職場における自由な人間関係を形成する自由

昨日,とても嬉しいことがありました。

 

 

毎日ブログを書き続けて9ヶ月を経過して,ついに,

私のブログを見て,法律相談に来れられた方が現れたのです。

 

 

 

 

その相談者の方は,次のようにおっしゃりました。

 

 

働く人に役立つ情報が記載されているので,

毎日チェックしています,ブラック企業対策として息子にも

ブログをすすめています,同じ職場の悩みをもっている同僚にも

ブログをすすめていますなど,本当にありがたいお言葉をいただきました。

 

 

ブログを毎日更新している者にとって,

自分のブログが誰かの役に立っていると実感できるときが,

最高に嬉しいのです。

 

 

毎日ブログを更新することが,

人の役に立つことが実感できましたので,

今後とも毎日ブログを更新していきます。

 

 

さて,本日は,職場における自由な人間関係を形成する自由

について解説したいと思います。

 

 

労働者が,会社から不合理な取扱を受けたため,

労働組合を結成しようとしたら,会社が,

他の労働者から労働組合結成の動きを聞き出すなどの監視をして,

労働組合の結成を抑制するような言動をしてきた場合,

労働者は,どのような対応をすればいいのでしょうか。

 

 

この問題について参考になるのが,

関西電力事件の最高裁平成7年9月5日判決です。

 

 

関西電力事件では,共産党員などの労働者に対して,

会社として,職場内外で尾行・待ち伏せなどによって監視し,

また,他の労働者と付き合わないように働きかけるなどして

孤立化を図りました。

 

 

 

 

また,労働者のロッカーを無断で開けて,

上着のポケットに入っていた手帳を取り出して,

その内容を写真撮影しました。

 

 

最高裁は,会社のこれらの行為について,

原告らの職場における自由な人間関係を形成する自由

不当に侵害するとともに,名誉やプライバシーを侵害するものであり,

労働者の人格的利益を侵害していることから,

不法行為に基づく損害賠償請求を認めました。

 

 

このように,会社が労働者を継続的に監視したり,

他の労働者との接触や交際を妨げることは,

労働者の職場における自由な人間関係を形成する自由

を侵害することになります。

 

 

労働者の職場における自由な人間関係を形成する自由については,

人間関係からの切り離しのパワハラを受けた場合に,

主張すると効果的だと考えます。

 

 

 

 

もっとも,会社の監視行為を証明するには,

会社の内部文書などを入手する必要があり,

困難なことが多いと思います。

 

 

また,労働組合を結成することを抑制しようとする会社の言動は,

労働組合法7条1号に規定されている不当労働行為に該当し,

違法になる可能性があります。

 

 

労働者としては,会社が労働組合結成の準備段階において,

労働組合つぶしを仕掛けてくるおそれがありますので,

会社側の人物の言動を録音するか,メモするなどして記録に残し,

不当な配転や解雇については,争うことを検討するべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

明石市市長のパワハラ発言~録音の威力~

兵庫県明石市の泉房穂市長が,国道の拡幅事業をめぐり,

建物の立ち退き交渉の担当職員に対して,

暴言をはくパワハラをしたとして,

謝罪したことがニュースになりました。

 

 

 

この事件が発覚したのは,暴言をはかれた担当職員が,

市長の暴言を録音していたからです。

 

 

録音データによると,市長は,

次のような暴言をはいたようです。

 

 

「7年間,何しとってん。ふざけんな。

何もしてないやろ。お金の提示もせんと。あほちゃうかほんまに。」

 

 

「立ち退きさせてこい,お前らで。今日,火つけてこい。

今日,火つけて捕まってこい,お前。燃やしてしまえ。

損害賠償,個人で負え。当たり前じゃ。」

 

 

市長の発言が,新聞に文章として記載されており,

これを読めば,誰が見ても,これはパワハラだと理解できますが,

少し法的に分析してみます。

 

 

パワハラの定義については,これから法律で定められる予定ですが,

労働政策審議会では,次の3つの要素を満たすものを

パワハラと定義しています。

 

 

 

 

