内部告発をした労働者が保護されるには

会社で不祥事が発生し,それを発見した労働者が,

不祥事の発生や拡大を防止するために内部告発を行った場合,

会社の信用を失墜させたり,会社に損害が発生したとして,

会社から解雇や懲戒処分などの不利益な取扱いを受けることがあります。

 

 

 

 

このような場合,労働者は,どうすれば保護されるのでしょうか。

 

 

内部告発を理由とする解雇が争われた事例で,

一審と控訴審で結論が別れた裁判例を紹介します

(東京高裁平成28年12月7日判決・

判例時報2369号61頁)。

 

 

私立小学校の教頭先生が,

監督権限を有する県に対して,

告発をしました。

 

 

その告発の内容は,学校法人の理事長のサッカー

を通じた学内活性化の計画に関連して多額の支出がされて

財務状況が悪化しており,その業務を委託した

サッカースクールに多額の資金が流出しており,

理事長に横領または背任の疑いがあるので,

業務監査を実施して理事長の解任を求めるものでした。

 

 

しかし,この教頭先生は,学校法人から,

不当な目的で本件告発を行い,

学校法人や理事長の名誉と信用を毀損したとして,

解雇されました。

 

 

教頭先生は,この解雇は無効であるとして,裁判を起こしたのです。

 

 

ここで,内部告発が保護される要件を説明します。

 

 

内部告発は,

①告発内容の真実性(告発内容の主要部分が真実であるか,

真実と信じるに足りる相当な理由があることが必要です),

②内部告発の目的が正当であること

③内部告発手段・方法の相当性

(会社にできるだけ損害を与えない方法で

告発することが求められており,

企業内部での改善努力をせずに,

いきなりマスコミに通報すると

相当性を欠くとされやすいです)

の3つの要件を総合考慮して,

正当行為になるかが判断されます。

 

 

また,公益通報者保護法において,

通報先ごとの保護要件が定められています。

 

 

 

 

勤務先の会社への内部通報の場合

犯罪行為や法令違反の事実の発生または

切迫性を思料することで足ります。

 

 

行政機関への通報の場合

犯罪行為や法令違反の事実の発生または

発生しようとしていると信ずるに足りる相当の理由

が必要になります。

 

 

マスコミなどの外部への通報の場合

行政機関への通報の要件に加えて,

会社や行政機関に通報すれば解雇などの不利益な取扱い

を受けると信ずるに足りる相当な理由がある場合

などの要件を満たす必要があります。

 

 

会社内部→行政機関→マスコミなど,

通報先が外にいくほど保護されるための要件が厳しくなるのです。

 

 

さて,本件裁判例では,一審は,

本件告発内容には,真実に反するものが含まれているが,

あえて虚偽の事実を告発したものではなく,

教頭先生が小学校の財務状況に危機感を抱いたのも

無理からぬものがあったことを理由に,

解雇は無効とされました。

 

 

しかし,控訴審では,解雇は有効となり,

教頭先生が逆転敗訴したのです。

 

 

その理由は,本件告発内容は,

いずれも横領や背任などの刑罰法令に違反するものとは認められず,

根拠が薄弱で,容易に確認できる事項の確認がされていないので,

告発内容が真実であると信じるに足りる相当な理由

があったとはいえないというものです。

 

 

会社の外に告発する場合,労働者が保護される要件が

厳しくなりますので,まずは何よりも

告発内容を裏付けるための資料を十分にそろえておく必要があります。

 

 

また,会社に内部告発した場合,

告発後の会社の言動を逐一記録しておくことも重要になります。

 

 

内部告発をしても労働者が保護されるかは

ケースバイケースなので,内部告発は専門家へ相談して

慎重におこなうことをおすすめします。

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