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タクシー運転手の未払残業代請求事件で重要な判決がでました~国際自動車事件最高裁判決~

1 国際自動車事件最高裁判決

 

 

2020年3月30日,最高裁において

残業代請求事件で重要な判決がくだされました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3Z6STHN3ZUTIL014.html

 

 

国際自動車事件と呼ばれる,

タクシー運転手による未払残業代請求事件です。

 

 

 

国際自動車というタクシー会社では,

複雑な賃金体系が採用されていて,

弁護士の私が見ても,よくわからないものになっています。

 

 

複雑な賃金体系の中で,問題になったのは

タクシーの売上高に応じて支給される歩合給の計算において,

残業代相当額が歩合給の計算の過程で

差し引かれることになっていた点です。

 

 

基本給と残業代が支給されていても,別に支給される歩合給から,

残業代が引かれて,歩合給が減額されるのでは,

実質的には残業代がゼロと評価される余地があります。

 

 

そのため,通常の労働時間の賃金に当たる部分と

労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを

判別することができるのかが争点となりました。

 

 

2 労働基準法37条の趣旨から判別可能性を検討する

 

 

まず,最高裁は,労働基準法37条で会社に対して,

時間外労働について割増賃金を支払うことを義務付けている趣旨は,

会社に割増賃金を支払わせることによって,時間外労働を抑制して,

労働基準法に定められている労働時間規制を守らせて,

労働者への補償を行うことにあるとしました。

 

 

次に,会社が労働者に対して,労働基準法37条の定める

割増賃金を支払ったかを判断するためには,

労働契約における賃金の定めにつき,

通常の労働時間の賃金に当たる部分と

労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを

判別できることが必要になります。

 

 

そして,この判別できるというためには,

会社が割増賃金であると主張する手当が,

時間外労働に対する対価として支払われるものである必要があり,

労働契約書の記載内容のほかに,当該手当の名称や算定方法だけでなく,

労働基準法37条の趣旨をふまえて,

労働契約の定める賃金体系全体における当該手当の位置づけなど

にも留意して検討しなければなりません。

 

 

3 国際自動車事件では判別可能性なしと判断されました

 

 

国際自動車事件では,会社は,深夜手当,残業手当,公出手当を

労働基準法37条の割増賃金として支払ったと主張しました。

 

 

 

しかし,これらの手当が歩合給の計算にあたり控除されて,

歩合給が減額される仕組みは,タクシー運転手が

売上高を得るために生じる割増賃金をその経費とみた上で,

その全額をタクシー運転手に負担させているに等しく,

労働基準法37条の趣旨に沿わないと判断されました。

 

 

また,割増賃金が多くなり,歩合給がゼロになれば,

出来高払制の賃金部分について,割増賃金のみが支払われることになり,

出来高払制の賃金部分につき通常の労働時間の賃金にあたる部分はなく,

全てが割増賃金となるのですが,これは,

労働基準法37条の割増賃金の本質から逸脱しています。

 

 

そのため,国際自動車事件の賃金の仕組みは,実質において,

出来高払制のもとで歩合給として支払う賃金を,

時間外労働がある場合に,その一部につき名目のみを

割増賃金に置き換えて支払っているものとされました。

 

 

その結果,深夜手当,残業手当,公出手当には,その一部に

時間外労働に対する対価として支払われているものが

含まれているとしても,通常の労働時間の賃金の部分を

相当程度含んでおり,どの部分が時間外労働に対する対価にあたるかが

明らかではありません。

 

 

よって,通常の労働時間の賃金に当たる部分と

労働基準法37条の割増賃金に当たる部分とを判別できないと判断され,

深夜手当,残業手当,公出手当の支払いにより,

労働基準法37条の割増賃金を支払ったことにはならないとされました。

 

 

会社が残業代と考えて支払った深夜手当,残業手当,公出手当が

残業代の支払いではないと判断されたので,

会社は追加で残業代を支払わなければならなくなりました。

 

 

ある手当が時間外労働の対価として本当に支払われていたのかを,

賃金体系全体における位置付けから検討する手法は,

労働者が固定残業代制度を否定していく上で,有効に活用できそうです。

 

 

今後の固定残業代制度の裁判に影響を与える

重要な判決なので紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大によるマスク増産に残業規制は及ぶのか

1 マスク増産による残業

 

 

厚生労働省は,新型コロナウイルスの感染拡大で

マスクや消毒液などの緊急増産におわれる企業があることを念頭に,

残業時間規制の例外とする場合があるとして,労働局に通知しました。

 

 

https://www.asahi.com/articles/ASN3K5T5MN3KULFA00V.html

 

 

一方で,労働組合の相談には,マスクメーカーの工場で

勤務している労働者から,2月から休日がなく,泊まりも多く,

過労死してしまうという悲痛な相談が寄せられているようです。

 

 

 

ちょうど,本日2020年4月1日から,中小企業にも

残業時間の罰則付き上限規制が施行されますので,

マスクの増産などで残業がどこまで許容されるかについて解説します。

 

