正社員とアルバイト職員の労働条件の相違は不合理か?~学校法人大阪医科薬科大学事件その2~

8月2日金曜日に石川県女性センターで開催される,

「トラブルのない明るい職場を目指す労働判例・政策セミナーin金沢」

で講師をさせていただくことになりましたので,

セミナーで解説する裁判例の勉強をしています。

 

 

 

セミナーで解説する裁判例の中に,

学校法人大阪医科薬科大学事件の

大阪高裁平成31年2月15日判決があります

(労働判例1199号5頁)。

 

 

この裁判例については,今年の2月22日のブログで,

非正規雇用労働者と正社員の賞与の相違が不合理であり,

労働契約法20条に違反すると判断した画期的な判決であるとして,

紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201902227581.html

 

 

改めて,この裁判例を読むと,他にも気づきがありましたので,

本日は,そのアウトプットをします。

 

 

この事件では,アルバイト職員と正社員の労働条件の相違が,

労働契約法20条に違反するかが争われた事件です。

 

 

 

労働契約法20条は,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に相違がある場合,業務の内容,業務に伴う責任の程度,

職務の内容及び配置の変更の範囲,その他の事情を考慮して,

その相違が不合理であってはならないと定められています。

 

 

正社員と非正規雇用労働者の労働条件に相違がある場合に,

その相違が均衡のとれたものでなければならず,

均衡がとれていないのであれば,

会社は,労働者から損害賠償請求される可能性があります。

 

 

まず,原告となる非正規雇用労働者と

比較すべき正社員は誰かが問題となります。

 

 

原告と同じような仕事をしている正社員と比較すれば,

同じような仕事をしているのに労働条件の相違があるのは

不合理と判断される傾向になりますが,

正社員全体と比較すれば,違う仕事をしているのだから

労働条件の相違があっても不合理ではないと判断される傾向になります。

 

 

この点について,大阪医科薬科大学事件の高裁判決では,

「比較対象者は客観的に定まるものであって,

有期契約労働者側が選択できる性質のものではない。」と判断され,

労働者全体と比較することとなりました。

 

 

以前ブログで紹介したメトロコマース事件の東京高裁の判決では,

原告の非正規雇用労働者が選択した正社員と比較すればよいとされたので,

比較対象労働者の判断がわかれました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201906298250.html

 

 

同じような仕事をしてるなら,

労働条件も同じようにすべきという

同一労働同一賃金の考え方からすれば,

比較対象労働者は,正社員全体ではなく,

原告の非正規雇用労働者と同じような仕事をしている

正社員とすべきと考えます。

 

 

次に,この事件では,賞与以外の労働条件についても

不合理と判断されました。

 

 

夏期特別休暇について,正社員には夏期に5日間の

夏期特別休暇が付与されていましたが,

アルバイト職員には夏期特別休暇が付与されていませんでした。

 

 

この点,日本の蒸し暑い夏に仕事をすると体力的に負担が大きく,

休暇を与えて,心身をリフレッシュさせること,

お盆の行事で多くの国民が帰省し,

子供の夏休みに家族旅行にでかけることから,

夏期特別休暇が付与されている趣旨からすれば,

アルバイト職員に対して,夏期特別休暇を付与しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

 

また,大阪医科薬科大学では,正社員は,

仕事以外の原因で負傷し,欠勤した場合,

6ヶ月間は賃金が全額支払われ,

6ヶ月経過後は休職が命じられて

賃金の2割の休職給が支給されますが,

アルバイト職員には,これらの制度が適用されていませんでした。

 

 

この制度の趣旨は,継続して就労する正社員の

生活の保障を図る点にあるところ,

アルバイト職員も契約期間が更新されて,

継続した就労をして,大学に対する貢献もあり,

そのようなアルバイト職員に対する

生活の保障の必要性があることから,

この制度をアルバイト職員に一律に適用しないのは

不合理であると判断されました。

 

 

そして,アルバイト職員が仕事以外の原因で負傷し,

欠勤した場合に賃金の1ヶ月分,

休職した場合に賃金の2ヶ月分を支給しないことは,

不合理と判断されました。

 

 

当該労働条件の趣旨や目的,労働実態をもとに,

不合理か否かが判断されています。

 

 

