解雇期間中に別の会社で働いた収入は未払賃金から控除されてしまうのか?

労働者が解雇されている期間に別の会社で働いて得た収入

中間収入といいます)は,解雇が無効と判断されるまでの期間の

未払賃金(バックペイといいます)から控除されてしまうのでしょうか。

 

 

労働者は,解雇されてしまうと,給料がもらえなくなるので,

生活するために収入を確保する必要があるので,別の会社で働きます。

 

 

 

 

もっとも,解雇に納得ができない労働者は,会社に対して,

解雇が無効であるので,労働契約上の地位があることの確認と,

バックペイの支払いを求めて,労働審判または裁判を行います。

 

 

労働者が解雇した会社に対して,お金の支払いを求めたいだけ

であっても,裁判手続では,解雇した会社に戻ることを

建前として主張することになります。

 

 

解雇した会社に戻ることを建前として主張しているのに,

別の会社で働いていることは一見すると矛盾していますが,

労働者としては,生活していかなければなりませんので,

解雇した会社に戻ると主張して裁判で争っていても,

別の会社で働くことは問題ありません。

 

 

さて,解雇を争う事件ですと,会社から,

解雇期間中に労働者が得た中間収入をバックペイから

控除するべきだという主張がされることが多いです。

 

 

 

 

本日は,バックペイから中間収入を控除できるのかについて解説します。

 

 

現行民法536条2項には次のように規定されています。

 

 

「債権者の責めに帰すべき事由によって

債務を履行することができなくなったときは,

債務者は,反対給付を受ける権利を失わない。

この場合において,自己の債務を免れたことによって

利益を得たときは,これを債権者に償還しなければらならない。」

 

 

労働者が会社で働こうとしても,会社が不当な解雇で,

労働者の就労を拒否している場合,労働者は,

会社に労務を提供することができません。

 

 

そこで,現行民法536条2項の第1文によって,

会社の不当解雇という「責めに帰すべき事由」によって,

労働者は,労務を提供する債務を履行できないので,

反対給付である賃金請求権を行使できるのです。

 

 

これが,解雇事件で,労働者がバックペイを請求できる根拠です。

 

 

しかし,労働者が,会社で労務を提供することを免れたことで,

別の会社で働いて中間収入という利益を受けているので,

現行民法536条2項第2文によって,

中間収入分を会社に返さなければならないことになります。

 

 

労働者は,解雇されてやむなく別の会社で働いて

なんとか稼いだ収入が「自己の債務を免れたことによって利益を得たとき」

に該当するのは,労働者としては,釈然としないと思います。

 

 

 

 

ところが,労働基準法26条には,

「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては,

使用者は,休業期間中当該労働者に,

その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

と規定されています。

 

 

民法よりも労働基準法が優先適用されますので,

会社がバックペイから控除できる中間収入は,

平均賃金の4割に限定されており,

平均賃金の6割分は,労働者が確保できます。

 

 

労働基準法の平均賃金とは,

3ヶ月間に労働者に支払われた賃金の総額を,

その期間の総日数で割って算出されます。

 

 

まとめますと,解雇期間中に別の会社で働いた場合,

解雇された会社で働いていたときの平均賃金の6割については,

労働者は,中間収入を確保することができ,

平均賃金の6割を超える残りの4割の部分については,

バックペイから中間収入が控除されることになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

うつ病で休職中の先生を解雇できるのか

私は,今年から母校の高校の学校評議員

をさせていただくことになりました。

 

 

学校評議員制度とは,地域に開かれた学校づくりを

推進していくために,地域住民が学校運営へ参画する仕組みです。

 

 

学校評議員は,学校運営に関し,

保護者や地域住民の意向を反映し,

学校は,学校評議員の意見を聞いて,

特色ある教育活動を積極的に展開していくのです。

 

 

 

以上が,文部科学省の説明です。

 

 

要するに,学校の運営に,地域住民として

意見を述べることが期待されている役職です。

 

 

先日,第1回の会合に参加してきました。

 

 

