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新型コロナウイルス労働相談ホットラインを実施しました

1 新型コロナウイルス労働相談ホットライン

 

 

昨日,日本労働弁護団が主催する,

新型コロナウイルス労働相談全国一斉ホットラインを

石川県で実施しました。

 

(2020年4月7日の北陸中日新聞の朝刊で報道されました)

 

 

北越労働弁護団に所属する当事務所の弁護士が中心となって,

新型コロナウイルスに関連する労働問題の電話相談に応じました。

 

 

通常,弁護士が実施する電話相談は,

広報がうまくいかないからか,

あまり電話がかかってこないのですが,

今回のホットラインでは,私が経験した中で

最も多くの電話がかかってきました。

 

 

10時から15時までの時間帯で

合計13件の電話相談がありました。

 

 

それだけ,多くの労働者が新型コロナウイルスの感染拡大で不安を抱き,

また,実際に不利益を被っていることがわかりました。

 

 

 

2 休業と賃金に関する相談

 

 

最も多かった相談は,

会社から休業を命じられている期間の賃金の問題です。

 

 

具体的には,次のような相談がありました。

 

 

会社から新型コロナウイルスに感染している可能性があるので,

会社を休むように言われたのですが,

休業期間中の給料がどうなるのかが不安です。

 

 

3月にインフルエンザにかかり,

一週間会社を休んで出社したものの,また高熱がでてしまい,

病院では新型コロナウイルスではないと言われたのに,

会社から自宅待機を求められたが,給料の支払いがない。

 

 

このように,労働者が新型コロナウイルスに感染しているのか

明確になっていないにもかかわらず,

会社が感染疑いを理由に労働者に休業を命じる場合,

使用者の責めに帰すべき事由により労働者が就労できなくなるので,

民法536条2項に基づき,給料の全額を請求すべきです。

 

 

また,休業について,会社に落ち度がなかったとしても,

労働基準法26条に基づく,給料の6割である休業手当を請求できます。

 

 

新型コロナウイルス感染拡大を理由に

会社から休業を命じられた場合の対処法については,

こちらのブログ記事をご参照ください。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202003029086.html

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202003199133.html

 

 

3 解雇と雇止めの相談

 

会社休業による賃金の支払の次に多かった相談は,

解雇や雇止めの相談です。

 

 

 

会社から,新型コロナウイルスの感染拡大の影響で

売上がガクンと落ちたので,辞めてくれと言われてしまいました。

 

 

このように,会社の業績悪化によって,

正社員に対する解雇や退職勧奨,

非正規雇用労働者に対する雇止めが増えているようです。

 

 

新型コロナウイルスに関する解雇と雇止めについては,

こちらのブログ記事をご参照ください。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202003279147.html

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/202003309151.html

 

 

4 緊急事態宣言によって労働問題が増加する可能性があります

 

 

マスコミ報道によりますと,本日,緊急事態宣言がだされるようです。

 

 

緊急事態宣言がでますと,都道府県知事から休業を要請されたり,

住民の外出自粛が強化されるので,ますます,

労働問題が増加することが予想されます。

 

 

今後,弁護士会や様々な弁護士の団体が,

新型コロナウイルスに関する法律相談を実施したり,

情報を発信していきますので,まずは,

正確な知識を理解していただき,その上で,

次の行動に移っていただきたいと思います。

 

 

私も,新型コロナウイルスに関連する労働問題について,

今後とも情報発信していきます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

労働条件の通知がメールでも可能になる

厚生労働省は,平成30年8月27日,現在は,会社が労働者に

書面で交付することが定められている労働条件の通知方法を,

ファックスや電子メールの送信でも可能とする,

労働基準法施行規則の改正案を示しました。

 

 

 

 

労働者がメールなどで,労働条件の通知を希望するのであれば,

労働者にとっても,会社にとっても便利になります。

 

 

このトピックスに関連して,本日は,

労働条件の通知について説明します。

 

 

労働基準法15条1項には,会社は,労働契約の締結に際して,

労働者に対して,賃金・労働時間その他の労働条件を

明示する義務があると規定されています。

 

 

さらに,次の5つについては,会社は,

労働者に対して,書面による明示が義務付けられています。

 

 

①労働契約の期間に関する事項

②働く場所・仕事の業務内容

③労働時間に関する事項

(始業・終業の時刻,所定労働時間を超える労働の有無,

休憩時間,休日,休暇)

④賃金に関する事項(賃金の決定,計算・支払の方法,締日と支払日)

⑤退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

 

会社が労働条件を明示しなければならない対象労働者は,

正社員だけでなく,契約社員や派遣社員などの種別を問わず,

全ての労働者です。

 

 

また,会社が労働条件を明示しなければならない場面は,

当該労働者と初めて労働契約を締結するときだけでなく,

有期労働契約の期間満了後の契約更新のときや,

定年後の再雇用のときも含まれます。

 

 

一般的には,労働契約を締結するときに,会社が労働者に対して,

下記URLにあるような労働条件通知書を交付することがほとんどです。

 

 

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/youshiki_01a.pdf#search=%27%E5%8A%B4%E5%83%8D%E6%9D%A1%E4%BB%B6%E9%80%9A%E7%9F%A5%E6%9B%B8+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8D%E7%9C%81%27

 

 

もっとも,私が労働者から,労働事件の法律相談を受けていると,

石川県の中小企業では,労働条件通知書を労働者に

交付していないことがちらほらとみかけられます。

 

 

 

 

会社が,労働条件の明示義務に違反した場合,

30万円以下の罰金という罰則がありますので,

会社は気をつける必要があります。

 

 

労働者としては,勤務する会社の労働条件が明確になっていないと,

賃金はいくらもらえるのか,

残業をしなければならないのかが分からず,

不安になります。

 

 

そこで,労働者は,会社に就職する際に,

労働条件通知書の交付を受けるようにしてください

 

 

法令の改正後に,労働条件の通知をメールで受け取る場合には,

メールの文書を保存するか,プリントアウトして,

大切に保管しててください。

 

 

もし,労働条件通知書に記載されている労働条件と,

実際に勤務した後の労働条件が異なっている場合,

労働者は,即時に労働契約を解除することが可能です

(労働基準法15条2項)。

 

 

そのため,労働者は,労働条件通知書と異なる労働条件があれば,

会社に対して,その改善を求め,それでも改善されず,

そのような会社で働き続けるのが嫌な場合には,

労働契約を解除すればいいのです。

 

 

労働条件通知書は,労働者を守るために重要なものですので,

当たり前のように,全ての会社で交付されるようにしてもらいたいです。

 

 

本日も,ブログをお読みいただき,ありがとうございます。