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勤務時間中のパソコンの私的利用と懲戒処分

1 パソコンの私的利用による懲戒処分が争われた裁判例

 

 

昨日のブログでは,労働者が仕事中に

私用メールやパソコンを私的利用したことを原因として

懲戒処分される場合について,記載しました。

 

 

 

本日は,具体的に,私用メールやパソコンを私的利用したことの

懲戒処分が争われた裁判例を検討したいと思います。

 

 

本日検討するのは,K工業技術専門学校(私用メール)事件の

福岡高裁平成17年9月14日判決(労働判例903号68頁)です。

 

 

この事件は,専門学校の教員が勤務先から貸与された

業務用パソコンを使用してインターネット上の出会い系サイトに

投稿して多数回メールを送受信したことを理由に

行われた懲戒解雇の効力が争われました。

 

 

原告労働者は,貸与されていたパソコンと

学校のメールアドレスを使って,

5年間で合計約2900通のメールの送受信を行い,

そのうちの6割が交際相手や出会い系サイトで知り合った女性との

私用メールであり,昼休みを除く勤務時間内に送受信されていました。

 

 

出会い系サイトに登録した原告労働者のメールアドレスが

閲覧可能になっいたようで,この件が発覚したようです。

 

 

被告の学校は,原告労働者を,職務専念義務違反や

信用失墜行為の禁止違反の懲戒事由に該当するとして,

懲戒解雇したのでした。

 

 

2 一審判決

 

 

この事件では,一審と控訴審で結論がわかれました。

 

 

一審判決では,メールの内容が卑猥なものではない,

授業や学生の就職関係の事務を特におろそかにしたことはない,

メールの送受信自体によって業務自体に著しい支障を生じさせていない

として,職務専念義務違反は重大なものではないと判断されました。

 

 

また,一審判決では,原告労働者の投稿が

被告学校の名誉や信用を毀損して社会的評価を低下させたとはいいがたく,

パソコンの使用について被告学校が適宜対処しなかった

落ち度があるとして,懲戒解雇は無効としました。

 

 

3 控訴審判決

 

 

これに対して,控訴審判決では,結論が逆転しました。

 

 

控訴審判決は,連日のように複数回メールを送受信して,

その多くが勤務時間内に行われており,

その分の時間と労力を本来の職務に充てれば,

より一層の成果が得られたはずであり,

職務専念義務違反の程度は相当に重いと判断されました。

 

 

また,SM相手を募集するなど露骨に性的関係を求める内容の投稿で

メールアドレスを第三者に閲覧可能にした行為は,

著しく不謹慎かつ軽率で,被告学校の名誉や信用を

傷つけるものであるとして,懲戒解雇は有効と判断されました。

 

 

 

勤務先が教育機関であったこと,

メールの内容がSM相手の募集で出会い系サイトが利用されていたこと,

第三者に閲覧可能なメールアドレスが

被告学校のものであるとわかることが,

情状を重くしたと考えられます。

 

 

事実は同じであっても,事実の評価のしかたで,

結論が全く異なったので,懲戒処分や解雇の事件は,

結論がどっちに転ぶのか見立てが難しいです。

 

 

私用メールやパソコンを私的利用したことの懲戒処分を検討する際に,

参考になる裁判例なので,紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者は仕事中に私用メールやパソコンの私的利用をしてはいけないのか

1 私用メールやパソコンの私的利用の問題

 

 

私が現在担当している労働事件の裁判で,

労働者が仕事中に会社のメールを私的に利用したことが争点となりました。

 

 

実務では,労働者が仕事中に私用メールや

パソコンの私的利用をしたことを理由に,

懲戒処分をされたり,解雇されたりして,

問題になることがあるのです。

 

 

 

この争点について,私用メールや会社のパソコンの私的利用について

争われた過去の裁判例や文献を調べましたので,アウトプットします。

 

 

2 職務専念義務

 

 

まず,労働者は,会社の指揮命令に服しつつ,

職務を誠実に遂行すべき義務を負い,

労働時間中は職務に専念し,

他の私的活動を差し控える義務を負っています。

 

 

これを職務専念義務といいます。

 

 

私用メールや会社のパソコンの私的利用は,

業務時間内に行えば,職務専念義務違反に問われるリスクがあります。

 

 

もっとも,労働者も社会人である以上,

日常の社会生活を営む上で必要な範囲内で行う

私用メールやパソコンの私的利用まで

職務専念義務違反と考えるべきではありません。

 

 

職場における私語や喫煙コーナーでの喫煙など,

他の私的な行為についても社会通念上相当な範囲で

黙認されていることが多いこととの均衡を図る必要があるからです。

 

 

私用メールは,会社における私語と変わらない面があり,

私語を禁止する職場では,息苦しくて働きにくいからです。

 

 

