マカフィーの労働審判から退職勧奨や退職強要の対処方法を検討する

1 マカフィーの労働審判

 

 

外資系セキュリティー大手のマカフィーにおいて、

退職強要をされたと主張する労働者が、

労働審判を申し立てて、調停が成立しました。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/08f0be34ab6a13b8b993be0d08541d023f5406c8

 

 

報道によりますと、申立人の労働者は、

「サインをしなければ解雇通知します」等と言われて、

その場で、退職確認書に署名することを迫られ、

2時間ほど退職強要されて、署名させられたようです。

 

 

会社は、労働者をそう簡単に解雇できないので、

労働者が自分から会社を辞めた形にもっていくために、

退職勧奨や、ひどいときには退職強要をしてきます。

 

 

本日は、退職勧奨や退職強要の対処方法について解説します。

 

 

2 退職勧奨や退職強要の対処方法

 

 

まず、会社が労働者に対して、

会社を辞めてほしいとお願いすることを退職勧奨といい、

退職勧奨が、退職を強要するように違法になされることを

退職強要といいます。

 

 

退職勧奨は、単なるお願いなので、

労働者は、退職勧奨に応じる義務はなく、

会社を辞めたくないのであれば、

辞めませんときっぱりと断ればいいのです。

 

 

 

退職勧奨を受けている労働者の代理人として、

弁護士が会社に対して、内容証明郵便で退職勧奨を辞めるように

通知を出すことで、退職勧奨が止まることもあります。

 

 

会社が労働者の自由な意思を尊重しつつ、

退職勧奨を行う限りでは、退職勧奨は、違法になりません。

 

 

もっとも、労働者が、退職勧奨に応じない態度を示しても、

退職勧奨が止まらないことはよくあります。

 

 

このような場合、働者が退職勧奨に応じる意思がないことを

明確にしているのに、執拗に退職勧奨を繰り返したり、

多人数で取り囲んだり、威圧的な言動を繰り返すなどした場合には、

違法な退職勧奨、すなわち、退職強要となり、

労働者は、会社に対して、損害賠償請求できます。

 

 

労働者が、会社に対して、違法な退職強要があったとして、

損害賠償請求をするためには、会社からどのような態様で、

退職を強要されたのかを証明する必要があります。

 

 

退職強要の実態を証明するためには、録音が重要になります。

 

 

録音がなければ、会社は、退職強要をする言動はしていない

と主張してきて、言った言わないの水掛け論となり、

退職強要の実態を証明することができなくなってしまいます。

 

 

そのため、会社から、退職勧奨をされた場合には、

録音をするようにしましょう。

 

 

録音をする際に、会社に録音することの許可を得る必要はなく、

こっそり録音すればいいのです。

 

 

3 退職合意書に署名した場合の対処方法

 

 

次に、会社から退職強要をされて、

退職合意書にサインをしてしまったら、

どうすればいいのでしょうか。

 

 

その際には、会社から強迫を受けて、

自由な意思に基づかないで署名したことを主張して、

退職の意思表示の取り消しを求めます。

 

 

 

損害保険リサーチ事件の旭川地裁平成6年5月10日決定

(労働判例675号72頁)では、

会社側の、転勤に承諾しなけれ懲戒解雇するという発言によって、

労働者が退職の意思表示をしたことについて、

強迫に基づく意思表示であるとして、

その取消が認められました。

 

 

また、退職の意思表示が、自由な意思に基づくものと

認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在しない場合には、

退職の意思表示が無効になります。

 

 

とはいえ、退職の意思表示を強迫を理由に取り消したり、

自由な意思に基づかないとして無効とするには、

会社との退職のやりとりを証明する必要があり、

やはり、録音が必要になります。

 

 

まとめますと、退職勧奨や退職強要を受けても、

会社を辞めたくないなら、退職しませんと回答し、

会社とのやりとりを録音し、もし、退職の意思表示をしてしまったら、

会社からの強迫や、自由な意思に基づかないものであったと

主張立証できないかを検討することになります。

 

 

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一度してしまった退職合意を後から争う方法

1 加賀温泉郷のホテルにおける合意退職の事件

 

 

今年の6月に加賀温泉郷のホテル北陸古賀乃井とホテル大のやにおいて、

従業員全員に解雇通告がされたニュースがありました。

 

 

https://www.chunichi.co.jp/article/68748

 

 

この事件について、現在、労働組合と会社とが

団体交渉をしているようで、記者から、

法律的なコメントを求められましたので、私なりに調べてみました。

 

 

https://www.rouhyo.org/news/1720/

 

 

すると、この事件では、会社は、労働者に対して、

退職合意書に署名を求めて、

多くの労働者が退職合意書に署名してしまったようです。

 