①優越的な関係に基づく

 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

 ③労働者の就業環境を害すること

(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

 

①市長は,部下である担当職員に対して,

業務命令を指示しますので,

明らかに優越的な地位にあります。

 

 

②国道の拡幅事業に関するやりとりの中の発言であるものの,

「あほちゃうかほんまに」という発言は,

担当職員の人格を否定するものであり,

「火つけてこい」と犯罪行為を命令し,

「損害賠償,個人で負え」と担当職員が個人では

負担できない責任を負わせようとしていることから,

市長の言動は,業務上必要かつ相当な範囲を超えています。

 

 

③市長からこのような暴言を浴びせられれば,

担当職員は,多大な精神的苦痛を感じ,市長に恐怖を覚え,

過大なストレスによって仕事がすすまなくなります。

 

 

というわけで,市長の発言は,

上記3つの要素を全て満たすので,

パワハラと認定できます。

 

 

今回の市長のパワハラ発言を聞いて,私が感じたのは,

やはりパワハラの立証には録音が重要であるということです。

 

 

市長は,NHKディレクター,弁護士,

旧民主党の衆議院議員を経て,明石市の市長に就任し,

子育て支援に関する政策で市民から好評価を得ていたので,

そのような経歴の方が,上記のような暴言をはくとは,

通常考えがたいことです。

 

 

録音がなければ,「え~,あの市長がそんな暴言をはくはずがない」

と捉えられたかもしれません。

 

 

しかし,市長のパワハラ発言がバッチリ録音されていたので,

市長は,言い逃れができませんでした。

 

 

パワハラ発言の録音がなければ,

「そのような発言をした記憶はございません」や

「厳しく叱責したかもしれませんが,

そのようなひどい発言はしていません」

と言い逃れをされた可能性があります。

 

 

さらに,録音データの場合,発言者の口調や声の大きさ,

声のトーンの全てが記録されて再現できるので,

パワハラの実態がリアルに伝わります。

 

 

 

 

NHKのニュースを視聴したかぎりでは,

市長のパワハラ発言は,ヤクザが脅すように,

語気鋭く,まくしたてるように,激しい口調でなされていたので,

市長の発言を誰が聞いてもパワハラであると判断できるものでした。

 

 

パワハラ発言をメモして,それを証拠にする方法もあるのですが,

パワハラの実態をリアルに証明するためには,

やはり録音するしかないと実感しました。

 

 

言葉の暴力によるパワハラを受けた場合は,

スマホやボイスレコーダーでパワハラ発言を

録音するようにしましょう。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

海上自衛隊のパワハラ・いじめ問題

昨年9月,海上自衛隊横須賀基地の

補給艦ときわの艦内において,

男性3等海尉が自殺した事件がありました。

 

 

上官から自殺した3等海尉に対して

パワハラがあったという乗員の証言があり,

海上自衛隊が調査したところ,

艦長から「休むな」という指示があったり,

上官が「死ね」,「消えろ」などと発言し,

ダーを投げつけたなどのパワハラがあったようです。

 

 

 

 

①優越的な関係に基づく,

②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により,

③労働者の就業環境を害すること

(身体若しくは精神的な苦痛を与えること)

というパワハラの3つの要素にあてはめると,

上記の艦長や上官の言動は,パワハラに該当します。

 

 

今後,事故調査委員会がパワハラの有無や

自殺との因果関係を調査していくので,

どのような調査結果になるのかに注目したいです。

 

 

さて,海上自衛隊における隊員の自殺ですが,

実は過去にも同じような事件があったのです。

 

 

それが,海上自衛隊護衛艦さわぎり事件です

(福岡高裁平成20年8月25日判決・判例時報2032号52頁)。

 

 

 

 

この事件は,海上自衛隊の三等海曹が

護衛艦さわぎりに乗艦中に首吊り自殺したという事件です。

 

 

遺書はなかったものの,自衛隊内のいじめが疑われ,

艦内において飲酒がされていた等の規律違反や,

隊員を丸刈りにしたという指導方法が取り上げられて,

自殺との関連が問題となりましたが,事故調査委員会は,

いじめの事実は認められないという調査結果を公表しました。

 

