働き方改革関連法に盛り込まれた毒

読者の皆様,新年あけましておめでとうございます。

 

 

今年も,働く人にとって役に立つ労働に関する情報を

発信していきますので,どうぞよろしくお願い致します。

 

 

さて,今年の4月から,いよいよ

働き方改革関連法が施行されます。

 

 

残業時間の罰則付き上限規制,同一労働同一賃金,

年休取得の罰則付きの義務化など,労働者を保護するための,

まさに「働き方改革」と称するにふさわしい制度もありますが,

働き方改革関連法には,労働者にとって

毒となる制度も盛り込まれています。

 

 

 

 

その毒といえるものとは,

高度プロフェッショナル制度です(以下,「高プロ」といいます)。

 

 

高プロとは,高収入の専門職の労働者に対して,

労働基準法で定められている労働時間規制が適用されなくなり,

どれだけ働いても,会社は,

残業代を支払わなくてもいいことになってしまう制度です。

 

 

この高プロについての省令案や指針案について,

昨年12月に公表されましたので,

本日は,この点について解説します。

 

 

高プロの対象となる労働者は,年収1075万円以上の

次の5つの業務に従事している者です。

 

 

 

 

①金融商品の開発

②投資判断に基づく資産運用や有価証券の売買(ディーラーなど)

③相場の動向などに基づく助言(アナリスト)

④顧客の事業運営に関する調査分析や助言(経営コンサルタント)

⑤新商品の研究開発

 

 

ここで注意しなければならないのは,

単にこれら5つの業務の名称がついているだけで

高プロが適用されることにはならず,

実質的かつ具体的に労働時間規制になじまない

業務に限定されています。

 

 

さらに,高プロの対象業務は,「当該業務に従事する時間に関し

使用者から具体的な指示を受けて行うものではないこと

という要件を満たす必要があります。

 

 

具体的には,次のような指示がされていると,

高プロは適用されないことになります。

 

 

①出勤時間の指定等始業・終業時間や深夜・休日労働など

労働時間に関する業務命令や指示

②労働者の働く時間帯の選択や時間配分に関する

裁量を失わせるような成果・業務量の要求や納期・期限の設定

③特定の日時を指定して会議に出席することを一方的に義務付けること

④作業工程,作業手順などの日々のスケジュールに関する指示

 

 

 

 

このように,高プロの対象となる労働者は,

かなり限定されていますので,来年4月以降,

会社から高プロの適用の打診を受けた場合,

本当に自分の仕事が高プロの対象業務なのかを

慎重に確認することが必要です。

 

 

そして,高プロを導入するためには,

適用される労働者個人の同意と労使委員会の決議

という手続が必要になります。

 

 

労働者は,高プロの適用を拒否しても,

そのことを理由に給料を減額されるなどの

不利益な取扱はされませんので,

高プロの適用に同意しないようにしましょう。

 

 

仮に,同意をしたとしても,後から撤回できますし,

撤回をしたことで不利益な取扱はされません。

 

 

また,労使委員会で決議されなければ

高プロは導入できませんので,労働組合は,

高プロが導入されないように必死で

抵抗するようにしてください。

 

 

労働者の同意も労使委員会の決議も,

会社からの十分な説明や情報開示がされることが

前提となっていますので,会社からの十分な説明がない場合にも

高プロが無効になる可能性があります。

 

 

さらに,会社に義務付けられている1年間に104日以上,

かつ,4週間で4日以上の休日確保が守られていない場合にも,

高プロは無効になる可能性があります。

 

 

このように導入するためのハードルがかなり高いので,

おそらく地方の中小企業で,

これらの要件を全て満たして適法に運用できる会社は

ほとんどないと考えられます。

 

 

働き方改革関連法に盛り込まれた毒である高プロですが,

まずは会社に高プロを導入させない,

導入されたとしても無効になる点はないかを

詳細に検討していくことが重要になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

教師の労働時間規制

昨日の医師の労働時間の規制に関連して,

本日は,教師の労働時間の規制について解説します。

 

 

12月7日に,教師の働き方改革を議論している

中央教育審議会の特別部会が,

教師の長時間労働の解消策に向けた答申素案を公表しました。

 

 

 

 

このブログで何回か記載しましたが,教師の残業については,

「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する法律」

給特法といいます)が,非常に大きな問題となっていました。

 

