職務手当が固定残業代の対価性の要件を満たさず無効とされた事件

1 未払残業代請求事件で固定残業代が争点になる理由

 

 

未払残業代請求事件では、会社がある手当を支払っていて、

その手当が残業代になるので、

未払の残業代はないと反論してくることがよくあります。

 

 

ある手当が定額の残業代として支払われていることを

固定残業代といいます。

 

 

 

残業代の計算は、時間単価×残業時間×割増率で計算されます。

 

 

時間単価は、基礎賃金÷月平均所定労働時間で計算されます。

 

 

この基礎賃金には、基本給や皆勤手当などが含まれるのですが、

固定残業代である手当も含まれるかが争点になります。

 

 

固定残業代である手当が残業代の支払として無効となれば、

固定残業代である手当が基礎賃金に含まれるので、

時間単価の金額が多くなり、結果として、残業代の金額も多くなります。

 

 

また、固定残業代である手当が残業代の支払として無効となれば、

会社は、一円も残業代を支払っていなかったことになりますので、

固定残業代として支払っていた手当とは別に

残業代を支払わなければならなくなります。

 

 

このように、固定残業代が有効になるか否かによって、

請求できる未払残業代の金額が大きく変わるので、

会社は、固定残業代について、激しく抵抗してくるのです。

 

 

2 固定残業代の対価性の要件

 

 

この固定残業代について、

労働者に有利に使える裁判例をみつけましたので紹介します。

 

 

サン・サービス事件の名古屋高裁令和2年2月27日判決です

(労働判例1224号42頁)。

 

 

この事件では、ホテルで働く調理師である原告が、

被告の会社に対して未払残業代を請求しました。

 

 

原告は被告から、深夜・残業手当とみなす職務手当13万円

の支給を受けていたところ、

この職務手当が固定残業代として有効かが争われました。

 

 

固定残業代が有効となるための要件として、

固定残業代とされている手当が、

時間外労働に対する対価として支払われるもの

とされていなければならないという、対価性の要件があります。

 

 

この対価性の要件を満たしているかについては、

日本ケミカル事件の平成30年7月19日最高裁判決において、

労働契約書の記載内容、

会社の労働者に対する当該手当や割増賃金の説明内容、

労働者の実際の労働時間などの勤務状況など

を考慮して判断することが明らかになりました。

 

 

本件事件では、以下の事実から、

職務手当は時間外労働の対価としては認められないと判断されました。

 

 

会社は、勤務時間管理を適切に行っていなかったこと。

 

 

職務手当は80時間の残業代に相当するのですが、

原告は、毎月120時間を超える時間外労働をしており、

実際の時間外労働と大きく乖離していること。

 

 

 

被告会社では36協定が締結されておらず、

時間外労働を命ずる根拠を欠いていること。

 

 

職務手当は、対価性の要件を満たさず、

固定残業代として無効となるので、

職務手当は基礎賃金に含まれることになりました。

 

 

被告会社は、36協定を締結していなかったので、

適法な時間外労働が観念できないことになるので、

職務手当を時間外労働の対価とするには無理があります。

 

 

職務手当が80時間の残業代に相当するとされていたのですが、

過労死ラインに設定されており、この点で無効になるとも考えられます。

 

 

3 通勤手当は基礎賃金に含まれるのか

 

 

また、この事件では、通勤手当が基礎賃金に含まれると判断されました。

 

 

通勤手当は、労働基準法37条5条において、

基礎賃金に含まれないと規定されているのですが、

ここで言う通勤手当とは、

労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて

算定される手当をいいます。

 

 

労働基準法37条5項の通勤手当は、

原則として実際距離に応じて算定されるものをいい、

一定額まで距離にかかわらず一律に支給する場合には、

実際の通勤距離や通勤に要する実際費用に

応じて定められたものとはいえず、

労働基準法37条5項の通勤手当に該当しないこととなり、

残業代を計算するにあたっての基礎賃金に含まれることになります。

 

 

通勤手当という名目にとらわれることなく、

実質的に検討する必要があるのです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社に対する未払残業代請求事件で会社から損害賠償請求の反訴をされたものの400万円を回収した事例

1 暴行のパワハラ事件から始まった

 

 

本日は、未払残業代請求事件で、

400万円を回収した解決事例を紹介します。

 

 

クライアントは、建築会社に勤務していたところ、

社長から外壁材のサンプルで頭部を殴られて、負傷しました。

 

 

 

クライアントは、この暴行事件で、社長に対する恐怖心が強くなり、

会社を退職して、私のところへご相談にこられました。

 

 

クライアントの話を聞いていますと、社長は、

暴行事件以外にも普段から、パワハラを繰り返していたようですが、

パワハラを立証するための録音などの証拠はありませんでした。

 

 

他方で、クライアントは、長時間労働をしているのに、

残業代が支払われていないということがわかりました。

 