そのため,私用メールやパソコンの私的利用について,

社会通念上相当な範囲内の軽微な頻度・回数にとどまり,

業務に支障を及ぼさず,会社の経済的負担も軽微なものにとどまる場合は,

職務専念義務は否定されるべきです。

 

 

具体的には,私用メールやパソコンの私的利用について,

その閲覧の対象,時間,頻度,

私的利用を禁止する規程の有無や周知の状況,

上司や同僚の私的利用の有無,

被処分者に対する事前の注意・指導や処分歴の有無などに照らして,

社会通念上相当な範囲にとどまる限り,

職務専念義務に違反しないか,

反するとしてもあまり重くみることはできません。

 

 

3 企業秩序遵守義務

 

 

次に,会社は,企業の存立・運営に不可欠な企業秩序を定立して

維持する当然の権限を有し,労働者は,企業秩序遵守義務を負っています。

 

 

要するに,労働者は,会社のルールを守り,

企業秩序が維持されるように協力しなければならないのです。

 

 

私用メールやパソコンの私的利用については,

会社の設備であるパソコン端末や通信回線を目的以外の用途で使用し,

会社に通信料金や電気料金などの負担を生じさせるので,

企業設備の私的利用の禁止という

企業秩序遵守義務に違反するリスクがあります。

 

 

 

もっとも,企業秩序遵守義務違反を問う場合には,

あらかじめ,就業規則などで,

会社のパソコンについて私的利用を禁止することを明示し,

普段から禁止措置を周知徹底しておく必要があります。

 

 

また,会社の経済的負担が軽微で,

パソコンの私的利用によるウイルス感染などの

実害が生じていない場合には,

企業秩序遵守義務違反に問えるかが微妙になります。

 

 

私用メールやパソコンの私的利用について,

その閲覧対象,時間,頻度などに照らし,

会社の経済的負担の程度や企業秩序に

どのような悪影響を及ぼしたのかなどが検討されることになります。

 

 

このように,私用メールやパソコンの私的利用については,

ケースバイケースで事実を確認して,

懲戒処分や解雇にふさわしいものかを厳密に検討していきます。

 

 

もし,私用メールやパソコンの私的利用を理由に,

懲戒や解雇された場合には,争うことができないか,

弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

黒川前検事長と一緒に賭け麻雀をした朝日新聞の社員への1ヶ月の停職の懲戒処分は妥当なのか

1 朝日新聞の管理職社員の懲戒処分

 

 

先日のブログで東京高検の黒川弘務前検事長の賭け麻雀問題で,

黒川前検事長の立場の重要性にかんがみれば,訓告は軽すぎであり,

懲戒処分が相当な事案であると記載しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202005269313.html

 

 

すると,今度は,黒川前検事長と一緒に賭け麻雀をしていた

朝日新聞の管理職の社員が停職1ヶ月の懲戒処分となりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5Y4WBLN5YULZU00M.html

 

 

黒川前検事長の処分が軽すぎたためか,

えらい重い処分だなと最初は感じたのですが,

よく分析すると妥当な処分にも思えてきました。

 

 

本日は,この朝日新聞の管理職社員の

停職1ヶ月の懲戒処分について検討します。

 

 

 

2 常習賭博の場合の懲戒処分とは

 

 

先日のブログでも記載しましたが,

人事院が懲戒処分についての指針を公表しておりまして,

この指針は,国家公務員に対してだけではなく,

民間企業の労働者にも十分あてはまるもので,参考になります。

 

 

この指針では,「常習として賭博をした職員は,停職とする

と規定されています。

 

 

おそらく,ここで言う常習とは,

刑法186条の常習賭博罪における常習ほど厳格に解釈するのではなく,

賭博を反復継続したり,多数回の賭博を行った場合に,

常習として賭博をしたに該当すると考えます。

 

 

朝日新聞の報道によりますと,この管理職の社員は,

過去3年間に,黒川前検事長を含む同じメンバーで月に複数回,

賭け麻雀をしていたようで,緊急事態宣言下で外出自粛が叫ばれていた

今年の4月と5月には合計4回の賭け麻雀をしたようです。

 

 

そのため,賭け麻雀を反復継続していたとして,

常習として賭博をしたに該当するので,

停職の懲戒処分は妥当ということになります。

 

 

3 停職とは

 

 

次に,停職について説明します。

 

 

停職とは,労働契約を存続させつつ労働者の労働義務の履行を停止させ,

停職期間中の賃金を支払わないという懲戒処分です。

 

 

停職は,一定期間賃金不支給を伴いながら就労を禁止するという

重い処分なので,停職期間が長過ぎると,

処分として重すぎるとして,無効になる可能性があります。

 

 

そのため,停職の期間については,

7日以内から30日以内で決められることが多いようです。

 

 

そう考えると,朝日新聞の管理職に対する1ヶ月の停職は,

やや重いようにも考えられます。

 

 

