休職から会社に復職するにはどうすればいい?

1 休職とは?

 

 

休みの時に、家事をしていた時に、腰を痛めてしまいました。

 

 

病院へいったところ、ヘルニアと診断され、手術をすることになりました。

 

 

 

手術後もリハビリが必要であったため、しばらくの期間、会社を休職しました。

 

 

腰の痛みがおさまってきましたし、

主治医にも仕事に復帰してもよいと診断を受けました。

 

 

しかし、会社に復職を申し出たところ、仕事に復帰しても、

また休まれては困る、別の仕事を探したほうがいいんじゃないか

などと言われ、復職を拒否されてしまいました。

 

 

このように、休職からの復職を会社に拒否された場合、

どうすればいいのでしょうか。

 

 

結論から先に言いますと、主治医が復職を認めているのであれば、

会社の復職の拒否は違法ですので、本気で復職を希望するなら、

再度、会社に対して、復職を伝え、それでも、拒否された場合には、

未払賃金を請求すれば、復職が認められる可能性が高いです。

 

 

今回は、休職と復職について解説します。

 

 

休職とは、労働者が働けない場合、会社との労働関係を維持しながら、

会社が労働者に対して、働くことを免除することです。

 

 

労働者は、会社に労働を提供する義務を負っているので、

労働を提供できない場合、解雇されてもやむを得ないのですが、

休職は、解雇を一定期間猶予し、

労働者を解雇や退職から保護する役割を果たしています。

 

 

休職期間中、労働者は、自分の義務である、

労働の提供をしていませんので、会社からは、

給料をもらえないのが、通常です。

 

 

そのため、労働者は、休職期間中、

健康保険の傷病手当金(給料の約3分の2が支給されます)を受給して、

一定の収入を確保しながら、治療をしていくことになります。

 

 

2 休職から復職するには?

 

 

さて、通常の会社では、休職期間が満了した時点で、

休職理由が消滅していない場合には、退職するか、解雇すると、

就業規則で定められていることが多いです。

 

 

 

病気で休職している場合、病気が治癒していれば、

休職理由が消滅しているといえます。

 

 

ここで、治癒とは、休職前の職務を遂行できる状態のことをいいます。

 

 

では、休職前の職務はできないものの、

別の仕事ならできる場合はどうでしょうか。

 

 

労働者の職務(仕事内容)が限定されていない場合、

その労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について、

労働を提供することができ、かつ、その提供の申し出をしているならば、

復職は可能となります。

 

 

そのため、休職前の仕事ができなかったとしても、

別にできる仕事が現実にあり、その仕事ならできますよと、

会社に伝えていたならば、会社は、休職前とは別の仕事に就かせて、

復職させなければならないことになります。

 

 

また、休職前の仕事ができなくても、相当の期間内に、

作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に回復すると見込める場合にも、

会社は、復職を認めなければならないことになります。

 

 

このように、①休職前の仕事ができるか、

②休職前の仕事ができなくても、別の仕事ならできるか、

③休職前の仕事をすぐにはできないが、

ある程度の期間が経過すれば、できるようになるかを検討し、

会社に対して、復職を求めていきます。

 

 

3 主治医とよく相談しましょう

 

 

復職を求めていく場合に、重要になるのは、主治医の意見です。

 

 

復職したい場合には、主治医に対して、復職できるのか、

いつ復職するのがいいのかについて、よく相談し、

適切なアドバイスをもらってください。

 

 

 

主治医が復職できると判断しているにもかかわらず、

会社が復職を拒否した場合、労働者は、会社に対して、未払賃金を請求できます。

 

 

会社は、労働者が働いていないのに、賃金を支払うのは不合理と考え、

復職を認めることになると考えます。

 

 

また、会社からは、前の仕事ができないならば、退職してはどうかと、

退職勧奨をされることがあります。

 

 

労働者は、退職勧奨に応じる義務はありませんので、

退職したくない場合には、退職勧奨を拒否してください。

 

 

会社が、復職を拒否している場合、

労働者が復職を求めても、応じてくれないときがあります。

 

 

そのような時は、弁護士に、復職の交渉を依頼すれば、

会社は、復職に応じてくれることがあります。

 

 

弁護士は、交渉力を強化してくれる味方ですので、

休職や復職で困ったときには、弁護士にご相談ください。

 

 

本日も、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

休職後のリハビリ勤務中の解雇の有効性

 

