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新型コロナウイルスで初の労災認定がでました

1 少ない労災申請

 

 

厚生労働省は,新型コロナウイルス感染症の労災について,

5月14日までに39件の労災申請があり,

2件について,労災と認定したようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5H5W77N5HULFA020.html

 

 

労災認定された2件のうち,1件は医療従事者,

もう1件は生活関連サービス従事者のようです。

 

 

労災申請が39件というのは,率直に言って少ないです。

 

 

日々の新型コロナウイルスに関する報道を見ていますと,

一定数の医療従事者が新型コロナウイルスに感染したという

情報が流れているので,仕事中に新型コロナウイルスに感染しても,

労災申請をしていない人が多いように感じます。

 

 

おそらくですが,仕事場で新型コロナウイルスに感染したことが

発覚すれば,2週間ほどの休業に追い込まれたり,

風評被害が発生することをおそれて,

仕事中に新型コロナウイルスに感染しても,

労災申請をするのをためらったり,

職場で労災申請を控えさせる雰囲気ができているのかもしれません。

 

 

 

そのためか,厚生労働省は,日本医師会に対して,

医師や看護師など医療従事者が感染した場合には,

労災申請を勧めるよう,協力の要請をしたようです。

 

 

新型コロナウイルスに感染したのは仕事が原因であったとして,

労災認定されれば,治療費の全額が労災保険から支給され,

治療のために仕事を休んでいた期間の給料のおおむね8割が

休業補償給付として支給されますので,安心して,

治療に専念できるメリットがあります。

 

 

そのため,医療従事者など仕事が原因で,

新型コロナウイルスに感染した方は,

積極的に労災保険を活用してほしいと思います。

 

 

さて,先日,日本労働弁護団の新型コロナウイルスと労災

に関するオンラインの勉強会に参加しましたので,

そこで学んだことをアウトプットします。

 

 

2 医療従事者の新型コロナウイルス感染症の労災申請

 

 

以前ブログに記載しましたが,新型コロナウイルスの労災に関して,

4月28日に重要な通達が出されました。

 

 

4月28日の通達には,「患者の診療若しくは看護の業務又は

介護の業務等に従事する医師,看護師,介護従事者等が

新型コロナウイルスに感染した場合には,

業務外で感染したことが明らかである場合を除き,

原則として労災保険給付の対象となること」と記載されています。

 

 

ようするに,医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合には,

基本的に労災と認定されるということです。

 

 

医療従事者に,安心して働いてもらうために,

労災の要件を大幅に緩和したのです。

 

 

先日の勉強会で学んだことは,

この通達に記載されている「患者」とは,

新型コロナウイルスに感染した,

または感染の疑いのある患者に限定されていないことです。

 

 

新型コロナウイルスは,症状がなくとも感染を

拡大させるリスクがあるので,

感染の疑いのある患者を特定することができないため,

新型コロナウイルスに感染しているかわからない患者を診療して,

医療従事者が新型コロナウイルスに感染した場合にも,

労災と認定されるようにしたのです。

 

 

また,患者の診療をする医療従事者は,

感染症科や内科の医療従事者に限定されず,

全ての診療科の医療従事者が該当します。

 

 

 

全ての診療科において,新型コロナウイルスに

感染した疑いのある患者を診療する可能性があり,

医療従事者は患者と近接して診療行為を行うので,

どの診療科においても感染のリスクがあるからです。

 

 

そのため,医療従事者が患者の診療行為をしていて

新型コロナウイルスに感染すれば,原則として,

労災と認定されるので,医療従事者には,

積極的に労災保険を活用してほしいです。

 

 

3 感染経路の特定

 

 

他方,医療従事者や生活関連サービス業の従事者以外の労働者の場合は,

感染経路を特定するのが困難となり,労災認定のハードルは高くなります。

 

 

新型コロナウイルスは,症状がなくても感染を拡大させるリスクがあり,

PCR検査を容易に受けられないので,

誰が陽性で,誰が陰性かほとんど判別がつかない状況で,

皆働いていますので,どうしても感染経路を特定するのは困難となります。

 

 

 感染経路を特定するには,日々の行動を日記などに記録したり,

スマホの位置情報の記録などを保存しておくことが重要になると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

仕事中に新型コロナウイルスに感染しても会社が労災申請に協力してくれない場合の対処法

1 コロナ労災・過重労働110番を実施しました

 

 

5月8日に,過労死弁護団全国連絡会議が主催する

「コロナ労災・過重労働110番」の電話相談を実施しました。

 

(2020年5月9日北陸中日新聞朝刊より抜粋)

 

 