 

給特法では,基本給の4%に相当する

教職調整額が支給される代わりに,どれだけ残業しても,

残業代が支払われない取り扱いとなっています。

 

 

この基本給の4%という水準は,

給特法が成立した1971年当時の

平均的な教師の残業時間をもとに設定されているようです。

 

 

時代が変化し,学校における保護者対応が複雑になっており,

ICTを活用した授業や,アクティブラーニングなどの

新しい学習法に対応しなければならないなど,

教師の仕事が増えているにもかかわらず,

給特法の取り扱いは変わらないまま続けられてきたのです。

 

 

どれだけ働いても基本給の4%以上の残業代が

発生しないのであれば,教師に対する労働時間の管理が甘くなり,

生徒のためにとがんばる教師の善意に依存した結果,

教師に長時間労働が蔓延したのです。

 

 

その結果,過労死ラインと言われている

1ヶ月の時間外労働が80~100時間を超えて

働いている教師が増え,教師の過労死や過労自殺の

原因になっているのです。

 

 

 

 

この悪循環を断ち切るための政策が求められていたところ,

ようやく教師の労働時間についての規制が動き出したのです。

 

 

今回の答申素案では,原則として,

1ヶ月の時間外労働が45時間を超えないこと,

1年間の時間外労働が360時間を超えないこととされました。

 

 

例外的に,児童生徒に係る臨時的な特別の事情により

勤務せざるを得ない場合についても,

1ヶ月の時間外労働が100時間未満であること,

連続する複数月の1ヶ月あたりの平均の時間外労働が

80時間未満であること,1年間の時間外労働が

720時間を超えないこととされました。

 

 

ただし,この例外的な場合に残業時間の上限を超えて残業しても,

教師の雇用主である自治体に罰則は科せれられません。

 

 

この点が,民間企業と異なるところです。

 

 

働き方改革関連法の成立によって,民間企業で,

上記の上限を超えて労働者に残業をさせた場合,

会社には,6ヶ月以下の懲役または

30万円以下の罰金が科せられます。

 

 

また,教師が校内に在校している時間を,

基本的には労働時間とし,校外での勤務についても,

職務として行う研修への参加や児童生徒の引率の職務に

従事している時間については,職務命令に基づくもの以外も含めて

外形的に把握して,労働時間とすることになりました。

 

 

さらに,タイムカードによる記録や

電子機器の使用時間の記録などの客観的な方法によって,

労働時間を適正に把握することになりました。

 

 

 

 

給特法そのものが廃止されておらず,

残業の罰金付上限規制が導入されていない点で不十分なのですが,

教師の労働時間を適切にしていくための第一歩として評価できます。

 

 

これを機に,教師の働き方が見直されて,

教師の労働時間が削減されて,

教師の過労死や過労自殺が減少していくことを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

医師の労働時間規制

昨日に引き続き,医師の働き方改革について記載します。

 

 

東京都内の病院で産婦人科医として働いていた

30代の男性が自殺したのは,1ヶ月170時間を超える

時間外労働が原因であるとして,

品川労働基準監督署が労災認定をしました。

 

 

電子カルテのアクセス記録によれば,

この男性医師は,月に4回程度,当直勤務をし,

自殺する1ヶ月前の時間外労働が約173時間で,

6ヶ月間ほとんど休日がない状態で働いていたようです。

 

 

 

 

精神障害の労災認定基準では,

1ヶ月以上にわたって連続勤務を行った場合,

心理的負荷は「強」となり,

1ヶ月の時間外労働が100時間以上でもあることから,

労災が認定されたのだと思われます。

 

 

医師は,高度な専門知識を求められる職業であるため,

若いころに,知識と手技を身につけるために,

長時間労働となりやすいようです。

 

 

実際,1ヶ月の時間外労働80時間が

過労死ラインとされているのですが,

過労死ラインの2倍である1ヶ月の時間外労働160時間

を超えて働いた医師の約半数以上を

20代と30代の医師が占めており,

20代と30代の医師の勤務時間が長くなっているのです。

 

 

また,長時間労働以外にも,宿直勤務の負担も,

医師の過労の原因になっていると考えられます。

 

 

夜働いて,昼間眠ると,睡眠の質が落ちてしまい,

疲労が回復しにくくなるのです。

 