 

すなわち、本質的には、解雇なのですが、

労働者が退職合意書に署名しているので、

労働者が自己都合退職した形になっているのです。

 

 

 

解雇であれば、法律で厳しい規制がされているので、

労働者が解雇を争えば、解雇が無効となって、

未払賃金を請求できる可能性があります。

 

 

他方、労働者が自己都合退職の形をとってしまうと、

後から争うことが困難になります。

 

 

本日は、労働者が真意とは異なる自己都合退職をしてしまった場合の

対処法を説明します。

 

 

2 意思表示についての民法の規定(錯誤・詐欺・強迫)

 

 

労働者が、一度、自己都合退職の意思表示をしてしまったものの、

その意思表示が間違いがあったとして、

取り消すことができる場合について、

民法に規定があります。

 

 

例えば、自己都合退職をしなければ、

退職金が支払われない懲戒解雇になると通告されて、

懲戒解雇だけは回避したいと考えて、

自己都合退職の意思表示をした場合、

労働者は、誤信に基づいて、

自己都合退職の意思表示をしているので、

民法95条の錯誤を理由に、

自己都合退職の意思表示を取り消すことができます。

 

 

この他にも、会社から騙されて、

自己都合退職の意思表示をした場合には、

詐欺による意思表示として取り消せますし、

会社から脅されて、自己都合退職の意思表示をした場合には、

強迫による意思表示として取り消せます(民法96条)。

 

 

3 自由な意思論

 

 

従来は、自己都合退職が錯誤、詐欺、強迫に

該当するかだけが検討されていましたが、最近では、

自己都合退職の意思表示が自由な意思に基づくものではない場合に、

効力が生じないという主張が効果的です。

 

 

山梨県民信用組合事件の最高裁平成28年2月19日判決において、

労働者にもたらされる不利益の内容及び程度、

労働者により当該行為がされるに至った経緯及び態様、

当該行為に先立つ労働者への情報提供又は説明の内容等に照らして、

当該行為が労働者の自由な意思に基づいてされたものと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在するか否か、という判断基準が示されました。

 

 

この判断基準が、合意退職の場合にもあてはまるとしたのが、

TRUST事件の東京地裁立川支部平成29年1月31日判決

(労働判例1156号11頁)です。

 

 

この事件では、退職は、一般的に、

労働者に不利な影響をもたらすので、

退職の合意があったか否かについては、

特に労働者につき自由な意思でこれを合意したものと認めるに足りる

合理的な理由が客観的に存在するか慎重に判断する必要があるとして、

退職合意の存在が否定されました。

 

 

 

そこで、加賀温泉郷のホテルの事件にあてはめると、

労働者は、退職同意書に署名したものの、

退職することによって仕事を失うという大きな不利益を被ることになり、

会社からの説明は5分ほどしかなかったようで、

十分な情報提供や説明はなかったといえるので、

労働者の同意が自由な意思に基づいてなされたとはいえないと

判断される可能性があると考えます。

 

 

この事件では、会社側とのやりとりが録音されていたり、

多くの労働者が、会社側の説明が不十分であると証言しているので、

会社側とのやりとりを証明できる可能性があります。

 

 

もっとも、会社側がどのような言動をもって

労働者に退職の意思表示をさせたかについては、

労働者が証明しなければならず、個室で、

労働者と社長が一対一でやりとりをしていて、

録音がない場合には、言った言わないの水掛け論になって、

証明することが困難になります。

 

 

自己都合退職の場合は、解雇の場合と比べて、

証明のハードルが高いので、争いにくいのです。

 

 

自己都合退職を争う場合には、

会社側とのやりとりを録音するのが重要になります。

 

 

また、安易に、退職合意書に署名しないようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

自己都合退職の失業手当の給付制限が2ヶ月に短縮されます

1 雇用保険の失業手当

 

 

労働者が会社を退職したときには、

雇用保険から基本手当を受給することができます。

 

 

この基本手当は、一般的に失業手当と言われています。

 

 

 

この失業手当について、今年の10月1日から

重要な改正がありましたので、紹介します。

 

 

まず、失業手当は、離職理由に関係なく、

労働者が離職後最初にハローワークに求職の申し込みをした

日以後において、失業している日が通算7日に満たない間は

支給されません。

 

 

ようするに、失業した労働者がハローワークに失業手当の申請をして、

1週間が経たないと失業手当は支給されないのです。

 

 

これを待機期間といいます。

 

 

この待機期間については、今回は改正されていません。

 

 

2 失業手当の給付制限

 

 

次に、解雇などの会社都合による退職の場合には、

待機期間が経過すれば、失業手当が支給されるのですが、

自分から会社を辞めた自己都合退職の場合には、正当な理由がない限り、

待機期間が終了した後に、さらに3ヶ月間の給付制限がかかります。

 