もっとも,今回のケースでは,国会で検察官の定年延長が

問題となっていた張本人の黒川前検事長と賭け麻雀をしていたので,

報道の独立性や公正性に疑念を抱かせた点が

懲戒処分を重くする方向にはたらきました。

 

 

 

すなわち,マスコミには,取材で得た情報を国民に知らして,

国家権力が情報を操作したり,

不正をしないように監視する役割があります。

 

 

それにもかかわらず,マスコミの方が権力者と

賭け麻雀をしていたのでは,権力者と仲良くなりすぎて情がうつって,

権力者にとってマイナスとなるものの,

国民には広く知らしめるべき情報を

報道しなくなるリスクが生じるのです。

 

 

そのため,マスコミは,国家権力を監視する役割を果たすためにも,

国家権力と癒着してはならず,一定の距離を保つ必要があるのです。

 

 

よって,国家権力と癒着しているとみられることは

新聞社にとっては非常にマイナスなので,今回の賭け麻雀では,

停職期間が長くなってもやむを得ないと考えられます。

 

 

また,賭け麻雀をしていた人物が管理職という,

ある程度職責が重い人物であったことも

懲戒処分を重くする方向にはたらいたのでしょう。

 

 

このように分析すると,最初は重いと思ったのですが,

今回の朝日新聞の管理職に対する

1ヶ月の停職の懲戒処分はおおむね妥当なのだと考えるようになりました。

 

 

この朝日新聞の管理職の証言が正しいのであれば,

黒川前検事長は常習として賭博をしていたことになるので,

停職の懲戒処分が妥当することになります。

 

 

やはり,黒川前検事長には,訓告では軽すぎであり,

懲戒処分を課すべきであったと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

黒川検事長の訓告から国家公務員の懲戒処分を考える

1 黒川検事長の賭け麻雀問題

 

 

東京高検の黒川弘務検事長が,緊急事態宣言で

自粛要請されていた時期に,新聞記者と

賭け麻雀をしていたことについて,訓告となりました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN5V00CCN5TUTIL03N.html

 

 

検察官の定年延長問題で様々な批判があり,

さらに検察のトップクラスが賭け麻雀をしていたとして,

大々的な問題に発展しました。

 

 

 

それにもかかわらず,黒川検事長は,

懲戒処分を受けずに訓告となり,

多くの国民はこの結末に納得していないと思います。

 

 

そこで,本日は,黒川検事長の賭け麻雀問題から,

国家公務員の懲戒処分について考えてみたいと思います。

 

 

2 国家公務員の懲戒処分の基準

 

 

まず,懲戒処分とは,使用者が労働者の企業秩序違反行為

に対して科す制裁罰という性質をもつ不利益措置です。

 

 

懲戒処分には,戒告・譴責,減給,出勤停止,降格,

諭旨解雇,懲戒解雇という種類があります。

 

 

懲戒処分は,労働者の不祥事を未然に防止する観点から,

どのような不祥事には,どのような懲戒処分が科されるのかが

明確に定められ,公平に適用される必要があります。

 

 

そこで,国家公務員の懲戒処分については,人事院が

懲戒処分の指針について」という文書を公表しており,

この指針に,懲戒処分をするにあたっての考慮要素や,

どのような不祥事には,どのくらいの懲戒処分が相当であるかが

明確に記載されています。

 

 

https://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.html

 

 

この指針は,地方公務員や民間企業の労働者に対する懲戒処分にも

十分あてはまるものとなっています。

 

 

この指針では,懲戒処分を決定するにあたって考慮すべきこととして,

次の5つの要素があげられています。

 

 

①非違行為の動機,態様及び結果はどのようなものであったか

 

 

②故意又は過失の度合いはどの程度てあったか

 

 

③非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか,

その職責は非違行為との関係でどのように評価すべきか

 

 

④他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか

 

 

⑤過去に非違行為を行っているか

 

 

黒川検事長にあてはまると,

③検察組織のナンバー2という重大な職責を担っていた方が,

外出自粛中に賭け麻雀という不要不急なことをしたことで,

④検察組織と社会に与えた影響はとてつもなく大きかったといえます。

 

 

このことは,この指針で,「非違行為を行った職員が

管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高いとき」には,

懲戒処分を重くすると規定されていることからも,

黒川検事長の不祥事は懲戒処分を重くする方向にはたらきます。

 

 

3 賭博とは

 

 

次に,この指針では,「公務外非行関係」として「(9)賭博」の中に

「ア 賭博をした職員は,減給又は戒告とする」と,

明確に規定されています。

 

 

賭博とは,偶然の勝敗により財物や財産上の利益の得喪を争う行為

をいい,刑法185条で50万円以下の罰金又は科料に処せられます。

 

 

賭け麻雀は,刑法185条の賭博罪に該当するのです。

 

 

 

