経営者側にも高プロのニーズがない

通常国会の会期が延期されて,参議院で,

働き方改革関連法案の審議が継続されています。

 

 

ブログで何度も指摘してきましたが,働き方改革関連法案の中で,

高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)は,

高年収の一部専門職に対して労働時間の規制をはずして,

残業代ゼロで24時間働かせることが可能になってしまうので,

過労死を助長する危険な制度です。

 

 

今朝の朝日新聞の記事によると,

朝日新聞社が全国の主要100社に実施した調査の結果,

働き方改革関連法案が成立した場合に高プロを採用するか

という質問について,採用する方針を示したのは6社

採用するつもりはないと答えたのが31社,

分からないと答えたのが51社だったようです。

 

 

 

もともと,高プロは,経営者側が導入を

要求してきた制度なのですが,実際には,

現時点で採用する方針の会社が100社中6社しかいないなので,

経営者側のニーズがどれだけあるのか疑問です。

 

 

高プロを適法に導入するためには,

厳しい要件をすべてクリアしなければならないうえに,

実際に高プロを導入しても,

どれだけ労働生産性が上がるのか予測ができないので,

高プロの導入に積極的になれない会社がほとんどなのだと思います。

 

 

一方,労働者側のニーズはどうでしょうか。

 

 

 

厚生労働省が実施した働き手のニーズ調査では,

5社のうち12人しかヒアリングをしていなかったのです。

 

 

2018年4月の日本の就業者数は6671万人です。

 

 

6671万人のうちのたった12人しか調査していなかったのです。

 

 

仮に,調査対象者である12人が

高プロの導入に賛成したとしても,

サンプル数があまりにも少ないので,

この12人の意見が,6671万人の労働者の

意見を反映していることにはならないはずです。

 

 

さらに,12人中9人のヒアリングの際には,

会社の人事担当者も同席したようです。

 

 

ヒアリングの対象者である労働者は,

会社の人事担当者が同席しているところで,

正直に自分の意見を言いにくいものです。

 

 

自分の発言が,会社の人事でどのように利用されるのか

と考えれば,ぶなんに回答しようと考えてしまうからです。

 

 

そのため,厚生労働省の働き手のニーズ調査は

極めてずさんであり,厚生労働省のニーズ調査から,

労働者側が高プロを求めているとはとてもいえないのです。

 

 

そもそも,残業代ゼロで24時間働かされることが

合法になる制度を,労働者が求めるはずがありません。

 

 

結局,経営者側も労働者側も高プロのニーズがありませんので,

高プロは,すみやかに廃案にするべきです。

忙しすぎる先生を減らすには

公立学校の教師の働き過ぎが問題となっています。

 

 

 

 

労働判例という,労働事件について注目の判例

を紹介している雑誌にも,公立学校の教師の働き過ぎによる

過労死や精神疾患の発症が公務災害となった判例が,

最近,複数紹介されています。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201709242919.html

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201709172981.html

 

 

公立学校で長時間労働が生じている原因の一つに,

「効率の義務教育諸学校等の教育職員の給与に関する特別措置法」

(「給特法」といわれています)の存在があげられます。

 

 

給特法3条2項には,

「教育職員については,時間外勤務手当及び休日勤務手当は,支給しない」と定められています。

 

 

ようするに,教師は,時間外労働や休日働いても,

残業代が支払われないのです。

 

 

残業代が支払われない代りに,教師には,

給料月額の4%に相当する「教職調整額」が支給されます。

 

 

このように,教師には,給料月額の4%に相当する

教職調整額が支給されるものの,残業代が支払われない

ことになったのは,教師の勤務態様に特殊性

があるからと説明されています。

 

 

修学旅行や遠足などの学校外の教育活動,

家庭訪問や学校外の自己研修など教員個人での活動,

夏休み等の長期の学校休業期間

といった教師固有の勤務態様のため,

勤務時間管理が困難であるからという理由です。

 

 

給特法があるため,実務上,

勤務の内容や時間数に関係なく,どれだけ働いても,

教師には残業代が一切支払われない扱いになっています。

 

 

そもそも,労働基準法37条で,

労働者が時間外労働をした場合に,

会社が労働者に残業代を支払わなければならない趣旨は,

会社に残業代の支払というペナルティを与えることで,

長時間労働を抑制して,労働者の健康や

ライフワークバランスを守ることにあります。

 