石川県では,2件の電話相談があり,

まだ新型コロナウイルスに感染していないけれども,

仕事中に感染した場合に,労災申請をするには

どうすればいいのかという相談でした。

 

 

新型コロナウイルスに感染した場合に,

どのような補償がなされるのかについて,

不安に思っている方がいらっしゃるのがよくわかりました。

 

 

また,この電話相談について,NHKの報道があり,

興味深い指摘がありました。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200508/k10012421741000.html

 

2 新型コロナウイルスの労災申請が少ない理由

 

 

労災申請ができなかった看護師のインタビューがあり,

勤務先に労災申請の相談をしたところ,

労災申請に必要な書類の作成に協力してくれなかったようです。

 

 

勤務先では,感染の事実を外にもらさないように

と指示があったからのようです。

 

 

新型コロナウイルスの感染による労災の申請件数は,

全国でたったの4件にとどまっているようです。

 

 

 

背景には,労働者が新型コロナウイルスに感染したことが公になれば,

会社を2週間ほど閉鎖しなければならなくなったり,

風評被害が発生することをおそれて,

会社が労災隠しをしている可能性が考えられます。

 

 

それでは,勤務先が労災申請に協力してくれない場合は

どうすればいいのでしょうか。

 

 

3 労災隠しの対処法

 

 

それは,自分で労災申請をすればいいのです。

 

 

労災申請書に必要事項を記載したら,会社に提出して,

会社が後の申請手続をしてくれることが多いのですが,

これは,会社が労災申請を代行しているだけにすぎません。

 

 

労災申請できるのは,労災事故にあった被災労働者なのです。

 

 

会社が請求するのではなく,

被災労働者が労働基準監督署に労災申請をするのです。

 

 

労災保険法施行規則23条1項には,

被災労働者が自分で労災申請をするのが困難な場合には,

会社は,労災申請に助力しなければならないと記載されているので,

会社は,労働者から労災申請の相談を受けたなら,

協力しなければならないのです。

 

 

また,労災事故が発生した場合,会社は,

遅滞なくそのことを労働基準監督署に報告する義務を負っています

(労働安全衛生法100条,労働安全衛生規則97条)。

 

 

そのため,会社は,労災隠しをしてはならず,

労災申請にあたって,労働者に協力しなければならないのです。

 

 

労災申請書には,事業主の証明の欄があり,

労災申請に協力してくれない会社は,

この証明を記載してくれないことがあります。

 

 

その場合には,会社が証明を拒否したことを文書にまとめて,

労働基準監督署に提出すれば,労災の手続をすすめることができます。

 

 

 

4 感染経路を特定するために日々の行動を記録する

 

 

仕事中に新型コロナウイルスに感染したとして,

労災申請する場合には,感染経路を特定する必要がありますので,

どのような仕事をしたのか,誰とあったのか,

などを日記などに日々記録に残しておくのがいいです。

 

 

場合によっては,スマホの行動履歴をとっておくと,

感染経路の特定に役立つと思います。

 

 

労災隠しはあってはならないことなので,

仕事中に新型コロナウイルスに感染した場合には,

会社は,労災申請に協力すべきですし,

迅速に労災認定がされるべきだと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルス感染症の労災認定基準の緩和

1 新型コロナウイルスと労災

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず,

病院や介護施設でクラスターが発生しているところもあります。

 

 

 

医療従事者や介護従事者が仕事をしていて,

新型コロナウイルス感染症を発症した場合,

労災保険を利用することが考えられます。

 

 

労災保険を利用すれば,治療費は労災保険から全額支給されますし,

仕事を休むことになっても,給料のおおむね8割の休業補償給付が

支給されますので,安心して治療に専念できます。

 

 

労災と認定されるためには,仕事が原因で

新型コロナウイルスに感染したといえなければなりません。

 

 

業務に内在する危険が現実化したものによると認められること

と言われる業務起因性が認められなければならないのです。

 

 

要するに,業務と新型コロナウイルス感染症との間に,

相当因果関係が認められなければならないのです。

 

 

この点,4月28日に新型コロナウイルス感染症についての

労災認定基準の考え方が公表されましたので,解説します。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q4-1

 

 

2 労災認定基準の緩和

 

もともと,厚生労働省は,新型コロナウイルス感染症について,

個別の事案ごとに感染経路,仕事との関連性などの実情をふまえて,

労災と認定するかを判断するとしていました。

 

 

感染経路の特定というのがやっかいで,

仕事以外のプライベートな活動で感染しておらず,

仕事中に感染したと証明しなけばなりませんでした。

 

 

 