 

そこで、暴行事件について、治療費や慰謝料の損害賠償請求をして、

あわせて、未払残業代を請求することにしました。

 

 

このように、パワハラの実態のある会社は、高い確率で、

残業代が未払いとなっていることが多いので、

私は、パワハラの法律相談を受けた際には、

残業代の未払いがないかを確認しています。

 

 

2 タイムカードがなくてもパソコンのログデータで労働時間を立証する

 

 

この事件では、タイムカードで労働時間の管理は

されていなかったのですが、幸いなことに、

クライアントが会社で使っていたパソコンのログデータが

1年半ほど保存されており、それを入手することができたので、

労働時間を証明することができました。

 

 

暴行事件については、相手方の会社も非を認め、

早期に示談が成立しましたが、未払残業代請求については、

激しく抵抗してきましたので、労働審判を申し立てました。

 

 

相手方の会社は、パソコンのログデータでは、

労働時間を認定できないと主張してきました。

 

 

しかし、会社は、タイムカードなどで

労働時間を管理しなければならない義務を怠っていたので、

パソコンのログデータをもとに、

クライアントが手帳に時間をメモしていた記録で補正して、

労働時間を立証しました。

 

 

 

また、6ヶ月ほどパソコンのログデータが残っていなかったのですが、

会社が労働時間把握義務を怠っている場合には、

ある程度概括的に労働時間を推認できるとして、

パソコンのログデータが残っている期間の平均の残業時間で、

パソコンのログデータが残っていない期間の残業代を計算しました。

 

 

3 固定残業代の対価性の要件

 

 

相手方の会社では、給料明細書上は、

所定時間外賃金という名目で毎月4万円が支給されており、

相手方の会社は、この所定時間外賃金は固定残業代であるとして、

残業代は支払済みと主張しました。

 

 

しかし、相手方の会社は、就業規則もなく、

労働契約書もないので、クライアントは、

所定時間外賃金が何時間分の残業に対して支払われているのかという

説明を受けていませんでした。

 

 

そのため、所定時間外賃金という名目で、

給料明細書上では基本給と分けられて支給されていましたが、

所定時間外賃金は、残業に対する対価として

支払われているとはいえませんでした。

 

 

よって、所定時間外賃金は、残業代の支払として認められないので、

相手方の会社は、クライアントに対して

残業代をこれまで支払っていないことになります。

 

4 会社からの損害賠償請求

 

 

他にも、相手方の会社は、クライアントが

仕事上のミスを繰り返したことを理由に、

損害賠償請求をしてきました。

 

 

しかし、労働者のミスは、もともと会社経営に内在化しており、

会社が決定した業務命令自体に内在するリスクとして、

会社が負担すべき側面があることから、

損害の公平な分担という見地から、

労働者のミスを理由とする、会社の労働者に対する損害賠償請求は、

信義則上相当な限度に制限されます。

 

 

そのため、労働者のミスが重過失と評価できる場合には、

会社の損害賠償請求が一定の範囲で認められ、

労働者のミスが軽過失と評価される場合には、

会社の損害賠償請求が認められません。

 

 

そこで、そもそもクライアントにはミスはない、または、

ミスがあったとしても軽過失であるとして、

会社からの損害賠償請求を争いました。

 

 

労働審判では決着がつかず、訴訟に移行しましたが、

相手方の会社から、400万円の解決金を支払ってもらうことで

和解が成立しました。

 

 

パワハラ事件では、未払残業代請求を組み合わせることで、

労働者が満足する結果に結びつくことがあります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ワタミの残業代未払い問題は管理監督者が原因か?会社から管理監督者と言われても未払残業代請求をあきらめない

1 ワタミの残業代未払い問題

 

 

先日のブログで、ワタミの175時間の時間外労働についての、

労災認定の解説をしました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/rousai/202010079712.html

 

 

本日は、ワタミの残業代未払いの問題をもとに、

残業代請求の解説をします。

 

 

報道によりますと、弁当宅配事業のワタミの宅食の

女性営業所長に対する残業代が未払いであったとして、

高崎労働基準監督署がワタミに対して、是正勧告をしたとのことです。

 

 

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4093105.html

 

 

175時間の時間外労働をしていたのに、

残業代が未払いであったことに、

多くの方は、疑問を抱くと思いますが、

未払残業代請求事件ではよくあることです。

 

 

 

2 労働基準法41条2号の管理監督者とは

 

 

労働基準法41条2号の管理監督者に該当すれば、

残業代を支払わなくてよいことになっているので、

経営者が、労働基準法41条2号の適用を誤り、

営業所長などのように立場が上の労働者に対しては、

役職手当などが定額で支払われていて、

それ以外に残業代を支払わなくてよい

取扱にしていることがよくあります。

 

 