昨日に引き続き,近年,精神疾患による休職と復職に関して

重要な裁判例が出されていますので,本日は,

リハビリ出勤中の解雇が争われた綜企画設計事件を紹介します

(東京地裁平成28年9月28日判決・労働判例1189号84頁)。

 

 

この事件では,原告の労働者がうつ病で休職し,

その後リハビリ勤務をしていたのですが,

リハビリ勤務中に休職期間満了を理由とする解雇をされたことから,

原告の労働者は,解雇が無効であるとして裁判を起こしました。

 

 

リハビリ勤務とは,休職から復職を果たすために,

復職した当初から本来の所定労働時間における労働を行う

フルタイム勤務を課すのではなく,1日2,3時間ほど,

あるいは1日5,6時間ほどの短時間勤務を経て,

フルタイムの勤務を目指して徐々に

労働者に負荷をかけていくものです。

 

 

 

 

このリハビリ勤務ですが,以前は,休職から復職を果たした後に

実施されるケースが多かったのですが,最近は,

休職期間中に実施するケースが増えてきているようです。

 

 

リハビリ勤務の開始によって復職したといえれば,

復職後の解雇が権利の濫用といえるのかが争点となり,

リハビリ勤務の開始によって復職していないとなれば,

休職期間満了時において休職原因が消滅していたのかが争点となり,

争い方が変わってきます。

 

 

一般論としては,休職期間満了時において

休職原因が消滅していたことを,

労働者が証明しなければならないとされていることから,

リハビリ勤務によって復職していた方が,

解雇は簡単にできないということで,

労働者にとって有利といえそうです。

 

 

本件事件では,リハビリ勤務は,休職期間を延長し,

労働者が復職可能か否かを見極めるための期間

という趣旨で行われていたとされて,

リハビリ勤務の開始によって,

原告の労働者が復職したことにはならないと判断されました。

 

 

リハビリ勤務の開始では,復職したことにはならないので,

原告の労働者としては,休職期間満了時に,

原告の労働者に休職原因が消滅して,

復職ができていたことを証明しなければなりません。

 

 

それでは,どのような場合に,

休職原因が消滅したといえるのでしょうか。

 

 

それは,基本的には従前の職務を通常程度に

行うことができる状態にある場合をいいます。

 

 

また,それに至らない場合であっても,

当該労働者の能力,経験,地位,

その精神的不調の回復の程度などに照らして,

相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を

遂行できる程度に回復すると見込める場合も含まれます。

 

 

 

 

そして,これらの判断をする際には,

休職原因となった精神的不調の内容,

現状における回復程度ないし回復可能性,

職務に与える影響などについて,

医学的な見地から検討することが重要になります。

 

 

本件事件では,原告労働者は,リハビリ勤務中,

遅刻,早退などなく,リハビリ勤務の予定通りに

出社と退社をしており,多少の能力の低下はあったものの,

本人の努力次第で能力が戻ることが予想されていたことから,

従前の業務を通常程度行うことができる状態になっていたか,

少なくとも相当の期間内に通常の業務を遂行できる程度に

回復すると見込まれる状況にあったと判断されました。

 

 

その結果,休職期間満了時において,

休職原因が消滅していたので,復職が認められて,

解雇は無効となりました。

 

 

休職からの復職を求めるケースでは,

主治医の意見などを参考に,

リハビリ勤務中にどのような作業をどこまでできていたかを検討し,

相当の期間内に作業遂行能力が通常の業務を遂行できる程度に

回復すると見込めることを主張立証していくことが重要になります。

 

 

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

休職している労働者のリワークプログラム利用後の復職可能性

ここ数年,うつ病などのメンタル疾患に罹患した

労働者の休職と復職をめぐる裁判が増加しています。

 

 

メンタル疾患で長期間休職していた労働者が,

会社に復職を申し入れたものの,

会社からは復職を認められず,

休職期間満了で退職か解雇となり,

トラブルとなるのです。

 

 

 

精神障害に関する労災申請が年々増加していることから,

メンタル疾患に罹患する労働者が増加しており,

それに伴いトラブルが増加していることが予想されます。

 

 

それにあわせて,休職や復職に関して重要な裁判例が

出されていることから,順次紹介していこうと思います。

 

 

本日は,リワークプログラム利用後の復職可能性と

退職扱いの有効性が争われた東京電力パワーグリッド事件を紹介します

(東京地裁平成29年11月30日判決・労働判例1189号67頁)。

 

 

リワークプログラムとは,主としてうつ病などの

気分障害にかかって働けなくなって休業した労働者向けに,

病状の回復,安定と復帰準備性の向上及び

再発防止のためのセルフケア能力の向上を目的として,

医療機関などが提供するリハビリプログラムのことです。

 