感染経路の特定にこだわっていたのでは,

迅速な労災保険給付に支障が生じるという問題がありました。

 

 

そこで,一定の職種について,要件を緩和する必要があり,

4月28日の労災認定基準が公表されたのです。

 

 

医師や看護師などの医療従事者,介護従事者が

新型コロナウイルスに感染した場合,

仕事以外で感染したことが明らかである場合を除き,

原則として,労災と認定されます。

 

 

院内感染が多発している現状をふまえて,

医療従事者や介護従事者を保護するために

要件が緩和されたと考えられます。

 

 

また,感染経路が特定されていなくても,

感染リスクが高いと考えられる業務に従事していた場合には,

潜伏期間内の業務従事状況や一般生活状況を調査して,

個別に業務起因性を判断します。

 

 

感染リスクが高いと考えられる業務とは,

①複数の感染者が確認された労働環境下での業務,

②顧客などとの近接や接触機会の多い労働環境下での業務

(小売業の販売業務,バス・タクシーなどの運送業,育児サービス業など)

です。

 

 

感染経路が特定されていなくても,

①と②の業務をしていた労働者の場合には,

救済の余地が示されましたので,諦めずに,

労災申請をしてみる必要があります。

 

 

このように,4月28日の労災認定基準では,

新型コロナウイルス感染症の労災認定の要件を

緩和する方向になりましたので,

仕事が原因で新型コロナウイルスに感染したと考えられる場合には,

労災申請をするようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社が新型コロナウイルスの感染対策をしてくれない場合の対処法

1 会社が新型コロナウイルスの感染対策をしてくれない

 

 

新型コロナウイルスに関連する労働問題の電話相談が断続的にあります。

 

 

電話相談の中には,会社が新型コロナウイルスの感染対策

を十分にしてくれないという不満の声もありました。

 

 

 

隣の県へ研修に行くのを命じられた際,

一部の社員は社用車で行くのに,

一部の社員は公共交通機関で行くように言われ,

公共交通機関で新型コロナウイルスに感染するリスク

を考えてくれないといったことがあるようです。

 

 

本日は,会社が新型コロナウイルスの感染対策をとってくれない場合に,

労働者に何ができるのかについて検討します。

 

 

2 会社の安全配慮義務

 

 

まず,会社は,労働者に対して,労働災害を防止することに加えて,

快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて,

職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない

義務を負っています(労働安全衛生法3条)。

 

 

そして,会社は,労働者に対して,生命と身体の安全を確保しつつ

労働することができるように必要な配慮をしなければなりません

(労働契約法5条)。

 

 

これを,安全配慮義務といいます。

 

 

そのため,会社は,仕事中や通勤において,

労働者が新型コロナウイルスに感染して健康を害することがないように

配慮しなければならない義務を負っているのです。

 

 

具体的には,マスクを持っていない労働者に対して,

マスクを配布する,職場にアルコール消毒液を設置する,

職場の換気を行う,テレワークや時差出勤をさせることなどが,

安全配慮義務の内容になります。

 

 

3 衛生委員会

 

 

次に,常時50人以上の労働者を使用する事業場では,

衛生委員会が設置されなければなりません

(労働安全衛生法18条1項)。

 

 

衛生委員会では,職場の衛生について,

計画の策定,実施,評価,改善に関することについて議論されます。

 

 

衛生委員会は,毎月1回開催されなければならず,

衛生委員会の議論については,議事録として労働者に対して

公開されます(労働安全衛生規則23条)。

 

 

衛生委員会の設置を義務付けられている会社では,

衛生委員会において,職場における新型コロナウイルスの感染対策を

決めなければならないことになります。

 

 

 

4 労働組合への相談

 

 

次に,会社は労働者に対して安全配慮義務を負っていますので,

労働者は,会社に対して,新型コロナウイルスの感染対策を

実施するように求めるべきですが,会社が対応してくれない場合,

会社に労働組合があれば,労働組合に相談してみましょう。

 

 

労働組合が,団体交渉という形で,会社に対して,

新型コロナウイルスの感染対策の実施を要求すれば,

会社は,正当な理由がない限り,団体交渉を拒めないので,

対応を検討してくれる可能性があります。

 

 

会社に対する要求を実現したいときには,

労働組合の団体交渉が強力です。

 

 

仮に,労働組合がない会社であれば,

新型コロナウイルスの感染対策は,

経営者も含めた共通の懸念事項ですので,

職場の他の労働者と共同で,

会社に対して新型コロナウイルスの感染対策を実施するように

要求することをおすすめします。

 

 

労働者1人の意見だと,会社は重視しないかもしれませんが,

職場の大多数の労働者の意見であれば,会社は無視できません。

 