しかし、労働基準法41条2号の管理監督者に該当する労働者は、

ほとんどおらず、多くの会社では、違法に適用されていて、

労働基準法41条2号の管理監督者ではない労働者も、

管理監督者であるとして、違法に残業代が未払いとなっているのです。

 

 

管理監督者ではない労働者に対して、

残業代を支払わないことは違法なので、

労働者が、会社に対して、未払残業代を請求すれば、

会社は、未払残業代を支払わなければならないのです。

 

 

それでは、どのような労働者であれば、

労働基準法41条2号の管理監督者といえるのでしょうか。

 

 

3 管理監督者の判断要素

 

 

労働基準法41条2号の管理監督者に該当するかを判断する際には、

以下の3つの要素を総合考慮します。

 

 

①事業主の経営上の決定に参画し、

労務管理上の決定権限を有していること(経営者との一体性)

 

 

②自己の労働時間についての裁量を有していること(労働時間の裁量)

 

 

③管理監督者にふさわしい賃金等の待遇を得ていること

 

 

①については、当該労働者が会社の経営に関する

決定過程に関与しているか、採用や人事考課などの

人事権限が与えられているか、

現場作業にどれくらい従事していたかが検討されます。

 

 

②については、タイムカード等によって

出退勤の管理がされていたかが検討されます。

 

 

今回のワタミのケースにあてはめますと、

①この営業所長は、ワタミの経営には関与しておらず、

配達員の業務管理以外にも、配達の仕事を多く担当していたことから、

経営者との一体性は認められません。

 

 

 

②この営業所長は、配達員が急に仕事を休んだ時に

代役で配達をすることが多く、休みがとれないことが多かったので、

労働時間の裁量はなかったといえます。

 

 

③この営業所長の月額の賃金は26万円と低額であり、

管理監督者にふさわしい賃金とはいえません。

 

 

よって、この営業所長は、管理監督者ではないので、

ワタミに対して、未払残業代を請求できることになります。

 

 

4 労働時間の適正把握義務

 

 

もう一つ、報道によりますと、この営業所長は、

休日に勤務したはずなのに、エリアマネージャーから、

休日勤務の記録を削除されたようです。

 

 

「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき

措置に関するガイドライン」には、会社は、

労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する義務

を負うことが規定されています。

 

 

そのため、会社は、労働者の労働時間を正確に記録しなければならず、

当たり前ですが、勤怠記録を改ざんすることはあってはならないことです。

 

 

ワタミのような大手企業でも、いまだに、

残業代が未払いなどの労働基準法違反がありますので、

地方の中小企業でも、残業代の未払いが多いのが現実です。

 

 

私の経験上、残業代が未払いの会社に対して、

未払残業代を請求すれば認められることが多いので、

未払残業代の請求を思い立った場合には、

弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社から未払残業代を回収できない場合には社長等の役員に対して損害賠償請求することを検討する

1 会社から未払残業代を回収できないことがあります

 

 

未払残業代請求事件では、裁判をして、

会社に対していくらかの残業代を支払えという、

勝訴判決をもらっても、会社が任意に残業代を支払わないことがあります。

 

 

会社が任意に残業代を支払わない場合、

会社の財産を調査して、預金などの財産がみつかれば、

預金を差し押さえたりして、未払残業代を回収します。

 

 

 

もっとも、会社の預金の差し押さえをしても、

会社に預金がなければ、差し押さえは空振りに終わってしまい、

未払残業代を回収できません。

 

 

また、悪質な会社であれば、財産を隠してしまい、

財産を調査しても、差し押さえるべき財産がみつからないこともあります。

 

 

そうなると、せっかく裁判で勝訴しても、

未払残業代を回収できなくなるという残念な結果になってしまいます。

 

 

2 役員等の第三者に対する損害賠償責任

 

 

このように、会社から未払残業代を回収できないときには、

会社の代表取締役などの役員に対して、損害賠償請求をして、

実質的に未払残業代を回収する方法を検討します。

 

 

会社が未払残業代を支払わないなら、

代表取締役などの役員に代わりに未払残業代を支払ってもらうわけです。

 

 

このときに利用するのが、会社法429条1項の

役員等の第三者に対する損害賠償責任という法律構成です。

 

 

 

役員等の第三者に対する損害賠償責任の趣旨は、

株式会社が経済社会において重要な地位を占めており、

株式会社の活動は、役員等の職務執行に依存していることから、

役員等に法律で定めた特別の責任を課して、

第三者の保護を図ることにあります。

 

 

この第三者には、会社の労働者も含まれます。

 

 

役員等の第三者に対する損害賠償責任が認められるためには、

①役員等が会社に対する任務を懈怠したこと、

②当該任務懈怠について、役員等に悪意または重過失があること、

③第三者に損害が生じたこと、

④損害と任務懈怠との間に相当因果関係があること、

という要件を満たす必要があります。

 