 

 

 

この事件では,リワークプログラム実施後に,

原告の労働者が会社に復職を申し入れたのですが,

会社は復職を不可として,休職期間満了により

退職となったと主張してきたので,原告の労働者は,

復職申入時において復職が可能であったと主張して,

裁判を起こしました。

 

 

裁判所は,復職の判断枠組みについて,次のように提示しました。

 

 

まず,復職が認められるためには,原則として,

従前の職務を通常の程度に行える健康状態になること,

または,当初軽作業に就かせればほどなく

従前の職務を通常の程度に行える健康状態になることが必要です

(健康状態の回復の判断枠組み)。

 

 

次に,労働者が職種や業務内容を特定せずに

労働契約を締結した場合,現に就業を命じられた

特定の業務についての労務の提供が十分にできないとしても,

その能力,経験,地位,当該企業の規模,業種,

当該企業における労働者の配置・異動の実情及び難易などに照らして

当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる

他の業務について労務を提供することができ,かつ,

その提供を申し出ているなら,復職が認められます

(他部署への配置の判断枠組み)。

 

 

本件事件では,原告の労働者は,

リワークプログラムへの出席率が低く,

復職した場合に,規則正しく定時に

出勤できる状態にまで回復しておらず,

また,自分に対する精神疾患の病識が欠如しており,

自分のストレス対処についての十分な考察が

できていないと判断されました。

 

 

その結果,健康状態の回復について,

仮に休職前の部門に復職しても,

他の社員との仕事上の対人関係に負担を感じ,

精神疾患を悪化させるおそが大きく,

原告労働者の負担を軽易なものにしても,

原告労働者の精神状態の負担が直ちに

軽減されるわけではないことから,

当初軽易作業に就かせればほどなく

当該職務を通常の程度に行える健康状態

であったとはいえないと判断されました。

 

 

 

 

そして,他部署への配置について,原告労働者にとって,

新たに配属された部署で業務を覚えたり,

一から人間関係を構築することが大きな精神的負担となり,

精神状態の悪化や精神疾患の再燃を招くおそれがあることから,

他部署で原告労働者が配置される現実的可能性は

なかったと判断されました。

 

 

以上より,原告労働者の復職は認められませんでした。

 

 

休職している労働者が復職を求めていくには,

主治医や産業医の意見をきちんと確認して,

復職できる健康状態なのかを見極めつつ,

他の部署で労働者が働くことができないか

についても検討していくことが必要になります。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

休職期間中のテスト出勤のときに賃金を請求できるのか?

うつ病などの精神疾患が発症して,

治療のために一定の期間,

休職していた労働者が職場復帰するために,

テスト出勤をすることがあります。

 

 

一般的に試し出勤,リハビリ出勤などと言われており,

心の健康の問題やメンタルヘルス不調により,

治療のため長期間職場を離れている職員が,

職場復帰前に,職場復帰の可否の判断などを目的として,

本来の職場などに一定期間継続して試験的に出勤することです。

 

 

 

 

テスト出勤を利用し,その期間中の休職者の作業状況を

踏まえて休職理由が消滅したか否かを判断することによって,

休職者の現状や職場の実態に即した

合理的な判断が可能になるのです。

 

 

会社にとっては,休職者の回復状況が

より具体的に把握しやすいというメリットがあり,

休職者にとってもリハビリ効果があり,

職場復帰がしやすくなるというメリットがあります。

 

 

それでは,このテスト出勤を無給で行わせることは

違法にならないのでしょうか。

 

 

会社としては,本来の勤務ではないので,

なるべく多くの給料を支払いたくないと考えますし,

休職者としては,自分なりに働いているので,

給料を請求したいものです。

 

 

本日は,テスト出勤中の給料請求について判断された

NHK名古屋放送局事件を紹介します

(名古屋高裁平成30年6月26日判決・労働判例1189号51頁)。

 

 

この事件のテスト出勤は,

原則24週(6ヶ月)のプログラムで,

前半の12週間でフルタイムの出勤ができるまで

徐々に勤務時間を増やしていき,

後半の12週間はフルタイムの出勤となり,

最後の6週間は職場の実態に合わせて

通常業務を想定した作業を行うことになっていました。

 

 

 

 

このテスト出勤の期間中,

交通費相当額が支給されていましたが,

無給とされていました。

 

 