 

会社の外の労働組合に相談することもできます。

 

 

それでも,会社が新型コロナウイルスの

感染対策をしてくれない場合には,労働基準監督署に相談して,

会社に対して,是正の指導をしてもらいましょう。

 

 

法律上,会社に対して,新型コロナウイルスの感染対策の実施を

強制できるものがないので,上記の方法で

粘り強く会社と交渉するしかありません。

 

 

会社が新型コロナウイルスの感染対策を怠って,

労働者が職場で新型コロナウイルスに感染して損害を被ったなら,

会社に対して,損害賠償請求をすることができますが,

新型コロナウイルスの感染対策の実施を強制まではできないのです。

 

 

多くの職場で,労働者が安心して働けれるよう,

新型コロナウイルスの感染対策が実施されることを祈っています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

仕事中に新型コロナウイルスに感染した場合,労災申請をしつつ傷病手当金の申請もする

1 仕事中に新型コロナウイルスに感染して会社を休むことになったら

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大がとまりません。

 

 

 

2020年4月2日の段階で全国の感染者の総数は

3450人となりました。

 

 

自分がいつ感染してもおかしくない状況になりつつあります。

 

 

もし,新型コロナウイルスに感染してしまった場合,

最低2週間ほどは会社を休まなければならなくなりますので,

治療費や会社を休んでいる期間の給料のことが気になります。

 

 

本日は,仕事中に新型コロナウイルスに感染してしまった場合の

労災申請や傷病手当金について解説します。

 

 

2 新型コロナウイルス感染症と労災申請

 

医療機関で働いている医師や看護師が,

新型コロナウイルスに感染した患者の診療をして

新型コロナウイルスに感染したり,海外渡航が禁止される前に,

中国,アメリカ,ヨーロッパなどに海外出張へいき,

日本に帰国後に新型コロナウイルス感染症を発症した場合には,

労災申請をすることを検討します。

 

 

仕事をしていたときに新型コロナウイルスに感染したのであれば,

労災保険を利用すれば,治療費を労災保険から全額支給してもらい,

仕事を休んでいる期間の給料の8割を補償してもらうことができます。

 

 

労災と認定されるためには,業務が原因となって

新型コロナウイルス感染症が発症したといえなけばなりません。

 

 

これを業務起因性といいます。

 

 

新型コロナウイルス感染症の場合,

仕事中における感染機会や感染経路が明確に特定され,

感染から発症までの潜伏期間や症状などに医学的な矛盾がなく,

仕事以外の感染源や感染機会が認められない場合に,

業務起因性が認められて,労災と認定されます。

 

 

医療機関で働いている医師や看護師の場合であれば,

プライベートな活動で新型コロナウイルスに感染する機会がなかったなら,

業務起因性は肯定されやすいと考えます。

 

 

 

海外出張の場合は,新型コロナウイルスが流行している地域に出張して,

商談などで新型コロナウイルスの感染者と接触し,

プライベートな活動中に感染機会がなかったなら,

業務起因性が認められると考えます。

 

 

しかし,海外出張先の商談相手が新型コロナウイルスの

感染者だったと証明できないかもしれず,また,

海外出張中に立ち寄ったレストランで感染した可能性もあるなど,

業務起因性が認められるか不明です。

 

 

また,国内において,接客などの対人業務において,

新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触し,

仕事以外に感染者との接触や感染機会が認められないときには,

業務起因性が認められると考えます。

 

 

この場合も,仕事中に新型コロナウイルスの感染者と

濃厚接触したという感染経路を証明できるのかという問題がでてきます。

 

 

このように,仕事が原因で新型コロナウイルスに感染したとして

労災申請をする場合,自身の感染経路を証明することが

ハードルになる可能性があります。

 

 

また,調査する労働基準監督署も,時間と労力がかかりますので,

労災と認定されるまでに時間がかかることがあります。

 

 

3 傷病手当金の申請

 

 

そこで,労災の認定までに時間がかかり,

その間に仕事を休んでいる給料の補償が欲しい場合には,

健康保険の傷病手当金の受給をします。

 

 

傷病手当金は,仕事とは関係ない傷病で休業した労働者が

会社から十分な報酬が受けられない場合に

健康保険協会などから受けることができる手当金です。

 

 

傷病手当金は,最大1年6ヶ月間,

おおむね給料の3分の2(70%弱)の支給がされます。

 

 

傷病手当金は,会社と主治医の証明をもらって申請書を提出すれば,

労災よりも早く受給できます。

 

 

もっとも,労災保険の休業補償給付と

傷病手当金の両方を受給することはできません。

 