学校側が詳細な目標や中間査定の評価をまとめており,

それに対して,自分なりに感じたことを発言してきました。

 

 

そこで感じたことは,学校の先生は本当に大変だなぁということです。

 

 

最近では,アクティブラーニングといい,

生徒同士が課題について調べてきたことを互いに教え合う授業や,

パワーポイントを使って授業したりと,

私が高校生だったころと比べて,かなり先進的な授業が行われています。

 

 

しかし,このような先進的な授業をするには,先生の準備が大変です。

 

 

さらに,部活動の指導があったり,

保護者対応があったり,

今回の会合の資料作りがあったりと,

先生は仕事が多すぎると思いました。

 

 

残業時間が多いのに,働き方改革のため,

残業時間を削減しなければならず,学校現場では,

大変な苦労があるのを実感しました。

 

 

さて,前置きが長くなりましたが,

先生の仕事が大変だということについて,

学校法人武相学園事件の裁判例を紹介します

(東京高裁平成29年5月17日判決・労働判例1181号54頁)。

 

 

うつ病で休職中の先生を懲戒解雇できるのかが争われました。

 

 

原告の先生は,平日は,午前6時に出勤し,

午前8時まで部活の顧問の仕事をし,日中は授業をして,

午後8時まで部活の顧問の仕事をしていました。

 

 

 

 

土曜日も朝早くから部活動の顧問の仕事をし,

日曜日に対外試合があれば,生徒を引率し,審判もしていました。

 

 

原告の先生がうつ病を発症する前6ヶ月間の時間外労働は,

1ヶ月あたり91時間~146時間でした。

 

 

原告の先生は,部活動の生徒に対して失言をし,

生徒に対して,失言の口止めをしました。

 

 

このことについて,学校の調査が始まったところ,

部活動の会計に不明点があることが発覚していきました。

 

 

そして,原告の先生は,長時間の時間外労働と,

これらの調査によるストレスが原因で,

うつ病の診断を受けて,病気休職となりましたが,

学校は,原告の先生を懲戒解雇しました。

 

 

ここで,労働基準法19条1項には,

労働者が業務上負傷し,または疾病にかかり療養のために

休業する期間は,解雇してはならないと規定されています。

 

 

これは,労働者が労災補償としての療養のための

休養を安心して行えるように配慮する必要があるからです。

 

 

本件では,原告の先生のうつ病が仕事が原因で

発症したものか否かが争われました。

 

 

 

 

すなわち,仕事が原因でうつ病を発症したのであれば,

解雇できませんし,そうでないなら,

解雇の要件を満たせば解雇できることになります。

 

 

学校は,部活動の顧問をしている先生に定額の顧問手当

(1年間で1万5500円)と休日出勤手当(日額2500円)

を支給し,部活動は,顧問手当の範囲でできることを

やればよいという建前がとられていました。

 

 

しかし,入学金免除の特待生をかかえる運動部の顧問の先生が,

学校の指示をそのまま受け取ることはできず,

運動部の顧問の先生は,対外試合で好成績を残すことを

学校から黙示的に努力目標として課されていたのです。

 

 

そして,学校の仕事ではない,県高体連の仕事も,

原告の先生の本来業務と同じと扱われ,

部活動の顧問の仕事で長時間の時間外労働をしたことの

心理的負荷が強かったと判断されました。

 

 

その結果,仕事が原因でうつ病を発症したと認定され,

労働基準法19条1項により,解雇は無効と判断されました。

 

 

人間は,1ヶ月の残業時間が100時間を超えると

うつ病を発症するリスクが高まります。

 

 

働き方改革が叫ばれている今こそ,

学校の先生の仕事の負担を軽減し,

先生が健康なまま働ける社会に

していかなければならないと考えます。

 

 

学校の先生が働き過ぎによって健康を害することがないように,

学校評議員の役割を全うしていきたいと思います。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

医師が解雇されるのはどのような場合か

契約期間が定められている労働契約(有期労働契約といいます)を,

契約期間が満了する前の期間の途中において,

会社は,労働者を解雇することができるのでしょうか。

 