そのため,プライベートな活動とはいえ,

国家公務員が賭博罪という犯罪行為をすれば,

戒告や減給という懲戒処分が科されるリスクがあるのです。

 

 

被疑者を刑事裁判にかけて,有罪にする起訴権限を独占している

検察のナンバー2が,犯罪行為をしていたことになるので,

不祥事の規模としては大きいと考えます。

 

 

賭け麻雀なので,一般的に行われていることで

処罰されている人は少ないこと,

過去の業績が素晴らしかったことを考慮しても,

黒川検事長の場合,最低でも,人事院の指針にあるとおり,

戒告や減給という懲戒処分がくだされてしかるべきでしょう。

 

 

それにもかかわらず,懲戒処分ではない,訓告となりました。

 

 

訓告は,今後このようなことがないように注意することであり,

対象者には特に不利益は発生しません。

 

 

通常であれば,最低でも,戒告や減給の懲戒処分がくだされるケースで,

黒川検事長が特別に訓告で終わるのでは,

国家公務員の懲戒処分のバランスが保てませんし,

このように軽い処分で終わらせるのには

何か裏があるのではないかと疑われます。

 

 

定年延長から始まった黒川検事長の問題は,

最後まで迷走を深める結果となり,残念でなりません。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

マスク不着用で会議に出席したら懲戒処分をされてしまうのか

1 マスク不着用で会議に出席したら4日間の出勤停止

 

 

報道によりますと,マスクを着用せずに校内の会議に出席したことを

主たる理由として,大阪電子専門学校の嘱託職員が,

専門学校を運営する学校法人から,

4日間の出勤停止の懲戒処分を受けたようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN585DSGN58PTIL00C.html

 

 

この嘱託職員は,4月7日にマスクを着用せずに会議に出席し,

会議終了後に学校法人の理事長からマスクの未着用を

とがめられたようです。

 

 

もっとも,会議のあった日は,休校中で,

学生は,専門学校にほとんどきていなかったようです。

 

 

専門学校側は,懲戒処分の理由として,

「学生の健康と安全を守る立場の教職員として,

感染リスクを軽視している」ことを挙げているようです。

 

 

新型コロナウイルスに関連する労働問題は色々ありますが,

マスクを着用せずに会議に参加したことを理由とする懲戒処分は,

珍しく,さすがに行き過ぎです。

 

 

 

本日は,懲戒処分について解説します。

 

 

2 懲戒該当事由があるか

 

 

まず,懲戒処分について,労働契約法15条には,

「当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして,

客観的に合理的な理由を欠き,

社会通念上相当であると認められない場合は」,

懲戒処分は無効となると規定されています。

 

 

第1の要件は,労働者の問題行為が就業規則所定の

懲戒事由に該当し,懲戒処分に「客観的に合理的な理由」

があることが認められることです。

 

 

懲戒該当事由があるかという問題です。

 

 

通常,就業規則には,どのような問題行為があれば,

どのような懲戒処分がされることが記載されており,

就業規則に記載されている懲戒事由に該当しなければ,

会社は,労働者に対して,懲戒処分をできません。

 

 

また,形式的には,就業規則の懲戒事由に該当する行為が

あったとしても,実質的に秩序を乱すおそれのないような行為であれば,

そもそも懲戒事由に該当しないと判断されることがあります。

 

 

大阪電子専門学校の事件にあてはめると,さすがに,就業規則で,

マスク不着用で会議に出席することを懲戒事由にしていない

と思いますので,おそらく,マスク不着用で,

校内で新型コロナウイルスを感染させる危険を及ぼして,

学校秩序を乱したことなどを懲戒事由にしたのだと考えられます。

 

 

しかし,マスク不着用だった嘱託職員が,

新型コロナウイルスに感染していなければ,

マスク不着用でも,他人に感染させることはないですし,

そもそも,休校中で学生は校内にいないのであれば,

感染リスクも極めて限定的です。

 

 

そのため,学校秩序を乱したことにはならず,

懲戒該当事由がないと考えられます。

 

 

3 懲戒処分は重すぎないか

 

 

第2の要件として,懲戒処分は,

労働者の行為の性質及び態様その他の事情を考慮して,

社会通念上相当でなければなりません。

 

 

労働者の行為の性質とは,懲戒事由となった

労働者の行為そのものの内容をいいます。

 

 

労働者の態様とは,問題行為がなされた状況や悪質さの程度をいいます。

 

 

その他の事情には,

労働者の行為の結果(企業秩序に対してどのような影響があったのか),

労働者の情状(過去の処分・非違行為歴,反省の有無・態様),

使用者側の対応(他の労働者の処分との均衡,行為から処分までの期間)

などが含まれます。

 

 

ようするに,社会通念上相当か否かについては,

労働者の問題行為の内容・悪質性の程度からして,

懲戒処分が重すぎないかという,

問題行為と懲戒処分とのバランスがとれているかを判断します。

 

