NHKの受信料集金人は労働組合法の労働者か?

昨日,コンビニ店主が労働組合法の労働者にあたるか

についてブログを投稿した関連で,本日は,

NHKの放送受信契約取次受託者,受信料集金人

である地域スタッフは労働組合法の労働者にあたるか

について解説します。

 

 

引越しシーズンがまっただ中なところ,

新居に引越した後,NHKに引越したことを

連絡しないでいると,夜中にピンポーンとインターホンがなります。

 

 

宅急便でも届いたのかなと思って,表へ出ると,

地域スタッフの人がいて,自宅にテレビを設置していますよね,

NHKの放送受信契約を締結してくださいと言ってきます。

 

 

 

 

子供が生まれて,NHKの教育テレビに

子育てを助けられている今なら喜んで受信料を支払っていますが,

大学生のころであれば,NHKを見ていなくても,

ましてやテレビを見ていなくても,テレビを設置しているだけで,

見てもいないのにNHKの受信料を支払うことに納得がいかず,

地域スタッフが自宅アパートにやってきて,

受信料を引き落とすことになって,

残念な気持ちになったのを覚えています。

 

 

地域スタッフは,夜に自宅アパートに戻ってくる

学生の動向などを把握して,テレビは見ていないから

受信料を支払いたくないと文句を言う人達を粘り強く説得して,

受信料を回収しなければならないので,

大変な仕事やなぁと思います。

 

 

このような地域スタッフですが,

NHKと労働契約を締結しているのではなく,

契約期間が定めれている委託契約を締結しており,

地域スタッフが労働者なのかが争われてきました。

 

 

労働基準法の労働者にあたれば,最低賃金が保障されたり,

よほどのことがない限り解雇されず,手厚く保護されるのですが,

高裁レベルでは,地域スタッフは,

労働基準法の労働者ではないという判断が定着しています。

 

 

高裁レベルでは労働基準法の労働者ではない

と判断されているですが,東京高裁平成30年1月25日判決は

(NHK全受労南大坂支部事件・労働判例1190号54頁),

地域スタッフは,労働組合法の労働者であると判断しました。

 

 

 

 

労働組合法の労働者は,会社との交渉上の対等性を確保するための

労働組合法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者

が含まれるので,労働基準法の労働者よりも,範囲が広いので,

労働基準法の労働者ではなくても,

労働組合法の労働者にあたることがあります。

 

 

そして,労働組合法の労働者に当たるかについては,

契約の実際の運用などの実態に即して,

次の要素を総合考慮して判断されます。

 

 

1 基本的判断要素

 ①事業組織への組み入れ

 ②契約内容の一方的・定型的決定

 ③報酬の労務対価性

2 補充的判断要素

 ④業務の依頼に応ずべき関係

 ⑤広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束

3 消極的判断要素

 ⑥顕著な事業者性

 

 

NHKの事業収入の約96%が受信料収入で,地域スタッフは,

受診者の転居の移動状況や受信料の支払状況を把握することが

中心的な業務であり,NHKの事業活動の根幹を成す業務の一つを

担当しており,貢献度が高いことから,

NHKの事業の継続にとって不可欠な存在として

事業組織に組み込まれているとされました(①)。

 

 

地域スタッフに求められる契約取次業務の目標数は

NHKが一方的に決め,NHKから支払われる報酬額も

NHKが決めており,地域スタッフには交渉の余地がないので,

契約内容の一方的・定型的決定が認められます(②)。

 

 

地域スタッフの報酬は,基本給的な性格と歩合給的な性格があり,

全体として労務提供の対価として認められました(③)。

 

 

地域スタッフは,目標達成に向けて業務に関する

事細かな指導を受け,目標達成に至らなかったときには,

委託業務の削減や委託契約の解除につながり,

NHKの指揮監督下に置かれていたと判断されました(⑤)。

 

 

 

 

以上より,地域スタッフは,労働組合法の労働者に該当し,

NHKが団体交渉を拒否することは

不当労働行為に該当するとされました。

 

 

この裁判例をみると,地域スタッフは,

労働基準法の労働者にもあてはまるのではないかと思いますが,

高裁レベルでは否定されているが残念です。

 

 

このように,労働組合法の労働者は広く捉えられているので,

コンビニ店主の事件でも,裁判所において,

労働組合法の労働者と判断されることを願います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コンビニ店主は労働組合法の労働者か2~中央労働委員会命令~

