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吉本興業の岡本社長の宮迫博之氏に対するパワハラと録音問題

3日連続になりますが,宮迫博之氏の記者会見と

吉本興業の岡本社長の記者会見について記載します。

 

 

本日は,岡本社長の宮迫博之氏に対するパワハラと

録音について解説します。

 

 

 

まず,宮迫博之氏は,記者会見を開こうとしたところ,岡本社長から,

「やってもええけど,そしたら全員連帯責任,クビにする。

俺にはお前ら全員クビにする力があるんだ」

と告げられたことを記者会見で明らかにしました。

 

 

これに対して,岡本社長は,記者会見で,

「父親が息子に言う『勘当や』『ええかげんにせえ』という意味合いだった」

と説明しました。

 

 

岡本社長は,クビ発言を認めた上で,

その意味するところは宮迫博之氏が受け取ったところとは

違うことだったのだと言いたかったのでしょう。

 

 

しかし,岡本社長が,このクビ発言を認めた時点で,

パワハラを認めたことになります。

 

 

今年の通常国会で労働施策推進法が改正されて,パワハラの定義が,

「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって,

業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること」

と法律で明記されました。

 

 

 

吉本興業は芸能人と契約書を締結していないので,芸能人は,

どのような場合に,契約を解除されるのか分かりません。

 

 

また,社長の言うことを聞かないと,

仕事をまわしてもらえなくなるかもしれず,

そうなれば,食べていけなくなるので,社長の言うことは,

ほぼ絶対なのだと予想されます。

 

 

そのため,岡本社長は,宮迫博之氏に対して,

優越的な関係にあるといえます。

 

 

次に,不適切な言動があった宮迫博之氏だけの契約を

解除するならまだしも,その他の芸能人の契約を解除することで

圧力を加えることは,業務上必要かつ相当な範囲を超えていると思います。

 

 

個人的には,宮迫博之氏だけに対する処分のことを伝えたのであれば,

まだセーフかもしれませんし,

ここまで問題が大きくならなかったかもしれませんが,

「全員クビにする」は,さすがに行き過ぎであり,

宮迫博之氏に対して,世間が同情し,

吉本興業の対応がおかしいという世論を形成したのだと思います。

 

 

そして,宮迫博之氏としては,自分だけが契約解除になるならまだしも,

他の後輩芸能人も契約解除になると言われれば,

他の後輩芸能人の人生が自分の言動で暗転することになり,

多大な精神的圧力を加えられたと感じたはずで,

当然,吉本興業での就業環境が害されました。

 

 

以上より,岡本社長の言動は,上記の法律で明記された

パワハラの定義に該当すると考えます。

 

 

次に,宮迫博之氏は,岡本社長から「テープを回してないやろうな」

と言われたと記者会見し,岡本社長は,この発言のことを

「冗談だった」と説明しました。

 

 

宮迫博之氏が岡本社長の言動を録音していたかは不明ですが,

岡本社長の許可なく無断で録音しても,

営業上の秘密情報等が録音されていない限り,

法律上問題はありません。

 

 

むしろ,パワハラの言動は,録音されていないと

パワハラの事実を証明ができないので,

録音するべきなのです。

 

 

録音がなければ,パワハラ発言について,

言った言わないの論争となり,そうなれば,

パワハラの被害者の請求が認められなくなるのが現状です。

 

 

これを避けるためにも,パワハラを受けた被害者は,

パワハラ発言を録音するべきなのです。

 

 

録音するにあたり,パワハラ発言をした人の許可をとる必要はなく,

無断でこっそり録音すればいいのです。

 

 

ですから,宮迫博之氏が岡本社長の発言を録音していても,

営業上の秘密情報等が録音されていない限り,何も問題はありません。

 

 

岡本社長としては,「テープを回してないやろうな」

といって圧力をかけるのではなく,

宮迫博之氏から録音されていることを前提に,

後からパワハラだと言われないような

適切な言動をすべきだったのです。

 

 

宮迫博之氏と岡本社長の記者会見の報道を見て,

パワハラ事件では録音が重要であると改めて感じた次第です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ事件では証拠の確保が重要です

労働施策総合推進法の改正によって,

法律にパワハラの定義が規定されたり,

会社に対するパワハラ防止措置義務が明記されました。

 

 

また,ILOにおいて,仕事の世界における

暴力やハラスメントを撤廃するための条約が採択されました。

 

 

このように,パワハラを防止していこうという

機運がいまだかつてないくらいに高まっています。

 

 

 

しかし,実際にパワハラで裁判をするには,

まだまだハードルが高いのが現状です。

 