非正規雇用労働者の格差是正に役立つ裁判例ですので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

通算契約期間で結論がわかれた労働契約法20条違反の裁判例~日本郵便(非正規格差)事件~

昨日は,1日家族サービスをしたので,

本日,ブログを更新することになりました。

 

 

8月2日に,全国労働基準関係団体連合会主催の

トラブルのない明るい職場を目指す労働判例・政策セミナー

で講師をさせていただくことになり,その準備のために,

労働契約法20条に関する裁判例を検討しております。

 

 

 

本日は,その経緯で,日本郵便(非正規格差)事件の

大阪高裁平成31年1月24日判決を紹介したいと思います

(労働判例1197号5頁)。

 

 

この事件は,日本郵便との間で,雇用期間の定めがある

労働契約を締結した契約社員である労働者が,

正社員との間で,8つの手当と2つの休暇に関する

労働条件に違いがあることが,労働契約法20条に違反するとして,

損害賠償請求をしたという事件です。

 

 

労働契約法20条では,非正規雇用労働者と正社員との

労働条件の相違が,「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度,

当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」,

不合理であってはならないと規定されています。

 

 

大ざっぱに言うと,非正規雇用労働者が正社員と

同じ仕事をしているにもかからわず,

労働条件が不合理に違うのは許されませんということです。

 

 

この事件で争点となった年末年始勤務手当について,

次のとおり判断されました。

 

 

正社員には,年末年始勤務手当が支給されており,

原告ら契約社員には,年末年始勤務手当が支給されていませんでした。

 

 

この年末年始勤務手当は,年賀状の配達の関係で,

年末年始が最繁忙期になるという郵便事業の特殊性から,

多くの労働者が休日として過ごしているはずの

年末年始の時期に業務に従事しなければならない

正社員の苦労に報いる趣旨で支給されています。

 

 

 

 

年末年始に最繁忙期となり,

その時期に働かなければならないことは,

正社員も契約社員も同じなので,上記の趣旨からすると,

正社員にだけ年末年始勤務手当を支給し,

契約社員に年末年始勤務手当を支給しないことは,

労働契約法20条に違反しそうです。

 

 

他方で,契約社員は,原則として短期雇用を前提として,

各郵便局の判断で,柔軟に労働力を補充,確保するための雇用区分であり,

実際に,年末年始の期間に採用が増加すること,

契約社員の5割以上が1年以内に,

7割以上が3年以内に退職すること,

正社員の待遇を手厚くすることで

有為な人材の長期的確保を図る必要性や,

労働条件が労使協議を経て設定された事情があります。

 

 

これらの事情は,労働契約法20条の「その他の事情」として,

重みがあるものであり,正社員と契約社員との間で,

年末年始勤務手当の支給に相違があることは

直ちに不合理とはならないとされました。

 

 

もっとも,契約社員であっても,有期労働契約を反復更新して,

契約期間が長期間に及んだ場合には,正社員と契約社員との間で,

年末年始勤務手当の支給に相違を設定する根拠は弱くなり,

もはや不合理と認められます。

 

 

そして,労働契約法18条において,

契約期間を通算して5年を経過すると,

非正規雇用労働者が正社員に転換できると規定されていることから,

契約期間を通算して5年を超えている契約社員に,

年末年始勤務手当を支給しないことは不合理であると判断されました。

 

 

同じりくつで,祝日給,夏期冬期休暇,病気休暇

の正社員と契約社員の相違について,

契約期間を通算して5年経過している契約社員との相違は,

不合理であると判断されました。

 

 

そして,不合理とされた部分について,

損害賠償請求が認められたのです。

 

 

無期転換ルールを定めた労働契約法18条を引用して,

通算契約期間が5年を超える契約社員との相違が

不合理であるとした点に特徴があります。

 

 

 

 

私としては,契約期間に関係なく,

手当や休暇の趣旨を個別に検討して,

不合理か否かを検討したほうがわかりやすいと考えます。

 

 

争われている手当や休暇ごとに判断が異なってきますので,

労働契約法20条に関する裁判例をこまめに

チェックしていくことが大切ですね。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

 

労働契約法20条違反を争うときに比較対象となる正社員をどう決めるのか

2019年3月10日のブログで,

メトロコマース事件の東京高裁平成31年2月20日判決を紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903107683.html

 

 

メトロコマース事件の東京高裁判決は,

正社員と非正規雇用労働者の退職金の格差について,

不合理であり,労働契約法20条に違反すると

初めて判断した画期的な判決であります。

 