 

この調査結果に納得できない遺族が,

国を相手に損害賠償請求訴訟を提起しました。

 

 

裁判では,ある上官から

「お前は三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ。」,

「お前は覚えが悪いな。」,「バカかお前は。三曹失格だ。」

などと誹謗されていたことが認定されました。

 

 

そして,閉鎖的な艦内で直属の上司から

継続的に上記のような侮辱的な言動がされることは,

自殺した三等海曹の心理的負荷を過度に蓄積させるものであり,

指導の域を超えるものであると判断されました。

 

 

この侮辱的な言動によって,三等海曹は,

うつ病を発症し,自殺したと認定されて,

慰謝料合計350万円の請求が認容されました。

 

 

他方で,もう一人の上官の「ゲジ2」,「百年の孤独要員」,

「お前はとろくて仕事ができない。自分の顔に泥を塗るな。」

という言動については,自殺した三等海曹との

関係が良好であったことから,

軽口として許容できるものであるとして,

違法な言動とは認定されませんでした。

 

 

海上自衛隊は,航海中,閉鎖された艦内で

仕事と日常生活をしていくので,

人間関係が一度こじれると,逃げ場がなく,

非常につらい状況に追い込まれてしまうことが予想されます。

 

 

 

 

閉鎖された組織ではパワハラやいじめが

生じる温床となりやすいので,

今回の補給艦ときわの事故調査で,

自衛隊のパワハラやいじめの原因が究明されて,

再発防止策が講じられることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラは許されません!

長崎市の広告代理店に勤務していた男性労働者が,

パワハラや長時間労働で適応障害になり,

休職に追い込まれたとして,

会社に対して損害賠償請求の裁判を提起し,

合計2000万円の損害賠償請求が認められました。

 

 

原告の男性労働者は,「おまえはクビだ」などと

何度も叱責を受けたいたようで,

業務上の指導を逸脱した執拗ないじめ行為

があったと認定されました。

 

 

https://mainichi.jp/articles/20181207/k00/00m/040/225000c

 

 

このようなパワハラの被害が頻繁に起きています。

 

 

 

 

全国の労働局で実施されている労働相談で一番多いのは,

「いじめ・嫌がらせ」の相談で約7万2000件と

15年連続で増加しています。

 

 

また,パワハラを受けて精神障害を発症して

労災認定される件数も年々増えています。

 

 

職場のパワハラは,労働者の尊厳や人格を傷つける

許されない行為であるにもかかわらず,

パワハラを防止するための法律は今までありませんでした。

 

 

そこで,職場のパワハラ防止は喫緊の課題であり,

対策を抜本的に強化することが社会的に求められていることから,

パワハラを防止するための法律を制定する動きがでています。

 

 

12月14日に,労働政策審議会が,

職場でのパワハラ防止策に取り組むように

企業に義務付けるための報告書をまとめました。

 

 

報告書では,職場のパワハラの定義について,

以下の3つの要素を満たすものとしました。

 

 

①優越的な関係に基づく

 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

 ③労働者の就業環境を害すること

(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

 

 

このように定義されたパワハラについて,

会社は,次のような,パワハラを防止するための

雇用管理上の措置を講じることを法律で義務付けられます。

 

 

①職場のパワハラがあってはならない旨の方針の明確化や,

パワハラが確認された場合には厳正に対処する旨の方針や

その対処の内容について就業規則へ規定し,

それを周知・啓発すること

 

 

②パワハラの相談に適切に対応するために

必要な体制の整備をすること

 

 

③パワハラの相談を受けた後の迅速,適切な対応

(相談者からの丁寧な事実確認など)

 

 

④相談者のプライバシーを保護する措置

 

 

その他にも,職場のパワハラに関する紛争解決のための調停制度や,

行政機関による助言や指導などについても法律で規定されます。

 

 

パワハラ行為そのものを処罰したり,

損害賠償請求するための根拠規定は見送られましたが,

パワハラは許されないものであると法律で明示されることで,

パワハラが抑止されることが期待できますので,一歩前進です。

 

 

 

 