 

この3ヶ月間の給付制限が、今年の10月1日から、

2ヶ月間に短縮されました。

 

 

https://jsite.mhlw.go.jp/ibaraki-roudoukyoku/content/contents/LL020617-H01.pdf

 

 

これまでは、1週間の待機期間に加えて、

3ヶ月間の給付制限の期間を待たないと

失業手当を受給できなかったのですが、これが2ヶ月間に短縮されて、

失業手当を受給しやすくなるので、労働者にとって有利な改正です。

 

 

もともと、給付制限は、安易な退職を防ぐために設定されたのですが、

転職が多くなり、失業手当の給付をこれまでよりも早く始めて、

安心して再就職活動や資格取得をできるように環境を整備する目的で、

給付制限の期間が短縮されたのです。

 

 

3 自己都合退職における正当な理由とは

 

 

ところで、給付制限がかかるのは、

正当な理由がなく自己都合退職した場合であって、

正当な理由がある自己都合退職の場合には、給付制限がかかりません。

 

 

この正当な理由とは、以下の理由が挙げられています。

 

 

①事業所の倒産

 

 

②大量・相当数の人員整理

 

 

③適用事業所の廃止

 

 

④採用条件と労働条件の著しい相違

 

 

⑤賃金の未払い、遅払いの継続

 

 

⑥賃金額の低下

 

 

⑦過重な時間外労働、

生命身体に関し障害が生じるおそれのある法令違反に対する不改善

 

 

⑧労働者の職種転換に対して、

事業主が当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていない

 

 

⑨上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせ

 

 

⑩退職勧奨、希望退職の募集

 

 

⑪全日休業による休業手当の3ヶ月以上の継続的支払い

 

 

⑫事業主の事業内容の法令違反

 

 

⑬被保険者の身体的条件の減退

 

 

⑭妊娠、出産、育児等により退職し、

受給期間延長措置を90日以上受けた

 

 

⑮家庭の事情の急変

 

 

⑯配偶者等との別居生活の継続の困難

 

 

⑰一定の理由による通勤不可能または困難

 

 

実務でよく問題になるのが、⑨のいわゆるパワハラを受けて、

会社にいるのが嫌になって自己都合退職する場合です。

 

 

上記①~⑰の正当な理由があるかについては、

ハローワークが認定しますので、

会社がパワハラはなかったと主張した場合、

労働者がパワハラの事実があったことを証明できなければ、

正当な理由がなかっとされて、給付制限がかかってしまうのです。

 

 

 

パワハラについては、録音がないとパワハラの事実を

証明するのが困難ですので、パワハラを苦に自己都合退職をしても、

正当な理由がないとして、

給付制限がかかってしまうということがあるのです。

 

 

証拠がないために、失業手当について

給付制限がかかるのは酷な話なので、今回の改正で、

給付制限が1ヶ月短縮されたのは、よかったと考えます。

 

 

なお、給付制限が2ヶ月になるのは、

離職から5年間のうち2回までなので、3回目になると、

給付制限は3ヶ月になるので、気をつける必要があります。

 

 

自己都合退職の場合であっても、

上記①~⑰の正当な理由がある場合には、

給付制限がかかりませんので、

給付制限がかからないかについては、

ハローワークに相談することをおすすめします。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルスの感染拡大で増加してくる退職勧奨の対処法

1 退職勧奨が増加してくることが予想されます

 

 

昨日のブログで紹介したとおり,

希望退職の募集をする会社が増えてきており,

人減らしの波が押し寄せてきています。

 

 

会社は,従業員を削減するために,希望退職の募集をする以外にも,

個別の従業員に対して,退職勧奨をしてくることがあり,

新型コロナウイルスの感染拡大が再び始まったことから,

今後,退職勧奨が増えてくることが予想されます。

 

 

 

本日は,退職勧奨への対処法について説明します。

 

 

2 労働契約を終了するには

 

 

会社と労働者との労働契約を終了させるためには,

解雇,合意退職,辞職の3つの方法があります。

 

 

解雇は,会社の一方的な意思に基づくもの,

合意退職は,会社と労働者の合意に基づくもの,

辞職は,労働者の一方的な意思に基づくもの,

というように分けられています。

 

 

解雇や合意退職に至る前段階で,

退職勧奨が行われることが多いのですが,

退職勧奨は,合意退職の会社からの申入れや,

その申込みの誘引にすぎず,退職勧奨によって,

労働契約が終了することはありません。

 

 

3 退職勧奨の対処法

 

 

労働者には,退職勧奨に応じる義務はありませんので,

会社を辞める意思がないのであれば,会社から退職勧奨を受けても,

きっぱりと断ればいいのです。

 