 

パワハラの裁判のハードルが高いのには3つの理由があります。

 

 

1つ目は,パワハラを立証できるのかというハードルです。

 

 

問題となるパワハラのほとんどが,

言葉による暴力なのですが,言葉の暴力は,

録音をしておかないと,言った言わないの問題となり,

パワハラの被害者が,言葉の暴力があったことを証明できないと,

裁判では負けてしまいます。

 

 

2つ目は,違法なパワハラといえるのかというハードルです。

 

 

パワハラの定義は,①優越的な関係に基づく,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,

③労働者の就業環境を害すること,とされています。

 

 

このうち,適法な業務指導か違法なパワハラかについて,

②の要件にあてはまるかが問題となります。

 

 

3つ目は,慰謝料の金額というハードルです。

 

 

パワハラの慰謝料は,そこまで高くはなく,

費用対効果を考えると,パワハラで損害賠償請求をすることに

二の足を踏んでしまいます。

 

 

 

実際に,労働者のパワハラの損害賠償請求が否定された

裁判例を見てみましょう。

 

 

コンチネンタル・オートモーティブ事件の

東京高裁平成29年11月15日判決と

横浜地裁平成29年6月6日判決です

(労働判例1196号63頁)。

 

 

この事件では,上司の原告労働者に対する言動が

違法なパワハラにあたるかが問題となりました。

 

 

原告労働者は,上司から

「人事を巻き込んで何かと思えば,プロジェクトの話か。

プロジェクトの失敗で責任を取らせることはないが,

パフォーマンスが出ていないので,それで首にすることはあり得る」,

「お前,今すぐちゃんとやるかどうか決めろ」,

「お前の期待値は20パーセントだ」

と言われたと主張しました。

 

 

これに対して,上司は,原告労働者に対して,

プロジェクトがうまくいかなかっただけで解雇にならないと説明し,

原告労働者のパフォーマンスが悪く,

期待値の20パーセント程度しか発揮できていない

として注意,指導したと主張しました。

 

 

裁判所は,上司の主張を採用し,この上司の言動は,

業務上の注意指導の範囲を逸脱していないとして,

違法なパワハラではないと判断しました。

 

 

パワハラの定義の②の要件を満たさないと判断されたわけです。

 

 

パワハラの損害賠償請求の裁判では,

損害賠償請求をする人に,パワハラの事実が存在したことを

証明する責任があるので,裁判所は,

原告労働者と上司の主張を対比して,

概ね合致しているところで,

事実を認定したのだと考えられます。

 

 

パワハラの被害者の主張と,加害者の主張が

真っ向から対立する場合,録音などの証拠がないと,

パワハラ被害者の主張が認められるのは困難だと言えます。

 

 

 

パワハラ事件では,やはり,

パワハラの言動を録音するなどして,

証拠化しておくことが重要なのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ予防セミナーを開催しました

6月26日,厚生労働省は,

平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000521619.pdf

 

 

都道府県労働局や各労働基準監督署には,

労働問題に関する相談にワンストップで対応するための,

総合労働相談コーナーがあり,そこに様々な労働相談が舞い込んできます。

 

 

 

 

この総合労働相談件数のうち,会社と労働者の労働トラブルが,

民事上の個別労働紛争相談件数としてカウントされていると考えられ,

民事上の個別労働紛争相談件数266,535件のうち,

いじめ・嫌がらせの相談件数が82,797件で最も多かったのです。

 

 

平成24年度から,いじめ・嫌がらせの労働相談が

最も多い労働相談となり,その後も増加の一途をたどり,

平成30年度は,対前年比で14.9%も増加しています。

 

 

職場におけるいじめ・嫌がらせが,

未だに深刻な問題となっていることが浮き彫りとなりました。

 

 

さて,この統計が発表された同じ日,私は,

株式会社シェヘラザード様の

管理職向けスマートマネジメント研修~パワハラ上司と呼ばれないために~

というセミナーで,パワハラ予防の講義をさせていただきました。

 

 

 

 

この研修は,自分がパワハラをしてしまう

傾向があるかを診断してもらい,日々の仕事において,

パワハラをしないように自分を動機づけるというものです。

 

 

企業の管理職が,自分が部下にパワハラをしてしまわないかを,

自分で振り返ってもらう研修です。

 

 

私は,この研修の前座として,

誰もが安心して働ける職場にしていくために,

パワハラにあたる言動をしていないか意識することが

重要であるという内容の講義をさせていただきました。

 

 

パワハラは,被害者の人格を傷つけ,

仕事への意欲や自信を失わせ,心の健康を害して,

休職や退職に追い込むリスクがあります。

 