 

2 36協定と残業時間の罰則付き上限規制

 

 

まず,会社が労働者に残業を命じるためには,36協定を締結して,

労働基準監督署に届け出なければなりません。

 

 

この36協定に,何時間残業させることができるのかを

規定しなければなりません。

 

 

この残業時間の限度時間は,原則として,

1ヶ月45時間,1年間で360時間となっています。

 

 

次に,この限度時間の例外として,当該事業場における

通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い

臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合には,

次の条件を満たす36協定の特別条項を定めることで,

1ヶ月45時間,1年間で360時間を超えて

残業させることが可能となります(労働基準法36条5項)。

 

 

①1ヶ月について,時間外労働と休日労働の合計労働時間数を

100時間未満の範囲で定める。

 

 

②1年間について,時間外労働の合計時間数を,

720時間を超えない範囲で定める。

 

 

③特別条項により1ヶ月45時間を超えて

時間外労働をさせることができる月数を,年6ヶ月以内で定める。

 

 

マスク工場のマスク増産による残業ですが,

労働基準法36条5項の事由に該当すると考えられるので,

36協定で上記の特別条項を定めれば,

1ヶ月45時間以上100時間未満で残業させることが可能となります。

 

 

もっとも,36協定で特別条項を定めたとしても,次の場合には,

労働基準法36条6項に違反したとして,会社は,

懲役6月以下または30万円以下の罰金の刑事罰の対象となります。

 

 

①1ヶ月について,時間外労働及び休日労働の合計時間が

100時間以上となった場合

 

 

 ②直近2ヶ月から6ヶ月の各期間における時間外労働及び休日労働の

合計時間の平均が1ヶ月あたり80時間を超えた場合

 

 

そのため,マスク工場のマスク増産による残業は,基本的には,

1ヶ月100時間以上させることはできません。

 

 

3 労働基準法33条による災害等の場合の残業

 

 

もう一つ,これらの例外として,

労働基準法33条による残業があります。

 

 

災害その他避けることのできない事由によって,

臨時の必要がある場合においては,会社は,

労働基準監督署の許可を受けて,

その必要の限度において残業させることができます。

 

 

 

もっとも,労働基準法33条の規定は,これまで述べてきた

36協定では対応できないような不可抗力の場合に限って認められます。

 

 

そのため,単なる業務の繁忙その他これに準じる経営上の必要の場合

には,労働基準法33条は適用できません。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大によるマスク増産については,

36協定の範囲の残業で対応すべきものであり,

労働基準法33条が適用されるされるべきではないと考えます。

 

 

マスク増産も大切ですが,マスク工場で残業する労働者の

健康を守ることも大切ですので,

36協定の範囲内での残業しか認めらないと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

未払残業代請求事件におけるタイムカードの証拠としての価値

1 会社からタイムカードが信用できないと争われたら

 

 

未払残業代を請求する事件において,

労働者側がタイムカードをもとに労働時間を算出したにもかかわらず,

会社側からタイムカードに手書きの記載があるなどの理由で,

タイムカードは信用できないと反論されることがあります。

 

 

本日は,タイムカードは,未払残業代請求事件の証拠として,

どこまで活用できるのかについて解説します。

 

 

2 タイムカードは証拠として価値が高い

 

 

結論から先に言いますと,タイムカードには特段の事情が無い限り,

労働時間を事実上推定する力があるとする裁判例が多数あり,

タイムカードを証拠として大いに活用できるのです。

 

 

 

例えば,千里山生活協同組合事件の

大阪地裁平成11年5月31日判決(労働判例772号60頁)は,

次のように判断しています。

 

 

「タイムレコーダーは、その名義の本人が作動させた場合には、

タイムカードに打刻された時刻にその職員が所在したといいうるのであり、

通常、その記載が職員の出勤・退勤時刻を表示するものである。

そこで、特段の事情がないかぎり、タイムカードの記載する時刻をもって

出勤・退勤の時刻と推認することができる

 

 

タイムカードに記載された出勤・退勤時刻と

就労の始期・終期との間に齟齬があることが証明されないかぎり、

タイムカードに記載された出勤・退勤時刻をもって

実労働時間を認定するべきである。

 

 

また,京電工事件の仙台地裁平成21年4月23日判決

(労働判例988号53頁)は,次のように判断指摘しています。

 

 

「使用者の側に,労働者の労働時間を管理する義務を

課していると解することができるところ,

被告においてはその管理をタイムカードで行っていたのであるから,

そのタイムカードに打刻された時間の範囲内は,

仕事に当てられたものと事実上推定されるというべきである。

 

 

「仮に,その時間内でも仕事に就いていなかった時間が存在する

というのであれば,被告において別途時間管理者を選任し,

その者に時計を片手に各従業員の毎日の残業状況をチェックさせ,

記録化する等しなければ,上記タイムカードによる勤務時間の

外形的事実を覆すことは困難というべきである。」

 