 

そのため,残業代の支払というペナルティがなければ,

会社は,労働者をどれだけでも働かせて,

業績をあげようとするので,長時間労働が横行してしまいます。

 

 

これを教師にあてはめれば,

教師の雇用主である地方公共団体は,

教師をどれだけ働かせても,残業代の支払

というペナルティが生じないので,

教師がどれだけ働いても,何もしません。

 

 

 

そして,難しい子供の対応,

英語やプログラミングといった新しい授業科目への対応,

部活動の担当,クレーマー保護者への対応など,

教師の仕事が増えているのに,雇い主の地方公共団体は,

残業代を支払わなくていいので,長時間労働を

抑制するための対策をとる動機がうまれません。

 

 

その結果,教師の長時間労働が横行して,

疲労が蓄積して,教師の過労死や精神疾患が増えていく

という負のスパイラルにおちいっていくのです。

 

 

教師が働き過ぎで疲弊すると,

よりよい授業ができなくなり,

子供達が影響を受けるので,

早急に対策が求められます。

 

 

まずは,教師の労働時間の管理をしっかりやる

ことが手っ取り早いと考えます。

 

 

労働者は,自分の労働時間を記録していないと,

仕事が忙しいときにはついつい長時間労働をしがちですが,

自分の労働時間を記録して,その記録を振り返ることで,

働き過ぎを自覚して,労働生産性を向上させる

きっかけを得ることができます。

 

 

その他にも,部活動の指導を外部のスポーツトレーナー

にアウトソーシングする,通知表管理や電話対応をシステム化する

という方法で,教師の労働時間を減らす方法も考えられます。

 

 

医師の働き方と同様に,教師の働き方についても,

教育予算の観点から国民的な議論をして,

忙しすぎる先生を少しでも減らせる取り組みが求められます。

過労死防止対策と高度プロフェッショナル制度の矛盾

5月31日,政府は,新たな「過労死防止大綱」の最終案を発表しました。

 

 

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000209413.html

 

 

過労死防止大綱は,過労死ゼロの実現を目指す

政府の基本方針を示すもので,厚生労働省の施策の土台となるものです。

 

 

この過労死防止大綱を読むと,日本人の働き方がよくわかります。

 

 

月末1週間の就業時間が60時間以上の雇用者の割合は,

平成29年は7.7%で432万人となっています。

 

 

 

 

個人的な感覚としては,月末1週間の就業時間が60時間を

超えている労働者の割合は,もっと多いような気がします。

 

 

政府は,週労働時間60時間以上の雇用者の割合を平成32年までに

5%以下にする目標を掲げているので,まだ達成できていません。

 

 

次に,勤務間インターバル制度について,

導入している企業が1.4%

導入を予定しているまたは検討している企業が5.1%,

導入の予定はなく,検討もしていない企業が92.9%となっています。

 

 

勤務間インターバル制度とは,

勤務終了から次の勤務開始までの間に

十分な休息時間を確保するというものです。

 

 

1日の労働が終了して,次の労働が始まるまでの間に,

十分な休息時間を確保することで,長時間労働を抑制して,

労働者の疲労を回復させ,ワークライフバランスを確保できるようになります。

 

 

この勤務間インターバル制度については,

周知が不十分なのか,

導入企業がわずか1.4%しかありません。

 

 

そこで,政府は,平成32年までに

勤務間インターバル制度を導入する企業の割合を

10%以上

とする目標を掲げました。

 

 

医療,介護,運送業など夜働く業界の場合,

夜働くことで睡眠バランスが崩れて,

疲労が蓄積しやすいので,

労働者保護の観点から勤務間インターバル制度が必要であると思います。

 

 

また,勤務間インターバル制度における休息時間ですが,

睡眠以外にも家族と団らんする時間を確保するためにも,

ヨーロッパで導入されている11時間以上が必要です。

 

 

休息時間が短い「名ばかり」勤務間インターバル制度

が導入されないようにチェックする必要があります。

 

 

過労死防止の観点から,早急に多くの企業で

勤務間インターバル制度が導入されることを願います。

 

 

その他にも,年休の取得率約50%を平成32年までに70%以上にし,

年休取得数が0の労働者を解消する目標も掲げられています。

 