 

このように,過労死ラインを超えて

働いている医師が多いことから,

医師が健康で働くための労働環境を

整備することが求められているのです。

 

 

 

 

そこで,医師の働き方に関する検討会は,

医師の残業時間の上限の設定方法について案を提示しました。

 

 

まず,1ヶ月の時間外労働が100時間未満,

複数月の時間外労働の平均が80時間未満

という残業時間の上限が提示されました。

 

 

この基準は,今回の働き方改革関連法で導入された,

罰則付きの残業時間の上限と同じになります。

 

 

次に,必要な地域医療が適切に確保されるため,及び,

医療の質を維持・向上するための診療経験が担保されるために,

一定の条件をもとに,上記の上限規制を緩和する案が提示されました。

 

 

1つは,地域医療提供体制の確保の観点から,

対象となる医療機関を特定して,経過措置としての,

上記の上限規制を緩和する水準を設定するという案です。

 

 

もう1つは,一定の期間集中的に

技能の向上のための診療を必要とする医師について,

医療機関を特定した上で,本人の申し出に基づき,

上記の上限規制を緩和する別の水準を設定するという案です。

 

 

この2つの場合には,医師に最低限必要な

睡眠時間が確保できるように,勤務と勤務の間に

一定時間の休息を設けて,連続勤務時間を制限する

勤務間インターバルが義務付けられます。

 

 

 

 

そもそもの残業時間の上限規制が

過労死ラインに設定されていることの問題点があるものの,

まずは,医師の健康を確保するための労働時間の規制が

一歩進んだことは評価すべきと考えます。

 

 

過労死や過労自殺する医師をなくし,

医師が健康に働ける労働環境を整備するためにも,

医師の労働時間の規制を着実にすすめていくべきです。

 

 

今後の医師の働き方改革の行方に注目したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

医師の自己研鑽は労働時間なのか?

現在,厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会

という組織において,医師の長時間労働などを

どのように改善していくべきかが議論されています。

 

 

医師の労働には,次のような特殊性があります。

 

 

 

 

病気の発生や症状の変化が予測不可能であり,

治療効果が不確実である一方,

国民の生命と健康を預かるため,

医療安全の確保が必要不可欠です。

 

 

医療の不確実性を重視すれば,

突発的な事態に対応するために,医師は,

長時間労働をせざるをえなくなります。

 

 

他方,医師が働きすぎると,疲労が蓄積し,

医師の過労死や医療事故といった最悪の事態に発展し,

医療の公共性を確保できなくなります。

 

 

平成30年度の過労死白書をみても,

救急や入院患者の緊急対応,診断書やカルテの書類作成などが

,医師の時間外労働の原因として挙げられています。

 

 

このように,医療の不確実性と公共性を両立させる観点から,

医師の働き方をどのように改善していくのかが議論されているのです。

 

 

この検討会で,注目される判断がされました。

 

 

それは,医師の自己研鑽が労働時間に該当するのかという点です。

 

 

 

 

医師は,高度な専門知識を取得して,

医療水準を維持・向上させるために,

自己研鑽が欠かせない職業です。

 

 

この自己研鑽が,労働に該当すれば,

病院としては,医師に賃金を支払わなければなりませんし,

適切に労働時間を管理して,

医師の疲労が蓄積しないようにしなければなりません。

 

 

他方,自己研鑽が労働でないのであれば,

病院は,医師に賃金を支払う必要はなく,

医師の純粋なスキルアップのために,

医師の責任で行うものになります。

 

 

このように,自己研鑽が労働時間に該当するか否かは,

医師と病院にとって気になるところですが,

これまで明確な指針がありませんでした。

 

 

そもそも,労働時間とは,会社の指揮命令下に置かれている時間,

会社の明示または黙示の指示により働く時間といわれており,

労働から離れることが保障されていることが必要です。

 

 

しかし,この基準だけでは,いまいちよく分からず,

個々の事件で,具体的な事実を検討して,

労働時間に該当するかが判断されています。

 

 

今回,厚生労働省は,医師の自己研鑽が労働時間に該当する例を

具体的に提示したので,かなりわかりやすくなりました。

 

 

診療ガイドラインについての勉強,

新しい治療法や新薬についての勉強,

自らが術者である手術や処置についての予習や振り返りは,

診療の準備行為または診療後の後処理として,

基本的に労働時間に該当します。

 