 

 

 

また,パワハラが発生している職場では,

雰囲気が悪く,労働者の仕事への意欲が低下し,

職場全体の労働生産性が低下し,退職者が増えます。

 

 

パワハラが原因で,会社が訴えられれば,

あの会社はブラック企業だという風評がながれ,

会社のイメージが傷つきます。

 

 

このように,パワハラは,労働者にとっても,

会社にとっても,多大なリスクとなっているのです。

 

 

パワハラが大きなリスクとなっていることから,

ようやく今国会で,労働施策総合推進法の改正によって,

パワハラの定義が法律に明記されて,

会社に対するパワハラ防止措置義務が規定されました。

 

 

パワハラの定義は,①職場の優越的な関係に基づく,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,

③労働者の就業環境を害すること,とされました。

 

 

この定義では,どこまでいけば違法なパワハラになるのか

わかりにくいのですが,他人の人格を否定する言動が

違法なパワハラになると理解していただければいいと思います。

 

 

 

そして,今回の法改正で導入された,

会社のパワハラ防止措置義務としては,

パワハラに関する相談窓口を設置すること,

研修を実施することが挙げられています。

 

 

今後,会社は,パワハラを予防するために,

研修を実施していく必要があります。

 

 

私は,株式会社シェヘラザード様のパワハラの診断を受けて,

自己肯定感が高すぎるがゆえに,

横柄や傲慢な態度をとりやすい傾向があると気付かされました。

 

 

ちょうど今,司法修習生の指導をしている時期でもありますので,

自分の感情をしっかりとコントロールして,

パワハラにならないように気をつけなければならないと自覚できました。

 

 

自分を知り,パワハラと言われる言動をしていないか

自分を振り返り,パワハラを予防していくという研修ですので,

今回の法改正で求められているパワハラ予防のための研修として,

おすすめです。

 

 

https://www.sahrzad.jp/s-management/

(株式会社シェヘラザード様のパワハラ予防研修のページ)

 

 

多くの企業でパワハラ予防の研修が実施されて,

パワハラが根絶されることを願いたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ILOで仕事の世界における暴力やハラスメントを撤廃するための条約が採択されました

仕事における暴力やハラスメントを禁止する初めての条約が,

6月21日,国際労働機関(ILO)の年次総会で採択されました。

 

 

https://www.ilo.org/tokyo/events-and-meetings/WCMS_700939/lang–ja/index.htm

 

 

仕事の世界における暴力と嫌がらせの撤廃に関する条約

と題する条約で,条約を批准する国に対し,

暴力と嫌がらせから自由な仕事の世界への権利を認め,

法や政策などを通じて仕事の世界における

暴力と嫌がらせの撤廃に向けた包摂的で性差に対応した

総合的な取り組みを行うことを求めています。

 

 

仕事の世界から,暴力やハラスメントを根絶することを

崇高な理念として掲げています。

 

 

 

この条約における「仕事の世界における暴力と嫌がらせ」とは,

「一回限りの出来事か繰り返されるものかを問わず,

心身に対する危害あるいは性的・経済的に

危害を与えることを目的とするか,

そのような危害に帰する,あるいは帰する可能性が高い,

一連の許容できない行動様式及び行為またはその脅威

(性差に基づく暴力と嫌がらせを含む)」と定義されています。

 

 

仕事におけるハラスメントを広く捉えています。

 

 

先日,労働施策総合推進法の改正によって,

パワハラの定義が「職場において行われる優越的な関係を背景とした

言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること

と定められていますが,この定義よりも,

ILOの条約の定義の方が,広くハラスメントを捉えており,

より労働者保護を鮮明にしています。

 

 

ハラスメントの保護の対象者について,日本の法律では,

その会社に就職して現に働いている労働者が対象なのですが,

ILOの条約では,実際に働いている労働者に加えて,

ボランティア,求職者,インターンや見習い実習生なども,

保護の対象となっています。

 

 

最近,就活生に対するセクハラが問題となっていることから,

ハラスメントの保護の対象者を,現に今働いている労働者から

就活生なども対象に加えて拡大させることには賛成です。

 

 

ちなみに,参議院の付帯決議において,

フリーランス,就職活動中の学生等に対する

セクハラ等の被害を防止するため,

男女雇用機会均等法に基づく指針等で必要な対策を講じることが,

規定されていますので,今後,日本においても,

ハラスメントの保護の対象者を拡大する方向に

進んでいくものと思われます。

 

 

 