 

このように,裁判例では,タイムカードの証拠としての価値を

高く認める傾向にあるのです。

 

 

3 会社の労働時間適正把握義務

 

 

そして,労働時間を適正に把握しなければならないのは,

会社の義務なのです。

 

 

 

以前は,「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」において,

会社に労働時間を適切に管理する責務が記載されていました。

 

 

これが,働き方改革関連法が成立し,労働安全衛生法66条の8の3に,

会社は,労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されました。

 

 

このように,労働時間を適正に把握しなければならないことが,

法律に明記されたのです。

 

 

そのため,会社は,労働時間を適正に把握する義務

を負っていることから,より一層,

タイムカードなどで客観的に労働時間を管理することが重要になり,

タイムカードの証拠としての価値は,ますます高くなると考えられます。

 

 

会社から,タイムカードが信用できないと反論されても,

恐れることはなく,上記の主張をすれば,

未払残業代請求が認められると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

未払残業代請求においてメールの最終送信時刻やパソコンのログオフの時刻が終業時刻とされた事例

1 未払残業代請求では労働時間の立証が重要になります

 

 

未払残業代を請求する事件では,残業代を計算するうえで,

原告の労働者が1日に何時間働いたのかを証拠に基づいて,

証明しなければなりません。

 

 

タイムカードで労働時間の管理がされている会社であれば,

タイムカードをもとに労働時間を認定するのですが,

タイムカードなどで労働時間をしっかりと管理している会社は,

まだまだ少ないのが現状です。

 

 

会社が適切に労働時間を管理していない場合には,

様々な証拠をもとに労働時間を認定できるように,

弁護士は知恵を絞ります。

 

 

2 ウエディングプランナーの未払残業代請求事件

 

 

本日は,様々な証拠をもとに労働時間を認定した

結婚式場運営会社A事件の東京高裁平成31年3月28日判決

を紹介します(労働判例1204号31頁)。

 

 

この事件では,ウエディングプランナーが

結婚式場を運営する会社に対して,未払残業代を請求しました。

 

 

 

被告会社では,シフト表で労働時間を管理していましたが,

原告のウエディングプランナーは,

パソコンのログインやログオフの時刻,

メールの送信時刻,原告のメモの時刻などをもとに,

労働時間を主張しました。

 

 

まず,始業時刻について,裁判所は,

原告の担当する結婚式がない日は,

シフト表に記載された始業時刻,

担当する結婚式がある日は,

新郎新婦が到着する予定時刻の1時間前と認定しました。

 

 

原告は,パソコンのログインの時刻を始業時刻と主張していましたが,

原告の仕事の性質上,パソコンの起動と仕事が直結しているといえず,

業務関連性が明白ではないと判断されたのです。

 

 

本件事件のウエディングプランナーの場合,

パソコンの電源をいれてすぐにデスクワーク

にとりかかるような仕事ではなかったため,

このような判断になったのだと思います。

 

 

デスクワークの多い事務職であれば,

出社してすぐにパソコンの電源をいれて,

パソコンが立ち上がったら,すぐに仕事に取り掛かるのであれば,

パソコンのログインの時刻が始業時刻になると考えます。

 

 

パソコンのログイン時刻を始業時刻と主張するときには,

パソコンの起動と業務関連性を意識する必要があります。

 

 

3 最終送信メール時刻やパソコンのログオフ時刻が終業時刻と認定される

 

 

次に,裁判所は,終業時刻については,

最終送信メールの時刻やパソコンのログオフ時刻があれば,

その時刻を終業時刻としました。

 

 

 

被告会社では,原告のアカウントで他の社員が

ログインすることができるのですが,

他の社員が原告のアカウントで終業時刻まで

仕事をすることは考えがたいので,

原告のアカウントでログオフした時刻まで

業務の必要性があったと認定されました。

 

 

また,最終の送信メール時刻も業務上のものであると認められて,

終業時刻とされました。

 

 

ただ,原告のメモについては,事後的に作成されたものとして,

信用性がないと判断されました。

 

 

労働者の作成したメモについては,

労働したその日にその都度作成しないと,

証拠としては弱いです。

 

 

未払残業代を請求するためには,

労働時間を立証するためにどのような証拠があるか,

その証拠はどの程度証明力があるのかを吟味する必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業代請求事件や過労死事件において自宅での持ち帰り残業は労働時間といえるのか

1 時間外労働の上限規制が導入されても会社の外で残業をする

 

 

働き方改革関連法が成立し,

時間外労働の罰則付き上限規制が導入されました。

 

 

これにより,時間外労働は,原則1ヶ月45時間までとなり,

1月100時間を超える時間外労働があれば,会社には,

6ヶ月以下の懲役,または30万円以下の罰金が科せられます。

 

 

 

この時間外労働の上限規制によって,

17時か18時にはオフィスを強制的に退去させる

ノー残業デーを設けたり,

22時になったらオフィスを消灯する企業があらわれました。

 