 

3 任務懈怠とは

 

①の任務懈怠とは、役員等が会社の管理・運営を適正に行うことを

確保するために課せられている善管注意義務

(会社法330条、民法644条)や

法令遵守義務(会社法355条)に違反することです。

 

 

善管注意義務とは、役員等は、会社との間で委任関係に立つので、

善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務のことを言います。

 

 

ここで、会社が労働者に対して未払残業代を支払わないことが、

役員等の会社に対する任務懈怠に該当するかが問題となります。

 

 

まず、時間外労働に対して残業代を支払うことは、

労働基準法37条で定められた、

会社の労働者に対する基本的な法的義務であり、

会社がこれに違反した場合には、会社は、

6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑に処せられます

(労働基準法119条1号)。

 

 

そのため、会社の役員等は、会社に対する善管注意義務として、

会社に労働基準法37条を遵守させて、

労働者に対して残業代を支払わせる義務を負っているのです。

 

 

そして、会社が労働者に対して意図的に残業代を支払わない

という事態は、既にそれ自体として、善管注意義務に違反しており、

任務懈怠となります。

 

 

この点については、昭和観光(代表取締役ら割増賃金支払義務)事件の

大阪地裁平成21年1月15日判決(労働判例979号16頁)と、

ブライダル関連会社元経営者ら事件の鳥取地裁平成28年2月19日判決

(労働判例1147号83頁)の裁判例が参考になります。

 

 

次に、②役員等は、残業代を未払であることを認識しているので、

悪意または重過失が認められ、

③労働者に未払残業代が支払われていないという損害が発生しており、

④役員等の任務懈怠と損害の発生との間に

相当因果関係があることになります。

 

 

その結果、労働者は、役員等に対して、

未払残業代相当の損害賠償請求ができることになります。

 

 

会社に財産がなくても、代表取締役などの役員等が財産を持っていれば、

役員等の財産から未払残業代を回収することができるのです。

 

 

回収の場面では、あらゆる方法を考えて実践することが重要になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社から休憩時間と言われていても労働時間に該当する場合とは

1 休憩時間とは

 

 

現在、私が担当している未払残業代請求事件において、

休憩時間があったかなかったかが争点となっています。

 

 

会社の就業規則には、お昼の12時から13時の60分が

休憩時間であると規定されていますが、クライアントの主張では、

人手が足りず、昼ご飯を食べながら仕事をしており、

昼にまともな休憩をとったことがないとのことです。

 

 

それでは、どのような場合に、休憩時間があったといえるのでしょうか。

 

 

結論から言うと、休憩時間とは、

労働者が権利として労働から離れることを保障されている時間をいい、

労働者が会社からの指揮命令を受けており、

労働からの解放が保障されていない場合には、

休憩時間ではなく、労働時間となるのです。

 

 

 

例えば、現実には具体的な作業をしているわけではないのですが、

会社からの指示があれば、直ちに作業にとりかかることができる

態勢で待機している、手待時間については、

労働からの解放が保障されていないので、

休憩時間ではなく、労働時間に該当します。

 

 

2 休憩時間が労働時間と認定された事例

 

 

具体的な事例で検討してみましょう。

 

 

3交代制で24時間営業のガソリンスタンドで勤務していた労働者が、

休憩を現実にとることができず、休憩時間は手待時間であるとして、

残業代請求をした、クアトロ事件の東京地裁平成17年11月11日判決

(労働判例908号37頁)を検討します。

 

 

この事件では、3交代制の勤務において、各勤務の勤務者は

始業時と終業時の各1時間の重なりを除いて、原則として1人でした。

 

 

会社からは、1時間ごとに10分の休憩を取るように

言われていましたが、休憩していたときに、客が来た場合には、

業務を優先するように指示がされていました。

 

 

ガソリンスタンドは、危険物取扱施設であることから、

休憩とされている時間中もガソリンスタンドの敷地から

出ることが許されず、原則として1人体制なので、

持ち場を離れることができず、食事やトイレにも不便をきたしていました。

 

 

 

これらの事実関係からすると、

休息のために労働から完全に解放されることが保障されていないとして、

休憩時間ではなく、手待時間に該当するので、

会社が主張していた休憩時間は全て労働時間とされました。

 

 

休憩時間とされていた時間が労働時間と認定されれば、

9時に出勤して、18時に退勤して、

12時から13時が昼休憩の8時間労働の場合、

12時から13時の昼休憩が労働時間になる結果、

9時間労働となり、1時間の残業時間が発生するので、

この1時間分について、残業代を請求できることになります。

 

 

休憩時間と言われていても、

電話対応や来客対応をしている場合には、

労働からの解放が保障されておらず、労働時間に該当して、

その分の賃金を請求できるわけです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

固定給と歩合給とでは残業代の計算が異なる

1 固定給と歩合給

 