 

そこで,労災申請と,傷病手当金の申請をして,

傷病手当金の受給後に労災認定されれば,

労災保険から休業補償給付が支給されるので,

それですでに支払われた傷病手当金を返還すればいいのです。

 

 

労災の休業補償給付は給料の80%で,

傷病手当金は給料の70%弱なので,

労災認定されれば,傷病手当金を十分に返還できます。

 

 

そのため,仕事中に新型コロナウイルスに感染したものの,

感染経路の調査に時間がかかりそうであれば,労災申請をしつつ,

傷病手当金を受給するのがいいと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルスに感染してしまって仕事を休むときには労災保険の休業補償給付か健康保険の傷病手当金の受給を検討する

1 万が一新型コロナウイルスに感染してしまい仕事を休まないといけなくなったら

 

 

連日,新型コロナウイルスの感染拡大のニュースが報道されています。

 

 

 

本日は,新型コロナウイルスに感染してしまって,

会社を休むことになったときの補償について解説します。

 

 

2 仕事をしていて新型コロナウイルスに感染したなら労災保険の申請を検討する

 

 

まず,仕事をしていて新型コロナウイルスに感染してしまった場合に,

どのような補償がされるのかを解説します。

 

 

具体的には,新型コロナウイルスに感染した患者の処置を担当した

医師や看護師が新型コロナウイルスに感染したケースが考えられます。

 

 

また,私の地元石川県では,小松マテーレ株式会社の労働者3名が,

パリに出張していた際に新型コロナウイルスに感染したようです。

 

 

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200302/k10012310211000.html

 

 

このように,仕事をしていて新型コロナウイルスに感染した場合,

症状が軽かったとしても,接触した人に感染させてしまう

リスクがあるので,仕事を休まなくてはなりません。

 

 

そこで,仕事をしていて新型コロナウイルスに感染して,

仕事を休むことになったときには,

労災保険の休業補償給付の申請をすることを検討します。

 

 

労災と認定されれば,コロナウイルスで治療を受けている労働者で

休業していれば,休業4日目から,おおむね,

給料の8割分が労災保険から支給されますし,

治療費も労災保険から支給されます。

 

 

ただ,仕事をしていて新型コロナウイルスに感染したという

因果関係を証明できるのかという問題はあります。

 

 

3 プライベートな活動をして新型コロナウイルスに感染したなら健康保険の傷病手当金の申請を検討する

 

 

次に,仕事とは関係なく,プライベートな活動をしていて

新型コロナウイルスに感染してしまった場合に

どのような補償がされるのかを解説します。

 

 

 

大阪のライブに参加した人が新型コロナウイルスに感染したようです。

 

 

https://mainichi.jp/articles/20200303/k00/00m/040/318000c

 

 

ライブのように仕事とは無関係のプライベートな活動をして,

新型コロナウイルスに感染してしまい,

治療のために,仕事を休むことになったときには,

健康保険の傷病手当金の受給を受けられないかを検討します。

 

 

傷病手当金とは,仕事以外の傷病で欠勤し,

給料が支給されない場合に,安心して療養に専念できるように,

健康保険の保険者から賃金の一部に相当する現金が給付される制度です。

 

 

仕事以外の傷病による療養のため仕事ができず,

欠勤が3日連続であり,給料の支給がない場合に,

欠勤4日目から傷病手当金が支給されます。

 

 

傷病手当金の支給金額は,

直近12ヶ月平均の標準報酬日額の3分の2の金額が支給されます。

 

 

傷病手当金の申請をするためには,

協会けんぽに傷病手当金の申請書を提出します。

 

 

こちらのサイトから傷病手当金の申請書をダウンロードできます。

https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat310/sb3040/r139/

 

 

なお,仕事とは無関係のプライベートな活動をして,

新型コロナウイルスに感染した場合,治療費は自己負担になります。

 

 

4 年次有給休暇を利用するのが最も簡便

 

 

さて,新型コロナウイルスに感染して,

仕事を休むことになったときには,

労災保険の休業補償給付や健康保険の傷病手当金の受給を検討しますが,

いずれも,医師の診断が必要になり,

認定されるまでに時間がかかります。

 

 

そう考えると,新型コロナウイルスに感染して仕事を休むときには,

年次有給休暇を利用するのが,労働者にとって最も簡便だと考えます。

 

 

年次有給休暇であれば,会社に年次有給休暇の申請をするだけで

手続は簡単であり,仕事を休んだ期間の給料が全額支給されるからです。

 

 