 

しかし,こちらの朝日新聞の記事によりますと,

残業時間が規制されても,仕事量が変わるわけではないので,

会社でできない仕事を自宅に持ち帰ったり,

カフェで仕事の続きをしたりしている労働者が少なくないようです。

 

 

 https://www.asahi.com/articles/DA3S14269128.html

 

 

仕事量が変わらないのであれば,労働時間が変わることはなく,

会社には実際よりも少ない残業時間を申告して,

隠れて残業をしている労働者がいるのです。

 

 

2 自宅の持ち帰り残業は労働時間にあたるのか

 

 

それでは,自宅に仕事を持ち帰ったり,

退勤後にカフェで仕事をした場合の時間は,

労働時間になるのでしょうか。

 

 

まず,労働時間とは,会社の指揮監督下に

置かれた時間のことをいいます。

 

 

自宅の持ち帰り残業や退勤後のカフェで仕事をする場合,

会社の自分のデスクで働くという場所的な拘束はなく,

仕事以外に本を読んだり,音楽を聞いたりすることも自由なので,

規律的な拘束も受けません。

 

 

そのため,自宅の持ち帰り残業や退勤後のカフェで仕事をした時間は,

会社の指揮監督下にあるとはいいにくく,

原則として,労働時間とはいえません

 

 

もっとも,これだけ通信機器が発達し,

テレワークが推進されている情勢でもあり,

会社の外で仕事をしているから,

一律に労働時間ではないとするのは不当です。

 

 

3 持ち帰り残業が労働時間となる場合

 

 

そこで,持ち帰り残業は,会社から業務の遂行を指示されて

これを承諾し,私生活上の行為と峻別して労務を提供して

当該業務を処理した場合に,例外として,労働時間と認められます。

 

 

 

具体的には,次の事情を考慮します。

 

 

①担当業務を一定期限までに処理しなければ,

会社から不利益に取り扱われること

 

 

②自宅に持ち帰って仕事をしなければ,

一定の期限までに担当業務を処理できないこと

 

 

③労働者が自宅に持ち帰って仕事をしていることを,

上司などが認識していること

 

 

これら3つの考慮要素をもとに,

持ち帰り残業が例外的に労働時間にあたるかを検討します。

 

 

そして,持ち帰り残業の場合,

私生活上の行為と峻別して仕事をしたことを立証しないといけないので,

成果物や作成・変更履歴を示しながら,

仕事に専念した時間を立証していきます。

 

 

この点,自宅の持ち帰り残業の労働時間が争われた

医療法人社団明芳会事件の東京地裁平成26年3月26日判決

(労働判例1095号5頁)があります。

 

 

この事件では,病院の学術発表会の準備を自宅でした時間が

労働時間にあたるかが争われました。

 

 

裁判所は,学術発表会の準備を所定労働時間内に行うことが

許容されており,準備ための資料作成が,作業量からして,

自宅に持ち帰らなければ処理できないものとは認められないとして,

自宅の持ち帰り残業の時間は,会社の指揮監督下に置かれておらず,

労働時間ではないと判断されました。

 

 

このように,持ち帰り残業は,原則として労働時間とは認められず,

例外として労働時間と認められるので,

労働者としては,争いにくいものです。

 

 

自宅に持ち帰って仕事をする場合には,

パソコンの履歴や成果物を証拠として確保することが重要になります。

 

 

4 残業規制には業務量の調整が必要である

 

 

さて,時間外労働の上限規制が導入されても,

持ち帰り残業が増えるだけでは,

長時間労働による疲労は回復せず,

残業手当もあたらくなるので,

労働者にとってはマイナスです。

 

 

業務量を調整した上での,残業時間の削減をする

働き方改革が実施されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

セブンイレブンの残業代未払いの問題から残業代の計算を解説します

1 セブンイレブンの残業代未払い問題

 

 

コンビニ大手のセブンイレブンが長年,

アルバイトの残業代を未払いにしていたのを明らかにしました。

 

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53182840Q9A211C1TJ2000/

 

 

セブンイレブンの本部にデータが残っている

2012年3月以降だけで,

約3万人のアルバイトに対して,

遅延損害金を含めた未払い残業代の合計額は

4億9000万円になるようです。

 

 

 

未払い残業代の合計額は4億9000万円と巨額ですが,

1人当たりの金額は1万6000円になり,

そこまで大きな金額となってはいません。

 

 

もっとも,アルバイトに対する残業代の未払いは,

1978年から続いていたようですので,

本当はもっと大きな金額の残業代が

未払いのまま放置されていたようです。

 

 

セブンイレブンの残業代の未払いの原因は,

セブンイレブンの加盟店が雇用しているアルバイトの給与計算を

本部が代行していたところ,本部が

,残業代の計算を間違えていたようです。

 

 

本日は,セブンイレブンの残業代の計算の問題点について解説します。

 

 

2 残業代の計算

 

