高プロを会社に導入させないためには

10月31日,厚生労働省は,

高度プロフェッショナル制度(以下,「高プロ」といいます)

の対象業務の素案を公表すると共に,

高プロの導入手続について,

詳細な素案を公表しました。

 

 

本日は,高プロの導入手続について,解説します。

 

 

このブログで何度も指摘してきましたが,

高プロとは,労働時間の規制が撤廃されてしまい,

どれだけ働いても残業代がゼロになるという制度です。

 

 

 

 

どれだけ働いても残業代ゼロになるので,

会社は,労働者を働かせ放題にできてしまうので,

高プロは,過労死を助長するとして

猛烈な批判を受けながらも成立してしまった,

ブラックな制度です。

 

 

高プロの導入によってメリットがある

労働者はほとんどいないと考えられます。

 

 

そこで,成立してしまった高プロを

いかに利用させないかが重要になります。

 

 

今回,厚生労働省から公表された素案を検討したところ,

高プロの導入を阻止することは十分に可能だと思いました。

 

 

高プロの導入手続は次の5つのステップにわかれます。

 

 

①労使委員会を設置する

②労使委員会で決議する

③決議を労働基準監督署に届け出る

④対象労働者の同意を書面で得る

⑤対象労働者を対象業務に就かせる

 

 

まず,ステップ①の労使委員会ですが,

委員の半数を,労働組合または労働者の過半数代表者が指名できます。

 

 

 

 

労働者にとって有利な決議をしてくれる

委員を送り込むことができるのです。

 

 

労使委員会において,会社の意見に流されずに,

労働者の利益をしっかりと代弁できる委員を

指名することが重要になります。

 

 

次に,ステップ②では,労使委員会において,

対象業務や対象労働者の範囲,

対象労働者の健康確保措置などを決議します。

 

 

労使委員会の決議は,5分の4以上の多数

による決議がなければ有効になりません。

 

 

ステップ①で,労働者の意見を代弁してくれる

委員が半数選任されていれば,労使委員会の決議で,

高プロの導入に反対の意見を示すことができて,

5分の4以上の賛成には届かず,

高プロが導入されないことになります。

 

 

労働組合は,労使委員会で高プロにしっかりと反対すべきです。

 

 

高プロの手続の要件からすれば,

労働組合が反対すれば,

高プロの導入を阻止できるのです。

 

 

労働組合が,安易に高プロに賛成したのであれば,

その労働組合は,ブラック労働組合という

烙印を押される危険があるので,気をつけてください。

 

 

仮に,労使委員会において高プロの導入が決議されても,

ステップ④において,対象労働者が同意しなければ,

その労働者には,高プロは適用されません。

 

 

会社は,対象労働者の同意を得るために,

対象労働者に対して,高プロの制度の概要や

労使委員会の決議の内容,

同意した場合の賃金や評価制度について,

しっかり説明した上で,同意を得る必要があります。

 

 

労働者は,同意しなくても,

不利益な取扱を受けないので,

会社の説明に納得できなければ,

勇気をもって,同意をしないでください。

 

 

 

 

また,同意をしてしまっても,

後から同意を撤回できますし,

同意を撤回しても,

不利益な取扱を受けることはありません。

 

 

このように,高プロを導入するためには,

会社は厳しい要件を満たす必要がありますので,

労働組合や労働者は,安易に高プロが導入されないように,

明確に反対してください。

 

 

高プロを導入しようとする会社は,

ブラック企業の可能性が高いと肝に銘じてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

高プロの対象業務とは?