 

学会や外部の勉強会への参加や発表準備,

院内勉強会への参加や発表準備,

本来業務とは区別された臨床研究にかかる診療データの整理,

症例報告の作成,論文執筆,

大学院の受験勉強,

専門医の取得・更新にかかる症例報告作成,講習会受講は,

自由な意思に基づき,業務上必須でない行為を所定労働時間外に,

上司の指示なく行う場合は,労働時間には該当しません。

 

 

 

 

もっとも,実施しない場合には制裁などの不利益が課されて,

実施が余儀なくされている場合,

業務上必須である場合,

業務上必須でなくても上司が指示して行わせる場合

は労働時間に該当します。

 

 

おおむね,今の裁判例の見解をもとに,

自己研鑽が労働時間にあたる場合とあたらない場合を,

具体的に明確化した点が評価できます。

 

 

とてもわかりやすくなりました。

 

 

病院の経営者や管理職には,上記の見解をもとに,

医師の自己研鑽の時間を把握していくのは大変だと思いますが,

医師の働き過ぎを防止して,

国民が安心して医療を受けられる体制を維持するためにも,

少しずつでもいいので検討していってもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

高プロを会社に導入させないためには

10月31日,厚生労働省は,

高度プロフェッショナル制度(以下,「高プロ」といいます)

の対象業務の素案を公表すると共に,

高プロの導入手続について,

詳細な素案を公表しました。

 

 

本日は,高プロの導入手続について,解説します。

 

 

このブログで何度も指摘してきましたが,

高プロとは,労働時間の規制が撤廃されてしまい,

どれだけ働いても残業代がゼロになるという制度です。

 

 

 

 

どれだけ働いても残業代ゼロになるので,

会社は,労働者を働かせ放題にできてしまうので,

高プロは,過労死を助長するとして

猛烈な批判を受けながらも成立してしまった,

ブラックな制度です。

 

 

高プロの導入によってメリットがある

労働者はほとんどいないと考えられます。

 

 

そこで,成立してしまった高プロを

いかに利用させないかが重要になります。

 

 

今回,厚生労働省から公表された素案を検討したところ,

高プロの導入を阻止することは十分に可能だと思いました。

 

 

高プロの導入手続は次の5つのステップにわかれます。

 

 

①労使委員会を設置する

②労使委員会で決議する

③決議を労働基準監督署に届け出る

④対象労働者の同意を書面で得る

⑤対象労働者を対象業務に就かせる

 

 

まず,ステップ①の労使委員会ですが,

委員の半数を,労働組合または労働者の過半数代表者が指名できます。

 

 

 

 

労働者にとって有利な決議をしてくれる

委員を送り込むことができるのです。

 

 

労使委員会において,会社の意見に流されずに,

労働者の利益をしっかりと代弁できる委員を

指名することが重要になります。

 

 

次に,ステップ②では,労使委員会において,

対象業務や対象労働者の範囲,

対象労働者の健康確保措置などを決議します。

 

 

労使委員会の決議は,5分の4以上の多数

による決議がなければ有効になりません。

 

 

ステップ①で,労働者の意見を代弁してくれる

委員が半数選任されていれば,労使委員会の決議で,

高プロの導入に反対の意見を示すことができて,

5分の4以上の賛成には届かず,

高プロが導入されないことになります。

 

 

労働組合は,労使委員会で高プロにしっかりと反対すべきです。

 

 

高プロの手続の要件からすれば,

労働組合が反対すれば,

高プロの導入を阻止できるのです。

 

 

労働組合が,安易に高プロに賛成したのであれば,

その労働組合は,ブラック労働組合という

烙印を押される危険があるので,気をつけてください。

 

 

仮に,労使委員会において高プロの導入が決議されても,

ステップ④において,対象労働者が同意しなければ,

その労働者には,高プロは適用されません。

 

 

会社は,対象労働者の同意を得るために,

対象労働者に対して,高プロの制度の概要や

労使委員会の決議の内容,

同意した場合の賃金や評価制度について,

しっかり説明した上で,同意を得る必要があります。

 

 

労働者は,同意しなくても,

不利益な取扱を受けないので,

会社の説明に納得できなければ,

勇気をもって,同意をしないでください。

 

 

 

 

また,同意をしてしまっても,

後から同意を撤回できますし,

同意を撤回しても,

不利益な取扱を受けることはありません。

 

 

このように,高プロを導入するためには,

会社は厳しい要件を満たす必要がありますので,

労働組合や労働者は,安易に高プロが導入されないように,

明確に反対してください。

 

 

高プロを導入しようとする会社は,

ブラック企業の可能性が高いと肝に銘じてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

高プロの対象業務とは?