 

まず,残業代は次のとおり,計算します。

 

 

残業代=時間外労働等の時間×賃金単価×割増率

 

 

時間外労働等の時間については,

タイムカードなどの証拠をもとに,

1ヶ月当たりの残業時間を算出します。

 

 

賃金単価については次のとおり,計算します。

 

 

賃金単価=算定基礎賃金÷所定労働時間数

 

 

月給制の場合,月平均所定労働時間数は次のとおり,計算します。

 

 

月平均所定労働時間数 

=年間の所定労働日数×1日の所定労働時間数÷12ヶ月

 

 

3 算定基礎賃金とは

 

 

ここで,賃金単価を算出するための算定基礎賃金について説明します。

 

 

算定基礎賃金ですが,給料明細に記載されている賃金が

全て対象になるわけではありません。

 

 

 

給料明細に記載されている,各賃金の項目から,

①家族手当,

②通勤手当,

③別居手当,

④子女教育手当,

⑤住宅手当,

⑥臨時に支払われた賃金(結婚手当など),

⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

を除外して,算定基礎賃金を計算します。

 

 

また,適法な固定残業代であれば,

既に残業代が支払われているとして,

算定基礎賃金に含まれませんが,

違法な固定残業代は,算定基礎賃金に含まれます。

 

 

①~⑦の除外賃金と適法な固定残業代を除いた賃金が

算定基礎賃金になるのです。

 

 

例えば,皆勤手当は,その月に一度も欠勤しなければ

支給される賃金ですので,①~⑦の除外賃金ではないですし,

固定残業代でもないので,算定基礎賃金に含まれます。

 

 

4 割増率

 

 

次に,割増率について説明します。

 

 

1日8時間を超える時間外労働,

1週間40時間を超える時間外労働には,

残業代が支払われますが,

その割増率は125%となります。

 

 

また,22時から5時までの深夜労働の場合,

この時間帯が時間外労働ではなく,

通常の8時間勤務の時間帯であれば,

その割増率は25%になります。

 

 

5 セブンイレブンの残業代計算ミス

 

 

さて,マスコミ報道によりますと,セブンイレブンは,

欠勤せずに働いたアルバイトに対して,

店長の判断で支払える皆勤手当のような手当があるようで,

この手当について,125%の割増率を適用しなければならないのに,

間違えて25%の割増率を適用したようです。

 

 

皆勤手当であれば,算定基礎賃金に含まれるので,

皆勤手当や基本給などから賃金単価を計算して,

125%の割増率をかけないといけません。

 

 

 

このような計算間違いにより,セブンイレブンは,

遅延損害金を含めて合計4億9000万円の

残業代を未払いにしていたのです。

 

 

6 消滅時効

 

 

ところで,未払い残業代請求権は,2年の消滅時効があるので,

セブンイレブンがこの2年の消滅時効を主張すれば,

セブンイレブンが法的に支払わなければならない

未払い残業代はもっと少なくなると考えられます。

 

 

セブンイレブンが道義的に,消滅時効を主張せずに,

合計4億9000万円の未払い残業代を支払うのか注目したいです。

 

 

なお,民法の改正により,貸金の返還請求権などの債権の消滅時効は

原則5年になりますので,残業代請求権などの賃金債権の消滅時効が

2年のままなのは,不公正だと,

このセブンイレブンの未払い残業代の問題を見て,改めて思いました。

 

 

民法改正にあわせて,賃金債権の消滅時効を5年にすべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

海外旅行の添乗員に事業場外みなし労働時間制が適用されるのか

1 事業場外みなし労働時間制とは

 

 

先日のブログで,外回りの営業マンの

事業場外みなし労働時間制に関する解決事例を紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201910288691.html

 

 

本日は,この事業場外みなし労働時間制に関する

阪急トラベルサポート事件の最高裁平成26年1月24日判決

(労働判例1088号5頁)を紹介します。

 

 

まず,労働基準法38条の2に規定されている,

事業場外みなし労働時間制とは,

会社の外で行なわれる労働については,

会社の指揮監督の及ばない労働もあり,その場合には,

会社が当該労働を行う労働者の実際の労働時間を把握することが

困難であるので,その限りで,会社の実際の労働時間の把握や算定の

義務を免除するという制度です。

 

 

もう少し具体的に説明すると,

みなし労働時間が8時間の場合,実際には,

会社の外で11時間労働したとしても,

8時間だけ労働したものとみなされて,

会社は,3時間分の残業代を支払わなくてもよくなるのです。

 

 

2 阪急トラベルサポート事件

 

 

さて,この事業場外みなし労働時間制が最高裁まで争われたのが,

阪急トラベルサポート事件です。

 

 

 

この事件は,海外旅行の添乗員に

事業場外みなし労働時間制が適用されるかが争われました。

 

 

事業場外みなし労働時間制が適用されるのは,

会社の外での労働について,「労働時間を算定し難いとき」

に限られますので,会社の外で働いている,

海外旅行の添乗員の労働時間を算定し難いといえるかが争点となりました。

 