 

 

大阪電子専門学校の事件にあてはめると,

この嘱託職員がマスク不着用で会議に参加した4月7日時点では,

薬局などにマスクが売られておらず,

一般の方がマスクを購入するのは困難な状況であり,

嘱託職員がマスク不着用で会議に参加することに

やむを得ない事情がありました。

 

 

さらに前述のとおり,休校中で学生は校内におらず,

感染リスクも限定されていたことから,

マスク不着用で会議に参加することの悪質性の程度は

限りなく低いと言えます。

 

 

そのため,新型コロナウイルスを感染させる危険性が

高度にあるとはいえないのに,

マスク不着用で会議に出席したことを理由に,

4日間の出勤停止の懲戒処分とすることは重すぎます。

 

 

懲戒処分をするのではなく,厳重注意をすれば,事足りたはずです。

 

 

以上より,大阪電子専門学校における懲戒処分は無効になると考えます。

 

 

このような懲戒処分が二度となされないことを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者が新型コロナウイルスに感染して会社が休業した場合に懲戒処分されるのか

1 正確な知識と情報があれば不安は解消できる

 

 

4月18日土曜日に,

「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも相談会」

という,電話相談が開催され,

私は石川県で90分の電話相談の対応をしました。

 

 

 

90分の時間帯で合計7件の電話相談があり,

相談が終わるとすぐに次の相談の電話がかかってくるという感じで,

大変多くの相談がありました。

 

 

もっとも,電話相談の内容としては,

まだ切迫した状況ではないけれども,このまま,

新型コロナウイルスの感染拡大が長期化して,

もしものことがあったらと考えたら不安なので電話しました

というものが多かったです。

 

 

これらの相談から分かったことは,正確な知識や情報がなく,

漠然と不安に思っている方が多く,正確な知識や情報を取得すれば,

不安は解消されるということです。

 

 

そのため,私は,新型コロナウイルスに関連する

労働問題の情報を発信して,労働問題で不安に感じている方々の

不安を解消していきたいと考えます。

 

 

2 就業規則に懲戒処分の根拠規定はあるか

 

 

ということで,本日は,先日の電話相談であった,

もし自分が新型コロナウイルスに感染してしまって,

会社が休業することになってしまったら,会社から,

懲戒処分を受けるのか,という相談に対する回答をします。

 

 

結論は,そのような懲戒処分は無効になると考えます。

 

 

同居の家族が新型コロナウイルスに感染してしまい,

その結果,同居していた労働者も一緒に感染してしまい,

労働者が働いていた会社が2週間休業することになった

ケースで考えてみましょう。

 

 

まず,会社が労働者に対して,懲戒処分をくだすためには,

就業規則に懲戒処分の根拠規定が存在する必要があります。

 

 

そのため,自分の会社の就業規則に,

感染症に罹患して,会社が休業したときに

懲戒処分されるという根拠規定があるのかを確認しましょう。

 

 

労働判例別冊の「改訂5版就業規則ハンドブック」には,

「故意,過失,怠慢もしくは監督不行届によって災害,傷害,

その他の事故を発生させ,または会社の設備,器具を破損したとき」には,

減給または出勤停止とする規定が記載されています。

 

 

また,「故意または重大なる過失によって会社の設備,器物

その他の財産を破損または滅失し,会社に甚大な損害を与えた場合」には,

懲戒解雇とする規定が記載されています。

 

 

そもそも,このような就業規則の条項が存在しない会社は,

労働者が新型コロナウイルスに感染して,

会社が休業することになっても,労働者に対して,

懲戒処分をすることができません。

 

 

3 懲戒事由があるのか

 

 

上記のような就業規則の条項があれば,

次に,これらの規定に該当するかが問題になります。

 

 

例えば,新型コロナウイルスに感染した労働者が,

外出を自粛していて,新型コロナウイルスに感染しないように

マスクを着用して,消毒液で手洗いをして,対策をしていたのに,

たまたま家族が感染して濃厚接触して,

新型コロナウイルスに感染したのであれば,

上記の条項の過失,重大な過失,怠慢がないことになります。

 

 

 

もっとも,外出自粛が要請されている現状において,

労働者が風俗店にいき,濃厚接触したために,

新型コロナウイルスに感染した場合には,

上記の条項の重大な過失に該当する可能性はでてきます。

 

 

外出自粛要請の中,風俗店にいったようなケース以外であれば,

上記の条項に該当しないと考えます。

 

 

そのため,労働者が新型コロナウイルスに感染して,

会社が休業になったことを理由とする懲戒処分は,

会社の就業規則に懲戒処分の根拠規定が存在しない,または,

労働者には懲戒事由がないとして,無効になると考えます。

 

 