厚生労働省が,10月31日に,

高度プロフェッショナル制度(「高プロ」といいます)

の具体的な対象業務の素案を公表しました。

 

 

高プロが適用される労働者は,

労働基準法で定められている労働時間の規制が

適用されなくなる結果,どれだけ働いても残業代がゼロになります。

 

 

 

 

そのため,働き方改革関連法の中で,

「残業代ゼロ法案」,「過労死促進法案」などと

度重なる批判をされながらも,成立してしまった残念な制度です。

 

 

働き方改革関連法では,高プロの対象となる業務として,

高度の専門的知識等を必要とし,その性質上

従事した時間と従事して得た成果との関連性が

通常高くないと認められる業務」と定められました。

 

 

しかし,この法律の文言を見ても,

どのような業務が高プロの対象になるのかが,

さっぱり分かりません。

 

 

 

 

法律の文言が抽象的ですと,拡大解釈されるおそれがあり,

対象となる業務が今後拡大していく可能性があります。

 

 

さらに,対象業務を法律ではなく,

省令で決めることになるので,国会審議を経ずに,

厚生労働省が国民の監視が届かないところで

決めてしまうおそれもあります。

 

 

このように,高プロは欠陥だらけなのですが,

ようやく具体的な対象業務が明らかになりました。

 

 

高プロの対象業務は,次の5つです。

 

 

①金融商品の開発業務

 ②金融商品のディーリング業務

 ③アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)

 ④コンサルタントの業務

(事業・業務の企画運営に関する高度な考案又は助言の業務)

 ⑤研究開発業務

 

 

この5つの業務であっても,

対象になりえる業務と対象にならない業務

の具体例も公表されました。

 

 

①金融商品の開発業務では,

金融工学や統計学の知識を用いた

新たな金融商品の開発業務は対象になりえて,

金融サービスの企画立案や

データの入力・整理の業務は対象にならないとされました。

 

 

②金融商品のディーリング業務では,

資産運用会社のファンドマネージャーやトレーダーの業務,

自社の資金で株式や債券の売買をする業務は対象になりえて,

投資判断を伴わない顧客からの注文の取次や

金融機関の窓口業務は対象にならないとされました。

 

 

 

 

③アナリストの業務では,

運用担当者に対し有価証券の投資に関する

助言を行う業務は対象になりえて,

一定の時間を設定して行う相談業務や

分析のためのデータ入力・整理を行う業務は

対象にならないとされました。

 

 

④コンサルタントの業務では,

業務改革案などを提案してその実現に向けて

アドバイスや支援をしていく業務は対象になりえて,

個人顧客を対象とする助言の業務は

対象にならないとされました。

 

 

⑤研究開発業務では,

新型モデル・サービスの開発の業務は対象になりえて,

既存の商品やサービスにとどまり,

技術的改善を伴わない業務は対象にならないとされました。

 

 

 

 

ある程度,対象業務が具体的になりましたが,

それでも,あいまいな点が残っています。

 

 

一般的には5つの業務の範疇に入っていても,

会社から労働時間に関する具体的な指示がされていれば

対象業務になりませんし,単純な作業も対象業務になりません。

 

 

高プロが導入されそうな場合には,

自分の仕事が5つの対象業務に含まれるのかを

注意深く検討する必要があります。

 

 

高プロの対象業務をなるべく狭くして,

高プロによって過労死する労働者がでないようにしたいものです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

高度プロフェッショナル制度はどのような労働者に適用されるのか?

今年の6月に成立した働き方改革関連法の中で,

一番問題があったのが高度プロフェッショナル制度

(高プロといいます)です。

 

 

 

 

高プロは,高い年収をもらっている一部の専門職の労働者について,

労働時間規制を外すという制度です。

 

 

労働基準法では,1日8時間以上,

1週間で40時間以上働かせてはならず,

これを超えて働かせるのであれば,企業は,

労働者に残業代を支払わなければなりません。

 

 

また,休日に働かせたり,

午後10時から午前5時までの深夜の時間帯に働かせた場合には,

企業は,労働者に割増賃金を支払わなければなりません。

 

 

これが労働時間規制です。

 

 

高プロでは,この労働時間規制が外される結果,

どれだけ働いても残業代はゼロとなり,

長時間労働が助長されて,過労死が増えるリスクがあります。

 

 

 

 

そのため,高プロは,残業代ゼロ法案,

過労死促進法案として,批判されてきました。

 