パワハラを防止するための法律ができることで,

会社がパワハラを防止するための

雇用管理上の措置義務を怠ったとして,会社に対して,

損害賠償請求をしやすくなると考えます。

 

 

今後は,パワハラの定義に該当するか否かを

明確にするための具体例が指針で明記されますので,

一般の人に,どこまでいけばパワハラになるのかが

理解されやすくなる可能性があります。

 

 

パワハラを防止するための法律が成立して,

パワハラで苦しむ労働者が少なくなることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社内における壮絶ないじめや嫌がらせ

今から8年ほど前に,榮倉奈々主演のフジテレビのドラマ

泣かないと決めた日」が話題になっていました。

 

 

主人公のOL榮倉奈々が,会社内で壮絶ないじめの

体験にあうというドラマです。

 

 

8年前の私は,弁護士になる前の司法修習生でしたので,

まだ労働事件の現場を知らなかったために,このドラマを見て,

本当にこんなにひどいいじめが会社で行われているのだろうか

と疑問に思っていました。

 

 

しかし,弁護士になって,労働事件の法律相談を受けていると,

会社で隔離されている,

同僚から陰湿な悪口を言われている

などのいじめやパワハラの法律相談が多いことを痛感しました。

 

 

本日は,いじめや嫌がらせが労災と認定された

国・京都下労基署長(富士通)事件を紹介します

(大阪地裁平成22年6月23日判決・労働判例1019号75頁)。

 

 

この事件の原告は,2年以上にわたり,

複数の女性社員から,次のような執拗ないじめや嫌がらせを

受けていたと認定されました。

 

 

 

 

①同僚の女性社員からパソコン操作について質問を受け,

教えた際,同女から御礼としてケーキをもらったことについて,

女性社員4名から「あほちゃう」,

「あれケーキ食べたいから手伝ったんやで」

などと執拗な陰口を受けた。

 

 

②原告に対するいじめの中心人物を含む女性社員4名から

勤務時間中にIPメッセンジャーを使用して毎日のように

同期らに原告に対する悪口を送信された。

 

 

③コピー作業をしていた際,女性社員2名から目の前で

「私らと同じコピーの仕事をしていて,高い給料をもらっている」

などと言われた。

 

 

④加害者の席が異動により原告の席の近くになった際,

加害者を含む女性社員3名から

「これから本格的にいじめてやる」などと言われた。

 

 

⑤女性社員1名から,原告の目の前で他の社員に対して,

「幸薄い顔して」,「オオカミ少年とみんなが言っている」

などと悪口を言われた。

 

 

これらのいじめや嫌がらせは,

集団でなされたものであって,

長期間継続してされたものであり,

その陰湿さや執拗さの程度において,

常軌を逸した悪質なひどいいじめや嫌がらせ

であると判断されました。

 

 

 

さらに,原告が上司にいじめや嫌がらせの相談をしても,

会社は何らかの防止策をとったわけではなく,

原告は失望感を深めました。

 

 

その結果,いじめや嫌がらせと原告の精神障害発症との間に

因果関係が認められるとして,労災が認められました。

 

 

いじめや嫌がらせは,録音をしていないと証明が難しいのですが,

本件事件では,原告が医師やカウンセラーに

いじめや嫌がらせのことを話していたので,

カルテなどにいじめや嫌がらせのことが詳細に記載されていて,

立証がうまくいったのだと思います。

 

 

会社で,いじめや嫌がらせを受けた場合,

まずは録音する等の記録に残し,

精神的にしんどいときには,無理せず,

年次有給休暇を使って会社を休み,

心療内科へ通院するようにしましょう。

 

 

その後,労災の申請をしたり,

いじめの加害者や会社に対して,

損害賠償請求を検討したいときには,

弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社から仕事を与えられないことはパワハラなのか?