ですので,労働者が新型コロナウイルスに感染して,

会社が休業になっても,懲戒処分されるリスクは極めて低いので,

この点については,ご安心ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

若年性認知症の影響による万引についての懲戒免職処分が取り消された事例

1 犯罪行為と懲戒処分

 

 

人は時として過ちをおかしてしまうことがあります。

 

 

刑事事件の弁護人をしていると,貧困が原因で万引をしたり,

精神的な病気から犯罪をしてしまったり,

という事件をよく担当することがあります。

 

 

罪を犯した人が人生のやり直しのきっかけを与えることも

弁護士の大切な仕事だと考えています。

 

 

犯罪をしたことが勤務先に発覚すると,

懲戒処分となるリスクが高まります。

 

 

 

本日は,犯罪行為と懲戒処分について,

検討された裁判例を紹介します。

 

 

海上自衛隊厚木航空基地自衛官事件の

東京地裁平成30年10月25日判決です(労働判例1201号84頁)。

 

 

この事件では,自衛官がコンビニで栄養ドリンクを万引したとして,

懲戒免職処分を受けましたが,この懲戒免職処分の

取り消しを求めて訴訟を提起しました。

 

 

2 懲戒処分の要件

 

 

懲戒処分が有効となるためには,

①懲戒処分の根拠規定の存在,

②懲戒事由への該当性,

③懲戒処分の相当性

の3つの要件が満たされなければなりません。

 

 

本件事件では,②と③の要件が争点となりました。

 

 

まず,原告の自衛官がどのような万引をしたのかが争いとなりました。

 

 

原告は,万引をして,コンビニの店長に捕まったときに,

許してもらいたくて,店長から言われるがままの事実を認めてしまいました。

 

 

しかし,防犯カメラの映像といった客観的な証拠からは,

原告が2日間にわたり,栄養ドリンクを各1本ずつ

万引したことしか認定できませんでした。

 

 

民事事件においても,懲戒処分の該当行為については,

客観的な証拠の裏付けをもとに厳格に認定される傾向があります。

 

 

3 懲戒処分の相当性

 

 

次に,コンビニで栄養ドリンクを2回万引したことで,

懲戒免職処分ができるのかが争われました。

 

 

 

この点,公務員に対する懲戒処分について,

懲戒事由該当行為の原因,動機,性質,態様,結果,影響の他,

公務員の懲戒事由該当行為の前後における態度,

懲戒処分などの処分歴,選択する処分が他の公務員に与える影響など,

諸般の事情を考慮して,懲戒権者の裁量の逸脱・濫用がないかを検討します。

 

 

本件事件では,以下の事情が考慮されました。

 

 

・2回にわたり2本の栄養ドリンクを万引したものであり,

被害の程度は軽微であること。

 

 

・原告は,被害店舗に謝罪して被害弁書をして示談が成立していること。

 

 

・原告は,過去に停職1日の懲戒処分を受けているものの,

14年前のことであり,本件とは事案が異なること。

 

 

・原告は,若年性認知症によって認知機能が低下していて,

これが犯罪行為に影響を与えた可能性があること。

 

 

以上の事実を総合考慮すれば,懲戒免職処分は重すぎ

停職処分が相当であるので,懲戒免職処分が取り消されたのです。

 

 

最近では,万引をしたのに記憶がないと主張する方がおり,

若年性認知症が影響しているのではないかと疑うケースがあるので,

若年性認知症のことが,労働者に有利に判断されたことが評価できます。

 

 

懲戒処分を争うときには,③懲戒処分の相当性で

労働者が勝つことがあるので,

懲戒処分が重すぎないかを検討することが重要です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

自宅待機中の労働者は賃金を請求できるのか

1 懲戒処分の前の自宅待機命令

 

 

昨日は,神戸市の東須磨小学校の教員間のいじめ問題について,

加害者の教員の給与を停止する条例改正について検討しました。

 

 

報道によりますと,加害者の教員は,事実上の謹慎をしているようです。

 

 

これだけの大問題をおこしたので,

懲戒処分は避けられないのですが,通常,

懲戒処分がくだされるのには時間がかかります。

 

 

懲戒処分を受ける労働者が,いつ,どこで,

どのような問題行動をしたのか,

当該労働者は,どのような言い分を話しているのか,

当該労働者に対して,どの程度の重さの懲戒処分が妥当なのか,

といったことを慎重に検討する必要がありますので,

調査にどうしても時間がかかってしまいます。

 

 

懲戒処分のための調査をしている期間,

問題行動をした労働者が今までと同じように職場で働いていると,

職場の雰囲気が悪くなり,

他の労働者のモチベーションがさがるおそれがあります。

 

 

そこで,懲戒処分がくだされるまでの間,労働者に対して,

自宅待機(自宅謹慎ということもあります)が命令されることがあります。

 

 

 

2 自宅待機期間中の賃金請求は可能か

 

 

この自宅待機の期間,労働者は,

賃金を請求することができるのでしょうか。

 