潜伏期間が2週間であれば,土日を除く平日10日間を

年次有給休暇を利用して休めば,10日間の給料が補償されて,

安心して休めます(年次有給休暇が10日残っていればの話しですが)。

 

 

新型コロナウイルス関連で仕事を休まざるをえないとき,

年次有給休暇が残っているのであれば,

年次有給休暇を取得してみてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルスに感染したバス運転手とツアーガイドは労災と認定されるのか

1 新型コロナウイルスの感染が拡大しています

 

 

中国湖北省武漢を中心に,新型コロナウイルスによる

肺炎が拡大しており,2020年2月3日現在で,

感染者の数は1万人を超え,中国における死者が300人を超えました。

 

 

日本では,武漢からのツアー客を乗せたバスの運転手と,

そのバスに同乗していたツアーガイドの女性が,

新型コロナウイルスに感染していたことが明らかになっています。

 

 

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3892005.htm?1580686339337

 

 

このバス運転手とツアーガイドは,武漢への渡航歴がなかったようです。

 

 

そのため,バスツアーの仕事をしていたときに,

新型コロナウイルスに感染したと言えそうです。

 

 

 

2 仕事中にウイルスに感染したら労災と認定されるのか

 

 

このように,仕事中にウイルスに感染した場合,

労災と認定されるのでしょうか。

 

 

まず,仕事が原因で疾病が発症した場合,

その疾病が労働基準法施行規則別表第1の2に記載されていれば,

仕事が原因で疾病が発症したといいやすくなります。

 

 

この別表第1の2の6号に

細菌,ウイルス等の病原体による次に掲げる疾病

が記載されています。

 

 

基本的には,医師や看護師が患者の診察や治療の機会に

病原体を取り扱う仕事をしているため,

病原体に感染するリスクが高いことから,規定されています。

 

 

C型肝炎,エイズ,MRSA感染症については,

通達で労災の認定基準が定められています。

 

 

http://labor.tank.jp/hoken/nintei/kansensyou-ckanen-etc.html

 

 

この別表第1の2の6号には,医師や看護師が

病原体に感染する場合以外に,5として,

これらの疾病に付随する疾病その他細菌,ウイルス等の病原体

にさらされる業務に起因することの明らかな疾病」が規定されています。

 

 

バスツアーの仕事をしていて新型コロナウイルスに感染した場合,

この別表第1の2の6号の5に該当するとして,

労災と認定される可能性が高いと考えます。

 

 

 

3 業務遂行性と業務起因性

 

 

また,労災と認定されるためには,業務遂行性を前提に

業務起因性が認められる必要があります。

 

 

業務遂行性とは,労働者が労働契約に基づき

事業主の支配下にある状態をいい,

仕事をしているときに労災事故にまきこまれれば,

業務遂行性が認められます。

 

 

業務起因性とは,相当因果関係があることをいい,

業務に内在する危険が現実化したものによる,とも言われます。

 

 

ようするに,仕事が原因で,疾病を発症したといえればいいのです。

 

 

武漢から来たツアー客を乗せたバスを運転していたり,

ツアーガイドをしていれば,ツアー客の中に

新型コロナウイルスに感染している人がいれば,

バスの運転手やツアーガイドも

新型コロナウイルスに感染するといえそうです。

 

 

そのため,バスの運転手やツアーガイドの業務に内在する

危険が現実化したといえ,労災と認定される可能性があります。

 

 

労災と認定されれば,治療費は全額労災保険から支給されますし,

病気で仕事を休んでいる期間の給料の8割が支給されますので,

安心して,治療に専念することができるのです。

 

 

早急に,新型コロナウイルスの感染が終息に向かうことを祈っています。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

仕事中に犯罪行為にまきこまれた場合に労災が適用されるのか

1 京都アニメーション事件で労災認定

 

36人が死亡し,33人が重軽傷を負った

京都アニメーション放火殺人事件において,

労災の認定がされたようです。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54402660V10C20A1AC1000/

 

 

労災と認定されたことで,

お怪我をされた方に対しては,

治療費が労災保険から支払われ,

治療のために会社を休んでいる期間について,

給料の8割が補償されますので,

安心して治療に専念できます。

 

 

 

被災労働者がお亡くなりになった場合には,

ご遺族に対して,遺族補償給付として,

年金や一時金が支給され,葬儀費用も支給されます。

 

 

京都アニメーション事件のような重大犯罪が発生した場合,

被害者に対して,損害賠償責任を負うのは,加害者なのですが,

残念ながら,このような犯罪をする加害者は,

お金を持っていないことがほとんどで,被害者が加害者から,

損害賠償請求を受けるのは極めて困難です。

 

 