 

本日は,有期労働契約の期間途中の解雇の有効性について説明します。

 

 

 

 

まず,有期労働契約を締結している労働者は,

契約社員,派遣社員,嘱託社員などの,

いわゆる非正規雇用労働者です。

 

 

非正規雇用労働者は,労働契約の契約期間が満了する時点で,

会社が労働契約を更新してくれない限り,

原則として,労働契約が終了して,職を失います。

 

 

そのため,非正規雇用労働者の雇用は不安定なのです。

 

 

 

 

他方,契約期間が定められていない労働契約

を締結している労働者が正社員です。

 

 

正社員には,契約期間が定められていないので,

会社から解雇されない限り,会社で働き続けることができるのです。

 

 

そのため,正社員の雇用は安定しているのです。

 

 

正社員に比べて,非正規雇用労働者の雇用は不安定なのですが,

労働契約で定められている期間中は,雇用が安定しています。

 

 

すなわち,非正規雇用労働者は,契約期間が満了すれば,

仕事がなくなりますが,契約期間中はよほどのことがない限り,

解雇されずに,労働契約が維持されるのです。

 

 

この点について,労働契約法17条には,

やむを得ない事由がある場合でなければ」,

会社は,労働者を解雇できないと規定されています。

 

 

以上を前提に,5年の契約期間で労働契約を締結した

国立研究開発法人国立A医療研究センターの歯科医長が,

歯科医療に適格性を欠く行為があり,

部下職員を指導監督する役割を果たしていないなどとして,

契約の途中で解雇された事件を紹介します

(東京地裁平成29年2月23日・労働判例1180号99頁)。

 

 

この事件では,医師としての能力不足の解雇は

どのような場合に認められるかという,珍しい論点が争われました。

 

 

医師という専門職としての治療行為が,

どの程度までひどいと解雇されてしまうのかについて,

裁判所が基準をだしました。

 

 

医師は,患者の身体状態や意思をふまえつつ,

その都度適切な医療行為を選択して実施していくので,

医師には相当広い裁量が認められています。

 

 

 

 

そして,裁判所は,

医師の治療行為が相当な医学的根拠を欠いているか,

患者の身体の安全に具体的な危険を及ぼしたか,

治療行為に際して認められる裁量を考慮しても

合理性を欠いた許容できない治療といえるか,

という観点から検討すべきという基準を示しました。

 

 

さらに,本件では,契約期間の途中での解雇であるため,

解雇について「やむを得ない」理由があったかが

厳格に判断された結果,被告病院が主張する解雇理由について,

原告に医師として適格性を欠く行為はなかったと判断されました。

 

 

有期労働契約を契約の途中で解雇する場合には,

よほどの理由がないと解雇できないということと,

医師が能力不足で解雇されるのは,

どのような場合かについて判断された

珍しい裁判例ですので,紹介させていただきました。

 

 

労働者は,有期労働契約は契約期間の途中では,

よほどのことがない限り,解雇されないことを知っておいてください。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。

解雇されたら失業給付を受給する

会社を解雇されてしまったら,

次の仕事がみつかるまで,

収入がゼロになってしまいます。

 

 

次の仕事が早く見つかればいいのですが,そうでない場合,

労働者は,今後どうやって生活をしていくか悩みます。

 

 

そこで,解雇された労働者は,ハローワークへ行き,

失業給付(雇用保険の基本手当といいます)を受給するべきです。

 

 

 

 

失業給付を受給できれば,当面の生活を

維持することができますので,その間に再就職したり,

会社と争う準備をすることができます。

 

 

さて,この失業給付を受給するには,受給資格が必要です。

 

 

失業給付の受給資格とは,基本的には,

離職した日以前2年間に,

雇用保険の対象者であった期間が

通算12ヶ月以上であることです。

 

 

そのため,働いていた期間が1年未満であれば,

失業給付を受給できない可能性があります。

 

 

会社から解雇された場合,会社から離職票を送ってくることが多いです。

 

 