 

トラック運転手やタクシー運転手の場合、

歩合給制が取り入れられていることがあります。

 

 

歩合給とは、売上や成績によって

給料の金額が変動する給料のことをいいます。

 

 

売上がよけれは、給料も上がっていいのですが、

売上が低ければ、給料も低くなり、

生活ができなくなるというリスクもあります。

 

 

 

これに対して、固定給の月給制の給料は、

一定時間働けば、一定の給料が毎月支給されるものです。

 

 

固定給の月給制と歩合給とでは、残業代の計算が異なります。

 

 

2 固定給の残業代の計算

 

 

固定給の月給制の場合、毎月の賃金を

1ヶ月の所定労働時間(契約で決められた勤務時間)で割って、

1時間あたりの単価を計算し、1時間あたりの単価に、

1ヶ月の残業時間と割増率(1.25)をかけて、残業代を計算します。

 

 

例えば、固定給30万円の労働者が、

1ヶ月の所定労働時間は170時間、残業時間30時間、

総労働時間200時間、働いたとすると、

残業代は次のように計算されます。

 

 

(30万円÷170時間)×30時間×1.25=66,188円

 

 

3 歩合給の残業代の計算

 

 

他方、歩合給の場合、歩合給の総額を、

賃金算定期間における総労働時間で割って、

1時間あたりの単価を計算し、1時間あたりの単価に、

1ヶ月の残業時間と割増率(0.25)をかけて、残業代を計算します。

 

 

先ほどのケースで検討すると、残業代は次のように計算されます。

 

 

(30万円÷200時間)×30時間×0.25=11,250円

 

 

1時間あたりの単価を計算する時に、

1ヶ月の所定労働時間ではなく、1ヶ月の総労働時間で計算するので、

歩合給の場合、固定給に比べて、1時間あたりの単価が低くなります。

 

 

また、歩合給の場合、残業時間に対する時間当たりの賃金、

つまり、1.0の部分については、既に支払われているとされるので、

割増率は0.25となるので、残業代は、

固定給と比べて、低くなるのです。

 

 

このように、固定給の月給制と歩合給とでは、

残業代の金額が大きく異なってくるのです。

 

 

4 歩合給か固定給の月給制のどちらが適用されるかが争われた事件

 

 

それでは、就業規則には、固定給の月給制で規定されているのに、

会社から歩合給を適用された場合、労働者が残業代を請求する際に、

固定給と歩合給のどちらをベースに残業代を計算すべきなのでしょうか。

 

 

この点が争われたコーダ・ジャパン事件の

東京高裁平成31年3月14日判決(労働判例1218号49頁)

を紹介します。

 

 

この事件では、就業規則に歩合給についての定めはなく、

歩合給について定めた労働契約書もなかったのですが、

歩合給が適用されていました。

 

 

 

裁判所は、就業規則と異なる労働条件を内容とすることは、

就業規則に定められた労働条件の変更にあたるといえるので、

以下の事情を考慮する必要があるとしました。

 

 

①当該変更により労働者にもたらされる不利益の内容及び程度

 

 

②労働者により当該行為がされるに至った経緯及びその態様

 

 

③当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容

 

 

そして、当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと

認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか否か

という観点から判断されるのです。

 

 

本件事件では、会社から、残業代についての説明はなく、

就業規則の月給制で賃金が支給される場合との比較について説明がなく、

歩合給による不利益の内容及び程度について

十分な情報提供や説明がなかっとして、原告の労働者が、

自由な意思に基づいて、歩合給を受け入れたと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在しないと判断されました。

 

 

結果として、就業規則の月給制で残業代が計算され、

1364万円もの未払残業代請求が認められました。

 

 

固定給の月給制と歩合給とでは、残業代が大きく異なりますので、

就業規則や労働契約書をチェックして、

どちらが適用されるのかを吟味する必要があります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

未払残業代請求事件において管理監督者の判断は厳格にされます

1 管理監督者とは

 

 

現在、私が担当している未払残業代請求事件において、

会社から、私のクライアントは管理監督者なので、

残業代を支払わくても違法ではない、という主張がされています。

 

 

労働者に、支配人、マネージャー、店長などの役職が与えられていて、

残業代が支払われていないケースでは、必ずといってもいいくらい、

会社からは、管理監督者の主張がでてきます。

 

 

それでは、単に役職がつくだけで、管理監督者に該当するのでしょうか。

 

 

 

結論としては、管理監督者に該当するかについては、

厳格に判断されるので、単に役職がつくだけでは、

管理監督者に該当しません。

 

 

労働基準法41条2号の管理監督者に該当すれば、

残業代について規定されてる労働基準法37条が適用されなくなるので、

管理監督者には残業代が支払われなくてもよいことになるのです。

 