 

 

退職金の法的性格については,長年の勤務に対する

功労報奨としての性格があり,原告の契約社員らは,

10年前後の長期間にわたって勤務していたこと,

原告の契約社員らと同じ売店業務の仕事をしていた契約社員が

職種限定社員に名称変更された際に退職金制度が導入されたことから,

正社員の退職金の4分の1相当を原告ら契約社員に対して

支給していないことは,不合理と判断されたのです。

 

 

なぜ,退職金全額ではなく,4分の1としたのか,

根拠は不明ですが,退職金の格差を不合理とした点で,

労働者にとって有利です。

 

 

さて,私は,8月2日に,公益社団法人全国労働基準関係団体連合会

からの依頼を受けて,最近の労働事件の裁判例の解説をする

セミナーの講師をさせていただくことになりまして,

労働契約法20条に関する裁判例の勉強をしています。

 

 

そこで,もう一度,メトロコマース事件の東京高裁を読み直したところ,

3月10日のブログで記載していなかった重要な点がありましたので,

そのことについて,記載します。

 

 

どういうことかといいますと,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に格差があった場合,どの正社員と比較するのかという点です。

 

 

 

例えば,同じ仕事をしている正社員と非正規雇用労働者を比較すれば,

同じ仕事をしているのに,労働条件に格差があるのは

不合理であるといいやすくなります。

 

 

逆に,違う仕事をしている正社員と非正規雇用労働者を比較すれば,

違う仕事をしているのだから,労働条件に格差があっても,

それはしかたのないことであり,労働条件に格差があるのは

不合理ではないという判断に傾きます。

 

 

このように,非正規雇用労働者が,労働契約法20条違反を

主張する際には,どの正社員と比較するのかは大事なことだと思います。

 

 

メトロコマース事件の場合,原告ら契約社員は,

売店業務をしていたので,売店業務をしている正社員と比較すれば,

同じ仕事をしているのに,労働条件に格差があるのは不合理である

という判断に傾き,他方,売店業務以外の地下鉄の車両の運転業務や

整備業務をしている正社員と比較すれば,違う仕事をしているので,

労働条件に格差があっても不合理ではないという判断に傾きます。

 

 

メトロコマース事件の一審判決は,原告ら契約社員と正社員全体を

比較したため,原告らが主張した労働条件の格差について

不合理ではないと判断しました。

 

 

他方,メトロコマース事件の控訴審判決は,

比較対象となる正社員の範囲について,

原告らの主張している売店業務に従事している正社員としたので,

原告らが主張した労働条件の格差について,

不合理と判断しやすかったのだと考えられます。

 

 

メトロコマース事件の東京高裁判決は,

比較対象となる正社員については,原告となる

非正規雇用労働者が特定して主張すれば,裁判所は,

その主張に沿って不合理といえるかを判断するとしました

 

 

比較対象となる正社員を,原告となる非正規雇用労働者が

設定できると判断した点は,今後の労働契約法20条違反を争う裁判で,

労働者が有利に活用できると考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

正社員と非正規雇用労働者の退職金の格差は不合理か?~メトロコマース事件東京高裁判決~

2019年2月20日,東京高裁において,

東京メトロの売店で働く非正規雇用労働者が,

売店を経営する株式会社メトロコマースに対し,

本給,資格手当,住宅手当,賞与,退職金,褒賞,早出残業手当に

相違があることは,労働契約法20条に違反すると

主張した裁判において,住宅手当,退職金の一部,褒賞,早出残業手当

の相違は不合理であるという判決がされました。

 

 

 

退職金の一部について,正社員と非正規雇用労働者に

相違を設けることが不合理であると初めて述べた判決であり,画期的です。

 

 

本日は,このメトロコマース事件の高裁判決について解説します。

 

 

最近,労働契約法20条違反に関する裁判例が

多数でてきて注目されています。

 

 

労働契約法20条には,正社員と非正規雇用労働者の

労働条件に相違がある場合,業務の内容,業務に伴う責任の程度,

職務の内容及び配置の変更の範囲,その他の事情を考慮して,

その相違が不合理であってはならないと定められています。

 

 

おおざっぱに言えば,正社員と非正規雇用労働者が,

同じ仕事をしているなら,同じ労働条件にしましょうということです。

 

 