 

とはいえ,退職勧奨を断れば,会社が解雇をしてくる場合があります。

 

 

労働者側に落ち度があり,解雇されたら,

解雇が有効になる場合には,労働者に少しでも有利な条件を獲得して,

退職勧奨を受け入れて辞職するのも一つの道です。

 

 

会社としても,労働者から解雇を争う裁判手続をとられて,

紛争解決に時間と労力をかけることを嫌がり,

退職勧奨に応じるのであれば,

労働者に有利な条件をのんでくれることもあります。

 

 

また,退職勧奨を断って解雇されても,

解雇が無効になる場合には,退職勧奨を拒否して,

そのまま働き続けるのもいいですが,退職勧奨をされたことで,

このままこの会社で働き続ける意欲を失うこともあります。

 

 

そのような場合にも,一定の金銭的な補償をしてくれるのであれば,

退職を検討しても良いというスタンスで,会社と交渉して,

労働者に有利な条件で退職するのも一つの道です。

 

 

ポイントとしては,労働者には退職勧奨に応じる義務はない

ことを理解した上で,このままこの会社で働き続けるのか,

良い条件であれば退職に応じてもよいのかを,ご自身で決断すべきです。

 

 

4 違法な退職強要に対して損害賠償請求できる

 

 

この退職勧奨ですが,社会通念上の相当性を逸脱し,

労働者が退職勧奨に応じる意思がないことを明確にしているのに,

執拗に退職勧奨を繰り返したり,大人数で取り囲んだり,

威圧的な言動を繰り返すなどした場合には,

違法な退職強要となり,労働者は,会社に対して,

損害賠償請求をすることができます。

 

 

会社を辞めないあなたは頭がおかしいなどと,

労働者の人格を否定したり,退職に追い込むために,

嫌がらせや監視をさせたりした場合には,

違法な退職強要になる可能性があります。

 

 

退職強要は,密室で行われることがほとんどですので,

退職強要の実態をリアルに描き出すためには,

録音することが最も効果的です。

 

 

そのため,会社から退職勧奨を受けた場合には,

録音するようにすることが自身の身を守る方法として効果的です。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

新型コロナウイルスの感染拡大で増加している希望退職の募集への対処の仕方

1 希望退職の募集が急増しています

 

 

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で,

上場企業で希望退職を募集するケースが増えているようです。

 

 

https://news.yahoo.co.jp/articles/5e964800d79363a8e833695246fc8b7bb148bad4

 

 

希望退職の募集人数は7,000人を超えているようで,

人減らしの波は,非正規雇用労働者だけでなく,

正社員に対しても広がってきています。

 

 

 

希望退職を募集している企業は,

外食,小売,アパレルといった業種の企業でして,

新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きかった業種で,

人減らしの動きが加速しているといえます。

 

 

自分が勤務している会社が希望退職を募集した場合,

これに応じるべきか否かは悩ましい問題です。

 

 

本日は,希望退職について解説します。

 

 

2 希望退職の募集は整理解雇の前段階で実施されることが多い

 

 

希望退職の募集は,整理解雇の前段階として実施されることが多いです。

 

 

整理解雇は,会社の業績悪化を理由とする解雇のことで,

解雇される労働者に落ち度がないことがほとんどなので,

整理解雇が有効になるためには,

以下の整理解雇の4要件(4要素)を満たさなければなりません。

 

 

①人員削減の必要性

 

 

 ②解雇回避努力を尽くすこと

 

 

 ③人選の合理性

 

 

 ④労働者に対する説明を尽くすこと

 

 

このうち,②解雇回避努力として,会社は,

希望退職の募集をすることが多いです。

 

 

希望退職の募集は,労働者の意思を尊重しつつ,

人員削減を図るものなので,合理性の高い方法といえます。

 

 

そのため,希望退職の募集をせずに,いきなり,

特定の個人を指名して解雇した場合には,

②解雇回避努力をしていないとして,

解雇が無効になる可能性があるのです。

 

 

また,希望退職に応じなければ,

対象者全員を解雇するとして行われた希望退職の募集について,

希望退職の募集は,労働者の自主的な決定を尊重しうる点に

意味があるところ,このような希望退職の募集では,

労働者に退職しない自由がないとして,

希望退職の募集の趣旨に沿わないとして,

解雇回避努力義務を怠ったと判断された裁判例があります

(株式会社よしとよ事件・京都地裁平成8年2月27日判決・

労働判例713号86頁)。

 

 

あくまで,希望退職に応じるか否かの判断を,

労働者の自由な意思決定に委ねなければならないのです。

 

 