厚生労働省が,10月31日に,

高度プロフェッショナル制度(「高プロ」といいます)

の具体的な対象業務の素案を公表しました。

 

 

高プロが適用される労働者は,

労働基準法で定められている労働時間の規制が

適用されなくなる結果,どれだけ働いても残業代がゼロになります。

 

 

 

 

そのため,働き方改革関連法の中で,

「残業代ゼロ法案」,「過労死促進法案」などと

度重なる批判をされながらも,成立してしまった残念な制度です。

 

 

働き方改革関連法では,高プロの対象となる業務として,

高度の専門的知識等を必要とし,その性質上

従事した時間と従事して得た成果との関連性が

通常高くないと認められる業務」と定められました。

 

 

しかし,この法律の文言を見ても,

どのような業務が高プロの対象になるのかが,

さっぱり分かりません。

 

 

 

 

法律の文言が抽象的ですと,拡大解釈されるおそれがあり,

対象となる業務が今後拡大していく可能性があります。

 

 

さらに,対象業務を法律ではなく,

省令で決めることになるので,国会審議を経ずに,

厚生労働省が国民の監視が届かないところで

決めてしまうおそれもあります。

 

 

このように,高プロは欠陥だらけなのですが,

ようやく具体的な対象業務が明らかになりました。

 

 

高プロの対象業務は,次の5つです。

 

 

①金融商品の開発業務

 ②金融商品のディーリング業務

 ③アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)

 ④コンサルタントの業務

(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)

 ⑤研究開発業務

 

 

この5つの業務であっても,

対象になりえる業務と対象にならない業務

の具体例も公表されました。

 

 

①金融商品の開発業務では,

金融工学や統計学の知識を用いた

新たな金融商品の開発業務は対象になりえて,

金融サービスの企画立案や

データの入力・整理の業務は対象にならないとされました。

 

 

②金融商品のディーリング業務では,

資産運用会社のファンドマネージャーやトレーダーの業務,

自社の資金で株式や債券の売買をする業務は対象になりえて,

投資判断を伴わない顧客からの注文の取次や

金融機関の窓口業務は対象にならないとされました。

 

 

 

 

③アナリストの業務では,

運用担当者に対し有価証券の投資に関する

助言を行う業務は対象になりえて,

一定の時間を設定して行う相談業務や

分析のためのデータ入力・整理を行う業務は

対象にならないとされました。

 

 

④コンサルタントの業務では,

業務改革案などを提案してその実現に向けて

アドバイスや支援をしていく業務は対象になりえて,

個人顧客を対象とする助言の業務は

対象にならないとされました。

 

 

⑤研究開発業務では,

新型モデル・サービスの開発の業務は対象になりえて,

既存の商品やサービスにとどまり,

技術的改善を伴わない業務は対象にならないとされました。

 

 

 

 

ある程度,対象業務が具体的になりましたが,

それでも,あいまいな点が残っています。

 

 

一般的には5つの業務の範疇に入っていても,

会社から労働時間に関する具体的な指示がされていれば

対象業務になりませんし,単純な作業も対象業務になりません。

 

 

高プロが導入されそうな場合には,

自分の仕事が5つの対象業務に含まれるのかを

注意深く検討する必要があります。

 

 

高プロの対象業務をなるべく狭くして,

高プロによって過労死する労働者がでないようにしたいものです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

高度プロフェッショナル制度はどのような労働者に適用されるのか?