メトロコマース事件では,正社員には,

退職金が支給されていたのですが,非正規雇用労働者には,

退職金が支給されていなかったことから,非正規雇用労働者に対して,

退職金を支給しないことは,労働契約法20条に

違反するのではないかが争われたのです。

 

 

そもそも,退職金には,賃金の後払い,功労報償など

様々な性格があり,長期雇用を前提とした正社員に対する福利厚生を

手厚くし,有為な人材の確保と定着を図るために,

正社員に対して退職金制度を設けて,短期雇用を前提とした

非正規雇用労働者に対して退職金制度を設けないことについては,

人事政策上,一概に不合理とはいえません。

 

 

 

もっとも,メトロコマースでは,非正規雇用労働者の労働契約は

原則として更新されており,定年が65歳に定められており,

原告の労働者らは,定年まで10年前後の長期間にわたって

勤務しており,原告らと異なる契約社員には

退職金制度が設けられたことを考慮すれば,

長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に係る退職金を,

原告ら非正規雇用労働者に一切支給しないことは不合理と判断されました。

 

 

そして,退職金のうちの,長年の勤務に対する

功労報償の性格を有する部分について,

正社員と同一の基準に基づいて算定した退職金の額の

4分の1であると判断し,正社員の退職金の4分の1を

非正規雇用労働者にも支給するように命じました。

 

 

なぜ,正社員の退職金の4分の1になったのかは,

判決文からはよくわかりませんが,退職金の一部について,初めて,

正社員と非正規雇用労働者の相違が不合理であると判断されたのです。

 

 

この他にも,住宅手当については,メトロコマースの労働者は,

勤務場所の変更があったとしても,東京メトロの管轄である

東京都もしくは千葉県,埼玉県,神奈川県なので,

転居を伴うことが想定されていないので,

住宅手当を正社員にだけ支給し,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

 

 

 

また,褒賞については,実際には勤続10年に達した正社員には

一律に3万円が贈られているものであり,

正社員と非正規雇用労働者に等しく支給すべきであり,

不合理と判断されました。

 

 

さらに,早出残業手当の割増率を非正規雇用労働者よりも

正社員を高くしていることも,不合理と判断されました。

 

 

労働契約法20条違反の事件では,

手当の性質や実態を丁寧に検討して,

不合理か否かが判断される流れが定着してきました。

 

 

退職金の一部について,正社員と非正規雇用労働者の相違が

不合理と判断されたので,同一労働同一賃金に向けて

また一歩前進したと思います。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

日本通運の非正規雇用労働者の賃金格差の是正

マスコミ報道によりますと,

物流大手の日本通運が今年の4月1日から,

非正規雇用労働者の賃金を引き上げて,

同じ労働条件で働く正社員の水準に

わせる方針を明らかにしたようです。

 

 

 

 

日本通運の社員は,大きく分けて,

全国転勤のある正社員,

全国転勤のない正社員(エリア職というようです),

期間の定めのある労働契約を締結している非正規雇用労働者

の3種類にわかれているようです。

 

 

エリア職と非正規雇用労働者との間には,

仕事内容にそれほど差がないにもかかわらず,

エリア職の方が,非正規雇用労働者よりも賃金が高く,

賃金格差があったのでしょう。

 

 

 

 

日本通運は,エリア職と非正規雇用労働者の

賃金格差を是正するために,非正規雇用労働者の賃金を

エリア職と同じ水準まで引き上げることにしたのです。

 

 

これは,2020年4月から施行される,

「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」

(短時間パート法といいます)で求められる

「同一労働同一賃金」を前倒しで導入したことになります。

 

 

「同一労働同一賃金」とは,同じ仕事をしている労働者には,

同じだけの賃金が支払われるべきという考え方です。

 

 

短時間パート法の8条において,

正社員と非正規雇用労働者の不合理な待遇が禁止され,

「同一労働同一賃金」が導入されるようになります。

 

 

では,どのような場合に,正社員と非正規雇用労働者との

賃金格差などが不合理な待遇になるのでしょうか。

 

 

これについては,厚生労働省が

短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する

不合理な待遇の禁止等に関する指針案

というもので,具体的なケースを解説しています。

 

 