 

この自宅待機命令とは,就業時間中に,

自宅やその他会社から連絡可能な場所に待機して,

会社から出勤を命じられれば,

ただちにこれに応じることを労働者に命じるものです。

 

 

会社は,労働契約に基づく指揮監督として,

労働者に対して,労務提供の待機を命じるのであり,

懲戒処分としての出勤停止とは異なります。

 

 

自宅待機命令は,自宅待機をすることで,

労働者の提供すべき労務をはたしたことにする命令ですので,

労働者は,これに従って自宅待機をすれば,

会社との労働契約に基づく,労務提供義務を尽くしたことになります。

 

 

そのため,労働者が自宅待機という労務を提供しているので,

会社は,自宅待機期間中の賃金を

支払わなければならないことになるのが原則です。

 

 

 

例外としては,当該労働者を働かせないことについて,

不正行為の再発,証拠隠滅のおそれなどの

緊急かつ合理的な理由が存在するか,または,

自宅待機を実質的な出勤停止処分に転化させる

懲戒規定上の根拠が存在する場合に,会社は,

自宅待機期間中の賃金支払義務を免れることがありえます。

 

 

なお,自宅待機命令は,就業規則に根拠規定がなくても,

業務命令として発令することは可能ですが,

業務上の必要性がなかったり,不当に長期間にわたる場合には,

違法になることがあります。

 

 

そのため,東須磨小学校の事件において,

加害者の教員に年次有給休暇が残っておらず,

病気休暇が取得できなかったとしても,

自宅待機を命令されたのであれば,加害者の教員は,

自宅待機の期間中,賃金の請求をすることが可能となります。

 

 

これだけ大問題をおこした加害者の教員に対して,

働いていないのに給与が支給されるのはおかしいと,

批判されるのはやむをえないことだと思いますが,

条例を改正してまで給与を停止するよりも,

早々に調査をすすめて,

早急に然るべき懲戒処分を科すべきだと考えます。

 

 

このようなことが前例となり,

懲戒処分を受ける前の労働者の賃金請求が制限されることが

拡大されることを危惧しているからです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働者の私生活における犯罪行為と懲戒処分

私は,労働事件を得意として,労働事件を多く取り扱っていますが,

労働事件以外の事件も当然に取り扱っています。

 

 

例えば,労働事件以外の事件ですと,

当番弁護士や被疑者国選が順番で回ってきて,

逮捕や勾留された被疑者の刑事弁護をする

刑事事件も担当しています。

 

 

労働者が勤務時間外に会社とは関係のない犯罪をした場合,

労働者は,勤務先から懲戒解雇をされるのではないかと不安になります。

 

 

 

本日は,労働者の私生活における犯罪行為と

懲戒処分について解説します。

 

 

まず,会社は,経営目的を達成するために,

労働者に効率的に働いてもらう必要があり,

職場のルールを定めます。

 

 

この職場のルールに違反して,

労働者が不祥事を起こした場合に,会社は,

労働者に対して制裁を科すことができるのです。

 

 

このように,経営目的を遂行する組織体としての会社が

必要として実施する,労働者に対する統制の全般を企業秩序といい,

企業秩序を維持するための会社のルールに違反したときに

科される制裁が懲戒処分なのです。

 

 

 

次に,職場内で労働者が同僚に暴力を奮ったり,

会社の金銭を横領したような犯罪の場合,会社は,

企業秩序を維持するために,当該労働者に対して

懲戒処分を科すことができます。

 

 

他方,労働者が職場外の私生活において犯罪をした場合,

企業秩序とは無関係であるとして,

企業秩序を維持するための懲戒処分を

科すことができないように考えられます。

 

 

しかし,労働者の職場外における仕事とは無関係の犯罪行為であっても,

会社の企業秩序に直接の関連を有する場合や,

会社の社会的評価の毀損をもたらす場合には,

企業秩序維持のために,懲戒処分を科すことができるのです。

 

 

そして,労働者が職場外の私生活において犯罪をした場合に,

懲戒処分を科すことができるかについては,

当該犯罪行為の性質,情状,会社の事業の種類・態様・規模,

会社の経営方針,労働者の会社における地位や役職

などの事情を総合考慮して判断されます。

 

 

例えば,労働者が深夜に他人の家に侵入して,

住居侵入罪で罰金2,500円を科せられたことについて,

「不正不義の行為を犯し,会社の体面を著しく汚した者」

という懲戒解雇事由にあたるかが争われた,

横浜ゴム事件の最高裁昭和45年7月28日判決

(判例タイムズ252号163頁)があります。

 

 

 

この事件では,罰金2,500円という軽微な刑罰ですんでいること,

労働者の地位が工員であって指導的なものではなかったことから,

会社とは関係のない私生活の中で行なわれた

本件犯罪行為を理由とする懲戒解雇は無効となりました。

 

 

