の契約期間が満了した後,契約が更新されず,

辞めなければならなくなってしまうことです)されてしまった場合,

このような雇止めは有効なのでしょうか。

 

 

本日は,私傷病による勤怠不良を理由とする

雇止めの適法性が争われた日本郵便(新東京局・雇止め)事件

(東京地裁平成29年9月11日判決・労働判例1180号56頁)

を紹介します。

 

 

まず,雇止めを争う場合,解雇よりもハードルがあがります

 

 

 

 

雇止めは,更新が何度も行われて,非正規雇用労働者が,

今後も雇用が継続されると期待することについて,

合理的な理由が認められることが必要です。

 

 

この雇用継続の期待についての合理的な理由が認められると,

次に,通常の解雇と同じように,雇止めに理由があるのか,

雇止めが相当な手段だったのかが判断されます。

 

 

つまり,雇止めの場合は,解雇にはない,

雇用継続の期待についての合理的な理由という

もう一つのハードルを超えなければいけないため,

解雇よりも雇止めの方が,労働者にとって不利なのです。

 

 

さて,本件事件では,8年間にわたり,

6ヶ月ごとに有期労働契約が更新されてきたことから,

原告に対する雇用継続の期待についての

合理的な理由は認められました。

 

 

そこで,私傷病による勤怠不良を理由とする雇止めについて,

理由があるのか,相当だったのかが検討されました。

 

 

原告は,変形性膝関節症を発症して,

膝の痛みにより欠勤することが多く,

欠勤日数が出勤日数を上回るようになり,

最後の方は,1日も出勤しなくなりました。

 

 

 

 

さらに,原告は,被告会社に対して,

症状が回復する可能性を裏付ける

診断書を提出していませんでした。

 

 

そのため,原告の病状や勤務状況からすれば,

原告は,労働契約で定められた職務を全うできない

と判断されてもやむをえないとして,

雇止めについては理由があると判断されました。

 

 

また,相当な手段だったのかを判断する際に,

別の業務への配置転換をして雇止めを回避すべきだったか

が検討されましたが,原告は,仕事内容が限定されており,

勤務形態も深夜勤務に限定されていたので,

職場復帰の見通しがたたない原告について,

配置転換をしなくても問題はないと判断されました。

 

 

欠勤が多すぎるので,雇止めもいたしかたないと思いますが,

一点気になることがあります。

 

 

それは,被告会社が原告の主治医や

被告の産業医の意見を聞いていないという点です。

 

 

主治医や産業医の意見を聞いて,

病状や回復見込みを慎重に検討して,

雇止めを判断すべきだったと考えます。

 

 

病気で休んでいる労働者は,雇止めされれば,

今後どうやって生活していこうか途方に暮れるので,

病気の労働者を雇止めするには,

主治医や産業医の意見を聞くという

慎重な手続きが求められるべきと考えます。

大学の研究支援者に対する雇止め問題

大学には,教授などの研究者たちの

仕事を支える「研究支援者」がいます。

 

 

実験装置の保守や資材の調達をする技術職,

特許事務や研究費の管理をする事務職など,

多岐にわたる研究支援者が,大学での研究を支えているのです。

 

 

 

 

この研究支援者の多くが,非正規雇用の労働者であり,

労働契約の期間が満了して,労働契約の更新ができなければ,

雇止めとなり,大学を去らなければなりません。

 

 

研究支援者が雇止めにあうことから,

研究支援者の雇用が不安定であり,

不安定な雇用は敬遠されるので,

研究支援者になる人が減少し,

研究支援者を確保することが困難になり,

研究者が研究に割ける時間が減少して,

日本の研究者の研究力が低下するという問題が生じます。

 

 

ここで,非正規雇用とよばれる

期間の定めのある労働契約について説明します。

 

 

契約期間が定められていない正社員は,

解雇されない限り,働き続けることができますが,

契約期間が定められている労働契約を締結した

非正規雇用の労働者は,労働契約で定められた

契約期間が満了して,更新されなかったら,

その職場で働き続けることはできません。

 

 

もっとも,同じ職場で,期間の定めのある労働契約が

2回以上更新されて,トータルの契約期間が5年を超えた場合

非正規雇用の労働者は,会社に期間の定めのない労働契約

を申し込めば,期間の定めのない労働契約に転換されます

(労働契約法18条1項)。

 

 

これを無期転換ルールといいます。

 

 