今年の6月に成立した働き方改革関連法の中で,

一番問題があったのが高度プロフェッショナル制度

(高プロといいます)です。

 

 

 

 

高プロは,高い年収をもらっている一部の専門職の労働者について,

労働時間規制を外すという制度です。

 

 

労働基準法では,1日8時間以上,

1週間で40時間以上働かせてはならず,

これを超えて働かせるのであれば,企業は,

労働者に残業代を支払わなければなりません。

 

 

また,休日に働かせたり,

午後10時から午前5時までの深夜の時間帯に働かせた場合には,

企業は,労働者に割増賃金を支払わなければなりません。

 

 

これが労働時間規制です。

 

 

高プロでは,この労働時間規制が外される結果,

どれだけ働いても残業代はゼロとなり,

長時間労働が助長されて,過労死が増えるリスクがあります。

 

 

 

 

そのため,高プロは,残業代ゼロ法案,

過労死促進法案として,批判されてきました。

 

 

しかし,残業代の支払いを削減したい

経済界の意向が反映されたのか,残念ながら,

高プロは成立してしまいました。

 

 

高プロの法律が成立したのですが,

高プロの対象者となる労働者は具体的にどのような労働者なのかは,

これからの労働政策審議会での議論を経て,

厚生労働省令で定められます。

 

 

まず,高プロの対象となる業務ですが,

法律では「高度の専門的知識等を必要とする」とともに

「従事した時間と従事して得た成果との関連性が

通常高くないと認められる」という性質の業務と規定されています。

 

 

これを読んだだけでは,どのような業務が

対象になるのかがさっぱり分かりません。

 

 

 

 

ということは,高度の専門的知識という言葉が拡大解釈されたり,

時間と成果の関連性が高くない仕事も多くあるわけなので,

高プロの対象業務がどんどん拡大されていくおそれがあります。

 

 

あいまいな言葉で法律が作られると,

権力者にとって都合のいいように拡大解釈される危険があるのです。

 

 

次に,年収要件ですが,法律では,

「1年間に支払われると見込まれる賃金の額が,

平均給与額の3倍を相当程度上回る」水準と規定されています。

 

 

ここで,平均給与額とは,厚生労働省の毎月の勤労統計をもとに

算定される,労働者1人あたりの給与の平均額のことです。

 

 

 

 

この厚生労働省の勤労統計の調査対象者には,

年収の低いパート労働者などが含まれています。

 

 

年収が低い労働者が含まれる結果,

平均すると給与額が低くなり,平均給与額の3倍の金額も低くなります。

 

 

そうなると,年収要件が低くなり,

高プロを適用される労働者が増えていくことになるのです。

 

 

今は,年収1075万円以上の労働者が対象となるかが

議論されていますが,統計の数値は変化していくので,

年収要件がどんどん低くなって,高プロの対象者が

拡大されていくのではないかが懸念されています。

 

 

そもそも,対象者をどの範囲にするかという重要な議論が,

国会審議なしに,国民の目が行き届かない

諮問機関でなされているのがおかしな話です。

 

 

来年4月から高プロが導入されるのですが,

労働者の方々は,高プロにくれぐれも気をつけてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業時間の上限規制を厳格に

今年の6月下旬に働き方改革関連法が成立し,現在,

厚生労働省において,法律の施行に伴う関係政令

を制定する作業が進められています。

 

 

 

 

つい最近,厚生労働省から,この政令案が発表されました。

 

 

http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000176581

 

 

働き方改革関連法をより詳しく理解するために

重要な政令案ですので,解説します。

 

 

働き方改革関連法では,これまで青天井だった

残業時間について,罰則付きの上限規制がもりこまれました。

 

 

これ以上の時間,残業させた場合,会社に対して刑事罰を科すよ

と規制することで,長時間労働を抑制しようとするものです。

 

 

この残業時間の上限が,原則1ヶ月45時間まで

となっているのですが,36協定で例外をもうければ,

1ヶ月100時間未満まで残業させても合法となり,

1ヶ月の残業が100時間を超えた場合に初めて

罰則が科されるようになっています。

 

 

この1ヶ月100時間の残業時間が,

精神障害の労災基準であることから,

過労死や過労自殺を助長すると批判されています。

 

 

1ヶ月100時間未満までなら残業が許容されるかのような

法律構成になっているので,政令案では,

上限ぎりぎりまではOKというわけではない

と示していくことになっています。

 

 

 

具体的には,36協定(残業できる条件を定める労使協定のことです)

で労働時間を延長するための留意すべき事項として,

次のような指針案が示されました。

 

 

「労働時間の延長をできる限り短くする

よう努めなければならないこととすること」

 