ILOの条約では,具体的な対策として,

仕事の世界における暴力と嫌がらせの禁止する法律の制定,

適切な予防措置の行使,救済を受ける機会の確保,

啓発キャンペーンの実施などが挙げられています。

 

 

このうち,日本の法律には,ハラスメントを直接禁止したり,

ハラスメント行為に対する制裁を規定したものがまだありません,。

 

 

今後は,今回のILOの条約を批准するために,

ハラスメントのない環境で働く労働者の権利を確認し,

損害賠償義務の根拠規定となりうるハラスメント行為禁止規定

の創設が求められます。

 

 

ILOの条約が採択されたことによって,

職場のハラスメントを根絶することは,

もはやグローバルスタンダードとなりました。

 

 

近いうちに,ILOの条約を批准するために

必要な法改正がなされることが予想されます。

 

 

企業は,今のうちからパワハラの根絶に向けた

取り組みをしていくべきと考えます。

 

 

 

というわけで,明日6月26日水曜日14時から

石川県地場産業振興センター本館第2会議室において,

株式会社シェヘラザード様と一緒にパワハラの研修を行います。

 

 

ご興味のある方は,ぜひご参加ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラを規制する法改正が実現しました!

5月29日,職場でのパワハラを防止するために,

企業に相談窓口の設置などの防止策を義務づける

改正労働施策総合推進法が成立しました。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000486035.pdf

(改正法の条文はこちらのURLにアップロードされています)

 

 

ようやく,パワハラを規制する法律が成立し,

今後,パワハラを抑制していく機運が高まっていきそうです。

 

 

本日は,5月29日に成立したパワハラを規制する

法改正について説明します。

 

 

改正労働施策総合推進法の30条の2第1項において,

パワハラの定義が「職場において行われる優越的な関係を背景とした

言動であって,業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより

その雇用する労働者の就業環境が害されること」と定められました。

 

 

 

 

これまでは,仕事上の指導との線引が難しいとして,

パワハラの定義が定められていなかったのですが,ようやく,

パワハラの定義が法律で定められたのです。

 

 

今後は,職場におけるある言動が,

①優越的な関係を背景とするもの,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの,

③就業環境を害すること,

の3つの要件を満たすかについて,

ケースバイケースで判断していくことになります。

 

 

企業は,パワハラについて,労働者からの相談に応じ,

適切に対応するために必要な体制の整備

その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならなくなります。

 

 

また,企業は,パワハラの相談をした労働者に対して,

解雇その他不利益な取扱をしてはならず,

パワハラについての研修をするように努めなければなりません。

 

 

もっとも,企業が講じなければならない措置の具体的な内容については,

法律に詳細は記載されておらず,今後は,労働政策審議会において,

必要な指針がまとめられていく予定です。

 

 

おそらく,相談窓口の設置,

パワハラ加害者に対する懲戒規定の策定,

パワハラ被害が発生した場合の社内調査体制の整備,

当事者のプライバシーの保護対策など

が指針に記載されることが予想されます。

 

 

 

今回の法改正では,企業に対して,

パワハラを防止するための措置義務を定めているものの,

パワハラ行為そのものを罰則などで直接禁止することはされていません。

 

 

この点について,参議院の附帯決議において,

ハラスメントの根絶に向けて,損害賠償請求の根拠となり得る

ハラスメント行為そのものを禁止する規定の法制化の必要性を含め

検討すること」と記載されたので,今後は,

パワハラを直接規制する法改正が実現することを期待したいです。

 

 

その他にも,参議院の附帯決議では,

取引先や顧客からのカスタマーハラスメントや,

就職活動中の学生に対するセクハラなど,

あらゆるハラスメントに対応することが必要であることが

記載されており,参考になります。

 

 

https://www.rengo-news-agency.com/2019/05/17/%E4%BB%98%E5%B8%AF%E6%B1%BA%E8%AD%B0%E3%81%AE%E5%86%85%E5%AE%B9%E3%81%A7%E4%BF%AE%E6%AD%A3%E3%82%92-%E9%9B%87%E7%94%A8%E5%85%B1%E5%90%8C%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3-%E3%83%8F%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E9%96%A2%E9%80%A3%E6%B3%95%E6%A1%88%E3%81%AB%E6%B3%A8%E6%96%87/

 

 

今回法改正で実現した企業に対するパワハラの防止措置義務は,

大企業は2020年4月から,

中小企業は2022年4月から課されますので,

今後は,パワハラ予防のために研修を実施していく企業が増えていきます。

 

 

私も,パワハラ防止に向けて,

パワハラ予防の研修を実施していきたいと思います。

 