刑罰が重かったり,管理職などの地位にあった場合には,

私生活における犯罪行為であっても,

懲戒解雇が有効になる可能性はあります。

 

 

もっとも,私生活で犯罪行為をしたことを理由とする懲戒解雇ではなく,

警察に捕まって無断欠勤が続いたことを理由に

懲戒解雇されることがあります。

 

 

犯罪をして警察に逮捕されていまうと,逮捕段階で最大3日間,

勾留されてしまうと,10日間,

さらに勾留が延長されると,さらに最大10日間,

警察署の留置施設に身体を拘束されてしまいます。

 

 

ようするに,最大23日間も身体を拘束されてしまうのです。

 

 

23日間も無断欠勤が続けば,勤怠不良ということで,

懲戒解雇されてしまう恐れがあるのです。

 

 

正直,この懲戒解雇を争うのは難しいと思います。

 

 

逮捕勾留されても,懲戒解雇はせずに,

軽微な懲戒処分とした上で,雇用が維持されたり,

懲戒解雇をしない代わりに,自己都合退職を促さたりと,

会社の態様は様々です。

 

 

刑事弁護人の立場からは,犯罪行為をした労働者の更生のために,

会社にはなるべく恩情をかけてもらいたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

懲戒処分の会社外への通知と名誉毀損

昨日は,不祥事を起こした労働者に対する

懲戒処分を会社内で公表することと名誉毀損について解説しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201908208468.html

 

 

本日は,不祥事を起こした労働者に対する懲戒処分を

会社外に通知することと名誉毀損について解説します。

 

 

懲戒処分を受けたという事実は,当該労働者にとって,

社会的評価を低下させることであり,

会社外に通知する場合には,

会社内での公表における他の従業員を戒めて,

同様の不祥事を防止するという抑止効果には

直接結びつかないことから,会社は,

慎重に対応する必要があります。

 

 

 

もっとも,当該労働者の不祥事によって

取引先に迷惑をかけた場合や,

懲戒処分の後に取引先に働きかけて

会社に不利益を与えているような場合には,

当該労働者を懲戒処分したことを

取引先に通知する必要があると考えられます。

 

 

そのため,どのような場合に,どのような態様で

会社外に通知すれば名誉毀損とならないのかが問題となるわけです。

 

 

懲戒処分の会社外への通知と名誉毀損について判断した,

日本非破壊検査事件の東京地裁昭和55年4月28日判決

(労働判例341号61頁)を紹介します。

 

 

この事件では,原告労働者が会社のお金を着服したという

横領の被疑事実に基づき懲戒解雇されたのですが,

懲戒解雇後に,原告労働者が,取引先や金融機関に対して,

被告会社がつぶれることを言いふらしていたことから,

被告会社は,取引先や金融機関に対して,

原告労働者を懲戒解雇したので,

被告会社と関係がないことをはがきで通知しました。

 

 

このはがきでの通知が名誉毀損に該当するかが争点となりましたが,

東京地裁は,原告労働者が被告会社を誹謗中傷する言動に

対応する必要があったこと,はがきの内容が真実に合致していること,

表現が不穏当ではないこと,

葉書の送付先が取引先以外の第三者に発送されていないこと

を総合考慮して,名誉毀損に該当しないと判断しました。

 

 

他方,懲戒処分の会社外への通知が名誉毀損に該当すると

判断した東京貨物社事件の東京地裁平成12年11月10日判決

(労働判例807号69頁)があります。

 

 

この事件では,原告労働者が被告会社と競合する事業を営み,

受注の横流しをしたことを理由に,自宅待機を経て解雇されたところ,

被告会社がその事実を取引先に文書で通知しました。

 

 

東京地裁は,取引先に自宅待機や解雇の事実を通知すれば,

取引先は,原告労働者がなにか責められる事情があって

解雇されたと考え,原告労働者に対する信用が失われて,

被告会社やその取引先の業界で事業を行うことが

困難となる不利益がある一方,被告会社にとっては,

取引先に担当者が変更になった通知をする必要はあっても,

取引先に原告労働者を解雇したことを通知する必要性がないとして,

名誉毀損の成立を認めました。

 

 

 

2つの事件で結論が分かれたのは,

会社外に懲戒処分の事実を通知する必要性があったかという点です。

 

 

会社外に懲戒処分の事実を通知する必要性がないのにもかかわらず,

会社外に懲戒処分の事実を通知した場合,

名誉毀損になる可能性があります。

 

 

また,会社外に懲戒処分の事実を通知する必要性があっても,

通知の内容が当該労働者に配慮した

必要最小限のものでなければなりません。

 

 

会社外に懲戒処分の通知がなされた場合,

会社内での公表に比べて厳格に名誉毀損となるかが判断されるので,

会社外に懲戒処分の通知をされた労働者は,

名誉毀損に該当するかを検討してみてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。