例えば,基本給について,

労働者の業績又は成果に応じて支給するものがある場合,

正社員は,生産効率及び品質の目標値を達成しなければ,

減給されるなどの不利益を課されるにもかかわらず,

非正規雇用労働者は,目標値を達成していなくても

減給されるなどの不利益を課されないのであれば,

正社員の基本給を非正規雇用労働者の基本給よりも

高く設定しても問題はありません。

 

 

他方,このような事情がないのに,

基本給の一部について,

業績や成果に応じて支給している会社において,

正社員が目標値を達成した場合に支給し,

非正規雇用労働者が目標値を達成しても支給しないのであれば,

不合理な待遇となります。

 

 

また,賞与について,

正社員と非正規雇用労働者が同じように

会社の業績に貢献しているにもかかわらず,

正社員にだけ賞与を支給し,

非正規雇用労働者には賞与を支給しないことは,

不合理な待遇となります。

 

 

 

 

今後,基本給,賞与,手当などについて,

仕事の内容や責任の程度,

仕事の内容と配置の変更の範囲,

その他の事情が考慮されて,

不合理な待遇か否かが具体的に検討されるようになります。

 

 

非正規雇用労働者は,正社員との賃金格差に疑問を感じたら,

弁護士に相談することをおすすめします。

 

 

日本通運は,非正規雇用労働者の賃金を引き上げて,

エリア職との賃金格差を是正するという,

厚生労働省の指針案の内容に沿った王道の対応をしました。

 

 

他の企業も,日本通運を見習って,

正社員と非正規雇用労働者の賃金格差を是正する

取り組みをしていってもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

同一労働同一賃金のガイドラインの作成

働き方改革関連法で企業に求められる

同一労働同一賃金」について,現在,

厚生労働省の労働政策審議会において,

具体的なルールを定めるガイドラインが作成されています。

 

 

 

同一労働同一賃金とは,同じ内容の仕事をしているのであれば,

同じだけの賃金が支払われるべきというものであり,

正社員と非正規雇用労働者との賃金格差をなくすための切り札です。

 

 

現在のガイドライン作成において,重要なことが議論されています。

 

 

それは,正社員と非正規雇用労働者との間の

不合理な待遇の相違を解消するためには,

労働者と会社とで合意することなく,

正社員の待遇を引き下げることは望ましくないとしていることです。

 

 

正社員と非正規雇用労働者との格差を解消する方法には2つあります。

 

 

 

 

1つは,非正規雇用労働者の待遇を正社員の水準にあげることです。

 

 

非正規雇用労働者の労働条件が向上するので,

非正規雇用労働者の仕事に対するモチベーションがアップします。

 

 

正社員の労働条件はそのままなので,

正社員にもとくに不満はありません。

 

 

これが本来のあるべき姿です。

 

 

もう1つは,正社員の待遇を非正規雇用労働者

の水準に引き下げることです。

 

 

非正規雇用労働者にとっては,

格差が解消されて不満は多少減るかもしれませんが,

正社員にとっては,労働条件が引き下げられてしまうので,

仕事に対するモチベーションが下がってしまいます。

 

 

このように,労働者の同意なく,

労働条件を一方的に不利益に変更することは

原則として認められません(労働契約法8条,9条)。

 

 

今回のガイドラインでは,格差を解消するために,

正社員の待遇を引き下げるのではなく,

非正規雇用労働者の待遇を向上させることを

求めていることが重要なポイントとなります。

 

 

また,働き方改革関連法では,

正社員と非正規雇用労働者との待遇の違いについて,

非正規雇用労働者から理由の説明を求められた場合,

会社は,格差の理由を説明することになりました。

 

 

 

 

例えば,正社員と非正規雇用労働者との待遇の実施基準である,

賃金規程における等級表などの正社員の待遇の水準が

把握できるものの説明が求められます。

 

 

「賃金は,各人の能力,経験などを総合考慮して決定する」

という抽象的な説明ではだめで,

「この基準をこのように適用しているのでこのような差になっている」

具体的に説明しなければならないのです

 

 

今後,企業は,正社員と非正規雇用労働者の待遇の差が

あいまいなまま放置されていたのであれば,

それを解消しなければなりません。

 

 

他方,非正規雇用労働者は,自分の待遇を

正社員の水準に引き上げるチャンスですので,

同一労働同一賃金を積極的に活用していってもらいたいです。

 

 

