勤務態度や仕事上のミス等を理由とする解雇を争うポイント

勤務態度が悪い,仕事上のミスが多い

などの理由で解雇されることがあります。

 

 

しかし,労働者としては,会社からの指示にきちんと従っていたし,

ミスがないように自分の仕事を改善していたので,

解雇に納得できないことがあると思います。

 

 

 

このような場合,労働者は,勤務態度・業務上のミス等を

理由とする解雇をどのように争っていけばいいのでしょうか。

 

 

まずは,会社に対して,解雇理由証明書の交付を請求します。

 

 

解雇が無効になるかどうかを判断するためには,

会社が主張している解雇理由を知る必要があるからです。

 

 

労働基準法22条1項により,会社は,労働者から,

解雇の理由についての証明書を請求された場合,

遅滞なくこれを交付しなければならないと規定されています。

 

 

この解雇理由証明書には,単に「勤務態度不良」や「規律違反」と

記載するだけでは不十分であり,

就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係

を具体的に記載しなければならず,

「勤務態度不良」や「規律違反」の内容である

具体的事実を記載しなければなりません。

 

 

また,この解雇理由証明書には,

労働者の請求していない事項を記入してはならないのです

(労働基準法22条3項)。

 

 

そして,この解雇理由証明書の交付を拒む会社には,

30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法120条1号)。

 

 

 

 

このように,攻撃対象とすべき解雇理由を具体的に明らかにさせます。

 

 

次に,明らかになった解雇理由に対する反論を検討します。

 

 

解雇は,客観的合理的理由を欠き,

社会通念上相当でない場合に無効となります(労働契約法16条)。

 

 

この客観的合理的理由の有無を検討する際には,

①労働者の労務提供が労働契約で期待された水準に至っていないと

評価される状態が将来に渡って継続すると予測されるか(将来予測の原則),

②会社が教育,訓練,指導などの解雇回避措置をつくしてもなお

雇用を継続できない場合に解雇が許容されること(最後手段性の原則)

の2点をチェックします。

 

 

社会通念上相当か否かについては,

解雇という手段を選択することが労働者にとって

過酷すぎないかをチェックするもので,

労働者の情状,他の労働者に対する処分との均衡,反省の有無

等の事情を総合的に考慮して判断されます。

 

 

勤務態度や業務上のミスを理由とする解雇の場合,

労働者の勤務態度や業務上のミスが,

会社の指示や教育によって,改善傾向にあるなら,

客観的合理的理由を欠き,解雇は無効となります。

 

 

 

 

また,会社が指示や教育を施していないのに,

いきなり解雇をしても無効となります。

 

 

このように,勤務態度不良や業務上のミスは,

通常一度だけでは有効な解雇理由とならず,

会社が注意,指導したにもかからず,

勤務態度や業務上のミスが改まらないなど

勤務態度の不良が繰り返された場合に

はじめて解雇が有効になります。

 

 

もっとも,高待遇・専門性を有する労働者に対する

注意指導等の改善努力については,

会社の負担が軽減される傾向にあります。

 

 

労働者としては,勤務態度不良や業務上のミスを理由に解雇された場合,

会社からどのような指示や教育を受けていたのかを思い返し,

指示や教育がないまま解雇されたり,

指示や教育があったものの,

自分の仕事が改善できていたのであれば,

解雇は無効になる可能性がありますので,

早目に弁護士にご相談ください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

ジャパンディスプレイの希望退職の募集から整理解雇を考える

経営再建中の液晶パネル大手の株式会社ジャパンディスプレイは,

6月12日,国内の従業員の約25%にあたる

1200人の希望退職を募ることを発表し,

石川県にある白山工場を7月から9月まで停止するようです。

 

 

以前,金沢から福井方面へ北陸自動車道を走行していると,

強大な工場を建設している風景が見え,

気づけば,工場が完成して,2016年12月から,

ジャパンディスプレイの白山工場として稼働していました。

 

 

 

石川県民としては,地元に強大な工場が完成して,

雇用が創出されると喜んでいただけに,

わずか約2年半で工場の稼働がストップすることに

ショックを受けました。

 

 

さて,会社が希望退職を募集したときに,

労働者はどのように対処したらいいのでしょうか。

 

 

まず,当事者が契約を締結するためには,

契約をしたい人が契約の申込をして,

その相手方が承諾をすることが必要になります。

 

 