そして,希望退職の募集に際しては,

労働者の任意の退職を促進するような条件をつけていないと,

解雇回避努力として評価されないことが多いです。

 

 

そのため,希望退職に応じた場合には,

退職金を上乗せすることが多く行われています。

 

 

3 希望退職の募集に応じるべきか

 

 

以上をまとめますと,希望退職の募集は,

整理解雇の前段階として行われるもので,

会社が真摯な態度で実施しないと,

②解雇回避努力として不十分と評価されることになります。

 

 

労働者としては,希望退職の募集については,

自主的な決定が尊重されていますので,これに応じるか否かは,

ご自身の損得勘定をもとに合理的に判断してください。

 

 

希望退職が募集されたということは,整理解雇の予兆なので,

会社の業種が悪化している指標とも言えますので,

この会社に勤務し続けても未来はないとして,

上乗せされた退職金をもらって退職するのも一つの道です。

 

 

 

他方,今退職したら,次の就職先が見つからないと

考える方もいますので,そのときには,希望退職に応じずに,

そのまま勤務し続ければいいのです。

 

 

ご自身の損得勘定をはたらかせて,合理的に決断してください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

就業規則に退職届を退職の90日前までに提出しなければならない規定があっても,退職届を提出してから2週間で退職できます

1 自己都合退職に関する労働相談

 

 

ここ2年ほど前から,会社を辞めさせてもらえないという

労働相談が増えているように感じています。

 

 

人手が不足している会社では,労働力を確保するために,

勝手に仕事を投げ出すのは逃げだ,などと言って,

退職を認めてくれないことがあります。

 

 

 

また,就業規則で,自己都合退職をするには,

90日前までに会社に退職届を提出しなければならなかったり,

退職をするには,会社の承認が必要としている場合があります。

 

 

このような就業規則がある場合,

就業規則の規定を守らないと退職できないのでしょうか。

 

 

本日は,自己都合退職について解説します。

 

 

2 自己都合退職をするには

 

 

まず,労働者には,憲法22条で職業選択の自由が保障されており,

憲法18条と労働基準法5条によって,

奴隷的拘束や強制労働も禁止されています。

 

 

そのため,労働者による労働契約の一方的解約である自己都合退職は,

原則として自由であり,会社を辞めるにあたって,

会社の承諾を必要としません。

 

 

労働者は,退職届を会社に提出して,

2週間が経過すれば会社を辞めれるのです(民法627条1項)。

 

 

そして,土日が休みの週休二日制の会社であれば,

平日の10日間,年次有給休暇を取得することで,退職届を提出してから,

会社に出社することなく会社を退職できるのです。

 

 

3 民法の規制よりも厳しい就業規則の規制がある場合

 

 

ここで問題になるのが,就業規則で民法の規制である

2週間よりも長い期間,退職を制限している場合です。

 

 

この点について,問題となったプロシード元従業員事件の

横浜地裁平成29年3月30日判決を紹介します

(労働判例1159号5頁)。

 

 

この事件では,労働者が虚偽の事実を捏造して退職し,

就業規則に違反して業務の引き継ぎをしなかったことが違法であるとして,

会社が労働者に対して,1270万円もの損害賠償請求をしました。

 

 

この事件の会社では,冒頭のように,退職をするためには,

90日前までに退職届を提出しなければならないと,

就業規則に記載されていました。

 

 

裁判所は,退職届を提出してから2週間経過後においては,

労働契約は終了しているので,会社が主張している損害と

労働者の行為との間には何も因果関係はないとして,

会社の損害賠償請求は認められませんでした。

 

 

むしろ,会社の訴訟の提起が不当訴訟にあたるとして,

労働者からの損害賠償請求が認められたのです。

 

 

 

このように,裁判所は,就業規則で退職届を退職前の90日前までに

提出しなければならないとしていても,

退職届を提出してから2週間経過後に退職できると判断したのです。

 

 

そのため,就業規則に退職するにあたり,

民法627条1項の規定よりも厳しい規制があったとしても,

すぐに会社を辞めたいのであれば,退職届を提出して,

年次有給休暇を取得して,2週間経過後に辞めれはいいのです。

 

 

とくに,うつ病などの心の病気を患っていて,

早く会社を辞めたい場合には,ご自身の健康を第一に考えて,

引き継ぎとかも考えずに,早く退職届を提出したほうがいいと考えます。

 

 

引き継ぎがあるから,なかなか退職届を出せず,

そのまま仕事をしていると,体調がさらに悪化するおそれがありますので,

そのようなことは避けるべきです。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社からだまされて退職してしまったときの対処法

1 詐欺取消

 

 

昨日は,心裡留保による退職の意思表示が無効になる

ことについて解説しました。

 

 