会社から仕事を与えられない,

会社から無意味な仕事をさせられる,

窓際に追いやられる,

追い出し部屋につれていかれた。

 

 

 

時として,会社は,労働者に対して,

このような非情なことをしてきます。

 

 

なぜ,会社は,このようなことをするのかといいますと,

本当は,労働者を能力不足などを理由に解雇したいのですが,

解雇はよほどの理由がないとできないので,

解雇をしても解雇が無効になるリスクがあります。

 

 

これに対して,労働者が自分から退職すれば,

合法的に労働契約を終了することができます。

 

 

そのため,ブラック企業は,仕事を与えないなど,

労働者を干すことで,労働者を精神的に追い詰めて,

自己都合退職に追い込むのです。

 

 

 

 

それでは,労働者に仕事を与えないことが

パワハラに該当して,労災請求ができないのでしょうか。

 

 

本日は,仕事を与えられないなどのパワハラを受けて,

うつ病を発症したとして,労災を請求した,

中国新聞システム開発事件を紹介します

(広島高裁平成27年10月22日判決・労働判例1131号5頁)。

 

 

この事件では,原告の労働者は,

不要なデータ記録媒体の磁気テープを

ハンダごてで焼いて穴を開ける仕事や

マシンルームの掃除を命じられました。

 

 

原告の労働者が,これに反発すると,会社から,

「これからは,自分ができると思うことを見つけてやってください」

と言われ,仕事を与えられなくなりました。

 

 

そして,朝礼の際に,他の社員がいる前で

「待機状態です」と言わされました。

 

 

3ヶ月ほど,仕事が与えられず,

原告の労働者は,うつ病を発症しました。

 

 

原告の労働者は,労災を請求しましたが,

労働基準監督署は,労災と認めなかったので,

裁判を起こしました。

 

 

広島高裁は次のように判断しました。

 

 

まず,労働者に仕事をする意思があり,

客観的に仕事することが可能であるにもかかわらず,

会社が具体的な仕事を担当させず,または,

労働者の地位や能力と比べて著しく軽易な業務しかさせないことは,

労働者に対して,自分は会社から必要とされていない

という無力感を与え,他の労働者との関係において,

劣等感や恥辱感を与えることになります。

 

 

 

 

そのため,状況によっては,仕事を与えないことが,

精神障害を発症する原因となる強い

精神的負荷を与えることにつながるのです。

 

 

そして,業務上の合理的な理由なく,

3ヶ月間仕事を与えられない状態に置かれることで

受ける心理的な負荷は強度であり,そのストレスによって,

うつ病を発症したと判断されました。

 

 

通常,パワハラといえば,殴るけるなどの暴行や,

「給料泥棒」などの言葉の暴力が典型的ですが,

仕事を与えないことがパワハラに該当するとして,

労災が認められるのは,珍しいことです。

 

 

厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する

円卓会議ワーキンググループ報告」において

パワハラが6つの類型に分類されているのですが,

その1つに過小な要求(業務上の合理性がなく,

能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや

仕事を与えないこと)があげられています。

 

 

このように,仕事を与えられないことも

パワハラにあたり,場合によっては,

労災が認められることがあるのです。

 

 

会社から干されて,精神疾患を発症した場合には,

労災の申請をするかを検討してみることをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラ防止の法律を実現しよう

厚生労働省は,職場でのパワハラを防止するために,

企業に対し,防止策に取り組むことを

法律で義務付ける方針を決めました。

 

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02376.html

 

 

労働事件の法律相談を担当していますと,

「バカ」,「アホ」,「給料泥棒」,

「やめてしまえ」,「あなたは必要とされていない」

といった暴言を吐かれる,大声で長時間にわたり叱責される,

といったパワハラの相談が本当に多いと実感しています。

 

 

 

 

都道府県の労働局の労働相談において

「いじめ・嫌がらせ」が増加しており,

パワハラによる精神障害の労災請求の件数が

増加していることからも,

職場のパワハラ防止は喫緊の課題なのです。

 

 

パワハラがこれだけ社会問題になっているにもかかわらず,

パワハラを防止するための法律はないのです。

 

 

セクハラやマタハラについては,

男女雇用機会均等法等で,会社に対する

防止措置義務が規定されているにもかかわらず,

パワハラについては,法規制がないのが現状なのです。

 

 

ようやく,パワハラを防止するための法規制が動き出したのです。

 

 

まず,職場におけるパワハラの定義を,

次の3つの要素を満たすものとする方向になりそうです。

 