同一労働同一賃金の施行は,

大企業が2020年4月から,

中小企業が2021年4月からです。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

郵便局における正社員と非正規雇用労働者の労働条件の格差は不合理か

最近,正社員と非正規雇用労働者との労働条件の格差

が不合理であるとして,労働契約法20条違反

が争われるケースが増えています。

 

 

本日は,日本郵便において,正社員と非正規雇用労働者の労働条件

の相違が不合理か否かが争われた大阪地裁平成30年2月21日判決

(労働判例1180号・26頁)について解説します。

 

 

一般的に,正社員と非正規雇用労働者との仕事内容や責任,

配置の変更が同じであれば,手当等の労働条件は

同じにしないと不合理と考えられます。

 

 

他方,正社員と非正規雇用労働者との仕事内容や責任,

配置の変更について,正社員の方が負担が重く,

その見返りの意味も含めて,正社員に,

手厚い手当等が支給されることは,不合理とはいえないと考えられます。

 

 

 

 

 

日本郵便では,正社員は,郵便物の集荷や配達といった仕事以外に,

郵便局内部の事務作業も行い,昇任によってシフト管理や企画立案,

労務管理といった管理業務を行い,異動や配置転換が実施されています。

 

 

他方,非正規雇用労働者は,郵便物の集荷や配達

といった仕事に限定され,昇任はなく,異動や配置転換はありません。

 

 

このように,正社員と非正規雇用労働者との間に,

仕事内容や責任,配置の変更について,違いが存在します。

 

 

そうなると,正社員と非正規雇用労働者との

手当などの労働条件について違いがあっても,

不合理とはいえないと判断されそうです。

 

 

しかし,本件では,年末年始勤務手当,住居手当,扶養手当について,

正社員に支給されているのに,非正規雇用労働者に

支給されていないのは不合理と判断されました。

 

 

まず,年末年始勤務手当について,郵便局の労働者は,

普通の会社は休みとしている12月29日から1月3日に

年賀状の集荷と配達をしなければならず,

1年で最も繁忙な時期に働いた場合に,

年末年始勤務手当として一律の金額が支給されています。

 

 

 

 

年末年始勤務手当は,繁忙期である年末年始に働いたことに

注目して支給される性質のものであり,

非正規雇用労働者も正社員と同様に年末年始に働いているので,

非正規雇用労働者にも同じ取扱にする必要があります。

 

 

そのため,年末年始勤務手当の性質から,

正社員にのみ支給して,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

住居手当については,配転に伴う住宅の費用負担の軽減

という性質があり,配転が予定されている正社員に支給されて,

配転が予定されていない非正規雇用労働者に支給されなくても,

問題がないように思えます。

 

 

しかし,正社員の中にも,配転が予定されていない労働者がいるのに,

正社員全員に住居手当が支給されており,

住居手当の支給があるのとないのとでは,

最大で月額2万7000円の差が生じていることから,住居手当を,

正社員にのみ支給し,非正規雇用労働者に支給しないことは

不合理であると判断されました。

 

 

これまでの裁判例は,配転が予定されているか否かで,

住居手当の支給に差があっても,不合理とはいえないと

判断される傾向にあったため,

住居手当で不合理と判断されたのは画期的だと思います。

 

 

そして,扶養手当については,労働者が扶養する家族の生活保障

としての性質があり,扶養家族の有無や状況に応じて

一定額が支給されており,扶養家族の状況によっては,

支給額が大きくなることから,扶養手当を正社員にのみ支給し,

非正規雇用労働者に支給しないことは不合理と判断されました。

 

 

本判決は,仕事や内容や責任,配転の可能性で差異があっても,

手当の性質に注目して,手当の差異が不合理であると判断される

余地があること,手当の金額で大きな格差が生じることも

考慮されることが,これまでの裁判例と異なるところであり,

労働者にとって有利に活用できそうです。

同一労働同一賃金の法改正

6月29日に成立した働き方改革関連法のうち,

本日は,同一労働同一賃金について説明します。

 

 

パートや契約社員,派遣社員といった

非正規雇用労働者の賃金は,正社員に比べて低い水準にあります。

 

 

少し古い統計ですが,平成24年の賃金構造基本統計調査によれば,

非正規雇用労働者の平均賃金は,

正社員の平均賃金の約6割くらいの水準のようです。

 

 

(日弁連の「あなたの暮らしも危ない?誰が得する?生活保護基準切り下げ(労働編)のチラシより抜粋)

 

 