本日は,退職の意思表示を争うときに労働者が主張できる,

詐欺による取り消しについて,解説します。

 

 

詐欺とは,人をだまして勘違いさせることです。

 

 

 

法律的な定義は,人を欺罔して錯誤に陥らせる行為といいます。

 

 

例えば,社長から懲戒解雇の理由がないのにもかかわらず,

「自分から退職しなければ,懲戒解雇にする」と言われたために,

労働者が自分から退職しないと懲戒解雇されてしまうと思い込んで,

退職した場合に,詐欺に該当すると考えられます。

 

 

退職の意思表示が詐欺によってされたものであると認定された場合,

退職の意思表示を取り消すことができます。

 

 

取り消しをすると,退職の意思表示は最初から

無効だったことになりますので,

元どおり働くことができるようになります。

 

 

2 退職の意思表示が詐欺で取り消された事例

 

 

ここで,退職の意思表示が詐欺で取り消されると判断された

ジョナサンほか1社事件の大阪地裁平成18年10月26日判決

を紹介します(労働判例932号39頁)。

 

 

この事件では,パチンコ店が閉鎖されて

労働者が全員解雇されたのですが,その後,会社は,

閉鎖された店舗の跡地に新しいパチンコ店を開店しました。

 

 

新店舗の労働者のほとんどがパート労働者になった関係で,

会社の人件費が1500万円から1000万円に減少しました。

 

 

そのため,旧店舗を一気にリニューアルして,

人件費の削減を実施するために,新店舗の開店計画を秘密にしたまま,

全ての労働者を解雇した上で,旧店舗を閉鎖したものなので,

本件解雇は,解雇権を濫用したものとして無効となりました。

 

 

そして,被告会社は,解雇ではなく,

合意退職だったと主張していたのですが,

仮に合意退職であったとしても,

新店舗の開店計画を秘密にしたまま,

旧店舗の閉店を告げているので,退職の意思表示は,

詐欺による取り消しで無効になると判断された。

 

 

 

さらに,本件解雇のやり方が,長年働いてきた労働者に対して,

虚偽の事実を告げて,一方的に解雇するというもので,悪質であり,

後日,新店舗の開店を知った労働者の驚きと怒りは大きいことから,

慰謝料50万円が認められました。

 

 

これだけ悪質な解雇の場合は慰謝料請求が認められるわけです。

 

 

このように,会社からだまされて

退職の意思表示をしてしまった場合には,

詐欺による取り消しができないかを検討してみてください。

 

 

もっとも,会社からだまされたことを労働者が

立証しなければならないのが,困難になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

退職届を提出した後に退職が無効だったと争うことができるのか?

1 真意ではない退職の意思表示を争う場合

 

 

労働者が退職することを会社に伝えたのですが,

この退職の意思表示には問題があったとして,

退職の効力が争われることがあります。

 

 

例えば,労働者には退職する意思がなかったにもかかわらず,

退職届を提出して,会社が退職届を受理しまった場合に,

労働者が,後から退職の意思表示は無効だったと争う場合です。

 

 

 

それでは,本当は退職する意思がないのに,

労働者が退職すると意思表示した場合,労働者はどのようにして,

退職をなかったことにできるのでしょうか。

 

 

2 心裡留保とは?

 

 

民法93条に,心裡留保という規定があります。

 

 

意思表示をした人が,表示した行為に対応する真意がないことを

知りながらする単独の意思表示のことをいいます。

 

 

わかりやすく説明すると,相手方がお金を持っていなさそうなので,

買えないだろうと思って,売る気もないのに,

10万円なら売ってもいいよ,と言ったところ,

相手方が10万円なら買いますと言った場合に,

売買契約が成立するのかという問題です。

 

 

ようするに,売主は,売るという真意がないのに,

売ると意思表示をしているのです。

 

 

この場合,売主には売る意思がないので,

売買契約が無効になりそうですが,

売主の売りますという意思表示を信頼して

10万円を集めた買主を保護すべきです。

 

 

そのため,このような心裡留保の場合,

原則として,意思表示は有効になります。

 

 

しかし,上記の売買契約のケースで,買主が,

売主は買主のことをからかうつもりで,

本当は売るつもりがないことを知っていた場合はどうでしょうか。

 

 

売主が売るつもりがないことを知っている

買主を保護する必要はなくなります。

 

 

そこで,心裡留保の相手方が,意思表示をした人に

真意がないことを知っていたり,知ることができていた場合には,

例外的に,意思表示が無効になるのです。

 

 

3 心裡留保で退職の意思表示が無効になった裁判例

 

 

ここで,退職の意思表示が心裡留保として無効になった,

昭和女子大学事件の東京地裁平成4年2月6日決定を紹介します

(労働判例610号72頁)。

 