セブンイレブン東大阪上小阪店の店主が,

24時間営業を辞めて,セブンイレブンの本部と対立していた問題で,

セブンイレブン本部は,店主に対して,

時短営業を理由とする契約解除をしないことを伝えたようです。

 

 

 

 

とりあえず,現状は時短営業が事実上追認されたのですが,

セブンイレブン本部は,24時間営業を維持する方針に

変わりはないようで,今後,この問題がどのように

進展していくのか見守っていきたいと思います。

 

 

さて,コンビニ店主の働き方がクローズアップされている中,

3月15日に中央労働委員会において注目すべき命令をくだしました。

 

 

先日,ブログで紹介した,コンビニ店主を

労働組合法の労働者としたセブンイレブンの

岡山県労働委員会の命令と,ファミリーマートの

東京都労働委員会の命令の判断を覆し,

コンビニ店主は,労働組合法上の労働者ではないと判断されたのです。

 

 

 

 

コンビニ店主にとっては,残念な逆転敗訴でした。

 

 

本日は,3月15日の中央労働委員会の命令について説明します。

 

 

労働組合法の労働者は,相手方との個別の交渉において

交渉力に格差が生じ,契約自由の原則を貫いたのでは

不当な結果が生じる場合に,労働組合を組織して

集団的な交渉によって保護が図れるべき者が含まれます。

 

 

そのため,労働基準法の労働者よりも,

保護される範囲が広いのです。

 

 

労働組合法の労働者に該当するかについては,

次の要素を総合考慮して判断されます。

 

 

1 基本的判断要素

 ①事業組織への組み入れ

 ②契約内容の一方的・定型的決定

 ③報酬の労務対価性

2 補充的判断要素

 ④業務の依頼に応ずべき関係

 ⑤広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束

3 消極的判断要素

 ⑥顕著な事業者性

 

 

 

コンビニのフランチャイズ契約は,

本部が一方的定型的に定めており,

コンビニ店主が個別交渉で変更することは困難です(②)。

 

 

コンビニ店主は,本部から経営の助言・指導を受けて,

店舗において長時間働いています(⑤)。

 

 

そのため,都道府県労働委員会は,

コンビニ店主を労働組合法の労働者と認めたのでした。

 

 

しかし,中央労働委員会は,コンビニ店主は,

自ら資金調達をして事業の費用を負担し,

損失や利益の帰属主体として,

自らの判断で従業員の雇用や人事管理を行うことで

他人の労働力を活用し,自ら選択した場所で

コンビニの経営を行っているので,

経営者として相当の裁量を有する独立の小売事業者であり,

本部の労働力として組織に組み込まれていないと判断されました(①,⑥)。

 

 

フランチャイズ契約は,コンビニ店主の労働条件というよりは,

店舗経営という事業活動の態様について規定しており,

本部がその内容を一方的に決定していても,

労働組合法の労働者性を根拠付けることにはならず(②),

コンビニ店主が本部から受け取る金員については,

コンビニ店主の労務供給に対する報酬とはいえない(③),

と判断されました。

 

 

結論として,コンビニ店主は,

独立した小売事業者であって,

労働組合法の労働者に当たらず,

本部が,コンビニ店主が加盟する

コンビニ加盟店ユニオンからの

団体交渉申入に応じなかったとしても,

不当労働行為に当たらないと判断されたのです。

 

 

 

コンビニ店主は,コンビニの店舗を経営しているので,

「労働者」と捉えるのは多少違和感があるものの,

本部との間で,交渉力,資金,情報において,

圧倒的に格差があり,事実上長時間労働をしていることから,

コンビニ店主を保護すべき必要性があり,

現行法では,コンビニ店主を保護する仕組みは,

労働組合法以外にはないのです。

 

 

コンビニ店主個人では力がないのですが,

労働組合法の労働者と認められれば,

コンビニ店主が団体で交渉できて,本部は,

交渉に応じなければならず,対等に交渉でき,

本部に対して,自分達の要望を受け入れてもらえる

可能性がでてくるのです。

 

 

コンビニ店主の現状を見ると,

労働組合法の労働者として保護するか,

本部とコンビニ店主の法律関係を規律する

フランチャイズ法などを制定するか,

のどちらかが必要だと考えます。

 

 