正社員と非正規雇用労働者の仕事の内容が異なり,

正社員の方が,より難しい仕事をしているのであれば,

賃金に差が生じてもしょうがないと思えるのですが,

正社員と非正規雇用労働者の仕事の内容が同じであるにもかかわらず,

賃金に差が生じているのでは,非正規雇用労働者は納得できません。

 

 

そこで,非正規雇用労働者の待遇改善を図るために,

正社員との不合理な待遇差を是正するのが

同一労働同一賃金の法改正です。

 

 

同一労働同一賃金とは,読んだとおり,

同じ仕事なら同じ賃金が支払われるべきということで,

不合理な賃金格差をなくすことにつながります。

 

 

 

具体的に,どのような賃金格差が違法になるかは,

今後,厚生労働省がガイドラインで定めるのですが,

2016年12月に公表されたガイドラインでは,

次のように定められています。

 

 

すなわち,通勤手当,皆勤手当といった手当や,

食堂の利用といった福利厚生については,

原則として待遇格差は認められません。

 

 

正社員も非正規雇用労働者も,

自宅から会社まで通勤するのは同じですし,

皆勤については,正社員も非正規雇用も変わりませんし,

正社員だから食堂が利用できて,

非正規雇用労働者だから食堂が利用できないのは不合理ですよね。

 

 

他方,基本給が,職業経験や能力,業績や成果,

勤続年数などの差に応じて支給される場合や,

賞与が,業績などへの貢献度に応じて支給される場合には,

待遇差は認められにくいです。

 

 

この待遇差については,仕事の内容を判断の基本にするべきであり,

一般的な異動の可能性や長期雇用のための動機づけ

といった会社の主観的な要素で判断されることが

ないようにする必要があります。

 

 

このような理由で待遇差を安易に許せば,

正社員と非正規雇用労働者の格差の解消が

図れなくなってしまうからです。

 

 

他にも,会社は,非正規雇用労働者から求めがあれば,

正社員と非正規雇用労働者との間の待遇差の内容や

その理由を説明しなければならない義務が生じます。

 

 

非正規雇用労働者は,正社員との待遇差に納得できない場合,

会社に説明を求め,その理由に納得できなければ,

是正を求めていくことになります。

 

 

 

同一労働同一賃金の法改正は,

大企業は2020年4月から,

中小企業は2021年4月から施行されます。

 

 

なお,NTTグループでは,

正社員と非正規雇用労働者の間で

待遇差があった福利厚生制度を見直し,

正社員の制度に一本化したようです。

 

 

その結果,非正規雇用労働者は,

定期健康診断の受診項目が増え,

提携するフィットネスクラブやレジャー施設を

割安で使えるようになったようです。

 

 

今後は,NTTグループのような取り組みが

他の会社にも広がり,正社員と非正規雇用労働者の格差が

是正されていくことが期待されます。

定年退職後に再雇用された労働者の賃金格差は不合理なのか?

6月1日にあった重要な2つの最高裁判決のうちの

1つである長沢運輸事件について説明します。

 

 

昨日紹介したハマキョウレックス事件の原告らは,

定年退職するの非正規雇用の労働者でしたが,

長沢運輸事件の原告らは,

定年退職に再雇用された非正規雇用の労働者でした。

 

 

長沢運輸では,定年退職後に再雇用された非正規雇用の労働者を

嘱託社員と呼んでおり,嘱託社員の年収は定年退職前の79%程度となります。

 

 

 

正社員と嘱託社員との間に,

仕事の内容や責任の程度に違いはありませんでした。

 

 

また,ハマキョウレックスとは異なり,

長沢運輸では,嘱託社員であっても転勤の可能性がありました。

 

 

そこで,長沢運輸の嘱託社員らは,正社員には支給されている

能率給,職務給,精勤手当,住宅手当,家族手当,役付手当,賞与が,

嘱託社員に支給されないのは,不合理であるとして,

労働契約法20条に違反していると主張しました。

 

 

労働契約法20条では,正社員と非正規雇用の労働者の労働条件の違いが,

「労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,

当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」,

不合理であってはならないと定められています。

 

 

長沢運輸事件の最高裁判決では,

その他の事情」に,

非正規雇用の労働者が定年退職後に再雇用された者である

という事情が考慮されると判断されました。

 

 