 

この事件では,大学教授が問題をおこしたため,

学長から教授の地位を剥奪すると言われ,

本気で謝罪している姿勢を見せるために

反省の色が最も強くでる文書を提出したほうがよいと考えて,

退職届を大学に提出しました。

 

 

 

この教授は,実際には退職する意思はなく,

引き続き教授として勤務する意思を有しており,

学部長から,本当にこのまま退職するのかと聞かれたときには,

「汚名を挽回するために勤務の機会を与えてほしい」と述べました。

 

 

しかし,大学は,退職扱いとしたので,この教授は,

教授としての地位にあることの確認を求めて,提訴しました。

 

 

裁判所は,本件の退職届は,勤務継続の意思があるならば

それなりの文書を用意せよとの学長の指示に従い提出されたものであり,

この教授は,学部長に対して,勤務継続の意思を表明しているので,

大学は,この教授には退職の意思がないのに

反省の意思を強調するために退職届を提出したと

知っていたと推認できると判断しました。

 

 

そのため,大学教授の退職の意思表示は心裡留保で無効であるとして,

大学教授の地位確認の請求が認められました。

 

 

このように,退職届を提出したものの,

真意では退職する意思がなかった場合には,

心裡留保を理由に退職は無効であると主張できます。

 

 

もっとも,心裡留保で退職を無効にするためには,

会社も,労働者が真意では退職する意思がないことを知っていたか,

または,知ることができたことを,

労働者が立証しなければなりませんので,

この立証が大変になります。

 

 

そのため,真意では退職する意思がないのであれば,

退職届を提出しないようにしなければなりません。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

退職金を請求するときのポイント

先日,会社から退職金の支払いがないという法律相談を受けました。

 

 

労働者が会社にとって不都合なタイミングで退職したり,

会社と労働者と間でトラブルがある場合に,

会社が退職金を支払わないことがあります。

 

 

本日は,会社に対して,退職金を請求するには

どうすればいいかについて解説します。

 

 

 

 

まず,労働者が退職したからといって,

当然に会社に対して退職金を請求できるものではありません。

 

 

就業規則,労働契約,労働協約などで退職金を支給することや,

退職金の支給基準が定められていて,

会社に支払い義務のあるものは賃金と認められて,

賃金についての労働基準法の保護を受けることができるのです。

 

 

労働基準法には,労働者に対して退職金請求権

を認める直接的な条文がないので,

退職金請求権が認められるためには,

就業規則,労働契約,労働協約などの根拠が必要になります。

 

 

そのため,労働者が会社に対して,退職金を請求するためには,

会社の就業規則などに退職金に関する定めがあるかを

チェックする必要があります。

 

 

就業規則とは別に,退職金規程を作成している会社もありますので,

会社を辞める前に,会社に対して,退職金規程などの

退職金の根拠となる資料の開示を求めます。

 

 

会社を辞めた後に,労働者個人が,会社に対して

退職金規程の開示を求めても,会社が任意に応じない

可能性もありますので,可能な限り,会社を辞める前に,

退職金規程などの資料をコピーしておくのがいいです。

 

 

会社から退職金規程の開示を受けたなら,

退職金規程に記載されている退職金の支給基準に従い,

退職金の計算をします。

 

 

一般的には,退職金の算定基礎賃金に

勤続年数別の支給率をかけて算定されることが多いです。

 

 

退職金の計算をする際には,給料のうちのどの部分までが

退職金の算定基礎賃金に含まれるのかが,

退職金規程に記載されていることが多いので,

給料明細をなくさずにとっておき,

給料明細から退職金の算定基礎賃金を計算します。

 

 

勤続年数別の支給率については,

労働者が自分の意思で会社を退職する自己都合退職の場合には,

普通解雇や整理解雇といった会社都合退職の場合に比べて,

支給率が低く設定されていることが多いです。

 

 

大幅な給料カットを通告されて,労働者が

「一身上の都合により」などと記載した退職届

を会社に提出した場合には,

自己都合退職なのか会社都合退職なのかが争われることがあります。

 

 

次に,退職金を計算できたとして,労働者は,

いつ退職金を請求できるのでしょうか。

 

 

 

退職金規程などに退職金の支払時期が定められている場合には,

その支払時期に請求することになります。

 

 

退職金規程に支払時期が記載されていない場合には,

会社は,労働者の請求があってから7日以内に

退職金を支払わなければなりません(労働基準法23条1項)。

 

 

退職金規程に定められている支払時期や,

労働者の請求があってから7日以内に退職金が支払われなかった場合,

会社は,年6%の遅延損害金を負担しなければなりません。

 

 

労働者としては,早目に退職金の請求をしておけば,

遅延損害金を請求できる可能性があります。

 