 

過労死を防止するための対策が具体的数値と共に記載されており,

過労死をなくすための意気込みを感じますが,一方で,

5月31日に高度プロフェッショナル制度を含む

働き方改革関連法案が衆議院を通過しました。

 

 

何度もブログで投稿してきましたが,高プロは,

労働時間の規制を撤廃して,過労死を助長する制度です。

 

 

過労死防止対策をすすめながら,

一方で過労死を助長する高プロを導入するので,

政府の対応に矛盾を感じます。

働き方改革関連法案の強行採決に反対します

昨日,衆院厚生労働委員会において,

働き方改革関連法案が強行採決されてしまいました。

 

 

 

 

これまで何回かブログで記載してきましたが,

働き方改革関連法案のうち,

高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)は,

対象労働者の労働時間の規制を撤廃して,

残業代0円で24時間働かせても合法になるという危険な制度です。

 

 

そのため,野党は,高プロは過労死を助長するとして,

撤回を求めてきましたが,残念ながら,

昨日,強行採決されてしまったのです。

 

 

野党の健全な批判に耳を傾けずに,

数の力で採決を強行する与党のやり方は,

あまりにも横柄であり,

国会が言論の府として正常に機能していないように思えて,残念です。

 

 

今日は,これまでのブログに記載していなかった

高プロの問題点について解説します。

 

 

政府・与党は,高プロは,働いた時間ではなく成果で賃金を決める

成果型賃金制度であると主張しています。

 

 

しかし,これは誤りです。

高プロを導入する要件の中に,賃金制度に関する要素はなく,

成果型賃金にすることが義務付けられていません。

 

 

多くの企業では,月額賃金がほぼ固定された月給制がとられており,

高プロが導入されても,月給制の賃金制度が変わる保障はありません。

 

 

そのため,月給制のまま高プロが導入されれば,

たとえ,労働者が成果をあげたとしても,給料があがる保障はなく,

月額賃金が固定されたまま,残業代0円で24時間働かされる危険性があるのです。

 

 

また,高プロの法案には,

労働者の健康を確保するための措置を会社に義務付けていますが,

長時間労働の歯止めにならない実効性に欠けるものになっています。

 

 

高プロの法案では,

4週間のうち4日休日を与えなければならないのですが,

4週間で4日休日を与えさえすれば,

24時間連続勤務であっても許されることになります。

 

 

 

 

これでは,長時間労働の歯止めにはなりません。

 

 

高プロの法案では,会社が実施すべきとされている

労働者の健康を確保するための措置として,4つあげられており,

その中から1つを実施すればよいことになります。

 

 

おそらく,会社は,4つの中から最も負担の軽い,

「一定の場合に健康診断を実施する」ことになると思います。

 

 

しかし,健康診断を実施するだけでは,

長時間労働の歯止めになりません。

 

 

このように,高プロの法案では,

長時間労働の歯止めになる対策がなされていないので,

残業代0円で24時間働かされて,労働者の健康が害される危険があり,

やはり,野党の批判のとおり,過労死を助長するのです。

 

 

私は,高プロを含む働き方改革関連法案の強行採決に反対します。

 

労働者は高度プロフェッショナル制度の適用を事実上断れない

3日連続の投稿になってしまいますが,

労働者の健康を守るための労働時間法制が

根本からくつがえされてしまうほど重要な

法改正がなされようとしているので,

今日も高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)

の危険性について記載します。

お付き合いいただければ幸いです。

 

 

報道によれば,高プロを含む働き方改革関連法案は,

5月25日の衆院厚生労働委員会で採決される見通しです。

 

 

国会審議においては,高プロの危険性についての

野党の質問に対して,政府や与党が

真正面から答えることをせず,議論が深まっていません。

 

 

過労死が増えるという野党の批判に対して,

政府や与党は,高プロの対象者が

会社との交渉力のある高度専門業務に限られ,

高プロの導入には本人の同意が必要であることを根拠に,

批判をかわしています。

 

 

しかし,会社と労働者を比べれば,

圧倒的に会社が強い立場にあります。

現実の労働者は,会社から給料をもらえなければ,

生活ができなくなりますので,

事実上,会社の指示に従わなければならず,

弱い立場にあります。

 