コンビニ加盟店ユニオンは,

中央労働委員会の命令を不服として,

行政訴訟を提起するようですので,

裁判所において,コンビニ店主が労働組合法の労働者

として認められるのか,注目していきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

コンビニの店主は労働組合法の労働者か

セブンイレブン東大阪南上小阪店の店主が,

人手不足を根拠に24時間営業をやめて,

営業時間を短縮したところ,本部のセブンイレブンジャパンから

フランチャイズ契約の解除と,違約金1700万円の支払いを

求められたことが大きく報道されています。

 

 

 

セブンイレブン本部としては,例外を一つでも作ってしまうと,

なし崩し的に24時間営業が守られなくなり,

24時間営業でがんばっている店主の不満が大きくなり,

コンビニのシステムが維持できなくなることから,

24時間営業を維持したいのだとと考えられます。

 

 

他方,コンビニの店主としては,人手不足が深刻であり,

店主が過労死するくらい働かないと店舗を維持できず,

コンビニが持続していくためには,24時間営業を見直す必要がある

と考えていると思われます。

 

 

そして,コンビニを利用する消費者としては,

店主が過労死するまで働かなければいけないのであれば,

24時間営業でなくても,そこまで不便ではないし,

全ての店舗で24時間営業にしなくてもいいのではないか

と思う人が多いような気がしており,

セブンイレブン東大阪南上小阪店の店主の対応に

共感が広がっているのではないかと考えています。

 

 

一人の店主の意見であれば,一蹴されてしまいますが,

多くの店主や消費者も同じ意見を述べれば,

セブンイレブン本部としても,無視できず,

夜間営業を短縮する実験にのりだしました。

 

 

それに,呼応するように,コンビニ加盟店ユニオンが,

セブンイレブン本部に対して,

24時間営業の見直しを求める団体交渉を求めました。

 

 

 

 

しかし,セブンイレブン本部は,この団体交渉を拒否しました。

 

 

このセブンイレブン本部の団体交渉の拒否は許されるのでしょうか。

 

 

コンビニの店主が,労働組合法の「労働者」といえれば,

セブンイレブン本部は,団体交渉に応じなければならず,

今回の団体交渉の拒否は違法となります。

 

 

コンビニの店主は,コンビニの本部との間で

フランチャイズ契約を締結します。

 

 

フランチャイズ契約とは,店主が本部から商品仕入れや

販売促進の援助という継続的なサービスを受ける代わりに,

店主は,本部に対してロイヤリティーという対価を支払います。

 

 

そして,店主は,アルバイトを雇ったり,

商品の仕入れを行うなど,自分の資金を投入して,

コンビニを経営する個人事業主なので,

労働者とはいえないとも考えられます。

 

 

しかし,個人事業主であっても,コンビニ本部との個別の交渉では,

交渉力に大きな格差が生じており,

契約自由の原則のままでは不当な結果が生じることから,

労働組合を組織して,集団的な交渉によって

保護が図られる必要があります。

 

 

そのため,平成26年3月13日の岡山県労働委員会と

平成27年3月17日の東京都労働委員会は,

コンビニの店主は,労働組合法の労働者であるとして,

コンビニ店主が加盟するユニオンとの団体交渉を拒否したことは

違法であると判断しました。

 

https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m11368.html

 

https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/mei/m11486.html

 

 

すなわち,コンビニの店主は,コンビニの本部会社の

業務遂行に不可欠で枢要な労働力として,組織内に組み込まれており,

コンビニの本部会社がフランチャイズ契約の内容を一方的,

定型的に決定しており,コンビニの店主の受け取る金員は

労務の供給に対する対価に類する収入の性格があり,

実態上,コンビニの本部会社からの業務の依頼に対して

応じるべき関係にあり,コンビニ店主は,

コンビニの本部会社の指揮監督の下で経営を行っていることから,

労働組合法の労働者と判断されたのです。

 

 

 

 

もっとも,コンビニ本部が,労働委員会の命令に不服を申立てたので,

現在,中央労働委員会で審理が続いており,結論は固まっていません。

 

 

コンビニの店主が労働組合法の労働者であるという

判断が確定すれば,コンビニの店主が団結して,

24時間営業の見直しを求めれば,強い交渉力を発揮でき,

コンビニ本部会社が譲歩してくる可能性が高まります。

 

 

数は力です。

 

 

コンビニの店主は,コンビニ本部会社に対して立場が弱くても,

団結することで交渉力を強くできるのです。

 

 

中央労働委員会において,コンビニの店主に

有利な判断がなされることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

住宅設備機器の修理補修をする個人事業者は労働組合法の労働者か?