会社から離職票が送られてこない場合には,

ハローワークから,会社に離職票を発行してもらうように

連絡をしてもらう必要があります。

 

 

解雇を争う場合であっても,

解雇後の生活を安定させなければならないので,

労働者が離職票を要求しても,

解雇を容認することにはなりません。

 

 

会社から離職票が届いたら,まず,離職票の内容をよくチェックします。

 

 

 

 

離職票のチェックポイントは,

離職票の左の欄の賃金額と,右の欄の離職理由です。

 

 

まず,離職票の賃金額が正確に記載されているかを,

自分の給料明細と照らし合わせながらチェックします。

 

 

離職票の賃金額が不正確ですと,

もらえるはずの失業給付の金額が減るおそれがあるからです。

 

 

次に,離職票の離職理由が,

実際の離職理由と一致しているのかをチェックします。

 

 

解雇の場合,会社がこっそりと離職票の離職理由に

自己都合退職と記載してくることがあります。

 

 

これを訂正せずに,そのまま提出してしまうと,

後から裁判になって,会社は,

解雇ではなく自己都合退職だったと主張してきて,

解雇を争えなくなるおそれがあります。

 

 

そのため,離職票の離職理由をよくチェックし,

間違いがあれば,ハローワークに相談して,

会社に訂正を求めるべきです。

 

 

会社が訂正に応じない場合には,

「離職者記入欄」と「具体的事情記載欄(離職者用)」に

実際の離職理由を記載し,「離職者本人の判断」の欄に

「異議あり」に○をつけます。

 

 

自己都合退職の場合は,失業給付を受給するまで

3ヶ月の給付制限がありますが,解雇の場合は,

このような給付制限はありません。

 

 

 

また,解雇されたけれども,どうしても復職したい場合には,

失業給付の仮給付(条件付給付)という手続きをとります。

 

 

仮給付を受けるためには,ハローワークに,

裁判所の受付印のある訴状や労働審判申立書を

提出しなければなりませんので,手続きに時間がかかります。

 

 

仮給付の場合,復職が認められれば,

受給した仮給付を返還しなければなりません。

 

 

解雇されて復職を求めるのではなく,

金銭解決を求める場合には,

失業給付の本給付(通常の失業給付の受給のことです)を受給します。

 

 

本給付であれば,返還する必要はありません。

 

 

労働者は,解雇された場合,

失業給付を受給して,生活を安定させるべきです。

 

 

その際,離職票をよくチェックしてください。

解雇を争う労働者は解雇予告手当と退職金を請求してはいけない

昨日に引き続き,解雇された労働者が,

解雇に納得できず,会社に一矢報いるために争うための,

解雇の対処法について説明します。

 

 

解雇された労働者が,解雇を争う場合,

解雇を前提とした行動をとってはいけません。

 

 

この解雇を前提とした行動をとらない具体例として,

解雇された労働者は,自分から解雇予告手当を

請求してはいけないということがあります。

 

 

会社は,労働者を解雇するためには,

解雇から少なくとも30日前に解雇の予告をしなければいけません

 

 

30日前に解雇の予告をしない場合,会社は,

労働者に対して,30日分以上の平均賃金

を支払わなければなりません(労働基準法20条1項)。

 

 

 

 

この解雇予告をしない場合に会社が

労働者に対して支払わなければならない,

30日分以上の平均賃金を解雇予告手当といいます。

 

 

例えば,なんの前ぶれもなしにいきなり解雇される即時解雇の場合,

労働者は,会社に対して,解雇予告手当を請求することができるのです。

 

 

この解雇予告手当ですが,労働基準法20条1項に

労働者の責めに帰すべき事由」がある場合には,

支払わなくてもよいと規定されています。

 

 

この「労働者の責めに帰すべき事由」とは,典型的には,

労働者に会社のお金を着服したなどの懲戒事由が認められて,

懲戒解雇されたような場合のことをいいます。

 

 

 

 

会社が,「労働者の責めに帰すべき事由」があるので,

解雇予告手当を支払わないようにするためには,

労働基準監督署の認定を受けなければなりません(労働基準法20条3項)。

 