 

 

そのような弱い立場にある労働者が,

会社から,「あなたには,今度から高プロという制度が適用されますので,

この書面にハンコをおしてください。」と言われたら,

事実上,断ることはできないはずです。

 

 

法律に,高プロの導入を断ったとしても,

不利益な取扱をしてはならないと記載されていても,

会社から同意をもとめられたときに,

断固として拒否できる労働者は

ほぼいないといってもいいでしょう。

 

 

さらに,高プロの法案審議の中で,

一度,労働者が高プロの適用に同意したとしても,

あとから撤回できるように修正されました。

 

 

しかし,これも同じように,

立場が弱い労働者が,雇い主である会社に対して,

一度,高プロの適用に同意したあとに,

「やっぱり高プロはやめてください」

とは,事実上,言えないと思います。

 

 

そもそも,高プロの同意を撤回できることを

労働者が知らないことが多いでしょうし,

同意を撤回した後に,

会社から何か不利益な扱いをうけるのではないか

と考えてしまうからです。

 

 

それくらい,今の会社と労働者の関係では,

会社が圧倒的に強くて,労働者が弱い立場にあります。

 

 

実際に,労働者が会社に対して

未払残業代や損害賠償請求をするのは,

会社をやめて,会社との関係がきれたあとがほとんどで,

会社に在職中に,そのようなことをする労働者は,極めて少ないです。

 

 

会社に在職しているときに,会社に請求をすると,

会社に居づらくなるからです。

 

 

そのため,労働者が高プロの適用を

拒否できるというのは,幻想にすぎません。

 

 

労働者は,高プロの適用に同意せざるをえなくなり,

その結果,残業代0円で24時間働かされてしまい

最悪の場合,過労死してしまうのです。

 

 

高プロは,本当におそろしい制度ですので,廃案にすべきです。

 

 

労働者は高度プロフェッショナル制度を求めていない

昨日に引き続き,

高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)

の危険性について記載します。

 

 

昨日,全国過労死を考える家族の会の方々が,

働き方改革関連法案から高プロを削除することと,

首相との面談を求めて,首相官邸前で座り込みを行いました。

 

 

https://www.bengo4.com/c_5/c_1224/c_1653/n_7916/

 

 

家族会の方々がうったえたのは,

高プロは過労死を促進する,

労働者は高プロを求めていない,

労働者目線の働き方改革を求める,

というものです。

 

 

昨日のブログにも記載しましたが,

高プロは,労働者の働き過ぎを防止することを

目的とした労働時間の規制をなくし,

残業代0円で24時間働かせても合法

になってしまうおそろい制度なのです。

 

 

残業代が0円になれば,

会社は,利益をあげるために,

労働者をどれだけでも働かせてしまいます。

 

 

そうなれば,労働者は,

働き過ぎとなり,疲労が蓄積して,

やがて過労死・過労自殺という

破滅の道をたどることになります。

 

 

 

このような高プロを労働者が望んでいるのかといえば,

残業代0円で24時間働かされること

を望む労働者はいないはずです。

 

 

労働者は,自分の時間という最も貴重な資源を

会社に提供して,会社から給料という対価をもらいます。

 

 

労働者が会社に提供する時間がどれだけ増えても,

会社からの対価である給料が増えないのであれば,

労働者は,最も貴重な資源である時間を

浪費することになり,損をすることになります。

 

 

労働者は,会社で働く時間以外にも,

家族と過ごす時間,

自分の趣味を楽しむ時間,

睡眠をとって疲労を回復する時間,

食事を楽しむ時間

などを確保する必要があります。

 

 

労働者が会社で働く時間が増えれば,

これらの時間が削減されてしまい,

人生の楽しみを失うことになりかねません。

 

 

自分の時間を大切にするなら,

労働者に高プロを導入するニーズはありません。

 

 

加藤勝信厚生労働大臣は,

十数人にヒアリングしたところ,

労働時間の規制を外すことに肯定的な

労働者の意見があったと説明したようです。

 

 

たった十数人のヒアリング調査を根拠に,

全国の労働者に影響を与える高プロのニーズがある

と決めつけるのはあまりにも杜撰です。

 

 

さらに,このヒアリング調査が,

どのような労働者を対象に,

どのような質問をして,

どのような回答があったのか

が明らかにならなければ,にわかに信用できません。

 