昨日のヤマハ英語教室の英語講師は,

労働組合法3条の「労働者」にあたるのか

というブログ記事に関連して,本日は,

労働組合法3条の「労働者」にあたるのかが争われた

INAXメンテナンス事件を紹介します

(最高裁平成23年4月12日判決・労働判例1026号27頁)。

 

 

INAXの子会社であるINAXメンテナンスは,

住宅設備機器の修理補修などの会社であり,

INAX製品の消費者からの依頼で

修理業務に応じる個人事業者である

カスタマーエンジニア(CEといいます)

との間で業務委託契約を締結していました。

 

 

 

 

CEは,受付センターから顧客からの修理依頼の連絡を受け,

直接,修理依頼をしてきた顧客と連絡,打ち合わせをして

修理業務を行い,その報酬は,顧客の代金に,

ランクごとに異なる比率で定められた基準に従って支払われており,

源泉徴収や社会保険料の控除は行われずに,

個人事業の収入として扱われていました。

 

 

CEらが加入する労働組合が,会社に対して,

組合員の契約内容の変更や解除を一方的に行わないこと,

組合員の年収を保障すること(最低年収550万円),

CE全員を労災保険に加入させることを要望し,

団体交渉を申し入れました。

 

 

しかし,会社は,CEは独立した個人事業者であることから,

労働組合法の労働者に当たらないので,

団体交渉に応じる義務はないとして,

団体交渉に応じませんでした。

 

 

そこで,労働組合は,労働委員会に対して,

会社が正当な理由なく団体交渉を拒否しているとして,

不当労働行為の救済を求めたところ,

労働委員会は,会社が団体交渉に応じなかったことは

不当労働行為に該当し,団体交渉に応じることと

謝罪文の交付を会社に対して命令しました。

 

 

 

 

これに対して,会社が,労働委員会の救済命令の

取消を求めて裁判を起こしました。

 

 

このように,労働組合に対する不当労働行為の事件は,

地方労働委員会→中央労働委員会→

地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所という,

事実上5審制になっており,

解決までに長い年月がかかってしまいます。

 

 

さて,最高裁は,昨日ブログで紹介した,

労働組合法上の労働者性の判断基準である

基本的判断要素,補充的判断要素,消極的判断要素

について,次のようにあてはめて判断しました。

 

 

①事業組織への組み入れについて,

INAXメンテナンスは,約590人いるCEを

ライセンス制度などの下で管理し,

全国の担当地域に配置を割り振って

日常的な修理補修の業務に対応させていたので,

CEは,会社の業務遂行に不可欠な労働力として,

その恒常的な確保のため,組織に組み込まれていたと判断されました。

 

 

②契約内容の一方的・定型的決定について,

本件業務委託契約は,「業務委託に関する覚書」によって規律されており,

個別の修理補修の依頼内容をCEが変更する余地がなかったため,

会社が業務委託契約の内容を一方的に決定していたと判断されました。

 

 

③報酬の労務対価性について,

CEの報酬は,商品や修理内容にしたがって

予め決定した顧客に対する請求金額に,

会社が決定した級ごとに定められた一定率をかけて,

これに時間外手当に相当する金額

が加算される方法で支払われていたので,

労務提供の対価としての性質を有すると判断されました。

 

 

④業務の依頼に応ずべき関係について,

CEが仕事の依頼を拒否する割合は1%弱であり,

業務委託契約の契約期間は1年であり,

会社が異議を出せば更新されないことになっていたため,

CEは,会社からの個別の修理補修の依頼に

応ずべき関係にあったと判断されました。

 

 

⑤広い意味での指揮監督下の労務提供,

一定の時間的場所的拘束について,

CEは,原則として午前8時30分から午後7時まで

発注連絡を受けること,会社の制服を着用して作業をし,

会社に報告書を提出していたことから,これも認められました。

 

 

以上より,CEは,労働組合法3条の労働者と判断され,

会社の団体交渉の拒否は不当労働行為に該当するとされました。

 

 

形式的に業務委託契約を締結して個人事業者と扱われていても,

上記の判断要素にあてはめていけば,

実質的に労働組合法上の労働者といえるケースはたくさんあると思います。

 

 

 

 

そのような場合,労働組合を結成して,

会社と交渉することで,組合員の労働条件を

向上させることができるかもしれません。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ヤマハの英語講師は労働組合法上の労働者なのか?