「年720時間までの特例に係る協定を締結するに当たっては,

次の点に留意すること。

・あくまで通常予見することができない業務量の大幅な増加等の

臨時の事態への特例的な対応であるべきこと。

・具体的な事由を挙げず,単に「業務の都合上必要な時」

「業務上やむを得ないとき」といった定め方は認められないこと。

・特例に係る協定を締結する場合にも,

可能な限り原則である月45時間,

年360時間に近い時間外労働とすべきであること。」

 

「使用者は,特例の上限時間内であっても,

労働者への安全配慮義務を負うこと」

 

 

残業時間を原則の1ヶ月45時間までに抑制し,

例外的な1ヶ月100時間未満をなるべく使えないように

しようとしているので,労働者にとっては喜ばしいことです。

 

 

抽象的な「業務の都合上必要な時」「業務上やむを得ないとき」

といった規定で1ヶ月100時間未満の例外が適用されてしまえば,

なし崩し的に1ヶ月100時間未満の残業が

許容されてしまうおそれがあります。

 

 

そこで,このような抽象的な規定では例外は認められないとして,

1ヶ月100時間未満の残業が許容されないように,

規制を強化するべきと考えます。

 

 

また,36協定を締結するには,

労働者の中から過半数を代表する者を選出して,

その過半数代表者が会社と36協定を締結します

 

 

この過半数代表者は,往々にして,

会社の社長の意向や影響が及んだ形で選出されます。

 

 

社長が適当に,社員をつかまえて,

この書面にサインしてと言って,

36協定が締結されているのが現状だと思われます。

 

 

残業時間の上限規制は,労働者の健康を守る重要なものであり,

そのような重要なことを定める36協定を

いい加減な手続で適当に定めては,労働者の保護として不十分です。

 

 

そこで,36協定を締結する過半数代表者の選出にあたって,

会社の意向が及んでいる場合は手続違反であり,

そのような36協定には効力が認められないことを

明確に規定すべきと考えます。

 

 

過労死や過労自殺をなくすためにも,

残業時間の上限規制は,非常に重要ですので,

厚生労働省の動きに注目していきます。

勤務間インターバル制度,年休,残業代の法改正

6月29日に成立した働き方改革関連法のうち,

本日は,その他の法改正について解説します。

 

 

まずは,勤務間インターバル制度です。

 

 

勤務間インターバル制度とは,

仕事が終わってから次の仕事が始まるまでに,

一定時間の休息を確保させる制度です。

 

 

 

 

EUでは,企業に対して,終業と始業の間に

連続11時間の休息をとらせるように義務付けられています。

 

 

11時間のインターバルが必要になった場合

例えば,午後11時に仕事が終わったとしたら,

翌日の出社は,午前10時以降にしなければなりません。

 

 

勤務間インターバル制度は,休息なしで

連続勤務することを防止することで,

労働者の健康を確保することにつながり,

過労死を防止する切り札となります。

 

 

特に,夜勤労働者の場合,日勤に比べて

疲労がたまりやすいため,十分な休息期間を確保して,

疲労を回復させる必要があることから,

夜勤労働者がいる職場でこそ,

勤務間インターバル制度の導入が求められます。

 

 

もっとも,この勤務間インターバル制度の

導入については,企業に対する努力義務であり,

必ず導入しなければならないものではなく,

実際に導入している企業は1.4%程度です。

 

 

今後は,勤務間インターバル制度を導入する企業が

多くなるように,法整備がなされていくことが期待されます。

 

 

次に,年休(年次有給休暇)についてです。

 

 

2019年4月から,企業に対して,

1年間に10日以上の年休が与えられている労働者に対して,

最低5日を消化させることが義務付けられました

 

 

 

 

 

労働者が5日未満しか消化できなかった場合,

企業に対して,労働者一人当たり

最大30万円の罰金が科せられます。

 

 

労働者は,入社後,6ヶ月継続勤務して,

8割以上出勤すれば,1年間に10日の年休を取得できます。

 

 

年休を取得した日について,労働者には賃金が支払われます。

 

 

しかし,休むことによって,

会社や同僚に迷惑をかけてしまうと思ってしまい,

年休を消化できていない労働者が多いと思います。

 

 

そこで,年休を取得することを促進するために,

今回の法改正が行われたのです。

 

 