例えば,売買の場合,

売り主が「これ買いませんか?」と申込をして,

買い主が「では買いましょう」と承諾をすることで,

売買契約が成立するのです。

 

 

会社の希望退職の募集は,法律的には,

労働契約を合意解約するための申込の誘引となります。

 

 

この会社からの申込の誘引に対して,

労働者が申込を行い,会社が承諾をすることで,

労働者と会社との間で締結されていた労働契約が

合意解約されるのです。

 

 

そのため,会社が希望退職の募集をしても,

労働者がそのまま会社で働きたいのであれば,

希望退職に応募せず,そのままにしておけば,

会社で働くことができます。

 

 

それでは,会社は,なぜ希望退職を募集するのでしょうか。

 

 

理由の1つ目は,人員を削減して,利益を出したいからです。

 

 

 

 

会社が労働者をたくさん雇用すると,

労働者に支払う給料が多くなり,人件費が高くなり,

売上があがっても,会社に利益が残らなくなります。

 

 

会社の経費のうち人件費が占める割合が多いと,

人件費を削減しないと,会社が黒字にならない可能性があります。

 

 

とはいえ,解雇はそんなに簡単にできないので,

会社は,業績が悪化してきたら,退職金を割増するなどして,

今退職すれば有利ですよと労働者に伝えて,

労働者から退職してもらい,人件費を削減するのです。

 

 

理由の2つ目は,会社が整理解雇を実施するための準備です。

 

 

整理解雇とは,会社側の経営事情により生じた

人員削減の必要性に基づき労働者を解雇することで,

いわゆるリストラのことです。

 

 

 

この整理解雇が認められるためには,

①人員削減の必要性,

②解雇回避努力が尽くされたこと,

③人選基準とその適用が合理的であること,

④労働組合若しくは被解雇者と十分協議したこと,

という4つの要素を総合考慮する必要があります。

 

 

このうち,希望退職の募集は,

②解雇回避努力の一手段として実施されます。

 

 

整理解雇は,労働者に落ち度がないにもかかわらず,

会社の事情で解雇されるのだから,会社は,

解雇を回避するために,努力しなければならず,

その一環として,整理解雇の前に希望退職の募集をするのです。

 

 

希望退職の募集は,判例上,労働者の意思を尊重しつつ

人員整理を図るうえで極めて有効な手段と評価されており,

希望退職の募集をせずに,いきなり整理解雇した場合には,

解雇回避努力を尽くしてないとして,無効になる可能性が高いです。

 

 

そのため,希望退職の募集が実施され,

ある程度の労働者が応募して退職したとしても,

会社の業績が回復しない場合には,次は,

整理解雇が実施されるリスクがあるということです。

 

 

労働者としては,会社が希望退職を募集してきた場合,

この会社に未来がないと思えば,

退職金の割増など優遇措置が受けられるうちに,

退職して新しい職場で活躍した方がいいのかもしれません。

 

 

他方,次の就職先がみつかるか不安で,

今の会社にいたいのであれば,希望退職に応募せず,

そのまま働けばいいのですが,

場合によってはリストラされるリスクがあります。

 

 

そう考えると,労働者は,いつでも次の仕事がみつけられるように,

自分の能力を磨き続ける必要があるのでしょうね。

 

 

石川県民としては,ジャパンディスプレイの業績が回復して,

白山工場が再稼働することを期待したいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

解雇なのか合意解約なのか

2日前のブログで,解雇なのか自己都合退職なのかが

争われる事件について紹介しました。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201905158032.html

 

 

これに関連して,本日は,解雇なのか合意解約なのかが

争われるケースについて解説します。

 

 

解雇とは,使用者による一方的な労働契約の解約のことです。

 

 

 

解雇には,よほどのことがない限りできない

という厳しい規制があります。

 

 

他方,労働者からの一方的な労働契約の解約の意思表示を辞職といい,

労働者の都合で退職することを自己都合退職といいます。

 

 

自己都合退職については,退職することを会社に伝えてから

2週間が経過すれば,原則自由に退職できます。

 

 

もう一つ,労働契約の合意解約があります。

 

 

例えば,会社から退職を勧奨されて,

労働者がこれに応じて退職した場合,

会社の辞めてほしいという意思表示と,

労働者の辞めますという意思表示が合致して,

労働契約が会社と労働者の合意によって解約されるのです。

 

 

労働者が解雇が無効であると争った場合,会社は,

解雇はしておらず,退職勧奨をしたら,労働者が勝手に辞めたので,

合意解約が成立すると反論してくることがあります。

 