この事件のテスト出勤は,

休職者のリハビリ目的もありますが,

職場復帰の可否の判断の目的もあり,

休職者はテスト出勤を命じられた場合に

それを拒否することが困難な状況にあり,

会社は,休職者の作業の成果を受け取っていることから,

本来の作業に比べて経緯な作業だからといって,

賃金請求権が発生しないことにはならないと判断されました。

 

 

とはいえ,原告の休職者は,

相応に高度な作業を遂行することを要求されていたものの,

テスト出勤の期間は,軽作業を中心に行ってきたので,

もともと受け取っていた賃金に相当する

対価に見合う労働を提供していたわけではありません。

 

 

そこで,原告の休職者は,休職前の水準の賃金は請求できないものの,

最低賃金で計算された賃金を請求できると判断されました。

 

 

最低賃金法4条によれば,

最低賃金に達しない賃金は無効となり,

無効となった部分については,

最低賃金と同じ定めをしたことになります。

 

 

 

 

まとめますと,無給の合意がされている

テスト出勤の期間中に行われた作業であっても,

会社の指揮監督下においてその作業が行われている場合には,

最低賃金法が適用されて,

最低賃金相当額の賃金を請求できる可能性があるのです。

 

 

休職期間中にテスト出勤する場合には,

最低賃金相当額の賃金が支払われているのかを

チェックするようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

休職から復職するには

うつ病や適応障害を発症して,

会社を長期間休職していましたが,

体調が回復し,主治医から復職しても

問題ないとの意見をもらったものの,

会社から復職はさせられないと言われたとします。

 

 

 

 

主治医は復職してもいいと言っているのに,

会社の対応には納得できません。

 

 

このような場合,労働者は復職できないのでしょうか。

 

 

本日は,休職からの復職について説明します。

 

 

そもそも,休職とは,労働者に仕事をさせることが

不能または不適当な事由が生じた場合に,

会社が労働者に対して,労働契約関係そのものは維持させながら,

仕事を免除または禁止することをいいます。

 

 

休職の中で一番多いのが私傷病休職です。

 

 

私傷病休職とは,仕事が原因ではない

ケガや病気を理由とする休職です。

 

 

例えば,プライベートの時間に負ったケガや

仕事との関連性のない病気などを理由とする休職です。

 

 

 

 

民間企業の場合,休職についての法律の規定がなく,

就業規則に休職の規定がある場合に認められる任意の制度なのです。

 

 

そのため,どのような場合に休職できるのか,

休職期間中の賃金の扱い,

休職期間満了時の効果(自然退職か解雇か),

休職と復職の手続などについては,

就業規則の規定をよく検討する必要があります。

 

 

労働者が休職からの復職を希望する場合には,

就業規則の中から復職に関する規定を検討するべきです。

 

 

さて,就業規則に「休職を命じられた職員の

休職事由が消滅したときは復職させるものとする。

ただし,休職期間が満了しても復職できないときは,退職とする。」

と規定されていた場合,労働者は,

主治医が復職を認めていることを根拠に,

復職ができるのでしょうか。

 

 

ここで,会社から休職期間満了の時点で復職不可と判断されて,

退職扱いされた労働者が,退職扱いは無効であると争った

神奈川SR経営労務センター事件の裁判例を紹介します

(横浜地裁平成30年5月10日・労働判例1187号39頁)。

 

 

この事件では,上記就業規則の「休職事由が消滅した」とは,

従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復した場合

をいうと判断されました。

 

 

そして,会社の産業医が復職に否定的な意見を示していましたが,

原告の主治医がうつ状態の病状改善により

復職可能という診断書を作成していることから,

従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復している

と判断されて,復職が認められました。

 

 

 

 

復職が争われる場合,主治医の意見だけでなく,

会社の産業医の意見も重視されますが,そもそも,

主治医が復職を認めてくれないことには,復職はできません。

 

 

そこで,復職を希望する労働者は,主治医とよく相談して,

復職ができるかどうかを入念に判断してもらい,

復職可能という診断書を作ってもらい,

復職の手続をとるようにしてください。

 

 

本日もお読みいただきありがとうございます。

休職後の復職拒否と休職期間満了を理由とする退職取扱

仕事とは関係のない持病が原因で会社を休職していた労働者が,

医師から復職可能との診断を受けたにもかかわらず,

会社が復職を認めず,休職期間満了で,退職させられた場合,

労働者は,退職しなければならないのでしょうか。

 

 

本日は,休職後の復職拒否と休職期間満了を理由とする

退職の取扱が争われた名港陸運事件を紹介します

(名古屋地裁平成30年1月31日判決・労働判例1182号38頁)。

 