 

この事件の原告である海外旅行の添乗員の

仕事の性質・内容は次のとおりでした。

 

 

・ツアー参加者に配布される最終の日程表に,

ツアー中の発着地,目的地,出発・到着時刻,所要時間

などの旅行日程が定められていること

 

 

・旅行日程は,会社とツアー参加者の契約内容になっていて,

ツアー参加者の了解なく,旅行内容を変更すると,

会社からツアー参加者に対して,

変更補償金の支払いが必要となるので,添乗員は,

旅行日程の変更が必要最低限になるように

旅行日程の管理をすることが求められていたこと

 

 

また,原告と会社との間の

業務の指示や報告の方法・内容は次のとおりでした。

 

 

・ツアー開始前に,会社は,添乗員に対し,

最終日程表を渡し,観光の内容や手順を示して,

マニュアルに従った業務を行うことを命令していたこと

 

 

・ツアーの実施中,会社は,添乗員に対し,

携帯電話を所持して常に電源を入れておき,

ツアー参加者との間でクレームが発生したり,

旅行日程の変更が必要なときには,

会社に報告して,指示を受けることを求めていたこと

 

 

・ツアーの終了後に,会社は,添乗員に対し,

添乗日報を提出させて,

仕事の遂行の状況の正確かつ詳細な報告を求めていたこと

 

 

 

以上のような仕事の性質,内容や仕事の遂行の態様,状況,

会社と添乗員との間の仕事に関する指示,報告の方法,内容や

その実施の態様,状況から,添乗員の勤務状況を

具体的に把握することが困難であったとは認めがたいので,

事業場外みなし労働時間制は適用されないとされました。

 

 

結果として,原告の未払残業代請求が認められました。

 

 

この最高裁判例によって,①業務の性質・内容と,

②会社と労働者との間の仕事に関する指示及び報告の方法・内容という

2つの要素を考慮して,会社が労働者の仕事の状況を

具体的に把握することが困難であるかどうかが

ポイントになることがわかりました。

 

 

今後の,事業場外みなし労働時間制を争う事件の参考になる

重要な裁判例ですので,紹介しました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

外回り営業マンの未払残業代請求事件

1 時効の中断と証拠の開示

 

 

本日は,私が担当した未払残業代請求事件の解決事例を紹介します。

 

 

クライアントは,イベント運営会社の外回りの営業マンでした。

 

 

 

労働時間が長いわりに,給料が安く,

残業代が支払われていないことから,

会社を退職するタイミングで未払残業代の請求をしたい

というご相談でした。

 

 

会社に在職しているときに,未払残業代請求をすると,

会社から嫌がらせを受けたり,干されたりするリスクがあることから,

在職中に未払残業代請求をするケースは少ないですが,

退職するタイミングであれば,

会社との縁が切れる絶好のタイミングなので,

会社に一矢報いるために,未払残業代請求をするケースは多いです。

 

 

未払残業代請求事件では,まず,時効を中断させます。

 

 

未払残業代請求権は,2年の時効で消滅しますので,

早く請求する必要があるのです。

 

 

例えば,2019年10月から2年前の

2017年10月の未払残業代請求権は,

2019年11月になると,時効で消滅してしまいます。

 

 

そのため,時効を中断するために,配達証明付内容証明郵便で,

会社に対して,未払残業代請求をします。

 

 

この請求書が会社に届いてから,

6ヶ月以内に裁判手続をおこなえば,

時効は中断されることになります。

 

 

そして,請求書には,あわせて,

タイムカードや就業規則を開示するように記載します。

 

 

 

労働者は,タイムカードや就業規則のコピーを準備していることは

あまりないので,会社に開示を求めます。

 

 

弁護士が代理人として,タイムカードや就業規則の開示を求めれば,

ほとんどの会社は,開示に応じてきます。

 

 

この事件では,相手方の会社にも弁護士がついて,

タイムカードや就業規則の開示に素直に応じてくれました。

 

 

開示されたタイムカードには,打刻漏れがあったのですが,

仕事用のメールの送信時刻を参考にして,

タイムカードの打刻漏れを補充しました。

 

 

タイムカードが正確に打刻されていない場合には,

メールの送信時刻やグーグルカレンダーの記録などの証拠で,

何時まで働いたのかを補充していきます。

 

 

2 1ヶ月単位の変形労働時間制

 

 

就業規則には,1ヶ月単位の変形労働時間制の記載があり,

相手方会社は,1ヶ月単位の変形労働時間制を採用しているので,

当方の計算した未払残業代の支払には応じないと主張してきました。

 

 

1ヶ月単位の変形労働時間制とは,1ヶ月の期間につき,

1週間当たりの平均所定労働時間が40時間を超えない範囲で,

1日8時間を超えて労働させることができる制度です。

 

 