 

 

この場合,2日前のブログで記載しましたが,

使用者の解雇したという言動や,

労働者の退職したという言動の有無についての

事実認定が問題になります。

 

 

そして,使用者や労働者の言動が認定された場合でも,

使用者の言動がそもそも解雇の意思表示にあたるのか,

労働者の言動が退職の申込みにあたるのか,

という当該言動の評価の問題がでてきます。

 

 

この解雇や退職についての言動の評価について,

乙山法律事務所経営者事件の裁判例は

(東京地裁平成27年3月11日・判例時報2274号73頁),

次のように判断基準を提示しました。

 

 

長いのですが,重要ですので引用します。

 

 

「労働者にとって雇用契約は、

生活の糧を稼ぐために締結する契約であり、かつ、

社会生活の中でかなりの時間を費やすことになる

契約関係であることからすれば、

かかる雇用契約を解消するというのは、

労働者にとって極めて重要な意思表示となる。

 

 

したがって、かかる雇用契約の重要性に照らせば、

単に口頭で合意解約の意思表示がなされたとしても、

それだけで直ちに合意解約の意思表示がなされたと

評価することには慎重にならざるを得ない。

 

 

特に労働者が書面による合意解約の意思表示を明示していない場合には、

外形的にみて労働者が合意解約を前提とするかのような

行動を取っていたとしても、労働者にかかる行動を取らざるを得ない

特段の事情があれば、合意解約の意思表示と評価することはできない

ものと解するのが相当である。」

 

 

労働者から,退職届のような文書が提出されていない場合には,

労働契約の合意解約は慎重に判断されるのです。

 

 

 

この事件では,雇用主からもう来なくて良いと言われ,

言い分が聞き入れてもらえなかったので,

原告は事務所を立ち去るしかなかったので,

原告が「こんなとこ働けんわ」と言って事務所を立ち去っているのですが,

労働契約の合意解約があったとは認められず,

解雇であったと判断されました。

 

 

また,同じく,解雇か合意解約かが争われたゴールドルチル事件でも,

合意解約ではなく,解雇と判断されました

(名古屋高裁平成29年1月11日決定・労働判例1156号18頁)。

 

 

すなわち,この事件では,労働者が

「やはり首ですよね?はっきりしないと仕事を探すにも探せません」,

「首ですね?」,「会社を辞めないといけませんけど」

と伝えたところ,会社は「仕事探してみてはいかがですか」,

「雇用保険受付してもいいですよ」と回答したという事実関係において,

労働者が当面の生活費に困っている中で

金銭給付を受けるためにされたものであるとして,

労働者は労働契約の合意解約の意思表示をしていないと判断されました。

 

 

裁判では,解雇か,自己都合退職か,

労働契約の合意解約かが争われた場合,

使用者側の言動,労働者の離職の経緯,

労働者が自分の意思で退職する動機の有無,

離職後の労働者の態度,使用者が労働者の労務提供の受け取りを

拒否する意思の表れとみられる事情の有無などをもとに

事実認定されます。

 

 

傾向として,やや労働者に有利に判断されると感じますので,

会社から,勝手に辞めただろうと反論されても,

丁寧に事実を主張立証していけば,

解雇と認定される可能性がでてきますので,

労働者は,不当解雇に泣き寝入りしないでもらいたいです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

解雇なのか自己都合退職なのか

昨日,解雇だと思っていたら,離職票の離職理由には,

退職勧奨による退職と記載されており,

会社に対して,離職理由の訂正を求めたところ,

会社が離職理由を解雇に訂正してくれたケースを紹介しました。

 

 

このケースでは,無事,離職理由を訂正してくれて,

会社が解雇であることを認めてくれたのでよかったですが,

会社が解雇であることを認めず,

退職勧奨に応じて相談者が自己都合退職したと主張してきた場合は,

相談者は,どう対応できるのでしょうか。

 

 

 

 

これは,労働者が会社を辞めたのが,

解雇なのか,自己都合退職なのか,

という事実認定の問題となります。

 

 

すなわち,労働者が会社を辞めるに際し,

会社側からどのようなことを言われて,

労働者は,それに対してどのような言動をしたのか,

ということを証拠に基づいて,証明して,

事実を認定していくことになるのです。

 

 

それでは,このように解雇か自己都合退職かという

事実認定が争われた裁判例である,ベストFAM事件を紹介します

(東京地裁平成26年1月17日判決・労働判例1092号98頁)。

 

