内定者をタダ働きさせることは違法です!

内定者にタダ働きをさせている悪質な企業がいることを,

大阪府立大学がツイートしたことが話題になっています。

 

 

 

大阪府立大学キャリアサポート室が次のようなツイートをしました。

 

 

「内定者を使って,学内で自社宣伝のチラシを配らせたり,

キャリアサポート室の許可なく学内で

自社セミナーを企画させたりするなど,

企業側の目に余る採用活動が目立っています。

本来採用担当の社員が行うべき業務を,

内定者をただ働きで使う行為は違法であり,

言語道断です。厳に謹んでください」

 

 

社会人経験のない大学生の内定者が,

内定先の企業から自社宣伝のチラシの配布などを依頼された場合,

断ったら何か不利益な取扱を受けるのではないかと

不安になってしまい,応じてしまうのが現状なのでしょう。

 

 

このように,内定者の忠誠心を利用して,

企業が内定者をタダ働きさせることは,

労働基準法に違反しており,悪質です。

 

 

本日は,内定者をタダ働きさせることが

違法になる根拠について解説します。

 

 

まず,企業の採用の手続は,

①企業による募集→

②これに対する労働者の応募→

③企業から労働者に対する採用内定の通知→

④就労開始予定日が到来し,就労開始

という流れで進むのが一般的です。

 

 

 

この流れの中のどの時点で,

労働契約が成立したといえるのかについて,

大日本印刷事件の最高裁昭和54年7月20日判決では,

採用内定通知の時点で,入社予定日を就労の始まりとする

解約権留保付労働契約が成立していると判断されました。

 

 

すなわち,採用内定通知によって,

就労開始予定日までに採用内定取消事由が生じた場合には

解約できるという留保が付された労働契約が成立するのです。

 

 

ということは,入社予定日から内定者は

就労を始めることになりますので,入社前は,

内定者には,就労の義務はないことになります。

 

 

もし,内定者が入社前に就労したのであれは,企業は,

内定者に対して,就労に対する賃金を支払わなければなりません。

 

 

また,内定者が入社前の就労を拒否したことで,

内定が取り消された場合,

そのような内定取消は無効になります。

 

 

 

 

大阪府立大学のツイートにあるように,

自社宣伝のチラシを配布させたり,

学内で自社セミナーを企画させることは,本来,

企業の採用担当者の仕事ですので,

それを内定者にさせることは,そもそもできません。

 

 

仮に,内定者にそのようなことをさせるのであれば,企業は,

採用担当者と同じだけの時給を内定者に支払わなければなりません。

 

 

よって,内定者には入社前に就労義務がないのに,

採用担当者の仕事をさせている点,

仕事なのに賃金を支払っていない点において,

労働基準法に違反することになります。

 

 

大阪府立大学のツイートをきっかけに,

このような悪質な企業がなくなることを願います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

採用内定取消の対処法

昨日のブログ記事「内定を取り消されてしまったら・・・」の続きとして,違法な採用内定取消に対して,どのように対処するべきかについて説明していきます。

 

「内定を取り消されてしまったら・・・」のブログ記事に記載しましたが,よほどの理由が無い限り,会社は,採用内定を取り消すことができません。

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/2018/05/08/naitei20180508/

 

不況を理由とする採用内定の取消も認められないことが多いです。なぜなら,会社は,経営・人事計画に基いて一度は積極的に人材の募集・勧誘を行っておきながら,これを数ヶ月で覆すことになるわけですが,短期間に採用が難しくなるほど経営が悪化するとは考えにくく,また,仮に,経営が悪化したとしても,それを予見できなかった責任は会社にあるからです。

 

よほどの理由が無い限り,会社は,採用内定を取り消すことができないことについて,厚生労働省は,「新規学校卒業者の採用に関する指針」において,次のように,会社が考慮すべきことを定めています。

 

http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/jakunensha05/pdf/pamphlet.pdf

 

①事業主は,採用内定を取り消さないものとする。

 

②事業主は,採用内定取消しを防止するため,最大限の経営努力を行う等あらゆる手段を講ずるものとする。

 