会社は,1日8時間,1週間40時間を超えて,

労働者を労働させた場合には,残業代を支払わないといけないのですが,

1週間のうち,ある日は9時間働かせて,

ある日は7時間働かせて,1週間で40時間を超えていなければ,

残業代を支払わなくてよくなるのです。

 

 

もっとも,変形労働時間制が有効になるための要件は厳しく,

1ヶ月の期間の各週,各日の所定労働時間を

就業規則で特定する必要があります。

 

 

そして,シフト表で労働時間を管理している場合には,

就業規則に,各勤務の始業・終業時刻及び各勤務の組合せの考え方,

シフト表の作成手続や周知方法などを定め,各日のシフト表は,

それに従って,具体的に特定されなければならないのです。

 

 

相手方会社は,就業規則において,

シフト表の各勤務の始業・終業時刻,

各勤務の組合せの考え方,

作成手続や周知方法を全く記載していませんでした。

 

 

そのため,1ヶ月単位の変形労働時間制は無効となります。

 

 

3 事業場外みなし労働時間制

 

 

また,相手方の就業規則には,

事業場外みなし労働時間制の規定がありました。

 

 

 

事業場外みなし労働時間制とは,

会社の外で働く労働者の労働時間を把握することが困難なときに,

実際の労働時間とは関係なく,

みなし時間だけ労働したとみなされてしまう制度です。

 

 

例えば,みなし時間が8時間の場合,

実際に11時間労働しても,

8時間だけ労働したものとみなされて,

3時間分の残業代を請求できなくなるのです。

 

 

もっとも,事業場外みなし労働時間制は,

労働時間を算定し難いとき」にのみ有効となるところ,

相手方会社は,グーグルカレンダーや

会社が貸与していた携帯電話のグーグルのタイムラインの記録で,

クライアントの労働時間を正確に把握していましたので,

事業場外みなし労働時間制は適用されませんでした。

 

 

結果として,相手方会社は,クライアントが主張する

未払残業代請求を認めてくれました。

 

 

ただ,クライアントは,会社から借りていたアパートの

原状回復費用を負担しなければならず,

原状回復費用分が未払残業代から控除されてしまいました。

 

 

外回りの営業マンの場合,会社から,

事業場外みなし労働時間制の反論がされる可能性がありますが,

通信機器が発達した現代において,

労働時間を算定することが困難な場合は限定されるはずです。

 

 

未払残業代請求をする際には,弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

教員に対する1年単位の変形労働時間制導入の問題点

1 教員に対する1年単位の変形労働時間制の導入

 

 

政府は,教員の勤務時間を年単位で調整する変形労働時間制について,

自治体の判断で導入できるようにするために,

教職員給与特別措置法(給特法)の改正案を閣議決定しました。

 

 

入学式や新学期で忙しい4月の労働時間を長くして,

夏休みなどで業務量が減る8月の労働時間を短くして,

教員がまとまった休みをとれるようにすることを目的としているようです。

 

 

しかし,教員に対して1年単位の変形労働時間制を

導入することについて,現場の教員や野党から反対の声があがっています。

 

 

https://dot.asahi.com/aera/2019101800108.html?page=1

 

 

本日は,教員に対する1年単位の変形労働時間制の

問題点について解説します。

 

 

2 地方公務員に適用される労働基準法

 

 

まず,教員は,地方公務員ですので,

地方公務員法が適用されます。

 

 

地方公務員法58条3項には,労働基準法の中で

地方公務員に適用されない条文が記載されています。

 

 

ということは,地方公務員法58条3項に記載されていない,

労働基準法の条文は,地方公務員にも適用されるというわけです。

 

 

労働時間に関する労働時基準法32条や,

残業代に関する労働基準法37条は,

地方公務員にも適用されるので,

地方公務員が1日8時間を超えて残業した場合,

残業代を請求できるのです。

 

 

 

ちなみに,1年単位の変形労働時間制は,

地方公務員法58条3項に記載されているので,

特別な法律がなければ,

地方公務員に1年単位の変形労働時間制は適用されません。

 

 

3 給特法の問題点

 

 

ところが,地方公務員の中で,教員だけは,

残業代について特殊な法制度によって規律されています。

 

 

それが,給特法というものです。

 

 

教員には,修学旅行や遠足での学校外の教育活動や,

家庭訪問や学校外研修など教員個人での活動

といった勤務態様の特殊性があり,

一般の地方公務員と同じ勤務時間管理はなじまないという理由で,

労働時間が長い短いに関わりなく,

残業代を支給しない代わりに,

給料月額の4%に相当する教職調整額が支給されているのです。

 

 

この給特法については,どれだけ働いても,

4%の残業代相当分しか支給されないため,

雇用する側としては,長時間労働に目をつぶることになり,

教員の長時間労働を助長していると批判されています。

 

 

4 1年単位の変形労働時間制とは

 

 