 

しかし,残業代の支払いを削減したい

経済界の意向が反映されたのか,残念ながら,

高プロは成立してしまいました。

 

 

高プロの法律が成立したのですが,

高プロの対象者となる労働者は具体的にどのような労働者なのかは,

これからの労働政策審議会での議論を経て,

厚生労働省令で定められます。

 

 

まず,高プロの対象となる業務ですが,

法律では「高度の専門的知識等を必要とする」とともに

「従事した時間と従事して得た成果との関連性が

通常高くないと認められる」という性質の業務と規定されています。

 

 

これを読んだだけでは,どのような業務が

対象になるのかがさっぱり分かりません。

 

 

 

 

ということは,高度の専門的知識という言葉が拡大解釈されたり,

時間と成果の関連性が高くない仕事も多くあるわけなので,

高プロの対象業務がどんどん拡大されていくおそれがあります。

 

 

あいまいな言葉で法律が作られると,

権力者にとって都合のいいように拡大解釈される危険があるのです。

 

 

次に,年収要件ですが,法律では,

「1年間に支払われると見込まれる賃金の額が,

平均給与額の3倍を相当程度上回る」水準と規定されています。

 

 

ここで,平均給与額とは,厚生労働省の毎月の勤労統計をもとに

算定される,労働者1人あたりの給与の平均額のことです。

 

 

 

 

この厚生労働省の勤労統計の調査対象者には,

年収の低いパート労働者などが含まれています。

 

 

年収が低い労働者が含まれる結果,

平均すると給与額が低くなり,平均給与額の3倍の金額も低くなります。

 

 

そうなると,年収要件が低くなり,

高プロを適用される労働者が増えていくことになるのです。

 

 

今は,年収1075万円以上の労働者が対象となるかが

議論されていますが,統計の数値は変化していくので,

年収要件がどんどん低くなって,高プロの対象者が

拡大されていくのではないかが懸念されています。

 

 

そもそも,対象者をどの範囲にするかという重要な議論が,

国会審議なしに,国民の目が行き届かない

諮問機関でなされているのがおかしな話です。

 

 

来年4月から高プロが導入されるのですが,

労働者の方々は,高プロにくれぐれも気をつけてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

残業時間の上限規制を厳格に

今年の6月下旬に働き方改革関連法が成立し,現在,

厚生労働省において,法律の施行に伴う関係政令

を制定する作業が進められています。

 

 

 

 

つい最近,厚生労働省から,この政令案が発表されました。

 

 

http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000176581

 

 

働き方改革関連法をより詳しく理解するために

重要な政令案ですので,解説します。

 

 

働き方改革関連法では,これまで青天井だった

残業時間について,罰則付きの上限規制がもりこまれました。

 

 

これ以上の時間,残業させた場合,会社に対して刑事罰を科すよ

と規制することで,長時間労働を抑制しようとするものです。

 

 

この残業時間の上限が,原則1ヶ月45時間まで

となっているのですが,36協定で例外をもうければ,

1ヶ月100時間未満まで残業させても合法となり,

1ヶ月の残業が100時間を超えた場合に初めて

罰則が科されるようになっています。

 

 

この1ヶ月100時間の残業時間が,

精神障害の労災基準であることから,

過労死や過労自殺を助長すると批判されています。

 

 

1ヶ月100時間未満までなら残業が許容されるかのような

法律構成になっているので,政令案では,

上限ぎりぎりまではOKというわけではない

と示していくことになっています。

 

 

 

具体的には,36協定(残業できる条件を定める労使協定のことです)

で労働時間を延長するための留意すべき事項として,

次のような指針案が示されました。

 

 

「労働時間の延長をできる限り短くする

よう努めなければならないこととすること」

 