③事業主は,やむを得ない事情により,どうしても採用内定取消し又は入社時期繰下げを検討しなければならない場合には,あらかじめ公共職業安定所に通知するとともに,公共職業安定所の指導を尊重するものとする。

なお,事業主は,採用内定取消しの対象となった学生・生徒の就職先の確保について最大限の努力を行うとともに,採用内定取消し又は入社時期繰下げを受けた学生・生徒から補償等の要求には誠意を持って対応するものとする。

 

そこで,採用内定を取り消されてしまった場合,まずはハローワークへ採用内定取消の相談へ行き,ハローワークから,会社に対して,上記の指針に基づいた指導をしてもらうといいでしょう。

 

また,採用内定取消に納得がいかない場合には,会社に対して,もともとの入社予定日から働くことを求め,あわせて,賃金の支払いを請求します。

 

それでも,会社が採用内定取消を撤回しない場合,その会社で働くことを希望するのであれば,裁判手続で,従業員の地位にあることの確認や賃金の請求をします。

 

その会社で働くことはやめて,別の会社に就職する場合,裁判手続で慰謝料などの損害賠償請求をします。新規学校卒業者の場合,採用内定が取り消されると,翌年の新規採用に応募するしかなく,就職が1年間遅れることが多いので,1年分の給料・賞与について,損害賠償請求するかを検討するべきです。

 

採用内定が取り消されてしまったが,どうしても納得がいかない場合,採用内定取消は,よほどの理由がない限りできないことを思い出してもらい,会社に対して,一矢報いたい場合には,弁護士にご相談ください。

内定を取り消されてしまったら・・・

大学生が過酷な就活戦線を闘い抜き,ようやくつかんだ内定。就活生も親御さんも,内定が本当に嬉しくて,春から社会人としての第一歩を踏み出すことを心待ちにしているはずです。

 

しかし,もし,ようやくつかんだ内定が後から取り消されてしまったら・・・。新規に学校を卒業する予定の学生はどうすればいいのでしょうか。

 

まずは,会社から採用内定が出された時点で,労働契約が成立していたのかを検討します。労働契約が成立していれば,会社は,一方的に労働契約を解約することができないのです。

 

通常,採用の手続は,①会社による募集→②労働者の応募→③会社から労働者に対する採用内定の通知→④就労開始日になって,労働者が就労を開始するという流れで進みます。

 

この採用の手続の中で,③採用内定の通知の時点で,労働契約が成立したと考えられます。すなわち,採用内定の時点で,入社予定日を就労の開始日とし,入社予定日までに採用内定取消事由が生じた場合には,会社は採用内定を取り消すことができるという労働契約が成立したことになります。

 

次に,会社は,どのような場合に,採用内定を取り消すことができるのでしょうか。

 

会社の一方的な都合による新規学校卒業者に対する採用内定の取消は,対象となった学生と家族に計り知れない打撃と失望を与えます。また,採用内定を受け取った学生は,他の企業の内定を辞退していることが多く,採用内定の取消後に次の就職先を探すのが困難であり,翌年の新規採用に応募するしかなく,1年間を棒に振ることになりかねません。

 

そのため,会社が採用内定を取り消すことができるのは,採用内定当時知ることができず,また知ることが期待できない事実が後に判明し,それによって採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる場合」に限られます。

 

ようするに,採用内定当時に会社が分からなかったことが後日分かり,そのような理由だったら,常識的に考えて採用内定を取り消されてもしかたがないよね,といった理由がないと採用内定を取り消すことができないのです。

 

もう少し具体的に説明すると,学生が学校を卒業できなかった場合,学生がはれんち罪を犯した場合,健康診断で異常が発見されて,業務に耐えられないほど重要な場合などといった理由でない限り,採用内定を取り消すことができません。

 

そのため,もし採用内定を取り消されてしまったのであれば,自分には本当に採用内定を取り消されてしまうほどの落ち度があったのかを冷静に振り返り,納得がいかないのであれば,弁護士に相談してみてください。