会社は,非正規雇用労働者の人件費が正社員よりも低く,

非正規雇用労働者は,労働契約を更新しなければ,

契約を容易にきることができて,

雇用の調整弁として使い勝手がいいので,

無期転換を嫌がります。

 

 

そこで,会社は,無期転換をさせないために,

契約期間が5年を超える前に雇止めをすることがあります。

 

 

国立大学では,非正規雇用労働者の契約期間を

5年未満に設定しているところが多く,

無期転換ルールが適用されずに,

雇止めされてしまう非正規雇用労働者が多くいるのです。

 

 

 

 

さて,研究支援者が5年未満で雇止めされれば,

研究者が,新しい研究支援者に一から仕事を教えなければならず,

非常に効率が悪いです。

 

 

研究者が本来の仕事である研究に集中するためには,

研究者の仕事をサポートする研究支援者の

雇用が安定していることが重要になりそうです。

 

 

日本の研究力を向上させるためにも,大学には,

研究支援者の雇用を安定させる方法を模索してもらいたいです。

タクシー乗務員の勤務成績不良による雇止め

タクシー乗務員が,勤務成績不良により,雇止めにあったので,本件雇止めは無効・違法であるとして,被告タクシー会社に対して,労働契約上の権利を有する地位にあることの確認と損害賠償請求をした事案で,雇止めが有効と判断されました(札幌高裁弊政29年9月14日判決・労働判例1169号・5頁・札幌交通事件)。

 

原告は,被告タクシー会社からの無線による配車指示について,キャンセルボタンを押してこれに応じないことが多く,原告の売上目標が平均の半分に満たないことが多かったことから,被告タクシー会社から,勤務成績を向上させるように指導を受けていましたが,原告の勤務成績は変わりませんでした。

 

ところで,雇止めについては,当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められれば,従前と同一の労働条件で当該有期労働契約が更新されることがあります(労働契約法19条)。

 

本件事件では,①原告の労働条件通知書には,「契約の更新はしない」または「会社が特に必要と認めた場合契約の更新をすることもある」との記載があること,②本件有期労働契約が2回更新されたにとどまっていたこと,③被告タクシー会社が労働組合に対して,嘱託労働者の契約は原則更新するが,欠勤が多く業務に支障を来す者についてはその限りではないとの説明をしていたこと,④勤務成績が悪く指導による改善がみられなかった乗務員が雇止めされた前例があること,⑤原告の勤務成績が非常に良くないものであり指導に従わなければ雇止めもありうる旨が伝えられていたことから,原告に対して,本件有期労働契約が更新されると期待することに合理的理由が認められないとされて,本件雇止めは有効となりました。

 

通常,雇止めの判断は,有期労働契約が更新されると期待することに合理的理由があったのかという第1ステージと,雇止めが客観的合理的理由があり,社内通念上相当だったのかという第2ステージがあり,勤務成績が不良か否かの判断は,第2ステージで判断されていました。しかし,この判例では,勤務成績が不良か否かを第1ステージで判断しています。

 

このように,本件判例は,雇止めについて珍しい判断をしたことと,実務でよく問題となる勤務成績不良の従業員への対処法について判断されていることから紹介します。

東大5年で雇止めルールを撤廃

今年8月26日のブログで,東大が有期労働契約の教職員約4800人を最長5年で雇止めにする就業規則を定めていたことの問題点について記載しました。

 

ところが,朝日新聞の報道によると,東大が,この有期労働契約の教職員を最長5年で雇止めにする規則を撤廃することになりそうです。東大の労働組合が,5年で雇止めにする規則の撤廃を強く求めた結果,撤廃が現実化しそうです。

 

http://www.asahi.com/articles/DA3S13274138.html

 

以前にも解説しましたが,労働契約法18条1項は,有期労働契約が2回以上更新され,契約期間が通算で5年を超えれば,非正規雇用の労働者は,会社に対して,申込をすれば,正社員になれると規定されています。この規定が施行されてから5年経過するのが平成30年4月なのです。

 

しかし,会社は,不況になった際に,人員削減を容易にできる非正規雇用を一定数確保したいことから,契約期間が通算で5年経過する前に,雇止めをしてくることが予想されていました。平成30年4月以降に,雇止めされる非正規雇用の労働者が出てくるおそれがあります。

 