 

この認定を除外認定といいます。

 

 

もっとも,除外認定事由があるのに除外認定を受けないで行った

即時解雇について,除外認定事由が客観的に存在すれば,

その即時解雇は有効とされてしまいます。。

 

 

また,除外認定事実が客観的に存在すれば,

除外認定を受けていなくても,会社は,労働者に対して,

解雇予告手当を支払わなくてもよいことになっています。

 

 

そのため,除外認定を受けることなく,

解雇予告手当を支払っていない会社が多いのが実情です。

 

 

労働者が,解雇に納得して,解雇を受け入れるのであれば,

解雇予告手当を請求すればいいのですが,

解雇に納得しておらず,解雇を争うのであれば,

労働者は,自分から解雇予告手当を請求してはいけません

 

 

解雇予告手当を請求することは,

解雇が有効であることを自分から認めれることに等しく,

解雇を争えなくなるおそれがあります。

 

 

さらに,解雇予告手当と同様に,

退職金を労働者が自分から請求すれば,

解雇を容認したことになり,

解雇を争えなくなるおそれがありますので,

解雇を争う労働者は,自分から退職金を請求してはいけません

 

 

会社が,解雇予告手当や退職金を労働者の預金口座へ

勝手に振り込んできた場合,労働者は,

この金銭を預かり保管して,今後発生する未払賃金に充当することを

会社に通知しておけばいいのです。

 

 

このように,解雇を争う労働者は,

自分から解雇予告手当と退職金を請求してはいけないのです。

解雇されても就労意思を明示する

会社から解雇されたとき,多くの人は,

なんで私が解雇されるのか,解雇に納得できないと思います。

 

 

会社に対してなにかできないかと考え,

弁護士のもとへ相談にいらっしゃる方もいます。

 

 

解雇に納得いかず,会社に対して,

なにかしたいと考える人のために,

解雇への対処の仕方について説明します。

 

 

 

 

解雇への対処方法で重要なことは,

解雇を容認する行動をとってはならないということです。

 

 

具体的には,解雇と言われて,

そのまま出勤しなくなるのはよくないのです。

 

 

解雇されたのに,会社へ出勤しなくなるのはよくないというのは,

なにやら矛盾しているようですが,これには理由があります。

 

 

労働者は,会社に対して,労働を提供することで,

会社から給料をもらいます。

 

 

 

 

解雇の場合,労働者は,会社に労働を提供したくても,

会社の落ち度(解雇理由がないのに解雇したような場合です)によって,

労働を提供できなくなります

 

 

会社の落ち度で,労働者が労働を提供できないのであれば,

会社は,労働者が実際に働いていなくても,給料を支払う義務があります。

 

 

解雇された後に,労働者が会社に対して未払賃金を請求できるのは,

会社の落ち度で労働を提供できなくなったからなのです。

 

 

この前提として,労働者は,会社に対して

労働を提供できる状態である必要があります。

 

 

そのため,労働者は,会社に対して,

いつでも働く意思(就労意思といいます)がありますよ

と伝える必要があるのです。

 

 

とはいえ,解雇するような会社に,出勤しなさいというのは,

よほどメンタルが強い労働者でないとできませんし,とても大変です。

 

 

そこで,一般的には,解雇した会社に対して,

解雇は無効なので,解雇を撤回して,就労させるように請求します。

などと記載した通知書を,配達証明付内容証明郵便で送ります。

 

 

配達証明付内容証明郵便を利用すれば,

このような内容の通知書が会社に送られたことが証明できますので,

会社に対して就労意思を明確にできます。

 

 

このように,解雇された後も賃金を請求するためには,

労働者が会社に労働を提供したこと,具体的には,

就労意思があることを会社に明示することが必要になります。

 

 

 

 

解雇されたからといって,

何もしないまま時間が経過してしまえば,

解雇を容認したと言われてしまい,

解雇された後に,賃金を請求できなくなるおそれがあります。

 

 

