大学の学部教授会に人事権限があるのか

大学の教授が不祥事をおこなった場合,

教授と労働契約を締結している学校法人は,

就業規則(会社が定めた働くためのルールです)に基づいて,

懲戒処分をすることができます。

 

 

それでは,大学の学部の教授会は,学校法人とは別に,

不祥事をおこした教授に対して,懲戒処分とは異なる,

研究・教育活動を制限する措置をすることができるのでしょうか。

 

 

学部教授会による研究・教育活動を制限する措置が争われた

明治大学事件を紹介します(東京地裁平成29年9月29日・

労働判例1181号27頁)。

 

 

明治大学のある教授が,論文を発表しましたが,

その論文がウィキペディアに記載されているものに

若干の改変を加えたものであることが発覚しました。

 

 

明治大学は,この教授に対して,論文不正問題について,

停職1ヶ月の懲戒処分を行いました。

 

 

さらに,学部教授会は,この教授に対して,論文不正問題に関して,

学部における組織的な研究活動への参加を制限する措置,

学部教員としての対外的活動を制限する措置,

学部教授会での議決権を停止する措置を行いました。

 

 

 

 

そこで,この教授は,

学部教授会のこれらの措置によって,

研究の自由を違法に侵害されたとして,

明治大学に対して損害賠償を請求しました。

 

 

裁判では,学校法人による停職1ヶ月の懲戒処分は争われておらず,

学部教授会の措置のみが争われました。

 

 

まずは,学部教授会に人事に関する権限があるのかが検討されました。

 

 

憲法23条では,学問の自由が保障されています。

 

 

大学における学問の自由が保障されるために,

大学の自治が認められています。

 

 

 

 

大学の自治の具体的内容は,

大学の自主的な判断で教授を選任すること,

大学の施設や学生の管理について自主的な権限が認められていること,

研究教育が自主的に決定されることなどです。

 

 

そして,大学の自治を担う中心的な組織は,

大学教授によって構成される教授会であり,

学部教授会は,教員についての人事事項,

授業に関する事項について,

自主的な判断を行うことができると判断されました。

 

 

学部教授会には,教員の人事事項や授業に関する事項について

広い裁量が認められますが,裁量の範囲を逸脱したり,

教員の権利を不当に制限するような場合には,

権利の濫用となり,学部教授会による当該措置は違法になります。

 

 

その上で,原告の教授の論文不正問題は,

大学における研究にふさわしくない不適切な行為であり,

学生に適正な教育環境を提供し,

大学の名誉や信用を維持するために,

学部教授会が原告の教授の授業担当を停止するなどの措置

をとることは違法ではないと判断されました。

 

 

教授の雇用主である学校法人が懲戒処分をすることは

十分理解できますが,学校法人とは別に,学部教授会にも,

裁量が広い人事権限が認められることにはやや疑問があります。

 

 

明治大学では,学部教授会の権限について,

規則などで細かく明文で記載されていたことから,

学部教授会の人事権限が認められた可能性があり,

規則などに学部教授会の権限が記載されていない場合にも,

学部教授会に裁量が広い人事権限が認められるかは分かりません。

 

 

学部教授会の人事権限が正面から問題となった

珍しい裁判例ですので,紹介させていただきました。

 

 

本日も,お読みいただき,ありがとうございます。

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