 

① 優越的な関係に基づく

② 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により

③ 就業環境を害すること

(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)

 

 

 

 

もっとも,この定義では,

「優越的な関係」とはどのような関係なのか,

「業務上必要かつ相当な範囲」とはどのような範囲なのか,

「就業環境を害する」とは具体的にどのようなことか,

が分かりにくくなっています。

 

 

そこで,今後は,指針において,

パワハラに該当する具体例などを

公表していくことになります。

 

 

「優越的な関係」という定義ですと,

同僚や部下からのいじめが含まれにくいという問題がありますが,

パワハラか否かの共通認識がないと,

多くの人が判断に迷いますので,

定義を定めることはパワハラ防止のために一歩前進です。

 

 

次に,会社がパワハラについて講ずべき措置として,

次のことが義務付けられる方向になりそうです。

 

 

・パワハラ行為が確認された場合には厳正に対処する旨の方針と

その場合の対処の内容を就業規則などに明記して周知する。

 

 

・パワハラの相談に適切に対応するために必要な体制を整備する。

 

 

・パワハラが起きたら迅速に調査し,適切な対応をとる。

 

 

会社がパワハラを防止するための措置が法律で明確にされれば,

会社は,積極的にパワハラを防止するために動き出しますので,

パワハラが抑止されることが期待されます。

 

 

さらに,今,現場では,顧客や取引先からの

ハラスメントも深刻な問題となっています。

 

 

 

 

サービス業や交通労働,医療現場において,

会社外の人物からのいじめ・嫌がらせが横行しているようです。

 

 

これらの顧客や取引先からのハラスメントについても,

今回,「職場のパワハラに類するもの」として,

望ましい措置を周知・啓発する方向性になりました。

 

 

悪質な顧客や取引先に断固として対応する会社が増えれば,

顧客や取引先からのハラスメントは許されないという

メッセージが社会的に広がり,被害を予防できることが期待されます。

 

 

このように,ようやく,パワハラを防止するための

法律化に向けて動き出しましたので,

パワハラの被害を少しでも減らすように,

今後の動きを見守っていきましょう。

 

 

会社にとっても,パワハラを防止することで,

社員が定着していきますので,

積極的にパワハラ防止に取り組んでもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

なぜ労働者は裁判を起こすのか~ディズニーパワハラ訴訟から考える~

以前ブログに記載しましたが,現在,

千葉地裁において,東京ディズニーランドで

着ぐるみをかぶってショーに出演していた

契約社員の女性2人が,過重労働やパワハラで

心身に苦痛を受けたとして,

運営会社であるオリエンタルランドに対して,

損害賠償を請求する裁判が争われています。

 

 

30代の契約社員の女性は,

来場者との記念撮影中に男性客から暴行を受けて負傷したため,

上司に労災申請の協力を求めましたが,上司から

「エンターテイナーなんだから,それくらい我慢しなきゃ」,

「君は心が弱い」と言われて,

労災申請に協力してもらえなかったようです。

 

 

いわゆる労災隠しです。

 

 

会社は,労働者に労災保険を利用されると,

労働基準監督署が労災について会社を調査して,

行政指導や刑事告発をしてくるおそれがあったり,

会社が負担する労災保険料が増額される可能性があるため,

労災事故が発生しても,労働者に労災保険を使わせないように,

はたらきかけることがあります。

 

 

しかし,労災事故が発生した場合,

会社は労働基準監督署に報告する義務

を負っていますので,労災隠しは明らかに違法なことなのです。

 

 

 

 

さらに,30代の契約社員の女性は,

体調が悪かったことを上司に相談したところ,

「30歳以上のババァはいらねーんだよ。辞めちまえ」

と言葉の暴力によるパワハラを受けたようです。

 

 

もうひとりの原告である20代の契約社員の女性は,

10~30キロの着ぐるみを着用してショーに出演し続けたところ,

左腕が重くなりはじめ,休みをとるためには

代わりの出演者を見つけなければならないために休めず,

腕や肩にしびれが生じる胸郭出口症候群を発症したようです。

 

 