 

 

パワハラを規制する法律がようやく成立しましたので,

これを機にパワハラ予防に取り組む企業が

増えていくことを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ハラスメントの境界線2~企業の懲戒処分の決め方とハラスメント通報窓口~

昨日に引き続き,

ハラスメントの境界線~セクハラ・パワハラに戸惑う男たち~

という新書のアウトプットを行います。

 

 

 

この新書の中で,著者の白河桃子先生と

弁護士の五味祐子先生の対談において,

企業は,パワハラやセクハラに対して,

どのようにして懲戒処分をくだすのか,

パワハラやセクハラの通報窓口はどうあるべきかなどについて,

説明がされています。

 

 

私は,労働者側で労働事件を担当していますので,

企業内部の懲戒処分の決め方や通報窓口について,

詳しく知らなかったので,とても勉強になりました。

 

 

まず,ハラスメントに該当するかについては,

どのような行為だったのかという客観面と,

被害者がどのように受け止めたか,

周囲で見聞きしている人がどのように受け止めたかという主観面を加えて,

多方面から検討することになります。

 

 

 

 

もう少し具体的にすると,

加害者と被害者の関係性,

ハラスメント行為に至る経緯,

ハラスメント行為の期間・回数・表現,

指導目的との関連性,

ハラスメント行為の具体的状況

といった客観的事実が重視されます。

 

 

そのため,被害者がハラスメント行為を

どのように感じたかも重要ですが,むしろ,

客観的な事実からハラスメント行為に該当するのかを検討するので,

被害者の感じ方次第で決まるものではないのです。

 

 

次に,企業は,懲戒処分を次のような流れで決めていきます。

 

 

どのようなハラスメント行為があったのか調査を行い,

懲戒処分の対象となる事実を確定し,

懲戒処分案を検討します。

 

 

懲戒審査委員会が設置されている企業では,

懲戒審査委員会で処分案を審議し,

最終的に代表取締役が懲戒処分を決定します。

 

 

この過程において,懲戒処分の対象となっている者に

弁明の機会を与えます。

 

 

ハラスメント行為に対する懲戒処分の場合,

内容にもよりますが,通常は,

いきなり懲戒処分をくだすのではなく,

1回目は注意,2回目は厳重注意,3回目は懲戒処分

という段階をふんで,懲戒処分へつなげていきます。

 

 

 

 

企業がハラスメント被害を察知するルートの一つに,

ハラスメント通報窓口があります。

 

 

セクハラについては,男女雇用機会均等法11条において,

企業は,労働者からの相談に応じ,

適切に対応するために必要な体制の整備や

必要な措置を講じなければならないと規定されています。

 

 

パワハラについては,現時点では,

セクハラのように企業の措置義務を定めた法律はなく,

今年の通常国会で,企業にパワハラについての措置義務を課す

法律が成立する予定です。

 

 

これを受けて,企業には,ハラスメントの通報窓口

を設置しているところがあります。

 

 

しかし,このハラスメントの通報窓口が

十分に機能しているのかといいますと,

どうやらそうではないようです。

 

 

被害者がハラスメントの被害を報告しないのは,

①報告をしても被害者が損をするのが予想できる

(例えば,相談員から,「君にも落ち度があったのではないか」

などと言われる二次被害を受けたり,

被害者が会社の調和を乱すとして人事異動で不利益な取扱を受けるなど),

②そもそも窓口自体が有効ではない

(あるかどうかも分からない,あっても相談しにくい)

といったことが原因のようです。

 

 

そのため,被害者が安心して相談できるためにも,

ハラスメント通報窓口は,企業からの独立性や,

被害者の秘密を守ることを徹底しなければなりません。

 

 

 

そして,企業は,第一に被害者を守り,

被害者が報復されないように,

報復禁止措置を徹底する必要があるのです。

 

 

とりあえず,形だけハラスメント通報窓口を作ったのでは,

「仏作って魂入れず」と同じでだめなのです。

 

 

信頼できるハラスメント通報窓口があってはじめて,

被害者は相談してみようと思うものであり,

被害者が安心して相談できないと,

ハラスメントによる退職者が増えたり,

思わぬところから情報が流れて,

ハラスメントが発生しているブラック企業である

という風評がたってしまうリスクがあります。

 

 

企業は,安心して相談できるハラスメント通報窓口を

設置することが重要になると思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

初めてのパワハラ研修をしました!