 

もっとも、労働基準法の原則は、1日8時間労働であり、

これを超えて働かせた場合には、

会社に残業代を支払わせることを義務付けして、

長時間労働を抑止しようとしているのです。

 

 

管理監督者は、この労働基準法の原則の適用が全て排除されるという、

重大な例外なので、管理監督者に該当するかについては、

厳格に判断されるのです。

 

 

管理監督者の範囲は厳格に画されるべきと判断した裁判例として、

HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件の

東京地裁平成23年12月27日判決

(労働判例1044号5頁)があります。

 

 

2 管理監督者についての3つの判断要素

 

 

管理監督者に該当するかについては、厳格に判断されるところ、

次の3つの点が判断要素とされています。

 

 

①経営方針の決定への参加ないしは、

労働条件の決定その他労務管理について

経営者との一体性をもっているか(経営者との一体性

 

 

②自己の勤務時間に対する自由裁量を有するか(労働時間の裁量性

 

 

③その地位にふさわしい処遇を受けているか(賃金等の処遇

 

 

①については、会社の経営にどの程度関与していたのか、

採用・解雇・人事考課といった人事権を与えられていたのか、

現場業務も担当していてかなどが考慮されます。

 

 

会社の経営会議には参加していない、

アルバイトの面接はするものの、採用の決定権限はない、

マネージャー業務以外の現場業務を多く担当している、

といった場合には、管理監督者ではないことになります。

 

 

②については、タイムカード等による出退勤管理がされていたり、

仕事が忙しくて出退勤の自由がない場合には、

管理監督者ではないことになります。

 

 

③については、給料や賞与がその地位にふさわしい

水準になっているかを検討することになります。

 

 

 

管理監督者といいながら、2~3万円の管理職手当が

ついてるだけでしたら、管理監督者ではないことになります。

 

 

また、賃金センサスという、日本人の平均的な年収の統計や、

業界の平均的な年収と比較して、当該労働者の待遇が低かったり、

平均と同じくらいですと、管理監督者ではないことになります。

 

 

業界の平均的な年収については、

ネットで検索すれば、すぐにみつかります。

 

 

管理監督者というわりには、給料が低い場合には、

だいたい管理監督者は否定されます。

 

 

以上みてきたように、管理監督者については、

上記の3つの判断要素をもとに厳格に判断していきますので、

管理監督者に該当することは少ないと考えますので、

役職がついていても、未払残業代をあきらめる必要はないのです。

 

 

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未払残業代を請求するタイミングとは

1 残業代をいつ請求するべきなのか

 

 

松山大学の教授3人が深夜、休日労働の残業代が

適切に支払われていないとして、松山大学に対して、

未払残業代請求の訴訟を提起しました。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/119638243cf76d37bb786096ec12dd6aaaf72f32

 

 

報道を見ている限りですと、3人の教授は、

松山大学に勤務を続けながら、

未払残業代請求の提訴に踏み切ったようです。

 

 

勤務先に対して、在職中に未払残業代請求をするのは勇気がいるので、

珍しいことだと思います。

 

 

それでは、未払残業代請求をするのは

どのタイミングがいいのでしょうか。

 

 

 

2 在職中に未払残業代請求をする場合

 

 

1つ目のタイミングは、松山大学の事件のように在職中に、

未払残業代請求をすることです。

 

 

ただし、在職中に未払残業代請求をすると、

会社との関係が気まずくなるので、

在職中に未払残業代請求をすることはほとんどありません。

 

 

すなわち、日本では、残業代が適切に支払われていなくても

許容される風潮があり、在職中に未払残業代請求をすると、

会社から、めんどうなやつというレッテルをはられて、

煙たがられますし、最悪の場合、

会社から嫌がらせを受けることがあるのです。

 

 

さらに、弁護士を代理人にして、

未払残業代請求の裁判まで起こすとなると、

会社に対してけんかを売るようなもので、

長く会社にいることが困難になります。

 

 

そのため、在職中に未払残業代の相談を会社にすることはあっても、

本格的に未払残業代請求をすることは、あまりないと思います。

 

 

私も、これまで何件も未払残業代請求事件を担当してきましたが、

在職中に未払残業代請求をしたのは1件だけでした。

 

 

その事件は、裁判となり、和解で終了したのですが、

クライアントは、裁判が終了した後に退職しました。

 

 

ただ、在職中に未払残業代請求をするメリットは、

会社内にあるタイムカードなどの証拠を容易に確保できる点にあります。

 

 

会社を退職した後ですと、証拠を確保するのが困難なことがあります。

 

 

3 退職後に未払残業代請求をする場合

 

 

2つ目のタイミングは、退職後に未払残業代請求をすることです。

 

 

未払残業代請求事件のほとんどが退職後に請求するものです。

 

 

 