「年720時間までの特例に係る協定を締結するに当たっては,

次の点に留意すること。

・あくまで通常予見することができない業務量の大幅な増加等の

臨時の事態への特例的な対応であるべきこと。

・具体的な事由を挙げず,単に「業務の都合上必要な時」

「業務上やむを得ないとき」といった定め方は認められないこと。

・特例に係る協定を締結する場合にも,

可能な限り原則である月45時間,

年360時間に近い時間外労働とすべきであること。」

 

「使用者は,特例の上限時間内であっても,

労働者への安全配慮義務を負うこと」

 

 

残業時間を原則の1ヶ月45時間までに抑制し,

例外的な1ヶ月100時間未満をなるべく使えないように

しようとしているので,労働者にとっては喜ばしいことです。

 

 

抽象的な「業務の都合上必要な時」「業務上やむを得ないとき」

といった規定で1ヶ月100時間未満の例外が適用されてしまえば,

なし崩し的に1ヶ月100時間未満の残業が

許容されてしまうおそれがあります。

 

 

そこで,このような抽象的な規定では例外は認められないとして,

1ヶ月100時間未満の残業が許容されないように,

規制を強化するべきと考えます。

 

 

また,36協定を締結するには,

労働者の中から過半数を代表する者を選出して,

その過半数代表者が会社と36協定を締結します

 

 

この過半数代表者は,往々にして,

会社の社長の意向や影響が及んだ形で選出されます。

 

 

社長が適当に,社員をつかまえて,

この書面にサインしてと言って,

36協定が締結されているのが現状だと思われます。

 

 

残業時間の上限規制は,労働者の健康を守る重要なものであり,

そのような重要なことを定める36協定を

いい加減な手続で適当に定めては,労働者の保護として不十分です。

 

 

そこで,36協定を締結する過半数代表者の選出にあたって,

会社の意向が及んでいる場合は手続違反であり,

そのような36協定には効力が認められないことを

明確に規定すべきと考えます。

 

 

過労死や過労自殺をなくすためにも,

残業時間の上限規制は,非常に重要ですので,

厚生労働省の動きに注目していきます。

勤務間インターバル制度,年休,残業代の法改正

6月29日に成立した働き方改革関連法のうち,

本日は,その他の法改正について解説します。

 

 

まずは,勤務間インターバル制度です。

 

 

勤務間インターバル制度とは,

仕事が終わってから次の仕事が始まるまでに,

一定時間の休息を確保させる制度です。

 

 

 

 

EUでは,企業に対して,終業と始業の間に

連続11時間の休息をとらせるように義務付けられています。

 

 

11時間のインターバルが必要になった場合

例えば,午後11時に仕事が終わったとしたら,

翌日の出社は,午前10時以降にしなければなりません。

 

 

勤務間インターバル制度は,休息なしで

連続勤務することを防止することで,

労働者の健康を確保することにつながり,

過労死を防止する切り札となります。

 

 

特に,夜勤労働者の場合,日勤に比べて

疲労がたまりやすいため,十分な休息期間を確保して,

疲労を回復させる必要があることから,

夜勤労働者がいる職場でこそ,

勤務間インターバル制度の導入が求められます。

 

 

もっとも,この勤務間インターバル制度の

導入については,企業に対する努力義務であり,

必ず導入しなければならないものではなく,

実際に導入している企業は1.4%程度です。

 

 

今後は,勤務間インターバル制度を導入する企業が

多くなるように,法整備がなされていくことが期待されます。

 

 

次に,年休(年次有給休暇)についてです。

 

 

2019年4月から,企業に対して,

1年間に10日以上の年休が与えられている労働者に対して,

最低5日を消化させることが義務付けられました

 

 

 

 

 

労働者が5日未満しか消化できなかった場合,

企業に対して,労働者一人当たり

最大30万円の罰金が科せられます。

 

 

労働者は,入社後,6ヶ月継続勤務して,

8割以上出勤すれば,1年間に10日の年休を取得できます。

 

 

年休を取得した日について,労働者には賃金が支払われます。

 

 

しかし,休むことによって,

会社や同僚に迷惑をかけてしまうと思ってしまい,

年休を消化できていない労働者が多いと思います。

 