解雇されたら,なるべく早く,

会社に対して,就労意思を通知することが重要なのです。

会社から退職勧奨を受けた場合の対処法

会社から退職をすすめられた場合,

労働者が会社をやめたくなかったり,

このまま会社の言いなりになるのには納得がいかない場合,

どのように対処すればいいのでしょうか。

 

 

まず,会社から退職をすすめられた場合,

労働者は,会社を辞めたくないのであれば,

きっぱりと「辞めません」と断ればいいのです

 

 

 

 

会社が退職をすすめてきても,労働者には,

これに応じる義務はありませんので,断固として拒否してください。

 

 

それでも会社がしつこく退職をすすめてくるようであれば,

内容証明郵便で,退職をすすめることをやめるように通告します

 

 

内容証明郵便を出せば,こういった退職勧奨はとまることが多いです。

 

 

会社が退職をすすめてきて,労働者がこれに応じて,

退職届をだしてしまった場合,会社が退職届を受け取ってしまえば,

労働契約が合意によって解約されてしまいます。

 

 

このような合意解約の場合,労働者が,あとから考えて,

やっぱり退職を撤回したいと思い返しても,

会社が退職の撤回に同意してくれない限り,撤回はできません。

 

 

例外として,労働者が退職届を会社に提出する際に,

会社から騙されて,労働者が勘違いしていたり,

会社から退職するように執拗に強要されたために,

退職届をだしてしまったような場合には,

退職が無効になったり,取り消したりできることがあります。

 

 

例えば,懲戒解雇される理由がないのに,

懲戒解雇されれば退職金が支給されなくなるから,

その前に退職届を提出するようにすすめられて,

労働者がこれを信じて退職届を提出してしまったような場合です。

 

 

 

 

しかし,労働者が退職を無効にしたり,取り消したりできるのは,

社長などから,虚偽の事実を述べられたり,

しつこく退職を強要されたことを,

ボイスレコーダーなどで録音しておくなどして,

これらの事実を証明できる証拠がある場合に限られます。

 

 

通常,退職勧奨は突然言われて,労働者が戸惑っているうちに,

労働者が退職届を提出してしまうことが多いので,

ボイスレコーダーで録音していることが少なく,

社長などから虚偽の事実を述べられたり,

しつこく退職を強要されたことを証明するのが困難なのです。

 

 

このように,会社から理由はどうであれ,

退職届を出すように求められても,労働者は,

退職に納得していないのであれば,

その場で退職届を書いてはいけません

 

 

労働者は,「いったん考えさせてください」と言って,

回答を留保して,専門家へ相談して,

対処法をアドバイスしてもらった後に,回答すればいいのです。

 

 

いったん退職届を出してしまうと,非常に争いにくくなりますので,

その場で即答せずに,誰かに相談してください。

 

 

逆に,会社が解雇を通告してきた場合,

会社は労働者をそう簡単に解雇できませんので,

解雇の方が労働者は争いやすいのです。

 

 

①労働者が自分から会社をやめる自己都合退職や

②労働契約の合意解約を後から争うのは困難ですが,

③解雇は争いやすいので,法律相談の事案が

①自己都合退職,②労働契約の合意解約,③解雇

のどれにあたるのかを検討します。

 

 

会社はこの3つを明確に区別していないこともあるので,

この3つのどれかあいまいな場合には,

会社に解雇理由証明書を求めるなどして,

本件事案が解雇なのか否かを明確にしておくべきです。

解雇を労働審判で解決する3

昨日に引き続き,労働審判の解説をしていきます。

 

 

労働審判で労働者が復職を求めず,

金銭解決の調停が成立する場合,

次のような調停の内容になります。

 

 

 

 

まず,会社が解雇を撤回します。

 

 

会社が解雇を撤回すると,会社と労働者との労働契約が

復活するのですが,解雇があった日に,

会社と労働者が労働契約を合意で解約します。

 

 

労働契約を合意解約することで,

労働者は,会社に復職する必要がなくなります。

 

 