会社を退職した後であれば、会社との関係がなくなりますので、

後腐れなく、会社に対して未払残業代請求ができるわけです。

 

 

会社が残業代を支払わないでいると、ペナルティとして、

残業代の元金に対して、遅延損害金が発生します。

 

 

会社は、残業代を支払わないと、

遅延損害金も支払わないといけないので、遅延損害金は、

残業代を支払わせるためのインセンティブになるのです。

 

 

この未払残業代の遅延損害金は、在職中の部分は、

年3%なのですが、退職後ですと、

賃金の支払の確保等に関する法律6条1項により、

年14.6%になります。

 

 

銀行の定期預金の金利が0.002~0.03%の時代に、

年14.6%の遅延損害金は大きいです。

 

 

退職後に未払残業代請求をする場合、

証拠を確保しにくい問題はあるのですが、

タイムカードや就業規則などの証拠については、

弁護士が代理人として、開示を求めれば、

会社は、概ね開示してくれます。

 

 

タイムカードがなく、パソコンのログデータで

労働時間を立証する場合には、できる限り、

在職中に自分が使用していたパソコンのログデータを

確保しておくのがいいです。

 

 

4 不当解雇やパワハラを争うのと同時に未払残業代請求をする

 

 

3つ目のタイミングは、不当解雇やパワハラにあって

弁護士に相談したときです。

 

 

クライアント自身は気づいていないのですが、

不当解雇やパワハラの相談の際に、

残業代が支払われているか聞いてみると、

支払われていないことが多いです。

 

 

これは、不当解雇やパワハラをする会社は、

労働基準法を遵守していないことが多く、

かなりの確率で、残業代を支払っていないのです。

 

 

このような場合、不当解雇やパワハラを争うと共に、

未払残業代請求をします。

 

 

不当解雇の場合、在職中の賃金の1年分から3ヶ月分の範囲で

会社から解決金を支払ってもらうことが多いのですが、

解雇された労働者の賃金が低ければ、解決金の金額は低くなります。

 

 

また、パワハラの場合、慰謝料の金額はそこまで高くなく、

10万円~100万円の範囲になることがほとんどです。

 

 

ところが、未払残業代請求が加わることで、

請求金額が一気に高くなり、

裁判での解決金の金額も高くなる傾向にあります。

 

 

そのため、不当解雇やパワハラの事件では、

残業代が支払われているかを確認することが大切です。

 

 

まとめますと、未払残業代請求をするタイミングは、

在職中に証拠を確保しておいて、

退職後に請求するのがベストだと考えます。

 

 

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労働時間を過小に自己申告してもパソコンのログデータで労働時間が認定される

1 自己申告の労働時間とパソコンのログデータから導かれる労働時間が異なる問題

 

 

私が現在担当している未払残業代請求の裁判において,

労働者の自己申告によって労働時間

特定してもよいかが争点となっています。

 

 

労働者が会社に対して,業務日報を提出しており,

そこに記載されている労働時間を用いるべき,

と会社側は主張しています。

 

 

 

他方,労働者は,上司から残業の申請を減らして,

調整するように指示を受けていたので,会社に対して,

実際の労働時間よりも少な目に労働時間を申告していました。

 

 

そして,労働者は,自己申告の労働時間ではなく,

労働者が使用していたパソコンのログデータで

労働時間を認定すべきと主張しています。

 

 

おそらく,労働時間を自己申告制にしている会社では,

労働者が過小に労働時間を自己申告しているケースは多いと思います。

 

 

このように,労働者が自己申告した労働時間と,

パソコンのログデータから導かれる労働時間とが異なる場合,

どちらの労働時間が認められるのでしょうか。

 

 

結論は,パソコンのログデータから導かれる労働時間が

認められることになります。

 

 

2 労働時間把握義務

 

 

まず,改正労働安全衛生法66条の8の3において,会社は,

労働者の労働時間の状況を把握しなければならないと規定されています。

 

 

これを労働時間把握義務といいます。

 

 

労働安全衛生規則52条の7の3において,

会社の具体的な労働時間の把握の方法として,

「タイムカードによる記録,パーソナルコンピュータ等の電子計算機の

使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする」

と規定されています。

 

 

要するに,会社は,原則として,

タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録で,

労働時間を把握しなければならないのです。

 

 

 

3 労働者の自己申告によって労働時間の把握が認められる場合

 

 

次に,タイムカードやパソコンの使用時間などの客観的な記録ではなく,

労働者の自己申告による労働時間の把握も,例外として認められています。

 

 

しかし,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるためには,

厳しい制限が課されています。

 

 

その厳しい制限については,基発1228第16号平成30年12月28日の

「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による

改正後の労働安全衛生法及びじん肺法関係の解釈等について」

と題する通達に規定されています。

 

 

具体的には,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるのは,

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」に限られます。

 

 