 

原告は,トレーラーの運転手です。

 

 

 

 

原告は,胃がんを宣告されて,胃の全摘出手術を受けて退院しました。

 

 

被告会社は,原告に対して,療養・治療に専念してもらうために,

休職命令を発しました。

 

 

被告会社の就業規則には,復職の条件として,

通常の業務に復帰できる健康状態に復したことを

証明することが記載されており,

休職期間満了までに休職事由が消滅しない場合,

自然退職することが記載されていました。

 

 

原告は,主治医の職場復帰可能の診断書を提出し,

被告会社の産業医も,一般的に胃がんの全摘出であっても

術後1年経過すれば症状は安定するので

就労はできると思うと意見を述べました。

 

 

 

しかし,被告会社は,原告が本来ならばもっと早く

復職できた点について不信感を抱き,

休職期間満了で原告を退職扱いにしました。

 

 

そこで,原告は,被告会社に対して,

労働契約上の地位の確認を求めて,裁判を起こしました。

 

 

本件では,原告の休職事由が消滅したのか,

すなわち,原告は,治癒したのかが争点となりました。

 

 

ここで,「治癒」とは,労働者が休職する前に行っていた仕事を

健康時と同じように遂行できる程度に回復していることをいいます。

 

 

この治癒の判断にあたって,医師の意見が重要になります。

 

 

 

本件では,原告の主治医と被告会社の産業医の両者が,

原告の復職を可能と判断しているので,原告は,

既に治癒しており,休職事由は消滅したと判断されました。

 

 

その結果,原告の労働契約上の地位が確認され,

退職扱いされた日以降の未払賃金の支払が認められました。

 

 

さらに,被告会社は,改めて原告と面談することなく,

被告会社が指定する医師への受診を命じたこともなく,

原告からの復職時期の説明要求にも応じずに,

唐突に原告を退職扱いしたので,

手続的な相当性を著しく欠くとして,

30万円の慰謝料請求が認められました。

 

 

休職と復職の手続きにおいて,

会社が医師の意見を無視するようなずさんな対応をすれば,

会社は,労働者に対して,慰謝料を

支払わなければならなくなる可能性があります。

 

 

最近,メンタルヘルスの問題がクローズアップされており,

休職と復職の問題がますます増えていくことが予想されます。

 

 

労働者は,休職と復職を検討する場合には,

まずは療養につとめて,体調を整えて,

主治医に適切な意見書を書いてもらうことが重要になります。

 

 

本日もお読みいただき,ありがとうございます。

傷病休職と職場復帰

傷病休職は,働くことができない原因が労働者の負傷または疾病にある休職をいいます。仕事が原因で労働者が負傷または疾病に罹患した場合には,労災となりますが,仕事以外の原因で労働者が負傷または疾病に罹患して,ある程度の期間仕事ができない場合に,一定期間労働者による労務提供を免除することが傷病休職です。

 

仕事以外の原因で労働者が負傷または疾病のために仕事ができなくなった場合,労働者は,休業4日目以降に,傷病手当金の支給を受けることができます。傷病手当金の支給期間は,支給開始から最長1年6ヶ月です。傷病手当金の支給額は,1日につき標準報酬日額の3分の2とされています。

 

傷病休職で休んでいた労働者が職場に復帰するためには,休職の原因となっていた負傷または疾病が治癒したことが必要となります。ここで治癒とは,原則として,従前の職務を通常の程度に行える健康状態に回復したことをいいます。他方,治癒に至っていなくても,労働者の職種に限定がなく,他の軽易な職務であれば対応できて,軽易な職務へ配置転換することが現実的に可能であったり,当初は軽易な職務に就かせれば程なく従前の職務を通常に行うことができる場合にも職場復帰が認められます。

 

職場復帰に至るには,通所は次のような手続になります。労働者は,まず主治医の職場復帰についての意見が記載された診断書を会社に提出します。その後,会社は,当該労働者と産業医を面談させて,産業医の意見を聴取します。リハビリ出勤制度があればそれを実施し,それらの結果を踏まえて,職場復帰の可否判定を行い,本人にその結果を伝えることになります。

 

労働者が,主治医の職場復帰が可能であるとの診断書を提出したにもかかわらず,会社が,産業医の意見を聞かずに,漫然と職場復帰を認めない場合,労働者は,会社に対して,労務を提供しているのに,会社が不当にこれを拒否していることになり,賃金を請求することができます。