このような情勢の中,東大で5年で雇止めにする規則が撤廃されれば,他の教育機関における非正規雇用の対応にもプラスの変化が波及するかもしれず,非正規雇用の労働者にとっては明るいニュースです。また,今回は,東大の労働組合が,労働者の労働条件を維持または向上するために力を発揮したといえ,労働組合の重要さが再確認されました。他の職場でも5年で雇止めのルールが撤廃されていくことを期待したいです。

22年間反復更新してきたアルバイトに対する雇止め

22年以上もの間,更新を繰り返してきたアルバイト従業員に対して,アルバイト従業員の忘れ物に関する対応,顧客からのクレーム,睡眠障害を理由としてされた雇止めについて,名古屋高裁平成29年5月18日判決(労働判例1160号・5頁・ジャパンレンタカー事件)は,アルバイト従業員と被告会社との有期労働契約は,期間の定めのない労働契約とほぼ同視できるとして,アルバイト従業員の地位確認の請求が認容されました。

 

アルバイト,契約社員,派遣社員,嘱託社員等の非正規雇用は,有期労働契約といい,契約期間が満了すると,原則として仕事がなくなり,会社が契約期間を更新すれば,仕事が続けられます。契約期間が満了で,更新がされない場合を雇止めといいます。

 

これに対し,期間の定めのない労働契約,いわゆる正社員の場合,よほどのことがない限り,解雇されることはなく,仮に解雇されたとしても,正社員は,解雇権濫用法理を根拠に解雇無効を主張しやすいのです。

 

非正規雇用の雇止めの場合,正社員の解雇と比較して,雇止めを争うのは,ハードルが高いです。まず,第1ステージで,①過去に反復更新されて,期間の定めのない労働契約と同視できる状態であること,又は,②有期労働契約が更新されることについて合理的な理由があるという要件を満たす必要があります(労働契約法19条)。

 

次に,第1ステージを乗り越えた場合,第2ステージでは,解雇と同じように,雇止めが,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当か否かを検討することになります。

 

このように,有期労働契約の雇止めを争うのは大変です。そのような中,本件事件では,アルバイト従業員の有期労働契約が22年以上も反復更新されてきたこと,アルバイト従業員の仕事内容が正社員とそれほど変わらないこと,被告会社において意に反して雇止めされた従業員がいなかったこと,更新手続きが形骸化していたことから,アルバイト従業員と被告会社との有期労働契約は,期間の定めのない労働契約とほぼ同視できると判断されました。そして,本件雇止めは,客観的合理的理由を欠き,社会通念上相当とはいえないことから,被告会社は,従前と同一の条件でアルバイト従業員の更新の申込を承諾したものとみなされるとして,アルバイト従業員の地位確認請求が認められました。

 

雇止めを争うのは大変なことが多いのですが,さすがに22年間も反復更新されてきたのであれば,第1ステージを乗り越えるのはそれほど難しくなかったのかもしれません。雇止めを検討するのに参考になると思い,紹介します。

東大5年で雇止め

 朝日新聞の報道によれば,東大が有期労働契約の教職員約4800人を最長5年で雇止めにする就業規則を定めていたようです。その結果,来年平成30年4月までに,契約期間が5年を超える教職員は順次雇止めされることになりそうです。

 

http://www.asahi.com/articles/DA3S13100024.html

 

 そもそも,労働契約法18条では,有期雇用の労働者の労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合,期間の定めの無い労働契約に転換できる権利が付与されることになっています。要するに,契約の更新が2回以上あり,契約期間が通算5年を超えれば,契約社員から正社員に転換できるということです。

 

 労働契約法18条が平成25年4月に施行されて,来年平成30年4月でちょうど5年になるので,来年4月以降,無期転換できる労働者が現れてくるのです。

 

 しかし,使用者としては,契約期間が通算5年を超えれば,契約社員が正社員に転換されるのであれば,契約社員を雇用の調整弁に利用できなくなるので,契約期間が5年を超える前に,雇止めをしたくなります。そこで,東大は,就業規則で有期労働契約者の契約期間の上限を5年と定めたようです。そのため,東大の有期労働契約者は,契約期間が5年を超える前に雇止めされることになります。

 

 現在,東大の教職員組合が団体交渉を申し入れて,有期労働契約者の契約期間の上限を5年と定めた就業規則の撤廃を求めているようです。契約期間が5年を超える直前に雇止めになった場合,裁判で争ったとしたら,労働契約法18条の趣旨に違反しているとして,雇止めが無効になる可能性もありますが,雇止めの裁判では,労働者側が敗訴することも多いため,裁判結果がどうなるかは,見通しが立てにくいです。そのため,団体交渉で,有期労働契約者の契約期間の上限を5年と定めた就業規則を撤廃できれば,最も効果的です。東大の団体交渉に注目していきたいです。