どういうことかといいますと,

定年退職後に再雇用された労働者は,

長期間雇用されることは前提となっておらず,

定年退職するまでの間に賃金の支給を受けており,

一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けれることを考慮すれば,

正社員との賃金に差があったとしても,

割と寛大にみてもらえることになります。

 

 

嘱託社員は,一定の要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けられますし,

老齢厚生年金の支給が開始されるまでの間,

2万円の調整給が支給されていることから,

能率給,職務給,住宅手当,家族手当,賞与については,

正社員にのみ支給されて,嘱託社員に支給されなくても

不合理ではないと判断されました。

 

 

他方,精勤手当については,

従業員に対して休日以外は1日も欠かさずに出勤する

ことを奨励するために支給されるものであり,

正社員と嘱託社員との間に皆勤を奨励する必要性に違いはないので,

精勤手当を正社員にのみ支給し,

嘱託社員に支給しないことは不合理であると判断されました。

 

 

手当の実質的な中身が慎重に吟味されていますが,

役付手当がなぜ不合理ではないのかが,

判決文を読んでいて腑に落ちませんでした。

 

 

定年退職後に再雇用された労働者の場合,

正社員との労働条件の差について不合理とはいいにくくなりましたが,

賃金の格差が大きく拡大していたり,

手当の支給の有無の説明がよくわからない場合には,

定年退職後に再雇用された労働者であっても,

労働契約法20条違反が認められる余地があると考えます。

 

 

いずれにせよ,ハマキョウレックス事件と

長沢運輸事件の最高裁判決は,

企業の賃金体系に多大な影響を与えます。

非正規雇用の待遇差が不合理になる場合

6月1日に最高裁で,非正規雇用の労働条件についての

重要な判決が2件あったので,報告します。

 

 

ハマキョウレックス事件と長沢運輸事件です。

 

 

2つの事件とも,非正規雇用の運転手が,

正社員に支給されている手当が,

非正規雇用の労働者に支給されていないのは「不合理」であると主張して,

正社員に支給されている手当分の請求をしました。

 

 

 

労働契約法20条では,

正社員と非正規雇用の労働者の労働条件の違いが,

「労働者の業務内容及び当該業務に伴う責任の程度,

当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」,

不合理であってはならないと定められています。

 

 

2つの事件とも,裁判をおこした原告らは運転手であり,

正社員であっても,非正規雇用の労働者であっても,

おこなっている仕事の内容は変わりません。

 

 

そこで,原告らは,仕事内容が変わらないのに,

ある手当が正社員にだけ支給されて,

非正規雇用の労働者には支給されないのは,

不合理であるとして,

労働契約法20条に違反すると主張したのです。

 

 

ハマキョウレックス事件では,

住宅手当については不合理ではないと判断されましたが,

住宅手当以外の手当については不合理であると判断されて,

原告らの主張が認められました。

 

 

ハマキョウレックスでは,正社員には,

全国規模の広域異動の可能性がありますが,

非正規雇用の労働者には,転勤がありません。

 

 

正社員は,転勤が予定されているので,

非正規雇用の労働者と比較して住宅に要する費用が多額になるので,

正社員にのみ住宅手当が支給されて,

非正規雇用の労働者に住宅手当が支給されなくても不合理ではないと判断されました。

 

 

他方,

①実際に出勤する運転手を一定数確保することを目的として支給される皆勤手当,

②優良ドライバーの育成などを目的として支給される無事故手当,

③支給対象となる特殊な作業の内容が具体的に定まっていない作業手当,

④従業員の食事にかかる補助として支給される給食手当

については,正社員のみに支給されて,非正規雇用の労働者に

支給されないことは不合理であると判断されました。

 

 

手当がどのような意図で支給されているのか,

手当の実質的な中身は何なのか

を厳密に分析していくことが重要になります。

 

 

漫然と,正社員にだけ支給されていて,

非正規雇用の労働者に支給されていない手当があれば,

不合理と判断される可能性があります。

 

 

非正規雇用の労働者は,

正社員には支給されているけど,

非正規雇用の労働者に支給されていない手当があれば,

その手当についての説明が,

就業規則や賃金規定にどのように記載されているのかをチェックしてみましょう。

 

 

就業規則や賃金規定を読んでも,

その手当が,正社員には支給されているけど,

非正規雇用の労働者に支給されていない理由がよくわからない場合は,

労働契約法20条違反を疑ってみるべきです。