そして,会社がパソコンの使用時間などのデータを有する場合に,

自己申告による把握のみにより労働時間の状況を把握することは,

「やむを得ず客観的な方法により把握し難い場合」には当たらず,

認められません。

 

 

また,労働者の自己申告による労働時間の把握が認められるためには,

会社は,自己申告により把握した労働時間の状況が,

実際の労働時間の状況と合致しているか否かについて,

必要に応じて実際調査を実施し,

所要の労働時間の状況の補正をしなければなりません。

 

 

したがって,労働者の自己申告による労働時間の把握が

認められる余地は限定されており,

パソコンの使用時間で労働時間が把握できる場合には,

労働者の自己申告による労働時間の把握は認められないのです。

 

 

そのため,労働時間を過小に自己申告していても,

パソコンのログデータから導かれる労働時間が労働者に有利であれば,

労働者は,パソコンのログデータで労働時間を認定して,

残業代を請求すればいいのです。

 

 

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健康被害がなくても長時間労働が不法行為になる場合と固定残業代制度の有効性

1 健康被害がなくても長時間労働が不法行為とされた裁判例

 

 

昨日のブログで,長時間労働によって

心身の不調をきたしていないものの

慰謝料の損害賠償請求が認められた無州事件を紹介しました。

 

 

無州事件と同じように長時間労働によって

心身の不調をきたしていないものの

慰謝料の損害賠償請求が認められた裁判例として,

狩野ジャパン事件の長崎地裁大村支部令和元年9月26日判決

(労働判例1217号56頁)があります。

 

 

この事件の原告労働者は,2年間のうち,

ほとんどの月で1ヶ月の残業時間が100時間を超えており,

そのうち5ヶ月は1ヶ月の残業時間が150時間を超え,

一番ひどい月ですと,1ヶ月の残業時間が160時間を超えていました。

 

 

 

通常,1ヶ月の残業時間が100時間を超えると,

疲労が蓄積してストレス耐性が弱くなり,

強い心理的負荷によって,精神障害を発症することがあります。

 

 

もっとも,この事件の原告労働者は,

これだけの長時間労働をしていたにもかかわらず,

心身の不調をきたしたことの医学的証拠はなく,

具体的な疾患を発症していませんでした。

 

 

長時間労働を強いられたことによる損害賠償請求の事件では,

長時間労働によって労働者に脳・心臓疾患や精神障害が

発症していることが多いのですが,狩野ジャパン事件では,

労働者に健康被害が発生していませんでした。

 

 

裁判所は,被告会社が36協定を締結することなく,

長時間労働をさせていた上,

タイムカードの打刻時刻からうかがわれる

原告労働者の労働状況について注意を払い,

原告労働者の作業を確認し,

改善指導を行うなどの措置を講じなかったとして,

安全配慮義務違反を認めました。

 

 

そして,被告会社は,安全配慮義務を怠り,

2年にわたって,原告労働者を心身の不調をきたす

危険のあるような長時間労働に従事させたので,

原告労働者の人格的利益を侵害したものとして,

慰謝料30万円の支払を認めました。

 

 

慰謝料の金額は少ないのですが,

健康被害が発生していない長時間労働を強いられた場合にも,

損害賠償請求が認められましたので,今後,残業代請求事件で,

あまりにもひどい働き方をさせられていたのであれば,

慰謝料請求をすることも検討したいです。

 

 

2 固定残業代の有効性

 

 

もう一つ,狩野ジャパン事件では,重要な判断が示されました。

 

 

それは,被告会社の賃金規定において,

「職務手当は,固定残業の一部として支給する」と規定されていた,

固定残業代の問題です。

 

 

固定残業代が有効になるためには,

通常の労働時間に当たる部分と

時間外労働の割増賃金に当たる部分とを

判別できなければなりません。

 

 

この事件では,基本給と職務手当は区別されて支給されていましたので,

一見すると,通常の労働時間に当たる部分(基本給)と

時間外労働の割増賃金に当たる部分(職務手当)と

が判別できているようにみえます。

 

 

しかし,職務手当の中には,固定残業代の他に,

能力に対する対価も混在しており,職務手当のうち,

固定残業代部分が何時間分の割増賃金に相当するのかが

明示されていませんでした。

 

 

 

その結果,職務手当について,固定残業代部分と

能力に対する対価部分とが明確に区分されていないとして,

職務手当は固定残業代として無効と判断されました。

 

 

一見すると,基本給と固定残業代が区別されている場合でも,

固定残業代の中に,能力に対する部分が混在している場合には,

固定残業代部分が何時間分の割増賃金に該当するのかがわからない限り,

通常の労働時間に当たる部分と時間外労働の割増賃金に当たる部分とを

判別できないとして,固定残業代が無効になるのです。

 

 

固定残業代を争う場合に参考になる裁判例です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。