私のマインドマップの師匠である

株式会社できるの杉本嵩龍さんのご紹介で,

金沢市高畠にあるノムラ合成株式会社様において,

「パワハラをなくそう」という演題で,

本日,研修をさせていただきました。

 

 

株式会社できるのホームページ https://www.dekiru-jp.com/

 

 

ノムラ合成株式会社のホームページ https://www.n-gosei.jp/

 

 

企業において,パワハラの研修をするのは,

初めての経験だったのですが,受講された方々は,

真剣に聞いていただけましたので,とても嬉しかったです。

 

 

 

 

そもそも,なぜ,企業でパワハラの研修をする必要があるのでしょうか。

 

 

それは,労働者一人一人が互いに尊重しあい,

パワハラを起こさせない,よりよい・働きやすい職場をつくるためです。

 

 

人間とは,一人で生きていくことができず,

他者とのかかわり合いの中で生きていく社会的な存在です。

 

 

そのような人間にとって,職場とは,

1日の大半を過ごす場所であり,

他者とのかかわり合いがもてる重要な場であります。

 

 

そのような職場においてパワハラが発生すれば,

パワハラの被害者はもちろんのこと,

パワハラを見た周囲の人たちも,

非常に嫌な思いをして,

働くことが嫌になります。

 

 

そうなると,職場の雰囲気が悪化し,

労働者の働く意欲が低下し,

職場全体の労働生産性が悪化していきます。

 

 

さらには,パワハラが生じる職場には,

人が集まらず,人がどんどん退職していきます。

 

 

パワハラによって,心の健康を害したとして,

裁判が起こされれば,ブラック企業という

マイナスのイメージが定着してしまいます。

 

 

 

これらのパワハラのリスクを考えれば,

企業にとって,パワハラをなくすことは

待ったなしの喫緊の課題なのです。

 

 

では,どうやってパワハラを予防するのか。

 

 

この答えの一つとして,どのような行為がパワハラに該当するのか

を知ってもらうことがあります。

 

 

そもそも,何がパワハラに該当するのか知らなければ,

パワハラをしている人は,自分の行為がパワハラであることを

知らないまま,パワハラを継続させてしまうので,

まずは,知ってもらって,自分の行動や言葉に

気をつけてもらう必要があると考えます。

 

 

 

というわけで,本日の研修では,

実際の裁判でパワハラと認定された言動を紹介しました。

 

 

まずは,ファーストリテイリング事件の

名古屋高裁平成20年1月29日判決です(労働判例967号62頁)。

 

 

この事件では,ユニクロの店長が,従業員に対して,

胸ぐらをつかみ,顔面を頭突きし,

管理部長が従業員に対して,「いいかげんにせいよ,お前。

おー,何考えてるんかこりゃ。ぶち殺そうかお前」と言い,

慰謝料500万円が認められました。

 

 

次は,サントリーホールディングス事件の

東京高裁平成27年1月28日判決です。

 

 

この事件では,上司が部下に対して,

「新入社員以下だ。もう任せられない」,

「何で分からない。おまえは馬鹿」と言い,

慰謝料150万円が認められました。

 

 

最後は,上司のパワハラによってうつ病を発症して

自殺したことが労災と認定された国・静岡労基署長事件の

東京地裁平成19年10月15日判決です(労働判例950号5頁)。

 

 

この事件では,上司の部下に対する

「存在が目障りだ,いるだけでみんなが迷惑している。

おまえのカミさんの気がしれん,お願いだから,消えてくれ」,

「お前は会社を食いものにしている,給料泥棒」という発言が,

精神障害を発症させる程度の心理的負荷に該当すると判断されました。

 

 

業務上必要な指導とパワハラの線引が難しいこともありますが,

「馬鹿」や「給料泥棒」など相手の人格を否定する言動がある場合には,

裁判で違法なパワハラと認定されることが多いのです。

 

 

自分の言動が職場の誰かの人格を傷つけていないかという

イマジネーションを働かせるためにも,

どのような言動がパワハラになるのかを

知ってもらうのが重要だと考えます。

 

 

 

今回の研修のパワーポイントのスライドを作成するにあたり,

厚生労働省の「明るい職場応援団」のサイトを

参考にさせていただきました。

 

 

このサイトには,どのような言動がパワハラに該当すのかが

動画で解説されていたり,パワハラ研修に必要なコンテンツが

アップロードされていますので,大変参考になります。

 

 

https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/

 

 

次回のパワハラ研修は,私のコーチングの師匠である

株式会社シェヘラザードの坂本祐央子さんと一緒に,

6月26日水曜日14時から石川県地場産業振興センター本館第2会議室

で実施しますので,企業の管理職でパワハラ防止に関心のある方は,

ぜひご参加ください。

 