 

 

労働者が必要としていない高プロを導入しても,

労働者目線の働き方改革にならないのは明らかです。

 

 

労働者が求める働き方改革を実現するのであれば,

高プロは,撤回されるべきなのです。

 

 

高度プロフェッショナル制度に反対する理由

報道によれば,与党は,5月23日に,

働き方改革関連法案を衆院厚生労働委員会で

強行採決する見通しのようです。

 

 

十分な国会審議がなされていないまま,

「過労死促進法案」,「残業代ゼロ法案」

と批判されている高度プロフェッショナル制度(通称「高プロ」といいます)

が成立してしまうのは,非常に腹立たしいことです。

 

 

そこで,改めて,高プロの危険性について解説します。

 

 

労働基準法には,労働者が働き過ぎによって

健康を害することがないように,会社に対して,

労働時間の規制をしています。

 

 

具体的には,

①1日8時間,1週間で40時間を

超えて働かせてはならないこと(労働基準法32条),

②労働時間が8時間を超える場合には

1時間の休憩を与えなければならないこと(労働基準法34条),

③毎週少なくとも1回の休日を

与えなければならないこと(労働基準法35条),

④1日8時間を超えて残業させた場合には,

25%増の割増賃金を支払わなければならないこと(労働基準法36条),

といった労働時間の規制が定められています。

 

 

それでは,高プロが成立するとどうなるのでしょうか。

 

 

高プロが適用される労働者には,

これらの労働時間の規制が適用されなくなります。

すなわち,残業代ゼロで24時間働かせても合法になってしまうのです。

 

 

高プロを推進する人は,

成果を出せば早く帰れるようになる

というメリットを主張しています。

 

 

しかし,高プロが適用されたからといって,

早く帰れるようになる保障は全くありません。

ある仕事が終われば,また次の仕事がふってくるので,

いつまでたっても仕事が終わらず,

逆に帰宅時間が遅くなることが予想されます。

 

 

また,高プロは年収1075万円以上の労働者が対象なので,

自分には関係ないと考える労働者がいるかもしれません。

しかし,高プロは,多くの労働者にとって関係があるのです。

 

 

今議論されている高プロの対象者は,

年収1075万円以上の労働者ですが,

高プロの成立後,知らいないうちに,

年収要件が引き下げられてしまい,

対象労働者が拡大していくことが予想されます。

 

 

 

経団連は,かつて年収400万円以上の労働者を対象とすべきと提言していました。年収400万円以上の労働者が対象になるのであれば,多くの労働者が,残業代ゼロで長時間労働を強いられるリスクがあるのです。

 

 

小さく産んで大きく育てるのが,規制緩和の常套手段であることを肝に銘じておく必要があります。

 

 

労働者は,高プロを他人事としてとらえるのではなく,明日は我が身と考えるべきです。

 

 

勤務間インターバル規制導入の必要性

昨日に引続き,立憲民主党の「人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案」について言及していきます。

 

政府の働き方改革関連法案には,勤務と勤務の間にまとまった休息時間を確保しなければならないという勤務間インターバル規制はありませんが,立憲民主党の法案には,「休息時間規制」がもりこまれています。

 

具体的には,「各日において十分な生活時間が確保できるよう11時間を下回らない範囲内において厚生労働省令で定める時間以上の継続した休憩時間を,始業後24時間を経過するまでに確保して与えなければならないものとする。」というものです。

 

https://cdp-japan.jp/news/20180508_0436

 

ようするに,1日の仕事が終わった時間と次の日の仕事が始まる時間との間に連続11時間以上の休息時間を労働者にとらせなければ,労働者を働かせてはならないということです。

 

今の労働基準法には,勤務終了から勤務開始までの時間について規制はありません。それでは,なぜ,勤務間インターバル規制の導入が議論されているのでしょうか。

 

それは,勤務と勤務の間の休息時間が短いために,十分な疲労回復ができず,労働者の健康が害される場合があるからなのです。

 

勤務間インターバル規制の導入が必要な業種の一つに運送業界があげられます。

 