 

そこで,年休を取得することを促進するために,

今回の法改正が行われたのです。

 

 

労働者としては,年休をしっかりと消化しないと,

逆に会社に迷惑がかかるので,遠慮なく休めばいいことになります。

 

 

最後に,中小企業の残業代についてです。

 

 

2023年4月から,1ヶ月60時間を超えて

時間外労働をさせた場合,中小企業に対して,

5割増の残業代を労働者に支払うことが義務付けられます。

 

 

 

 

既に,大企業では,1ヶ月60時間を超えて時間外労働させた場合,

5割増の残業代を支払わなければなりませんが,

中小企業に対しては,これが猶予されていたのです。

 

 

今回の法改正で,この猶予がなくなり,

1ヶ月60時間を超えて時間外労働をさせた場合,

中小企業の残業代が増加します。

 

 

中小企業は,長時間労働を是正しなければ,

人件費が増加して,経営が悪化するリスクがありますので,

労働生産性を向上させる必要があります。

同一労働同一賃金の法改正

6月29日に成立した働き方改革関連法のうち,

本日は,同一労働同一賃金について説明します。

 

 

パートや契約社員,派遣社員といった

非正規雇用労働者の賃金は,正社員に比べて低い水準にあります。

 

 

少し古い統計ですが,平成24年の賃金構造基本統計調査によれば,

非正規雇用労働者の平均賃金は,

正社員の平均賃金の約6割くらいの水準のようです。

 

 

(日弁連の「あなたの暮らしも危ない?誰が得する?生活保護基準切り下げ(労働編)のチラシより抜粋)

 

 

正社員と非正規雇用労働者の仕事の内容が異なり,

正社員の方が,より難しい仕事をしているのであれば,

賃金に差が生じてもしょうがないと思えるのですが,

正社員と非正規雇用労働者の仕事の内容が同じであるにもかかわらず,

賃金に差が生じているのでは,非正規雇用労働者は納得できません。

 

 

そこで,非正規雇用労働者の待遇改善を図るために,

正社員との不合理な待遇差を是正するのが

同一労働同一賃金の法改正です。

 

 

同一労働同一賃金とは,読んだとおり,

同じ仕事なら同じ賃金が支払われるべきということで,

不合理な賃金格差をなくすことにつながります。

 

 

 

具体的に,どのような賃金格差が違法になるかは,

今後,厚生労働省がガイドラインで定めるのですが,

2016年12月に公表されたガイドラインでは,

次のように定められています。

 

 

すなわち,通勤手当,皆勤手当といった手当や,

食堂の利用といった福利厚生については,

原則として待遇格差は認められません。

 

 

正社員も非正規雇用労働者も,

自宅から会社まで通勤するのは同じですし,

皆勤については,正社員も非正規雇用も変わりませんし,

正社員だから食堂が利用できて,

非正規雇用労働者だから食堂が利用できないのは不合理ですよね。

 

 

他方,基本給が,職業経験や能力,業績や成果,

勤続年数などの差に応じて支給される場合や,

賞与が,業績などへの貢献度に応じて支給される場合には,

待遇差は認められにくいです。

 

 

この待遇差については,仕事の内容を判断の基本にするべきであり,

一般的な異動の可能性や長期雇用のための動機づけ

といった会社の主観的な要素で判断されることが

ないようにする必要があります。

 

 

このような理由で待遇差を安易に許せば,

正社員と非正規雇用労働者の格差の解消が

図れなくなってしまうからです。

 

 

他にも,会社は,非正規雇用労働者から求めがあれば,

正社員と非正規雇用労働者との間の待遇差の内容や

その理由を説明しなければならない義務が生じます。

 

 

非正規雇用労働者は,正社員との待遇差に納得できない場合,

会社に説明を求め,その理由に納得できなければ,

是正を求めていくことになります。

 

 

 

同一労働同一賃金の法改正は,

大企業は2020年4月から,

中小企業は2021年4月から施行されます。

 