 

この事件は,採用から1ヶ月半が経過しても,

新規契約を成立できなかった原告に対して,被告会社の社長が

「成績があがらないからやめてくれ」と告げられて,

原告が退職したというものです。

 

 

被告会社は,解雇ではなく自己都合退職であると主張して争いました。

 

 

なぜ,被告会社が,自己都合退職であると主張したのかといいますと,

解雇と判断されれば,営業成績が向上するように

指導したりした形跡がないので,解雇は無効と判断されて,

解雇時点以降の未払い賃金を支払わなければならなくなってしまうので,

それを避けたかったからだと思います。

 

 

しかし,裁判所は,次の事実を認定して,解雇と判断しました。

 

 

まず,原告の労働者は,退職した後にすぐにハローワークへ行き,

解雇されたのに離職票を送ってきていないことを相談しました。

 

 

 

次に,原告の労働者は,労働基準監督署へ行き,

解雇に関する申告書に,社長から,

1ヶ月半たっても成績が上がらないならやめてくれと言われて,

それって解雇ということですかと聞いたら,社長は,

そうだと回答したことを記載して提出しました。

 

 

そして,原告の労働者は,労働局のあっせんの申立をし,

その申請書に,「社長に呼び出され,即日退職を執拗に迫られました。

理由は1ヶ月以上経っているのに1件も上がっていないとのことでした。」,

「そこで私は,自己都合での退職の意思がないので

最後に『それは解雇という意味ですか?』と尋ねると

『そうです』と明快な回答が返ってきました。

それで,即日解雇された,という認識を持ちました。」と記載しました。

 

 

このように,原告は,一貫して,即日解雇されたことと,

営業成績が不良という解雇理由を主張していたのです。

 

 

さらに,解雇時の年齢が58歳であり,再就職が困難な年齢であり,

なるべく長く被告会社で働くことを希望しており,

入社後1ヶ月半で自分から退職する合理的な理由はありませんでした。

 

 

以上の事実を認定して,解雇であったと認められて,

解雇は理由がないとして無効となりました。

 

 

解雇された場合,会社は,解雇とは言っていないので

自己都合退職であると争ってくる可能性がありますので

,労働者は,一貫した態度で,不当解雇であると

主張し続ける必要があります。

 

 

 

このような争点を未然に防ぐためにも,

会社との解雇のやりとりをボイスレコーダーに録音しておくと,

立証が簡単になるので,おすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

解雇をされたら離職票を確認しましょう

先日,次のような労働事件の法律相談を受けました。

 

 

入社してまだ12日ほどしか経っていないにもかかわらず,

突然,「荷物をまとめて退職してください。」と告げられました。

 

 

 

 

相談者は,突然のことにショックを受けて,パニックになり,

次の日から出社することができなくなりました。

 

 

相談者は,この解雇に納得できないとして,

私のところへご相談にいらっしゃいました。

 

 

相談者は,解雇であることを前提にしていらっしゃったので,

私も解雇についてアドバイスをしていましたが,

私が,相談者に対して,「離職票を見せてください」と言って,

離職票を見たところ,離職理由には

「退職勧奨による退職」と記載されていました。

 

 

離職票には離職理由にチェックを入れる箇所があり,

解雇の場合であれば,離職理由の

「4事業主からの働きかけによるもの」のうちの

「(1)解雇(重責解雇を除く。)」にチェックが入るはずです。

 

(離職票)

 

しかし,この相談者のケースでは,離職理由の

「4事業主からの働きかけによるもの」のうちの

「(3)希望退職の募集又は退職勧奨」の「[2]その他」として,

その理由の欄に「退職勧奨による退職」と記載されていたのです。

 

 

相談者は,私に指摘されるまで,

離職票の離職理由に気付いていませんでした。

 

 

転職活動がそれほどさかんではない日本では,

離職票を見る機会があまりないので,

初めて離職票を受け取ったときに,

どのようにチェックすべきかわからないのがほとんどだと思います。

 

 

幸いにして,相談者は,まだ離職票をハローワークに

提出していませんでしたので,会社に対して,

この離職票の離職理由を訂正してもらうように通知書を送りましょう

とアドバイスをして,通知書を送りました。

 

 

ここでもし,相談者が,会社から送られてきた離職票を

そのままハローワークに提出していたとしたら,会社は,

解雇ではなく,退職勧奨に応じて自己都合退職したのだと

主張してくるおそれがありました。

 