朝日新聞の報道によれば,

ヤマハミュージックジャパンが運営する

英語教室で働く女性講師14人が労働組合を結成し,

会社に対して,待遇改善を求める団体交渉を申し入れたようです。

 

https://www.asahi.com/articles/ASM1N56MDM1NPTIL00G.html

 

 

ヤマハの英語講師は,ヤマハと労働契約ではなく

委任契約を締結しており,形式上は個人事業主となっているようで,

社会保険が適用されておらず,

残業代の支払いがなく,有給休暇もないようです。

 

 

このように,実態は労働者なのですが,

会社は,労働者であると認めれば,労働基準法に従い,

残業代を支払い,有給休暇を取得させなければならず,

社会保険料も負担しなければならないので,

これらの負担を免れるために,形式的に

委任契約や代理店契約,業務委託契約を締結していることがあります。

 

 

このような事件では,形式的に委任契約等を締結している者が

「労働者」といえるかどうかが争点となります。

 

 

 

そして,「労働者」には,

労働基準法9条に定められている「労働者」と,

労働組合法3条に定められている「労働者」があります。

 

 

ヤマハの英語講師の問題は,

労働組合法3条の「労働者」に該当するかという問題であり,

労働組合法3条の「労働者」に該当すれば,会社は,

労働組合との間で誠実に団体交渉を行う義務を負うことになります。

 

 

では,労働組合法3条の「労働者」といえるためには,

どのような要素を満たす必要があるのでしょうか。

 

 

労働組合法3条には,「労働者」とは,

「賃金,給料その他これに準ずる収入によって生活する者」

と定義されており,会社から使用されていることが

要件となっていないため,失業者も含まれる点において,

労働基準法9条の「労働者」よりも広い概念なのです。

 

 

そして,労働組合法3条の「労働者」は,

自分の労働力を提供して対価を得て生活しているため,

会社との個別の交渉において交渉力に格差が生じていることから,

労働組合を結成し,集団的な交渉による保護が図られるべき者が

幅広く含まれる必要があります。

 

 

そこで,以下の要素をふまえて総合的に判断されます。

 

 

1 基本的判断要素

 

 

①事業組織への組み入れ

(業務遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されており,

労働力の利用をめぐり団体交渉によって問題を解決すべき関係があること)

 

 

②契約内容の一方的・定型的決定

(労務提供者側に団体交渉による保護を保障すべき交渉力格差があること)

 

 

③報酬の労務対価性

 

 

2 補充的判断要素

 

 

④業務の依頼に応ずべき関係

(労働力の処分権を契約の相手方に委ねているかどうか)

 

 

⑤広い意味での指揮監督下の労務提供,一定の時間的・場所的拘束

(人的従属性を推認させ,労働者性を肯定する方向に働く)

 

 

3 消極的な判断要素

 

 

⑥顕著な事業者性

(事業組織からの独立性や契約内容等の交渉可能性等を推認させる事情)

 

 

以上の要素をヤマハ英語教室にあてはめてみます。

 

 

 

まず,①英語教室では英語講師がいないと授業ができませんので,

ヤマハの英語講師は,ヤマハ英語教室の業務遂行に

不可欠な労働力として組織に組み入れられているといえます。

 

 

次に,②ヤマハと英語講師の委任契約の内容はわかりませんが,

おそらく定型的な契約様式が使用されており,

ヤマハが一方的に契約内容を決定していることが予想されます。

 

 

③英語講師は,レッスンの回数などに応じて

報酬が決められていると思われ,

報酬はレッスンの対価といえそうです。

 

 

④英語講師は,ヤマハからレッスンの依頼を断れば,

自分の報酬が減り,生活が苦しくなるので,

ヤマハからの仕事の依頼を拒否することはないと考えられます。

 

 

⑤英語講師は,ヤマハの指定する教室で,

ヤマハの教材を使うように指示されており,

ヤマハの指揮監督下にあるといえそうです。

 

 

⑥英語講師は,他人の労働力を利用できず,

自分の才覚で利得する機会があるといえず,

個人事業主とは評価できないと考えられます。

 

 

以上より,ヤマハの英語講師は,

労働組合法3条の「労働者」に該当すると考えられます。

 

 

 

 

ヤマハが英語講師の組合との団体交渉に誠実に対応し,

英語講師の待遇改善がなされることを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。