 

裁判係属中に行われた予備的な雇止めが有効とされた事例

 短大講師に対する体調不良等を理由とする雇止めの有効性が争われた,平成28年12月1日最高裁判決・福原学園(九州女子短期大学)事件(労働判例1156号・5頁)を紹介します。

 

 原告は,被告学校法人との間で契約期間を1年間とする有期労働契約を締結し,女子短大の講師として勤務しました。被告の契約社員規程によれば,雇用期間は,契約社員が希望し,かつ,当該雇用期間を更新することが必要と認められる場合は,3年を限度に更新することがあり,契約社員のうち,勤務成績を考慮して,被告がその者の任用を必要と認め,かつ,当該者が希望した場合は,契約期間が満了するときに,期間の定めのない職種に異動することができると定められていました。

 

 原告は,最初の契約期間1年が経過した時点で雇止めにあい,訴訟を提起したところ,訴訟係属中に,被告は,2年目と3年目に予備的な雇止めをしました。裁判では,1年目と2年目の雇止めは無効とされましたが,3年目の雇止めについては,高裁は無効としましたが,最高裁は有効としました。

 

 最高裁が3年目の雇止めを有効とした理由は,①上記規程には,契約期間の更新限度が3年であり,その満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,契約社員の勤務成績を考慮して被告が必要と認めた場合と明確に規定されていること,②大学の教員の雇用については一般的に流動性のあること,③被告において,3年の期間満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった契約社員が複数上がっていたことから,本件労働契約が期間の定めのないものとなるかは,原告の勤務成績を考慮して行う被告の判断に委ねられていることから,本件労働契約が3年の期間満了時に当然に無期労働契約になることを内容とするものではないからということです。

 

 裁判係属中に更新の上限である3年を経過した事案であり,雇止めの事件では迅速に訴訟準備をする必要があります。正規雇用の場合は,解雇権濫用法理にあてはめて検討すればいいのですが,非正規雇用の場合は,解雇権濫用法理に持ち込む前に,契約更新についての合理的期待があったか等が争点となり,ハードルが高くなります。非正規雇用が不安定と言われる所以ですね。

 

私立大学の専任教員の定年後の再雇用が認められた事例

 私立大学の専任教員が,65歳の定年後に再雇用を拒否されたものの,労働契約法19条2号を類推適用して,定年後の再雇用が成立したとされた東京地裁平成28年11月30日判決(判例時報2328号・129頁)を紹介します。

 

 被告私立大学では,就業規則において,専任教員の定年が満65歳に定められていましたが,特例として「理事会が必要と認めたときは,定年に達した専任教員に,満70才を限度として勤務を委嘱することができる。」という規程が定められており,実際に,定年後も引続き勤務を希望する専任教員については,70歳まで1年間ごとの再雇用契約が締結されていました。

 

 原告は,被告私立大学に対して,上記規程に基づき,再雇用の希望を申し出たのですが,被告私立大学は,理事会の決定により,原告の雇用は定年で終了し,再雇用契約を締結しないこととしました。これに対して,原告が地位確認と賃金の支払を求めて提訴しました。

 

 判決は,原告の採用を担当した理事が70歳までの雇用が保障されている旨の説明をしており,採用決定後の説明会においても,事務担当者が,定年後は70歳までほぼ自動的に勤務を委嘱することになる旨の説明をしており,被告私立大学では再雇用契約の締結を希望した専任教員の全員が再雇用契約を締結して70歳まで契約更新を繰り返していたことを考慮して,原告が定年時に再雇用契約が締結されると期待することが合理的であるとして,労働契約法9条2号を類推適用して,原告の請求を認めました。

 

 65歳までであれば,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律で,原則雇用が継続されるのですが,本件は,65歳以降の雇用の継続が問題となり,高年法の適用がないケースでした。高年法が適用されない場合,再雇用契約を締結するか否かは,使用者の裁量に委ねられます。

 

 しかし,本判決は,上記の事情を考慮して,再雇用契約を締結するものと期待することに合理性があるとして,労働契約法19条2号を類推適用して,原告を救済しました。高齢化社会が進展しており,今後,定年をめぐる紛争が増加するかもしれない中,労働者に有利な判断がなされたので,紹介させていただきます。