労働者が6ヶ月間継続勤務し,8割以上出勤した場合,

会社は,10日間の有給休暇を与えなければならないのですが,

代わりの出演者を見つけなければ休みをとれないのでは,

十分な有給休暇がとれていなかったことが予想されます。

 

 

通常,会社から理不尽な仕打ちを受けた労働者は,

このまま泣き寝入りするか,会社に一矢報いるために

弁護士に相談するか,相当悩みます。

 

 

特に,裁判まで起こすとなれば,

時間とお金がかかりますし,

何かうわさをされるのではないかと不安になるものです。

 

 

それでも裁判を起こす労働者は,

会社の職場環境を少しでもよくしたいという

希望をもって裁判を起こすことがあります。

 

 

 

 

このまま,自分が何もしなければ,

職場はそのままであり,

職場に残ってがんばっている同僚のためにも,

裁判を決意する労働者がいます。

 

 

未払い残業代請求やパワハラの損害賠償請求

の裁判が起こされれば,会社は,弁護士に相談し,

今後,労働者から裁判を起こされないようにするために,

労働基準法などを守るように対策をとるようになります。

 

 

さらに,裁判がマスコミに報道されると,

あの会社は労働者を大切にしないブラックな会社だ

とレッテルをはられてしまい,人を採用したくても,

求人が集まらなくなるリスクも生じます。

 

 

会社も,労働者との裁判を避けたいのです。

 

 

ディズニーパワハラ訴訟の2人の原告も,

上司に相談しても何も変わらず,裁判をすることで,

職場が変わることを願って,提訴したようです。

 

 

裁判をすることは勇気のいることですが,

裁判をすることで,会社の職場環境がよくなることも期待できます。

 

 

泣き寝入りせずに,職場環境をよくするために,会社に一矢報いたい。

 

 

このような労働者の思いを大切にして,

今後とも,労働者をサポートしていきます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

言葉の暴力によるパワハラを受けたら録音しましょう

バカ,ふざけるな,役立たず,給料泥棒,死ね

などの暴言を吐かれるという

パワハラの被害があとを絶ちません。

 

 

パワハラの法律相談で最も多いのが,

言葉による精神的な攻撃です。

 

 

 

 

しかし,このような言葉の暴力の事案には

特有の難しさがあります。

 

 

それは,加害者の暴言をどうやって

証明するかという問題です。

 

 

裁判では,被害者である労働者が,

加害者から具体的な暴言を吐かれたことを

証明できなければ,被害者の損害賠償請求

は認められないのです。

 

 

加害者が,そのような暴言を吐いていないと主張すれば,

被害者は,暴言を吐かれた事実をどうやって証明しようかと

頭を悩ませることになります。

 

 

職場の同僚が加害者の暴言を聞いていたのであれば,

その同僚に証言してもらう方法がありますが,

同僚は,会社からの報復を恐れて,

正直に証言してくれないリスクがあります。

 

 

そこで,私は,言葉の暴力のパワハラの場合,

録音をするようにアドバイスしています。

 

 

 

 

加害者の暴言が録音されていれば,

暴言を吐かれた事実を証明することができます。

 

 

言葉の暴力を録音する場合,

加害者に録音の許可をとる必要はありません。

 

 

加害者に録音の許可を求めると,

加害者は警戒してしまい,暴言を吐かなくなり,

証拠を確保することができなくなるからです

(暴言を辞めさせるためには効果がありますが・・・)。

 

 

それでは,言葉の暴力を秘密に録音していたことが

会社にばれてしまい,秘密録音を禁止するように

求められた場合,どうすればいいでしょうか。

 

 

秘密録音との関係では,労働者の守秘義務が問題になります。

 

 

労働者は,在職中に知り得た企業情報

について守秘義務を負っています。

 

 

ここでいう企業秘密とは,公に知られておらず,

企業の外に漏れると,企業の正当な利益を害する情報です。

 

 

 

 

そのため,労働者が会社の機密情報を秘密録音して,

外部に漏らした場合,守秘義務違反により,

懲戒処分をされる可能性があります。

 

 