 

解雇であれば,よほどの理由がないと,

会社は労働者を解雇できないので,

解雇を争えば,解雇が無効となり,

解雇された以降の未払い賃金を請求できる可能性が高くなります。

 

 

他方,自己都合退職の場合,自分から勝手に辞めたことになるので,

辞めた後に賃金を請求することができず,

会社に対して,金銭的な請求ができません。

 

 

 

また,自己都合退職ではなかったことを争う場合,

会社からだまされたり,おどされたり,勘違いして

自己都合退職をしてしまったと,

労働者が証明しなければならず,

労働者の主張が認められるとは限りません。

 

 

このように,解雇であれば,労働者は争いやすく,

自己都合退職であれば,労働者は争いにくいのです。

 

 

このことを理解している悪賢い会社であれば,

本当は解雇であっても,離職票に自己都合退職と記載して,

労働者がこれに気づかずにハローワークに提出した後に,

労働者が解雇で争ってきた時に,

自己都合退職だったと反論してくることがあります。

 

 

解雇されたのか否かが争点になることがありますので,

会社から「解雇する」と言われたのか,

「辞めてくれないか」と言われたのかなど,

どのような伝え方をされたのかや,

相談者がどのように対応したか等,

慎重に検討をする必要があります。

 

 

そして,会社から離職票を受け取ったときには,

離職票の離職理由をよく確認して,

事実と異なる記載がされていたら,

会社に対して,すぐに訂正を求めるようにしてください。

 

 

会社が訂正に応じないのであれば,離職理由の箇所に

「離職者記入欄」がありますので,

そこに自分が考える離職理由の箇所にチェックをいれてください。

 

 

 

 

また,離職理由の下のほうに,

「具体的事情記載欄(離職者用)」という欄がありますので,

そこに事実に合致した離職理由を具体的に記載し,

「離職者本人の判断」の箇所に,

「事業主が記入した離職理由に異議が有る」に○を囲みましょう。

 

 

その上で,離職票をハローワークに提出すれば,

自己都合退職に応じたとは認められないと思います。

 

 

さて,先ほどの相談者のケースでは,

離職票の離職理由を訂正することを求める通知書を会社に送ったところ,

会社はこれに応じて,解雇であることを認めてくれましたので,

相談者は,会社と争いやすくなったので,よかったです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

パワハラを巡る内紛を理由とする懲戒解雇

先日,ブログで紹介しましたが,パワハラを防止するための法律案

が閣議決定され,今後,会社は,パワハラを防止するための

措置を講じる必要がでてきます。

 

 

https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201903257760.html

 

 

そのため,会社は,労働者からパワハラの相談を受けて,

調査をした結果,パワハラの事実があると判断すれば,

パワハラをした労働者に対して懲戒処分を

科すことを検討することになります。

 

 

しかし,この懲戒処分を適切に科さないと,

懲戒処分を受けた労働者から,懲戒処分の無効を主張されて,

裁判に発展していくこともあります。

 

 

本日は,パワハラを巡る内紛を理由になされた,

幼稚園の園長に対する懲戒解雇の効力が争われた,

学校法人名古屋カトリック学園事件を紹介します

(名古屋地裁岡崎支部平成30年3月13日判決・

労働判例1191号64頁)。

 

 

原告の園長は,ある職員に対して,送迎バスの添乗時に

保護者や園児に不遜な態度をとるなど,

振る舞いや勤務態度を問題視していました。

 

 

 

 

他方,ある職員は,原告の園長に対して,

幼稚園の運営が強引で独善的であるとか,

職員に対する原告の言葉の暴力がひどすぎると感じ,

原告に対して,批判的・反抗的な態度を示して,

原告と対立していました。

 

 

そのような対立状況の中,ある職員は,

幼稚園の経営者に対して,原告の園長から,

「給料泥棒」などの暴言を浴びせられたので,

園長を交代させてほしいという嘆願書を提出しました。

 

 

幼稚園の経営者は,原告を呼び出し,

嘆願書について説明を求め,原告に対して,

事態を収拾するように説得し,原告は,

これに応じて,職員に謝罪しました。

 

 

しかし,その後も原告の振る舞いが変わらないとして,

再度,園長交代の嘆願書が提出され,幼稚園の経営者は,

原告が嘆願書に記載された言動をしたと判断して,

原告を懲戒解雇しました。

 