合意解約の日を解雇があった日からずらしてしまうと,

その間の未払賃金はどうするのか,

その間の社会保険はどうするのか,

仮払いを受けている失業給付はどうするのか

という問題が発生して,事後処理がややこしいことになります。

 

 

解雇があった日に合意解約すれば,

これらのややこしい問題が生じないので,

労働審判で調停をするときには,通常,

解雇があった日を合意解約の日とすることが多いです。

 

 

次に,解雇があった日で合意解約をすると,

本来,未払賃金が発生しないことになるのですが,

解決金という名目で,会社から労働者に対して,金銭を支払わせます

 

 

解決金という名目であれば,一時所得となり,源泉徴収されません。

 

 

この解決金をいくらにするのかが,調停成立の鍵となります。

 

 

 

 

この解決金の金額ですが,給料の何ヶ月分かで調整することが多いです。

 

 

あまりにも酷い解雇の場合は,

1年分で交渉することになりますし,

解雇が無効になるのか微妙な場合は,

6ヶ月から3ヶ月ほどで交渉することもあります。

 

 

この解決金を多くする方法として,

私は,解雇無効の主張と同時に未払残業代請求をしています。

 

 

労働者を解雇するような会社は,

通常,残業代を支払っていないことが多いです。

 

 

労働者の給料が低い場合,

解決金は給料の何ヶ月分となり,

解決金が低くなってしまいますが,

労働者が長時間残業を2年間していたなら

(未払残業代の消滅時効は2年です),

未払残業代はある程度の金額となり,

解雇無効の未払賃金とあわせれば,

解決金が大きな金額となるからです。

 

 

労働者は,解雇された会社とのトラブルを早く解決して,

新しい就職先で働きたいことを願うことが多いので,

労働審判であれば3回の期日で裁判手続が早く終わるので,

解雇を解決する手段としてよく利用されます。

 

 

もっとも,労働審判では,会社がかたくなな態度をとり,

調停が成立せずに,裁判所の最終解決案である労働審判がくだされても,

会社が2週間以内に異議を申し立てれば,

通常の裁判に移行してしまい,解決が長引くため,

やむなく労働者側が譲歩しなければならないこともあります。

 

 

会社の態度や,クライアントの思い,解雇が無効となるかなど

のさまざまな事情を総合考慮して,クライアントにとって

ベストな解決ができるように,労働審判を活用していきます。

解雇を労働審判で解決する2

昨日に引き続き,労働審判の解説をしていきます。

 

 

労働審判の申立をすると,裁判所が期日を決めます。

 

 

 

 

その期日の1週間前くらいに,会社が答弁書という,

労働審判申立書に対する反論を記載した文書を提出してきます。

 

 

期日までに,時間的な余裕があれば,

答弁書に対する反論を記載した準備書面を提出しますし,

準備書面を出せなくても,クライアントと打ち合わせをして,

答弁書に対する反論を検討します。

 

 

労働審判の期日当日には,クライアントも出席します

 

 

裁判官と労働審判員は,期日までに裁判記録を読んで,

疑問に思ったことや気になることを,当事者に直接質問してきます

 

 

通常の裁判手続でいう証人尋問が,

労働審判では第1回期日から行われるので,

裁判所側からの質問に的確に受け答えができるように

準備しておく必要があります。

 

 

ちなみに,通常の裁判の場合,証人尋問は,

訴訟の最後の方に行われます。

 

 

第1回期日では,裁判所側が当事者双方の言い分を聞き取り,

会社が労働者に対して,いくらくらいの金銭を支払うなら

調停が成立できるのかを模索します。

 

 

 

会社の解雇があまりに不当な事案であれば,

裁判所側が会社を強く説得してくれて

1回目の期日で調停が成立することもあります。

 

 

もっとも,1回目の期日は,当事者の言い分の確認をして,

2回目以降の期日から調停に向けての調整が行われることが多いです。

 

 

解雇された労働者としては,会社からいくらくらいの金銭をもらえれば,

解雇されたことを納得できるかを検討しておく必要があります。

 

 