私は,長距離トラック運転手の残業代請求を担当した際に,タコグラフ(トラックの走行時間や停車していた時間を記録する装置)をもとに,労働時間と休憩時間を算出しましたが,こまぎれの休憩時間が何回かありましたが,まとまった11時間以上の休息時間はほとんどありませんでした。

 

長距離トラック運転手は,夜に長距離移動して,朝から日中にかけて睡眠をとりますが,日中は体温が上昇して,もともと眠りにくいうえに,ほとんどのトラック運転手は,ホテルや旅館ではなく,トラックの狭いスペースで寝るため,質の良い睡眠が確保できていません。

 

もともと,長距離トラック運転手の睡眠の質が悪い上に,こまぎれの休憩時間では,まとまった十分な睡眠時間が確保できず,疲労を回復することができません(精神科医の樺沢紫苑先生は,毎日7時間以上の睡眠時間を確保することを提唱しています)。

 

そのため,長距離トラック運転手は,勤務と勤務の間にまとまった休息時間がとれない結果,睡眠に必要なまとまった時間が確保できなくて,疲労回復ができず,過労状態が続いて,最悪,過労死にいたるリスクがあります(厚生労働省が発表している過労死の認定結果によれば,運送業界が過労死が発生している件数が最も多いです)。

 

また,長距離トラック運転手は,十分な睡眠時間が確保できなければ,居眠り運転をしてしまい,交通事故が発生するリスクも高くなります。

 

そのため,労働者の疲労回復,健康確保,仕事以外の生活時間を確保してワークライフバランスを充実させるためにも,勤務間インターバル規制が必要なのです。

 

それでは,なぜ休息時間が11時間以上必要なのかといいますと,睡眠時間以外に,通勤時間,食事をする時間,家族と団らんする時間などある程度自由に過ごせる時間が必要であることから,11時間以上という休息時間が導かれたのだと思います。

 

ヨーロッパでは,EU労働時間指令により,24時間以内に最低連続11時間の休息時間を与えることが義務付けられていることも参考になります。

 

労働者の疲労回復,健康確保,ワークライフバランスの充実のために,勤務間インターバル規制を導入することに賛成します。

 

なお,日弁連が2016年11月24日に発表した「あるべき労働時間法制」に関する意見書も参考になります。

 

https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/2016/opinion_161124_2.pdf

人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案

5月8日,立憲民主党が「人間らしい質の高い働き方を実現するための法律案」を衆議院に提出しました。政府の働き方改革関連法案の対案になります。

 

https://cdp-japan.jp/news/20180508_0436

 

労働者を守る観点からすれば,政府が今国会で成立を目指している働き方改革関連法案よりも,立憲民主党の法律案の方が断然優れています。

 

まずは,時間外労働の罰則付き上限規制です。今の労働基準法では,36協定を締結すれば,どれだけ残業をさせても合法です。

 

しかし,どれだけ残業させても合法のままでは,長時間労働が蔓延し,過労死や過労自殺に歯止めがかからず,労働生産性も向上しません。

 

そこで,時間外労働に上限を決めて,会社に対して,これ以上の時間働かせたら,労働基準法違反として刑罰を科すことによって,残業を抑止しようとするものです。

 

長時間労働を撲滅させるために,時間外労働の罰則付き上限規制を導入することは適切なことなのですが,問題は,刑事罰が科せられるのは,何時間まで働かせたらなのかということです。

 

今の政府の法案では,臨時的な特別な事情があれば,時間外労働が1ヶ月100時間未満なら刑事罰が科せられません。

 

この100時間未満という残業時間が問題なのです。人間は働きすぎると,疲労回復することができず,脳や心臓にダメージが生じて,脳や心臓の病気を発症して,死亡することがあります。これが過労死というものです。

 

厚生労働省が,過労死の認定基準である「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」によれば,脳や心臓の病気が発症する前1ヶ月間におおむね100時間または発症する前2ヶ月間ないし6ヶ月間にわたって,1ヶ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合には,業務と発症との関連性が強いと評価されます。

 

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/rousai/dl/040325-11.pdf#search=%27%E8%84%B3%E8%A1%80%E7%AE%A1%E7%96%BE%E6%82%A3%E5%8F%8A%E3%81%B3%E8%99%9A%E8%A1%80%E6%80%A7%E5%BF%83%E7%96%BE%E6%82%A3%E7%AD%89%E3%81%AE%E8%AA%8D%E5%AE%9A%E5%9F%BA%E6%BA%96%27