 

 

 

懲戒解雇の理由は,

①幼稚園又は他の職員の名誉又は信用を傷つけること,

②いたずらに感情に走り,他の者を誹謗したり,排斥すること,

③職務の遂行が越権専断的となること,

に該当するということです。

 

 

裁判所は,①と②の懲戒理由について,被告は,

職員の嘆願書を根拠に,嘆願書記載の原告の言動があった

と判断しましたが,それを裏付ける客観的な証拠がないことから,

たやすく嘆願書記載の原告の言動があったとは認定できないとしました。

 

 

また,③の懲戒理由について,原告が職員に謝罪をして

事態の収拾が図られていたとして,

情状が極めて重いとはいえないとしました。

 

 

その結果,原告には,懲戒解雇に該当する行為をしたとはいえず,

懲戒解雇は無効となりました。

 

 

そして,原告の雇用期間があと2年間残っていたことから,

2年分の未払賃金の請求が認められました。

 

 

他方,原告は,懲戒解雇による精神的苦痛を被ったとして,

慰謝料の損害賠償請求をしていましたが,

裁判所は,解雇が無効であると判断されて,

未払賃金の支払いを受けることができるようになるので,

なお償われない精神的苦痛が残るとは認められないとして,

慰謝料請求は認められませんでした。

 

 

解雇事件において,未払賃金請求と一緒に

慰謝料の損害賠償請求をしても,

なかなか認められないのが現状です。

 

 

本件事件では,被告が,原告の園長のパワハラの有無を,

丁寧に調査せずに,一方当事者の主張のみを理由に

懲戒解雇をしてしまったがゆえに,裁判になって,

懲戒該当理由がなかったと判断されました。

 

 

今後,パワハラを巡る労使紛争が増加していくことが予想されますが,

会社は,パワハラの事実があったかなかったかについては,

入念に調査した上で,懲戒処分をくだしていく必要があります。

 

 

 

 

特に,懲戒解雇をする場合には,より慎重な調査が求められます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

休職と復職を繰り返した労働者に対する解雇事件

最近,新聞をみていますと,がんを宣告されても,

その人の治療にあわせて,無理のない範囲で仕事を

継続させる取り組みがあるようです。

 

 

今後,労働人口が減少していく中で,

病気の人も安心して働ける環境の整備が必要になっていきそうです。

 

 

 

 

さて,本日は,病気で休職していた労働者の解雇が

問題になった裁判例を紹介します。

 

 

本日,紹介するのは,12年間休職と復職を繰り返した

営業社員に対する解雇が争われた三洋電機事件です

(大阪地裁平成30年3月29日判決・労働判例1189号106頁)。

 

 

原告の労働者は,自転車通勤の途上で,

自動車との接触事故により,外傷性頚椎・腰椎ヘルニアの傷害を負い,

休職し,併合10級の後遺障害の認定を受けました。

 

 

その後,復職しましたが,頚椎症,腰椎椎間板ヘルニアや

その他の病気を理由に,3回休職と復職を繰り返し,

12年間のうち,原告の労働者が実際に就労したのは,

約2年11ヶ月でした。

 

 

 

 

そうしたところ,被告会社は,原告の労働者に対して,

身体上の故障のため,業務に堪えられないとして,解雇しました。

 

 

原告の労働者は,仕事が原因で,

腰痛が悪化したことから休業していたのであり,

本件解雇は労働基準法19条に違反すると主張しました。

 

 

労働基準法19条には,仕事が原因で労働者が負傷して,

休業している期間,解雇できないと規定されています。

 

 

ところが,原告の労働者は,ほとんど営業活動を行っておらず,

腰痛による体調悪化を訴えていなかったことから,

腰痛の悪化があったとしても,その原因は仕事ではないと判断され,

労働基準法19条による解雇制限は適用されませんでした。

 

 

また,被告の三洋電機は,パナソニックから,

余剰人員の削減をせまられている状況において,

原告の労働者に対して,就労可能と考えられる業務を提示して,

復職を希望する原告の労働者の意向に

最大限応えるように対応してきました。

 

 

そのため,被告は,原告の労働者に対して,

必要とされる配慮を十分に行っていることから,

本件解雇は有効と判断されました。

 

 

病気による休職と復職が問題になる事案では,

医学的な検討が必要になり,復職させるにしても,

どのような仕事ができるのかなどを慎重に判断する必要があります。

 

 

今後,病気になった労働者にも継続して働ける環境の整備が

求められていくことから,企業もどこまで,

労働者に配慮していかなければならないのか

について検討が続きそうです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

和解や調停の解決金から源泉徴収されてしまうのか?