 

なお,NTTグループでは,

正社員と非正規雇用労働者の間で

待遇差があった福利厚生制度を見直し,

正社員の制度に一本化したようです。

 

 

その結果,非正規雇用労働者は,

定期健康診断の受診項目が増え,

提携するフィットネスクラブやレジャー施設を

割安で使えるようになったようです。

 

 

今後は,NTTグループのような取り組みが

他の会社にも広がり,正社員と非正規雇用労働者の格差が

是正されていくことが期待されます。

残業時間の上限規制とは

6月29日に成立した働き方改革関連法のうち,

高度プロフェッショナル制度については,

これまで解説をしてきましたので,これからは,

その他の改正部分について解説します。

 

 

まずは,残条時間の上限規制です。

 

 

 

労働基準法が定める労働時間は,

1日8時間,週40時間が原則です。

 

 

これを超えて働かせることは違法なのですが,

36協定を締結すれば,1日8時間以上,

週40時間以上働かせても問題はなかったのが

これまでの労働基準法でした。

 

 

今回の法改正で,この原則に対する例外として,

残業時間の上限が1ヶ月45時間及び

1年について360時間となりました。

 

 

さらに,例外の例外で,

「当該事業場における通常予見することのできない

業務量の増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて

労働させる必要がある場合」には,

1年間に6ヶ月以内なら,

1ヶ月の時間外労働が45時間を超えても,

年間上限720時間以内であれば違法になりません。

 

 

もっとも,この例外の例外には,

休日労働は含まれていません。

 

 

休日労働を含めた場合は,

1ヶ月100時間未満,

2~6ヶ月の平均80時間未満が,

休日労働を含んだ残業時間の上限となります。

 

 

そして,休日労働を含む残業時間が,

1ヶ月100時間を超えたり,

2~6ヶ月の平均80時間を超えた場合,

企業には,6ヶ月以下の懲役若しくは

30万円以下の罰金の刑罰が科されます。

 

 

例外の例外があったり,休日労働を含めるか含めないか

という複雑な構造になっていますが,ようするに,

休日労働を含む残業時間が,1ヶ月100時間を超えるか,

または,2~6ヶ月の平均80時間を超える場合に,

企業に刑罰が科せられると覚えておけばいいと考えます。

 

 

労働者としては,休日労働を含む残業時間が,

1ヶ月100時間を超えたり,

2~6ヶ月の平均80時間を超えた場合には,

労働基準監督署へ相談にいけば,

労働基準監督署が会社に対して,

監督指導する可能性があります。

 

 

この残業時間の上限規制は,大企業であれば,2019年4月から,

中小企業であれば,2020年4月から適用されるので,

労働者を働かせすぎている会社は気をつけた方がいいでしょう。

 

 

もっとも,この残業時間の上限規制は,

建設業や運送業,医師については,5年間,

適用が猶予されていますし,

新技術や新商品などの研究開発業務については,

適用がはずされています。

 

 

これまでは,残業時間の上限がなかったので,

際限なく働かせることも可能でしたが,今回の法改正で,

働かせすぎを予防する規制ができました。

 

 

 

 

しかし,残業時間の上限が,

1ヶ月100時間未満,2~6ヶ月の平均80時間未満という,

過労死や過労自殺ラインに設定されているので,

過労死や過労自殺に至るまで働かせることを

容認することになりかねないので,今後は,

残業時間の上限時間を段階的に少なくしていくことが求められます。

 

労働基準監督官は高プロを取り締まれない?