 

株式会社シェヘラザードのホームページ https://www.sahrzad.jp/

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラの組織論からの分析2

本日は,昨日に引き続き,同志社大学教授の太田肇先生の

パワーハラスメントとはー組織論の見地から

という記事のアウトプットを行います。

 

 

パワハラが行われた場合,

被害者がパワハラから逃れられる方法として,

企業から出ていく「退出」と,

不満を訴えて改善させる「告発」という2つがあります。

 

 

「退出」という方法をとれば,企業は,

その被害者を失うだけでなく,

他の労働者も辞めてしまう可能性もあり,

パワハラが生じる職場では優秀な人材を

獲得することが困難となります。

 

 

 

そのため,「退出」はパワハラに対する抑止力となるのです。

 

 

しかし,「退出」したとしても,日本では

年功序列型賃金が根強く残っているので,

転職先で賃金の面でも役職の面でも待遇が低下したり,

退職金や年金でも不利になったりするので,

「退出」という方法がとりにくいのです。

 

 

また,「告発」という方法は,共同体の和を乱し,

忠誠を捨てる行為とみなされて,

共同体のメンバー全員を敵に回すリスクがあり,

この方法もとりにくいのです。

 

 

 

そのため,「退出」も「告発」もしにくく,

パワハラが抑止されない構造となっているのです。

 

 

このように,日本特有の共同体型組織が

パワハラの温床となっていることから,

パワハラを防止するには,共同体型組織から

個人に分化していくことが考えられます。

 

 

分化は,物理的,制度的,認識的の3つに分けられます。

 

 

物理的分化とは,在宅勤務やテレワーク,

オフィスに個人ごとの仕切りを設けて

プライバシーを確保することなどです。

 

 

在宅勤務やテレワークであれば,

パワハラをする上司と接する機会が減るので,

パワハラの被害にあう機会も当然に減ります。

 

 

 

制度的分化とは,個人の仕事や権限・責任の範囲,

キャリア,処遇などを制度として明確にすることなどです。

 

 

個人の仕事の分担を明確にすれば,自分の仕事をするうえで,

上司に相談したり,許可を得る必要がなくなり,

上司や会社に対する依存が減ります。

 

 

認識的な分化とは,仕事のプロセスを見える化したり,

仕事のアウトプットに署名を入れたりして,

1人ひとりの貢献や成果を客観的に把握することです。

 

 

個人の貢献度が客観的に把握できれば,

個人の側からそれを盾にして,

組織や上司からの無理な欲求を拒否することができるようになります。

 

 

組織論という見地からパワハラを分析すると

なるほどと理解できるところがたくさんあります。

 

 

日本の企業では,パワハラの温床となる要因がいくつかあり,

一朝一夕で改善することはできませんが,今後は,

個人を組織から分化していく社会的な仕組みを

構築していく必要があると実感しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

パワハラの組織論からの分析

法律家の専門雑誌ジュリスト1530号において

「パワハラ予防の課題」という特集がくまれており,

その中に,同志社大学教授の太田肇先生の

パワーハラスメントとはー組織論の見地から」という記事があり,

組織論からパワハラを分析した興味深い見解が記載されていたので,

アウトプットします。

 

 

 

日本では,雇用の流動性が低く,転職や独立の機会が乏しい一方,

正社員に対する解雇が厳しく制限されているので,

正社員は安定した生活が保障されやすいです。

 

 

労働者としては,雇用を保障してもらう代償として,

企業内における配属や異動については,企業に大きな裁量があります。

 

 

転居を伴う異動も辞令一本で行われてしまいます。

 

 

 

さらに,企業が労働者個人の承認欲求を満たす場

になっていることも挙げられます。

 

 

マズローの欲求5段階説によると,人間の欲求は,

①生理的欲求→②安全の欲求→③所属と愛の欲求→④承認の欲求→

⑤自己実現の欲求という5段階の階層構造になっているようです。

 

 

この④承認の欲求とは,他人から認められたい,

自分を価値ある存在だと認めたいという欲求であり,

他人から認められると自信がつき,達成感が得られます。

 

 

日本の企業では,労働者個人が自分の名前と裁量で

外部に向けて仕事をする機会が少ないため,

顧客や市場・社会から直接承認を得ることが難しく,

自分の能力や実績,社会的な価値を認めてくれる場が企業なのです。

 

 

 

 

そして,異動や昇進といった人事権は企業が握っているので,

企業が誰を承認するかは企業の意向次第であり,

労働者は企業の承認を失ってはいけないというプレッシャーもあり,

働き過ぎや過剰なストレスをかかえます。

 