労働者が解雇されたものの,

解雇に納得がいかない場合,

解雇が無効であるとして,

労働者としての権利を有することの確認と,

未払賃金の請求をすることが多いです。

 

 

 

 

このように争うとき,形式的には

会社に復職することを主張するのですが,

労働者としては,自分を解雇するような

会社に戻りたいとは通常考えないため,

労働審判手続などでは,会社から

いくらかの金銭の支払いを受けて,

労働契約を合意で解約するという

解決がされることが多いです。

 

 

このように,労働契約を合意解約した上で,

会社からいくらかの金銭の支払いを受ける

という調停や和解が成立する場合,会社は,

労働者に対して,解決金という名目で

金銭を支払うことが多いです。

 

 

これは,解雇した日ではなく,

和解や調停が成立した日に労働契約を合意で解約するので,

解雇日から和解や調停が成立した日までの未払賃金とすると,

失業給付の返還や,社会保険をさかのぼって適用するのか

というややこしい問題が生じるので,

和解や調停が成立した日に労働契約を解約して,

会社が労働者に対して,未払賃金ではなく

解決金を支払うことにしているのです。

 

 

 

 

また,解決金には,不当解雇に対する

慰謝料の趣旨も含まれると解することもできます。

 

 

このような性質の解決金について,

会社は,和解や調停で決まった金額を

そのまま支払ってくることがほとんどです。

 

 

しかし,会社が,和解や調停で決まった解決金は

退職所得であるとして,所得税を源泉徴収してきた場合,

労働者は,どのように対処するべきなのでしょうか。

 

 

ややマニアックな論点ですが,

長崎地裁平成30年6月8日判決は,

解決金は退職所得ではないと判断しました。

 

 

和解や調停の条項に解決金と記載された場合の金員については,

当事者には,和解や調停によって裁判手続を終了させるための

支払であるということ以上に,

その金員の性質について認識の一致がなく,

裁判所を含めて,和解や調停の成立のための金員という以上に

その法的性質を判別することはできません。

 

 

解決金は,裁判手続を終了させるために支払われる金員

という以上にその法的性質を確定することは

事実上極めて困難であるため,

退職所得の性質を有するとは認められませんでした。

 

 

この裁判例からは,会社が解決金を源泉徴収義務のある

給与所得や退職所得などと考えたとしても,

労働者がそれを争う限り,会社は,

解決金の中から源泉徴収することはできず,

労働者に対して,解決金の全額を

支払わなければならないことが導かれます。

 

 

 

 

もし,会社が解決金から源泉徴収をして,

解決金全額を支払わなかった場合,

和解や調停が成立しているので,

労働者は,会社が源泉徴収した部分について,

会社が保有する財産を差押えて,

強制的に支払いを求めることができるのです。

 

 

ややマニアックな論点ですが,

解雇の事件が終了するときに問題となることがありますので,

紹介させていただきました。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

試用期間中の解雇

入社後の一定期間を試用期間や見習期間として,

その間に労働者を評価して本採用するかどうかを

決めることがよくあります。

 

 

 

会社にとっても労働者にとっても,

入社面接をしただけでは,

お互いに合う合わないがわかりませんので,

試用期間中に,お互いをよく知るというのは合理的だと思います。

 

 

ところが,試用期間の途中で突然,

会社から解雇を告げられてしまうと,今後も,

会社で働き続けたいと考えていた労働者としては,

途方に暮れてしまいます。

 

 

本日は,試用期間中の解雇はどのようなときに

認められるのかについて説明します。

 

 

そもそも,労働契約において試用期間が設定される趣旨は,

採用決定の当初ですと,労働者の資質・性格・能力などの

適格性の有無に関連する事項について

資料を十分に収集することができないので,

後日における調査や観察に基づく

最終決定を留保することにあります。

 

 

そのため,会社には,労働契約の解約権が留保されています。

 

 

試用期間の会社の解約権は,本採用後の解雇と比べて

緩やかに判断される可能性があります。

 

 

 

 

もっとも,会社が採用決定後における調査の結果により,

または試用期間中の勤務状況などにより当初知ることができず,

また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合に,

その労働者を引き続き会社で雇用することが適当ではないときに,

会社は,留保されている解約権を行使することができるのです。

 