 

また,退職金請求権の消滅時効は5年なので,

退職してから5年が経過していないのであれば,

退職金を請求できる可能性があります。

 

 

まとめますと,退職金の根拠規程を調査して,

早目に会社に対して退職金を請求することが重要となります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

会社を辞めるのは簡単です~退職代行サービスについての私の見解~

先日,外部の法律相談で,労働問題についての相談を受けていた時に,

相談者の方が,「退職代行サービスってどうですかね?」

というご質問をされました。

 

 

石川県でも,退職代行サービスの利用を

検討している人がいることを知り,

時代は変わったものだなぁと思いました。

 

 

この相談者の方のご質問に対する私の回答は,

退職は自分で簡単にできるので,ご自身でやった方がいいですよ。

退職代行サービスの業者に費用を支払うのはもったいないですよ

というものでした。

 

 

はい,会社を辞めるのは簡単です。

 

 

 

 

正社員であれば,会社を辞めますと伝えてから,

2週間が経過すれば,自由に会社を辞めることができます(民法627条)。

 

 

土日が休みの週休二日制の会社であれば,

2週間のうちの平日10日について,

有給休暇を取得すれば,会社に出社することなく,

会社を辞めれます。

 

 

会社を辞めるのに理由は必要なく,

会社から辞める理由を聞かれても,回答する義務はなく,

ただ単に辞めますと会社に伝えればいいのです。

 

 

労働者には,退職の自由が認められていることを

ぜひ知ってもらいたいです。

 

 

とはいえ,自分の口から,上司に「会社を辞めます」

とは言いづらいと思いまし,上司からあれやこれやと理由をつけられて,

退職をおもいとどまらせようとしてくることも予想されます。

 

 

そんなときは,退職届を会社に特定記録郵便で郵送すればいいのです。

 

 

 

 

むしろ,口頭で会社を辞めますと伝えたら,会社から,

「いや,そんなことは聞いていない」と主張されることがあり,

言った言わないという問題となり,

会社を辞めさせてもらえない可能性もでてきます。

 

 

そこで,会社を辞めるためには,

会社を辞めますという意思表示を会社に通知すればいいので,

一身上の都合により退職します」とだけ記載して,

日付と自分の名前を署名して,押印した退職届を,

特定記録郵便で会社に郵送すれば,それだけでいいのです。

 

 

特定記録郵便を利用すれば,インターネットで,

いつ郵便が届いたのかを調べることができ,

確実に相手方に届いたことを証明できるので便利です。

 

 

https://www.post.japanpost.jp/service/fuka_service/tokutei_kiroku/

 

 

 

このように,退職届を特定記録郵便で会社に郵送すれば,

簡単に会社を退職できるのですか,

退職代行サービスが拡大しているようです。

 

 

 

 

先日の朝日新聞の報道によれば,2017年ころから,

退職代行サービス業者がサービスを始めたようで,

人手不足に悩む企業が,労働者の退職を

引き留めようとしていることが背景にあるようです。

 

 

https://www.asahi.com/articles/DA3S14021567.html

 

 

もっとも,退職代行サービス業者は,

弁護士法72条が禁止する非弁行為

該当する可能性があると思います。

 

 

弁護士法72条は,弁護士でない者が,

報酬を得る目的で,法律事務を行うことを禁止しています。

 

 

これは,弁護士資格をもっていない者が,

法律事務を行うと,適切なトラブル解決ができず,

弁護士でない者にトラブルの解決を依頼した者の利益を

害してしまうおそれがあることから,

このような非弁行為を禁止しているのです。

 

 

朝日新聞の報道によれば,退職代行サービス業者は,

あくまで,連絡の仲介をするだけで,

会社と交渉をしていないので,

非弁行為ではないと主張しているようです。

 

 

しかし,労働者が退職をする際には,

離職票の発行を求めたり,

有給休暇分の賃金を請求したり,

退職金の請求をしたりと,

会社と交渉をすることがほとんどです。

 

 

このような交渉を退職代行サービス業者が行えば,

非弁行為の禁止に該当すると考えます。

 

 

仮にこのような交渉をしないで,

単なる連絡の仲介だけで正社員だと退職代行サービスに

5万円の費用がかかるのには,違和感をおぼえます。

 

 

退職代行サービス業者は,

非弁行為の禁止に違反している可能性があるので,

利用はおすすめできません。

 

 

そもそも,退職代行サービス業者に

お金を払うのはもったいないので,

単に会社を辞めるだけであれば,

自分で退職届を書いて特定記録郵便で郵送すればよく,

有給休暇分の賃金を請求するなど会社との交渉を

第三者に依頼したいのであれば,

弁護士に依頼するのがいいと考えます。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。