依頼している弁護士に相談して,この事件であれば,

いくらくらいの金銭が妥当なのかを協議して,

どこまでなら譲れるかを検討します。

 

 

労働審判では,当事者双方が譲り合い,

調停を成立させて,早く紛争を解決することを目的にしています。

 

 

そのため,解雇が無効と判断されるか微妙な事案では,

労働者側が大きく譲歩しなければならないことがあります。

 

 

弁護士としては,解雇が無効になる見込みがどれくらいあるのか,

クライアントの次の就職先が決まっているか,

クライアントがどこまで争う意思があるのかを見極めながら,

クライアントの意向を尊重しつつ,

クライアントが取得できる金銭がいくらなら

調停を成立させるべきかを模索していきます。

 

 

長くなりましので,続きは明日以降に記載します。

解雇を労働審判で解決する

解雇の法律相談を受けていますと,

会社の解雇に納得していない方がほとんどです。

 

 

なぜ自分が解雇されたのかわからない,

会社が言っている解雇理由はおかしい,

などの不満を持っておられます。

 

 

 

解雇された労働者は,自分を解雇するような会社に

復職することを希望する方は少なく,会社に対して金銭請求をして,

一矢報いたいと希望される方が多いです。

 

 

そのような場合,利用する裁判手続が労働審判です。

 

 

労働審判とは,労働者個人と会社の労働紛争について,

裁判官と労使の専門委員で構成される労働審判委員会が,

事件の審理を行うとともに,

調停(話し合いによる紛争解決)を試み,

調停が成立しない場合には,

労働審判委員会が労働審判(通常の裁判における判決に相当するもの)

を出すという裁判制度です。

 

 

 

 

労働者が労働審判の申立をするには,

労働審判申立書を作成して,

裁判所に提出する必要があります。

 

 

この労働審判申立書には,

会社における労働条件,

解雇にいたる経緯,

解雇が無効である理由などを,

証拠をもとに詳細に記載します。

 

 

通常の裁判を起こすときに裁判所へ提出する訴状であれば,

A4で3~5ページくらいの分量ですが,

労働審判の場合は,3回で終わりますので,

最初の申立の段階で,労働者が主張するべき事実を全て出し切る

必要があり,申立書は10~20ページくらい

の分量になることが多いです。

 

 

労働審判が通常の裁判と異なる点として,回数制限があげられます。

 

 

通常の裁判は,裁判期日の回数に制限がないため,

裁判を起こしてから判決がでるまで約1年以上かかりますが,

労働審判は,3回以内の期日で結論がでますので,

申立をしてから約3ヶ月程度で決着がつきます。

 

 

そのため,労働審判は,通常の裁判よりも

早く解決できる場合が多いです。

 

 

また,通常の裁判は,裁判官だけが審理を行いますが,

労働審判は,裁判官1人に加えて,使用者側から1人,

労働者側から1人の労働審判員が審理に加わります。

 

 

裁判官ではない労働審判員が労働審判に参加するのは,

労働現場の実情について十分な知識と経験を有する人物を

審理に参加させることで,紛争の実情に即した

適正な解決を図るためです。

 

 

さらに,通常の裁判では,主張と証拠のやりとりを複数回の期日で行い,

ある程度の段階になると,和解という話し合いによる解決

がされる場合がありますが,労働審判では,第1回の期日から,

調停という話し合いの解決が実施されることがあります。

 

 

 

 

労働審判では,調停が成立することが多く,

会社が労働者に対して金銭を支払う旨の調停が成立すれば,

会社は,調停に従い,労働者に金銭を支払います。

 

 

調停には,判決と同じ効力があり,

会社が調停の内容を守らなかった場合,

労働者は,会社に対して,会社の預金を差し押さえる

などの強制執行をすることができるので,会社は,

強制執行をされたくないので,労働者に対して金銭を支払うのです。

 

 

このように,労働審判には,通常の裁判にはない

メリットがありますので,解雇を争う場合,

労働審判を利用することがよくあります。

 

 

長くなりましので,続きは明日以降記載します。