 

この判断枠組みは,試用期間満了時点での本採用拒否と,

試用期間の途中での解雇とでは,それほど変わらないといわれています。

 

 

裁判例の中には,試用期間の途中の解雇の場合,

残りの試用期間を勤務することによって会社の要求する

水準に達する可能性があったので,

解雇する時期の選択を誤ったとして,

本採用拒否の場合よりも厳格に判断されるとしたものもあります

(医療法人財団健和会事件・

東京地裁平成21年10月15日判決・

労働判例999号54頁)

 

 

まとめますと,試用期間中の解雇は,

本採用拒否の場合よりも厳格に判断される可能性はありますが,

本採用後の解雇と比較すると緩やかに判断される可能性

があるということになります。

 

 

それでも,試用期間中の解雇は,

採用段階では分からなかった労働者の不適格性について,

引き続き会社で雇用することが不適当であると,

客観的に相当である場合にしかできず,

試用期間中の解雇を争うことは十分可能ですので,

解雇に身に覚えがない労働者は,

弁護士に相談するようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

解雇期間中に別の会社で働いた収入は未払賃金から控除されてしまうのか?

労働者が解雇されている期間に別の会社で働いて得た収入

中間収入といいます)は,解雇が無効と判断されるまでの期間の

未払賃金(バックペイといいます)から控除されてしまうのでしょうか。

 

 

労働者は,解雇されてしまうと,給料がもらえなくなるので,

生活するために収入を確保する必要があるので,別の会社で働きます。

 

 

 

 

もっとも,解雇に納得ができない労働者は,会社に対して,

解雇が無効であるので,労働契約上の地位があることの確認と,

バックペイの支払いを求めて,労働審判または裁判を行います。

 

 

労働者が解雇した会社に対して,お金の支払いを求めたいだけ

であっても,裁判手続では,解雇した会社に戻ることを

建前として主張することになります。

 

 

解雇した会社に戻ることを建前として主張しているのに,

別の会社で働いていることは一見すると矛盾していますが,

労働者としては,生活していかなければなりませんので,

解雇した会社に戻ると主張して裁判で争っていても,

別の会社で働くことは問題ありません。

 

 

さて,解雇を争う事件ですと,会社から,

解雇期間中に労働者が得た中間収入をバックペイから

控除するべきだという主張がされることが多いです。

 

 

 

 

本日は,バックペイから中間収入を控除できるのかについて解説します。

 

 

現行民法536条2項には次のように規定されています。

 

 

「債権者の責めに帰すべき事由によって

債務を履行することができなくなったときは,

債務者は,反対給付を受ける権利を失わない。

この場合において,自己の債務を免れたことによって

利益を得たときは,これを債権者に償還しなければらならない。」

 

 

労働者が会社で働こうとしても,会社が不当な解雇で,

労働者の就労を拒否している場合,労働者は,

会社に労務を提供することができません。

 

 

そこで,現行民法536条2項の第1文によって,

会社の不当解雇という「責めに帰すべき事由」によって,

労働者は,労務を提供する債務を履行できないので,

反対給付である賃金請求権を行使できるのです。

 

 

これが,解雇事件で,労働者がバックペイを請求できる根拠です。

 

 

しかし,労働者が,会社で労務を提供することを免れたことで,

別の会社で働いて中間収入という利益を受けているので,

現行民法536条2項第2文によって,

中間収入分を会社に返さなければならないことになります。

 

 

労働者は,解雇されてやむなく別の会社で働いて

なんとか稼いだ収入が「自己の債務を免れたことによって利益を得たとき」

に該当するのは,労働者としては,釈然としないと思います。

 

 

 

 

ところが,労働基準法26条には,

「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては,

使用者は,休業期間中当該労働者に,

その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。」

と規定されています。

 

 

民法よりも労働基準法が優先適用されますので,

会社がバックペイから控除できる中間収入は,

平均賃金の4割に限定されており,

平均賃金の6割分は,労働者が確保できます。

 

 

労働基準法の平均賃金とは,

3ヶ月間に労働者に支払われた賃金の総額を,

その期間の総日数で割って算出されます。

 

 

まとめますと,解雇期間中に別の会社で働いた場合,

解雇された会社で働いていたときの平均賃金の6割については,

労働者は,中間収入を確保することができ,

平均賃金の6割を超える残りの4割の部分については,

バックペイから中間収入が控除されることになります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。