昨日に引き続き,6月29日に成立した

高度プロフェッショナル制度(通称,「高プロ」といいます)

に抗議する意味を込めて,高プロの問題点を指摘します。

 

 

今回の高プロの問題点は,

労働基準監督署の労働基準監督官が,企業に対して,

長時間労働の監督指導をできないということです。

 

 

 

 

労働基準法に定められている労働時間規制によって,

労働者は,企業から働かされ過ぎないように保護されています。

 

 

具体的には,企業は,労働者を

1日8時間以上働かせてはいけなくて,

これに違反した場合には,

残業代を支払わなければなりません。

 

 

労働基準法は,企業に残業代を支払わせることで,

長時間労働を抑制して,労働者の働き過ぎを

予防しようとしているのです。

 

 

そして,労働基準監督官は,残業代を支払わずに

長時間労働をさせている企業があれば,監督指導を行います。

 

 

しかし,高プロが適用されれば,

この労働時間規制がはずされるため,

残業代ゼロで24時間働かせても合法になり,

労働基準監督官は,高プロが適用されている

労働者の長時間労働について,

企業に監督指導ができなくなります。

 

 

また,企業は,高プロが適用されている労働者の

労働時間を管理する必要がないので,

高プロが適用されている労働者の労働時間

についての記録が残らなくなります

 

 

 

 

労働時間の記録が残らないため,労働基準監督官が,

高プロが適用されている労働者がどれだけ働いていたのかを

証明することができないので,監督指導が困難になります。

 

 

さらに,高プロが適用されている労働者が,

本当に高プロの対象業務を行っているのか,

いつ働くかの裁量を本当にもっているかについて,

法律の概念が抽象的なので,労働基準監督官が,

高プロが適法に運用されているのかを調査するには,

時間と手間がかかり,やはり,監督指導が困難になります。

 

 

例えるなら,穴の空いた網で魚を捕まえようとするようなものです。

 

 

 

 

 

労働基準監督官を増やせば,高プロ違反を

取り締まることができるという意見もありますが,

労働基準監督官を増やしても,高プロ違反の摘発は困難なのです。

 

 

なお,公務員の人員削減が進んでいる中で,

地方労働行政の職員が,労働基準法違反を監督指導する

労働基準監督官に移されている結果,

労災を担当する職員が減少し,労災の認定が遅くなっている

というひずみも生じているようです。

 

 

このように,違法に高プロが適用されていたとしても,

労働基準監督官が違法に高プロを適用している企業を

監督指導することが困難ですので,企業は,

残業代ゼロで労働者を長時間働かせてしまい,

過労死が増えるのは目に見えています。

 

 

取締が困難で,過労死を助長する高プロは,廃止するべきです。

 

高度プロフェッショナル制度の成立に抗う

平成30年6月29日,残念ながら,

高度プロフェッショナル制度(通称,「高プロ」といいます)

を含む働き方改革関連法案が参議院で

可決されて,成立してしまいました。

 

 

これまで,何度もブログで,

高プロの危険性やおかしな点を指摘してきましたが,

抗議の意味を込めて,改めて,

高プロの問題点について解説します。

 

 

まず一番の問題点は,高プロが適用されれば,

労働時間の規制がはずされるので,

残業代ゼロで24時間働かせることが合法になり,

長時間労働が蔓延して,過労死を助長させます。

 

 

 

 

高プロに賛成する立場の人は,高プロを導入すれば,

労働生産性が向上すると主張しています。

 

 

しかし,高プロによって,長時間労働が蔓延することで,

かえって労働生産性がおちる結果になると考えられます。

 

 

また,先日のブログに記載しましたが,

労働者は,当然,高プロを求めていないのですが,

経営側にも高プロのニーズがあまりありません。

 

 

6月26日の参院厚生労働委員会において,安倍首相は,

適用を望む企業や従業員が多いから導入するのではない

と答弁をしました。

 

 

労働者側にも経営者側にもニーズがないのに,

なぜ高プロを導入するのか,全く理解できません。

 

 

必要がない上に,過労死を助長するマイナスが多いのであるから,

高プロは当然に廃案にすべきだったのです。

 

 

また,高プロの適用対象となる職種ですが,

高度の専門的知識を必要とする業務で,

具体的には,金融商品の開発業務やアナリストの業務,

コンサルタント業務,研究開発業務などが

対象になると言われていますが,

まだ明確には定まっていません。

 