さて,今回,導入が検討されている1年単位の変形労働時間制とは,

1ヶ月を超え1年以内の一定期間を,

平均して1週間の労働時間が40時間以内の範囲内において,

特定の日または週において,1日8時間または1週40時間を超えて

所定労働時間を定めることができる制度です(労働基準法32条の4)。

 

 

本来,1日8時間を超えて労働した場合には,

残業代が支払われなければならないのですが,

ある時期は忙しいので1日8時間以上労働させて,

ある時期は暇なので1日8時間未満で労働させて,

一定期間を平均して1週間の労働時間が40時間以内の範囲におさまれば,

忙しい時期に1日8時間以上労働させても,

残業代を支払わなくてもよくなるのです。

 

 

結局のところ,変形労働時間制とは,労働時間を長くしても,

残業代を支払わなくてもよい状況をつくりたい

会社が導入する制度ですので,

労働者の労働時間の削減につながるわけではないのです。

 

 

そのため,教員の長時間労働が深刻で,

教員のなり手が減少しており,教員の労働時間を削減するために,

教員の働き方改革がすすめられている状況において,

1年単位の変形労働時間制の導入は,

この流れに逆行するおそれがあります。

 

 

 

教員の労働時間の削減を検討するのであれば,

給特法を廃止して,労働時間に応じた残業代を支払うこと,

教員の過大な仕事を外部の専門家にアウトソーシングすること

などの改革をすべきと考えます。

 

 

教員に1年単位の変形労働時間制を導入すれば,

むしろ長時間労働が助長されるリスクがありますので,

私は,導入に反対です。

 

 

教員のなり手が減少しているので,

教員の仕事が魅力的になるように,

教員の労働時間を削減するための改革が実行されることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

支店長やマネージャーになると残業代を請求できないのか?

支店長やマネージャーという役職がつくと,

残業代が支払われないという労働相談を受けることがあります。

 

 

会社は,支店長やマネージャーは,労働基準法41条2号の

「監督若しくは管理の地位にある者」に該当することを理由に,

残業代を支払わなくても合法であると主張します。

 

 

しかし,往々にして,裁判では,このような会社の主張は

認められにくく,労働者の未払残業代請求が認められることが多いです。

 

 

その理由について,コナミスポーツクラブ事件の

東京高裁平成30年11月22日判決と

東京地裁平成29年10月6日判決(労働判例1202号70頁)

を紹介しながら解説します。

 

 

まず,労働基準法41条2号の管理監督者に該当すれば,労働者は,

労働基準法に定められている労働時間の保護規定が適用されなくなり,

どれだけ残業しても,残業代を請求できなくなってしまいます。

 

 

 

なぜこのようなことになるのかについて,裁判所は,

次のように判断しています(少し長いですが引用します)。

 

 

「管理監督者については,その職務の性質や経営上の必要から,

経営者と一体的な立場において,労働時間,休憩及び休日など

に関する規制の枠を超えて活動することが要請されるような

重要な職務と責任,権限を付与され,

実際の勤務態様も労働時間などの規制になじまない立場にある一方,

他の一般の従業員に比して賃金その他の待遇面で

その地位にふさわしい優遇措置が講じられていることや,

自己の裁量で労働時間を管理することが許容されていることなどから,

労基法の労働時間などに関する規制を及ぼさなくても

その保護に欠けるところがないと考えられることによるものである。」

 

 

そのため,管理監督者に該当するかについては,

次の3つの要件に該当するかによって判断されます。

 

 

①当該労働者が実質的に経営者と一体的な立場にあるといえるだけの

重要な職務と責任,権限を付与されているか

 

 

 ②自己の裁量で労働時間を管理することが許容されているか

 

 

 ③給与などに照らし管理監督者としての

地位や職責にふさわしい待遇がなされているか

 

 

 

本件事件では,①について,支店長には,

支店で提供するサービスの内容の決定や営業時間の変更について

決定権がなく,アルバイトの採用や販売促進活動の実施などについて

本社の決裁を経る必要があることから,

経営者と一体的な立場にはないと判断されました。

 

 

②について,支店長についてもタイムカードや週報などで

労働時間が管理されており,人員不足のために,

管理業務以外のフロント業務やインストラクター業務といった

一般従業員と同じ業務をしなければならないほど多忙で,

労働時間について裁量がなかったと判断されました。

 

 

③について,支店長には,役職手当として,

月額5~6万円が支給されていましたが,

本給の幅が16~23万円であり,管理監督者として

ふさわしい待遇があったとはいえないと判断されました。

 

 

以上より,コナミスポーツの支店長は,

管理監督者ではないとして,

未払残業代請求が認められました。

 

 

上記3つの要件のうち,特に③の要件については,

給料明細を見れば,判断することが容易であり,

低い給料で働かされていたのであれば,

管理監督者ではないと判断される可能性が高いです。

 

 

そのため,支店長やマネージャーという役職についても,

給料が低かったり,以前と働き方が変わっていないような場合には,

労働基準法の管理監督者には該当せず,

未払残業代を請求できる可能性があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。