また,このような重大犯罪の場合,加害者は,

突発的に犯罪を実行することが多く,会社としては,

犯罪に備えて対策をとることも難しく,被害者が会社に対して,

安全配慮義務(労働者の生命・健康を危険から保護するよう配慮する義務)

違反を理由に,損害賠償請求するのも困難です。

 

 

とくに,京都アニメーション事件のような場合,

会社も被害者なので,被災労働者も,会社に対して,

責任追及をしたくないと考えると思いまし,

仮に,会社が被災労働者のために補償したいと考えても,

会社にお金がないと補償は実現できません。

 

 

2 仕事中に犯罪行為にまきこまれたときに労災を利用できないか

 

 

そのため,加害者でもなく,会社でもなく,

国に補償してもらえないかについて検討してみるのです。

 

 

すなわち,仕事中に犯罪行為にまきこまれてしまった場合,

労災保険が適用されないかを検討するのです。

 

 

労災保険は,仕事をしているときに(業務遂行性),

仕事が原因で(業務起因性),負傷したときに適用されます。

 

 

仕事中に犯罪行為にまきこまれた場合,

業務遂行性は認められますが,

業務起因性が認められるかが争点になります。

 

 

3 仕事中に犯罪行為にまきこまれたときに労災が適用される場合とは

 

 

通達では,「他人の故意に基づく暴行によるものについては,

当該故意が私的怨恨に基づくもの,

自招行為によるものその他明らかに業務に起因しないものを除き」,

業務起因性が認められるとされています。

 

 

 

被災労働者が自分で加害者を挑発して,

加害者から暴行を受けたような場合には,

自業自得ということで,業務起因性が認められなくても納得できます。

 

 

やっかいなのは,仕事中に加害者の私的怨恨による

犯罪行為にまきこまれた場合です。

 

 

古い裁判例ですが,呉労基署長事件の

広島高裁昭和49年3月27日判決では,

農協の窓口業務をしていた女性労働者が,

一方的に恋愛感情を抱いていた顧客に,

職場で刺殺された事件について,

業務起因性が否定されました。

 

 

他方,尼崎労基署長事件の

大阪高裁平成24年12月25日判決では,

競馬場のマークレディが,一方的に恋愛感情を抱かれていた

警備員から殺害された事件について,業務起因性が肯定されました。

 

 

加害者の私的怨恨による犯罪行為の場合に

業務起因性が認められるかは,なかなか判断が難しいです。

 

 

京都アニメーション事件の場合,多くの方が犠牲になり,

被害も甚大であったため,京都の労働基準監督署や労働局は,

被害者を救済するために政策的に労災と認定したのかもしれません。

 

 

なお,地下鉄サリン事件では通勤中や仕事中にまきこまれた

被害者に対して労災が適用されていたようです。

 

 

このように,仕事中に犯罪行為にまきこまれた場合には,

労災が適用されて,被害者が少しでも救済されるようになってほしいです。

 

 

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労災隠しは犯罪なので労災隠しに加担せずに労災申請をしましょう

1 労災隠しの犯罪で逮捕のニュース

 

 

報道によりますと,石川県宝達志水町の家屋解体現場において,

日雇労働者がダンプカーの荷台から転落して

右鎖骨を折る全治6ヶ月の怪我を負ったにもかかわらず,

雇用主が労災事故のことを,労働基準監督署へ報告しなかった

という労災隠しの犯罪がありました。

 

 

 

雇用主が労災事故のことを労働基準監督署に報告しないだけでなく,

日雇労働者は,市役所には,労災事故ではなかったと虚偽の事実を伝えて,

生活保護の医療扶助を受給したようです。

 

 

その結果,関係者4人が労働安全衛生法違反と

詐欺の疑いで逮捕されました。

 

 

石川県で労災隠しの犯罪で逮捕までいくのは珍しいと思います。

 

 

本件事件では,報道によりますと,

労災事故にあった日雇労働者も労災隠しに加担しているようですが,

労働者は,労災隠しに加担してはいけません。

 

 

雇用主からの労災隠しに応じてしまうと,

労働者には色々なデメリットが生じてくるのです。

 

 

2 労災隠しは犯罪です

 

 

まず,労災事故が発生した場合,会社は,

労働基準監督署に対して,労働者死傷病報告書を提出して,

労災事故が発生したことを報告しなければなりません

(労働安全衛生法100条,労働安全衛生規則97条)。

 

 

会社がこの労働基準監督署への報告をしないことを,

労災隠しといい,労災隠しをした会社に対して,

50万円以下の罰金が科せられることがあります。

 

(厚生労働省のポスター)

 

 