 

このように,雇用や賃金という経済的側面や,

承認という社会的・心理的側面において,

個人が組織に依存しているという構造があり,

この構造がパワハラを生む温床になっているわけです。

 

 

共同体の視点で分析すると,日本の共同体では,

パワハラが生じやすい土壌ができているのですね。

 

 

 

少し長くなりますので,この続きは明日意向に記載します。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

現場から考えるパワハラとその予防2

昨日に引き続き,ジュリスト1530号に掲載されていた座談会

「現場から考えるパワハラとその予防」についてのアウトプットをします。

 

 

 

 

この座談会では,企業でパワハラが生じる原因

について多角的な分析がなされています。

 

 

企業でパワハラが生じる原因の1つ目は,

感情的な発言を誘発してしまう労働環境です。

 

 

現在の企業は,人手不足のために,

個々人の仕事量が増加しており,誰もが忙しくて,

気持ちに余裕がなくなっています。

 

 

気持ちに余裕がないときに,部下がミスをすると,

上司はつい感情的になって,パワハラ発言をしてしまいます。

 

 

自分の気持ちに余裕があれば,相手の言動にカチンと来ても,

怒りを抑えることができますが,自分の気持ちに余裕がなければ,

相手の言動にそのまま反応してしまい,

相手の感情を逆なでする言動をしてしまうものです。

 

 

2つ目の原因は,認識不足です。

 

 

そもそも,何がパワハラに該当するのか理解されていないため,

イマジネーションがはたらかず,

「自分はこれくらい言われも平気」と自分基準で判断してしまい,

相手の立場で考えることができず,パワハラをしてしまうのです。

 

 

3つ目の原因は,コミュニケーションが希薄になっていることです。

 

 

 

SNSなどの便利なツールを使ってのコミュニケーションが増える

一方で,対面で話をする機会が減少しており,結果として,

対面でのコミュニケーションが不足して,

上司と部下が互いに言っていることがわからなくなり,

ついついストレスがたまって,爆発してしまいます。

 

 

私も,メールでやりとりをすることが多いのですが,

メールだけですと大切なことが伝わらないことがありますので,

大切なことを伝えるときには,

対面でのコミュニケーションをするようにしています。

 

 

コミュニケーションでは,声のトーンやしぐさといった

非言語的(ノンバーバル)コミュニケーションによっても,

相手に伝わる度合いが変わりますので,

大切なことを伝えたいときには,

対面でコミュニケーションするべきだと思います。

 

 

これらのパワハラの原因に対して,

どのようにしてパワハラを予防していくべきなのでしょうか。

 

 

今回の座談会では,3つの予防策が提示されました。

 

 

1つ目は,パワハラが企業の利益に直結すること

を経営者に理解してもらい,経営者がパワハラは許されないことであると,

自分の言葉で労働者に伝えることです。

 

 

 

パワハラは,被害者の心身を深く傷つけるだけにとどまらず,

職場の雰囲気を悪化させて,

労働生産性や人材の流出につながりますので,

企業がパワハラ対策を放置することは,

企業にとってマイナスとなります。

 

 

パワハラが原因で労働者が自殺すれば,

企業は,安全配慮義務違反として,

多額の損害賠償責任を負担するリスクを負います。

 

 

逆に,企業は,パワハラ対策を講じれば,

労働者が働きやすい環境となり,労働生産性が向上し,

よい人材を採用できることになり,

結果的に企業の繁栄,存続につながるのです。

 

 

そして,経営者が直接「パワハラはあってはならない」と

労働者にメッセージとして伝えることで,労働者は

「社長がこう言っているからまずいな,今はもう風向きが違う,

時代が変わったんだ」と理解していくことにつながると思います。

 

 

2つ目は,パワハラについて知ってもらう研修をすることです。

 

 

どのような言動がパワハラに該当するのかわからないから,

パワハラが誘発されるので,

このような言動がパワハラに該当することを知れば,

イマジネーションをはたらかせることができて,

パワハラを抑止できると考えられます。

 

 

3つ目は,より相談しやすい環境を作ることです。

 

 

パワハラでメンタルを病んだりする前に予防できるような

相談チャンネルや相談環境を整備することです。

 

 

 

相談窓口を設置するにあたり,相談者が

「相談したら不利に扱われるかも」という不安を生じないように,

相談者の秘密を遵守し,中立性を保ち,

安心して相談してもらう仕組みを整える必要があります。

 

 

以上,企業におけるパワハラの原因と予防策が

話し合われていましたので,参考になると思い,まとめてみました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。