しかし,秘密録音の対象が,機密情報ではなく,

パワハラの暴言に限定されているのであれば,

守秘義務違反にはならず,

会社は懲戒処分できないことになると考えます。

 

 

最初に説明したとおり,言葉の暴力によるパワハラを,

労働者が証明するためには,秘密録音が最も効果的ですので,

労働者が自分の身を守るために,秘密録音をして,

録音内容を,パワハラ問題の解決のためだけに

利用する分には,何も問題はないと考えます。

 

 

言葉の暴力によるパワハラの被害にあった場合は,

言葉の暴力を証明するためにも,

こっそりと録音をするようにしましょう。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラの3つのハードル

平成29年度に全国の総合労働相談コーナーに寄せられた

労働相談の中で,もっとも多かった労働相談は,

「いじめ・嫌がらせ」で,全体の相談のうち23・6%を占めています。

 

 

約4分の1が「いじめ・嫌がらせ」に関する相談であり,

職場におけるパワハラが深刻な問題となっていることを物語っています。

 

 

 

 

深刻なパワハラ問題ですが,パワハラを理由に会社に

損害賠償請求をするには,3つのハードルがあります。

 

 

1つ目は,立証のハードルです。

 

 

「バカ」,「アホ」,「給料泥棒」といった言葉の暴力の場合,

ボイスレコーダーなどで録音しておかないと,

言った言わないの問題となり,

パワハラの事実を証明することが困難となります。

 

 

労働者は,パワハラの事実を証明するために,言葉の暴力を受けた場合,

ボイスレコーダーなどで録音するようにしてください。

 

 

 

 

2つ目は,どのような言動が違法なパワハラと

認定されるのかというハードルです。

 

 

上司が部下のミスを注意・指導することは必要なことであり,

どこまで厳しく叱責すれば,

違法なパワハラになるのかという線引が難しいのです。

 

 

そこで,どのような言動が違法なパワハラと認定されるのかについて,

パワハラの裁判例を分析することが重要になります。

 

 

最近の裁判例ですと,A住宅福祉協会理事らほか事件において,

パワハラによる損害賠償請求が認められました

(東京地裁平成30年3月29日判決・労働判例1184号5頁)。

 

 

この事件では,次のような理事の言動が,

侮辱的かつ威圧的に,繰り返し退職を強要するものであり,

原告の名誉感情を侵害し,社会通念上許される範囲を超えて,

違法なパワハラに該当するとされました。

 

 

「自分の身の振り方を考えてください」

「ほら,返事がないの。業務命令違反になっちゃうよ,ほら」

「働けないという前提で,どうしますか」

「これやらないと,今度,懲戒解雇になるよ。退職金出ないよ」

「著しい障害だろう。おかしくなってるんだろう,

そういう行動をとるということは」

 

 

3つ目は,慰謝料の金額のハードルです。

 

 

労働者がパワハラの事実を立証して,

違法なパワハラだと認められたとしても,

労働者にとって満足できる慰謝料が認められない可能性があります。

 

 

慰謝料の金額は,ケース・バイ・ケースで判断されますが,

おおむね10万~150万円の範囲でしか認められていません。

 

 

上記の事件では,慰謝料の合計が50万円であり,

パワハラの被害者が納得できる金額に届いていないです。

 

 

このように,パワハラ事件は,頻繁に発生しているのですが,

上記の3つのハードルがあることから,

労働者が泣寝入りしてしまうことも多いのが現実です。

 

 

 

 

そこで,労働者が泣寝入りしないように,

せめて,2つ目のハードルである,

どのような言動が違法なパワハラになるのかについて,

法律で明確にするべきなのです。

 

 

法律で明確に禁止されるべきパワハラの類型が定められれば,

人は禁止される行為を控えるようになって,

パワハラが減少していく可能性があります。

 

 

現在,労働政策審議会において,

パワハラを禁止する法律を制定するかが議論されています。

 

 

パワハラで苦しむ労働者を少なくするためにも,

パワハラを禁止する法律の制定を実現させたいので,

下記のサイトにおいて電子署名にご協力いただければ幸いです。

 

 

http://ur0.work/Mu9I

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。