会社は,労災事故を契機に労働基準監督署の調査を受けることで,

労働法令を守っていなかったことが発覚することをおそれたり,

労災保険料が増額されることをおそれたりして,

労災隠しをしてしまうことがあるのです。

 

 

3 労災隠しによる労働者のデメリット

 

 

会社が労災隠しをすると,労災事故にあった労働者は,

労災保険を利用できません。

 

 

労災保険を利用できれば,労働者は,治療費を負担することなく,

会社を休んでも給料の8割が休業補償給付として支給されるので,

安心して,治療に専念することができます。

 

 

また,労災事故にあった労働者が治療の結果,

後遺障害が残ったとしても,労災保険から障害補償給付が支給されます。

 

 

これに対して,労災隠しをされて,労災保険が利用できない場合,

治療費は自己負担となり,後遺障害が残っても補償はありません。

 

 

労災保険が利用できなくても,会社を休んだときには,

傷病手当金を受給できますが,

給料の3分の2が最長1年6ヶ月補償されるものの,

労災保険の休業補償給付の方が,補償が手厚いです。

 

 

また,労災隠しをされて,労働基準監督署が調査をしないまま,

証拠がなくなってしまい,後日,会社に対して,

損害賠償請求をしようとしても,証拠がないために,

損害賠償請求が認められないリスクがあります。

 

 

このように,労災隠しは,労働者にとって,

デメリットしかありませんので,会社が労災を隠そうとしても,

労働者は,毅然として,労働基準監督署に対して,

労災の申請をするべきなのです。

 

 

会社が労災申請に反対しても,

労働基準監督署にそのことを説明すれば,

労働者個人で労災申請できます。

 

 

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過労死した飲食店の店長の労災保険給付金の算定と固定残業代

1 給付基礎日額とは

 

 

労災保険から支給される保険給付金は,

給付基礎日額をもとに算定されます。

 

 

後遺障害が残ったときに支給される障害補償給付や,

被災労働者が死亡したときにご遺族に支給される遺族補償給付は,

給付基礎日額の何日分として支給されるのです。

 

 

 

この給付基礎日額は,労災事故が発生した日の直前3ヶ月間の

賃金の総支給額を日割り計算したものをいいます。

 

 

2 給付基礎日額の計算には未払残業代も含まれる

 

 

給付基礎日額を計算するうえで,

残業代が含まれているのかをチェックする必要があります。

 

 

給付基礎日額を計算するための賃金の総支給額を算出するにあたり,

現実に支払われた賃金だけではなく,実際には支払われていなくても,

労働基準法の適用上支払われるべき賃金債権も含まれるのです。

 

 

そのため,会社が残業代を支払っていなくても,

給付基礎日額の計算においては,

未払残業代を含めて給付基礎日額を計算するのです。

 

 

労災認定されたけれども,直前3ヶ月間に長時間労働をしていたのに,

未払残業代が給付基礎日額に反映されていない場合には,

審査請求などの不服申立をして,是正を求める必要があります。

 

 

3 給付基礎日額の計算に固定残業代も含まれるのか

 

 

さて,この給付基礎日額の計算にあたり,

固定残業代を賃金の総支給額に算入してもよいのかについて,

労働者に有利な判決がありました。

 

 

国・茂原労基署長(株式会社まつり)事件の

東京地裁平成31年4月26日判決です(労働判例1207号56頁)。

 

 

この事件では,過労死した飲食店の店長のご遺族が労災申請して,

労災認定されたのですが,遺族補償給付の給付基礎日額の計算にあたり,

超過勤務手当10万円,深夜業手当5000円の固定残業代が

算入されていなかったため,ご遺族が審査請求したのですが,

認められなかったため,取消訴訟を提起しました。

 

 

固定残業代が有効になるためには,

固定残業代が時間外労働の対価として支払われている必要があります。

 

 

 

この対価性の要件を検討するには,

労働契約書の記載内容のほか,

会社による当該手当の説明の内容,

労働者の実際の労働時間の勤務状況を考慮して決めます。

 

 

この事件では,労働契約が口頭でなされており,

契約書が作成されていないこと,

会社が労働契約締結時に固定残業代と割増賃金の

関係について説明していないことから,

固定残業代が時間外労働の対価として

支払われているものとはされていないと判断されました。

 

 

その結果,給付基礎日額の計算において,

固定残業代を賃金の総支給額に算入すべきこととなり,

遺族補償給付の金額が増額されました。

 

 

過労死事件でも,固定残業代を無効として争うことで,

給付基礎日額が増えて,ご遺族に支給される

遺族補償給付の金額が増える可能性があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。