労働者としては,年休をしっかりと消化しないと,

逆に会社に迷惑がかかるので,遠慮なく休めばいいことになります。

 

 

最後に,中小企業の残業代についてです。

 

 

2023年4月から,1ヶ月60時間を超えて

時間外労働をさせた場合,中小企業に対して,

5割増の残業代を労働者に支払うことが義務付けられます。

 

 

 

 

既に,大企業では,1ヶ月60時間を超えて時間外労働させた場合,

5割増の残業代を支払わなければなりませんが,

中小企業に対しては,これが猶予されていたのです。

 

 

今回の法改正で,この猶予がなくなり,

1ヶ月60時間を超えて時間外労働をさせた場合,

中小企業の残業代が増加します。

 

 

中小企業は,長時間労働を是正しなければ,

人件費が増加して,経営が悪化するリスクがありますので,

労働生産性を向上させる必要があります。

同一労働同一賃金の法改正

6月29日に成立した働き方改革関連法のうち,

本日は,同一労働同一賃金について説明します。

 

 

パートや契約社員,派遣社員といった

非正規雇用労働者の賃金は,正社員に比べて低い水準にあります。

 

 

少し古い統計ですが,平成24年の賃金構造基本統計調査によれば,

非正規雇用労働者の平均賃金は,

正社員の平均賃金の約6割くらいの水準のようです。

 

 

(日弁連の「あなたの暮らしも危ない?誰が得する?生活保護基準切り下げ(労働編)のチラシより抜粋)

 

 

正社員と非正規雇用労働者の仕事の内容が異なり,

正社員の方が,より難しい仕事をしているのであれば,

賃金に差が生じてもしょうがないと思えるのですが,

正社員と非正規雇用労働者の仕事の内容が同じであるにもかかわらず,

賃金に差が生じているのでは,非正規雇用労働者は納得できません。

 

 

そこで,非正規雇用労働者の待遇改善を図るために,

正社員との不合理な待遇差を是正するのが

同一労働同一賃金の法改正です。

 

 

同一労働同一賃金とは,読んだとおり,

同じ仕事なら同じ賃金が支払われるべきということで,

不合理な賃金格差をなくすことにつながります。

 

 

 

具体的に,どのような賃金格差が違法になるかは,

今後,厚生労働省がガイドラインで定めるのですが,

2016年12月に公表されたガイドラインでは,

次のように定められています。

 

 

すなわち,通勤手当,皆勤手当といった手当や,

食堂の利用といった福利厚生については,

原則として待遇格差は認められません。

 

 

正社員も非正規雇用労働者も,

自宅から会社まで通勤するのは同じですし,

皆勤については,正社員も非正規雇用も変わりませんし,

正社員だから食堂が利用できて,

非正規雇用労働者だから食堂が利用できないのは不合理ですよね。

 

 

他方,基本給が,職業経験や能力,業績や成果,

勤続年数などの差に応じて支給される場合や,

賞与が,業績などへの貢献度に応じて支給される場合には,

待遇差は認められにくいです。

 

 

この待遇差については,仕事の内容を判断の基本にするべきであり,

一般的な異動の可能性や長期雇用のための動機づけ

といった会社の主観的な要素で判断されることが

ないようにする必要があります。

 

 

このような理由で待遇差を安易に許せば,

正社員と非正規雇用労働者の格差の解消が

図れなくなってしまうからです。

 

 

他にも,会社は,非正規雇用労働者から求めがあれば,

正社員と非正規雇用労働者との間の待遇差の内容や

その理由を説明しなければならない義務が生じます。

 

 

非正規雇用労働者は,正社員との待遇差に納得できない場合,

会社に説明を求め,その理由に納得できなければ,

是正を求めていくことになります。

 

 

 

同一労働同一賃金の法改正は,

大企業は2020年4月から,

中小企業は2021年4月から施行されます。

 

 

なお,NTTグループでは,

正社員と非正規雇用労働者の間で

待遇差があった福利厚生制度を見直し,

正社員の制度に一本化したようです。

 

 

その結果,非正規雇用労働者は,

定期健康診断の受診項目が増え,

提携するフィットネスクラブやレジャー施設を

割安で使えるようになったようです。

 

 

今後は,NTTグループのような取り組みが

他の会社にも広がり,正社員と非正規雇用労働者の格差が

是正されていくことが期待されます。