 

ようするに,1ヶ月100時間を超える残業をすると,過労死するリスクが高くなるのです。そのため,1ヶ月100時間というのが過労死ラインと呼ばれています。

 

今の政府の法案では,時間外労働が1ヶ月100時間未満となっていますが,99.9時間という限りなく過労死ラインに近い時間まで働かせても,刑事罰が科せられず,合法になってしまいます。

 

他方,立憲民主党の法案では,時間外労働が1ヶ月80時間未満となっているため,上記の過労死ラインを超えて残業をさせた会社に対しては刑事罰が科せられることになります。

 

さらに,立憲民主党の法案では,1ヶ月80時間未満の時間外労働には休日労働も含まれるとして,休日労働も労働時間規制の対象になっていることを明確にしている点で分かりやすくなっています。

 

このように,長時間労働の是正と過労死・過労自殺の根絶を目指し,働く人の命と健康を守る観点から,立憲民主党の法案が優れていると考えます。

真の働き方改革のためには労働時間を削減して労働生産性を向上させることが重要です

先日,日弁連の貧困問題対策本部の勉強会で,株式会社ワークライフバランスの小室淑恵社長の講演を聞きました。小室社長が主張する労働時間革命が,ご自身の子育てと起業の実体験,豊富なデータ,コンサルしてきたクライアント企業の実績から,非常に説得的で感動したので報告します。

 

まずは,人口構造と経済成長の関係についてです。ハーバード大学のデービットブルーム教授によれば,人口ボーナス期と人口オーナス期に分けて国の経済成長を分析できます。

 

人口ボーナス期とは,ある社会の生産年齢比率が高くなり,人口構造が経済にプラスになる時期のことです。安い労働力を武器に世界中の仕事を受注する一方で,高齢者比率が低く,社会保障費が嵩まないのでインフラ投資が進み,爆発的な経済発展をします。1960年~1990年代半ばの日本が人口ボーナス期にあり,現在では,中国,シンガポール,タイ等の国が人口ボーナス期にあります。

 

人口ボーナス期が終わると人口オーナス期に移り,人口ボーナス期は二度とこなくなります。人口オーナス期とは,人口構造が経済の重荷になる時期のことです。働く人より支えられる人が多くなる状況になります。労働力人口が減少し,働く世代が引退世代を支えるという社会保障制度を維持することが困難になります。今の日本は,人口オーナス期の真っ只中にあるわけです。

 

人口オーナス期では,生産年齢人口でありながら,労働参画できていない人(女性,障がい者,介護している人)をどれだけ労働市場に参画させられるか,また,有効な少子化対策ができるかが重要になります。

 

女性が労働参画しつつ,少子化対策をするためには,男性の働き方改革,すなわち,労働時間の削減が重要になります。女性が1人目の子供を出産した後,男性が仕事が忙しいことを理由に,家事育児に参画しないと,女性は,協力者がいないまま孤独なワンオペ育児に陥り,そのトラウマで2人目の子供が産まれにくくなります。

 

そのため,男性が労働時間を短縮しつつ,仕事の成果をあげるという労働生産性を向上させることで,男性が家事育児に参画し,女性がワンオペ育児から脱出して,労働市場に参画しやすくなり,少子化が改善されて,労働人口が増加するというプラスの循環を生み出すことができます。

 

男性労働者の労働時間を削減する観点からすると,今の働き方改革法案の中で,高度プロフェッショナル制度は,弊害が多いです。すなわち,高度プロフェッショナル制度では,能力の高い社員に仕事が集中してしまい,どれだけ働いても残業代が発生しないので,優秀な人材ほど早く辞めてしまい,優秀な人材が日本の労働市場から海外の労働市場へ流出していってしまいます。

 

結局のところ,男性労働者の労働時間を削減することが人口オーナス期において最も重要であるにもかかわらず,高度プロフェッショナル制度は,労働時間の規制をとりはずして,どれだけでも長時間労働ができるようになるので,労働時間の削減と矛盾します。小室社長の講演を聞き,やはり高度プロフェッショナル制度は,真の働き方改革と矛盾するものであり,労働時間を削減して,労働生産性を向上させる法制度こそが必要であると確信しました。