 

高プロの対象業務については,省令に委ねられています

 

 

これは何を意味するかというと,厚生労働省が,

国会の審議を経ることなく,高プロの対象業務を

拡大することができてしまうのです。

 

 

これまで,専門業務型裁量労働制や労働者派遣

の対象業務が省令で拡大されてきた前例がありますから,

高プロも同じように対象業務が拡大されることが予想されます。

 

 

小さく産んで大きく育てるというものです。

 

 

 

労働者は,知らないうちに,自分の仕事が省令によって

高プロの対象業務に含まれていて,

会社から高プロの導入を求められるリスクがあるのです。

 

 

高プロが成立してしまいましたが,法案審議の中で,

様々な欠陥が明らかになったので,改めて,抗議し,

高プロを速やかに廃案にすべきと考えます。

 

医療現場の働き方改革

現在,働き方改革関連法案が参議院で審議されており,

今週が山場になる見通しです。

 

 

働き方改革が世の中で叫ばれていることから,

新潟市民病院における働き方改革について紹介します。

 

 

平成28年1月,新潟市民病院の女性研修医が自殺しました。

 

 

自殺した女性研修医は,月平均の時間外労働が約187時間,

最も多い月では251時間に達していました。

 

 

過労自殺の場合,精神疾患が発症する前6ヶ月間

の時間外労働が100時間を超えると,

強い心理的負荷があったとして,労災認定されます。

 

 

 

 

自殺した女性研修医は,100時間を大幅に超える

時間外労働をしていたことから,過労自殺が労災認定

されたのだと考えられます。

 

 

この過労自殺の労災認定を受けて,

新潟市民病院は,平成29年6月に

緊急対応宣言を発表しました。

 

 

緊急対応宣言には,市民に対して,

休日や夜間に緊急ではない受診を控えてほしいことや,

軽症だと思うけれども心配な場合にまずは

電話で相談してほしいことが記載されています。

 

 

また,外来受診について,一般外来の新規患者の場合,

まずはかかりつけ医を受診して,それでも治らないときに

紹介状をもってきてもらうという対応に変わりました。

 

 

その結果,救急搬送が前年と比べて6%減少し,

周辺の病院が協力して,救急患者を受け入れてくれたようです。

 

 

 

また,電子カルテの新システムや

病院の出入口で入退館を自働で記録することで

医師の労働時間を把握するようになりました。

 

 

平成29年1月に,厚生労働省のガイドラインにおいて,

会社は,労働者の労働時間を適正に把握する責務があるとされました。

 

 

具体的には,会社は,タイムカードやパソコンの使用時間

の記録などの客観的な記録を確認して,労働者の労働日ごとの

始業時刻と終業時刻を適正に記録しなければなりません。

 

 

会社が労働者の労働時間を適正に把握すれば,

労働者が働き過ぎの状態であるかが分かりますので,

会社は,労働者に対して,労働時間を少なくするように

指導することができます。

 

 

労働者自身も,労働時間を把握していないと,

ついつい働き過ぎてしまい,

健康を害するおそれがあります。

 

 

労働者の健康を守るためにも,労働時間を把握することは重要です。

 

 

医師の労働時間を病院が把握することで,

働き過ぎの医師に休むように指導することができるようになります。

 

 

さらに,新潟市民病院では,

複数の医師で患者を担当する複数主治医制を導入したようです。

 

 

患者を複数で担当することで,

緊急時の対応を一人の医師だけでなく,

他の医師も対応できることで,

休みを確保しやすくなるのだと思います。

 

 

医師が働き過ぎで健康を害せば,

医師の治療を求める患者にとって,とてもデメリットです。

 

 

 

 

医師が無理なく適正に働けるように,

私達は,すぐに大病院を受診するのではなく,

まずはかかりつけ医を受診する,

平日の朝まで我慢できるのであれば,

休日や夜間の受診を控えるなど,

できる範囲の協力をしていくべきだと考えます。