セクハラ被害者の心理状態

セクハラの被害者は,被害を忘れようとして,

前と同じように日常生活をおくり,

専門家への相談は遅くなりがちになってしまう。

 

 

このようなセクハラの被害者の言動について,

詳細に判断した熊本バドミントン協会セクハラ事件の裁判例を紹介します

(熊本地裁平成9年6月25日判決・判例時報1638号135頁)。

 

 

この事件の被害者は,会社のバドミントン部に所属し,

国体に出場するなどの活躍をしていました。

 

 

 

 

加害者は,県議会議員をつとめるほか,

県バドミントン協会の副会長,

市バドミントン協会の会長の地位にあった人物です。

 

 

被害者は,加害者から食事を誘われ,

アルコール度が強いお酒を飲まされた後,

加害者の車に同乗したところ,

ホテルへ連れて行かされました。

 

 

 

 

被害者は,「そういうつもりじゃありません。」

と言ったのですが,酒の影響で力が入らず,

ホテルの部屋へ連れ込まれて,性関係を強いられました。

 

 

被害者は,国体前の大事な時期にこの事件が公になれば,

試合に出られなくなり,他の選手に迷惑がかかるかもしれないと思い,

加害者を告訴すれば,バドミントン協会の役員の地位を利用して,

報復として選手生命を奪われるかもしれないと思い,

告訴できませんでした。

 

 

加害者から,「離婚して妻も子供もいない。」,

「結婚を前提に付き合いたい。」と言われ,被害者は,

これらの言葉を信じることでみじめな気持ちが少しでも

救われる感じになり,加害者からの要求を断れば,

どのような報復があるかもしれず,

加害者との性関係が続いてしました。

 

 

 

その後,加害者からは,妻とは離婚できないと言われ,

被害者は,騙されていたことがわかり,

「もう会いません。電話もしないでください。」と言いました。

 

 

被害者は,この事件の後,恋人と別れ,

バドミントン部も会社も辞めることになりました。

 

 

裁判では,被害者と加害者の性関係は合意に基づくものであったのか

が争点となり,被害者の主張と加害者の主張の

どちらが信用できるのかが争われました。

 

 

結論として,被害者の主張は信用でき,

被害者と加害者の性関係は合意に基づくものではなく,

強姦であったと判断されました。

 

 

加害者は,強姦の被害にあったのであれば,

そのショックから立ち直るのに時間がかかるはずなのに,

被害者が次の日から普段どおりに生活しているので,

強姦ではなかったと主張しました。

 

 

しかし,強姦の被害者は,被害の事実と直面することを避けて,

ショックを和らげるための防御反応として,

被害にあう前と同じ日常生活をおくることがよくあるので,

加害者の主張は採用されませんでした。

 

 

また,加害者は,被害者が強姦されたと主張していながら,

加害者との性関係を継続しているので,

加害者を許していたのだと主張しました。

 

 

しかし,被害者は,加害者から,「結婚したい」と言われ,

少しでも愛情があって強姦したのであれば,

単なる暴力的な性のはけぐちとして強姦された場合よりは

救いがあると考えて,加害者の言葉を信じようとして,

性関係を続けてしまったので,加害者の主張は採用されませんでした。

 

 

結果として,加害者に対して,

慰謝料300万円の請求が認められました。

 

 

このように,被害者は,被害を忘れたいが,

加害者を許せないなど,様々な苦悩や葛藤をかかえながら,

ようやく救済のために立ち上がるのです。

 

 

 

 

セクハラの被害者は,救済のためにすぐに

誰かに相談にいくはずであり,そうしなかったのだから,

セクハラはなかったはずだなどという

固定観念はもはや通用しないのです。

 

 

セクハラ事件では,セクハラの被害者の心理状態や行動について,

慎重に検討することが重要になります。

 

 

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